- 更新日 : 2023年6月9日
学資保険は年末調整で控除されるか?条件や手続き方法を解説!
子どもの将来を思って入る学資保険ですが、それも積もれば高額になります。年末調整の際に所得税や住民税の控除対象となるのであれば嬉しいですよね。当記事では、そんな学資保険が年末調整の控除対象となる条件や、手続きに必要な書類の書き方について解説します。年末調整での学資保険の取り扱いについてお困りの方はぜひ参考にしてください。
目次
学資保険は年末調整で控除される?
学資保険は、教育費を貯める貯蓄型保険としての側面と生命保険としての側面を持っていることから税制上は生命保険として扱われるため、年末調整の際には「生命保険料控除」に含まれ控除の対象になります。ですが、複数の条件を満たさなければ控除対象にはなりません。続いて控除を受けるために必要な条件を解説します。
参考:No.1141 生命保険料控除の対象となる保険契約等|国税庁
そもそも控除を受けるための条件とは?
年末調整の際に学資保険を控除対象にするには、保険金の受取人が契約者か配偶者、またはその他の親族になっていることが第一条件になります。また、一般的な学資保険の多くは生命保険料控除の対象となりますが、学資保険の内容や契約条件によっては控除対象にならないこともあるので、保険会社に確認するようにしましょう。
条件が合えば学資保険は年末調整で控除できる
また、第一条件を満たしていたとしても保険料の未払いがあった場合にはその分は控除の対象になりません。生命保険料控除とは、支払った生命保険料に対して行われる控除のことです。1年の中の年末調整までの間で保険料に未払いがあった場合には、その金額分は控除の対象にはならないので注意しましょう。
参考:学資保険は生命保険料控除の対象!気になる控除の金額は?
学資保険を年末調整で控除するうえでの注意点
年末調整で学資保険を控除対象にするには、上記以外にも何点か注意事項があります。以下、注意点について解説します。
新契約と旧契約の違い
平成22年度税制改正に伴い、2012年1月1日以降に契約した保険契約は「新契約」、2011年12月31日以前に契約した保険契約は「旧契約」という扱いになり、控除額の算出条件が異なるので注意が必要です。
【新契約】
新契約の締結分には、生命保険料控除の枠が一般生命保険料・介護医療保険料・個人年金保険料の3種類があります。
生命保険料控除額(所得税)
一般生命保険料・介護医療保険料・個人年金保険料(税制適格特約付加) | ||||
---|---|---|---|---|
年間の支払い保険料額 | 20,000円以下 | 20,001円~40,000円 | 40,001円~80,000円 | 80,001円以上 |
控除額 | 支払保険料全額 | (支払保険料×1/2)+10,000円 | (支払保険料×1/4)+20,000円 | 一律40,000円 |
※所得税の各控除の適用限度額は最高40,000円で、一般生命保険料・介護医療保険料・個人年金保険料を合わせて最高120,000円です。
生命保険料控除額(住民税)
一般生命保険料・介護医療保険料・個人年金保険料(税制適格特約付加) | ||||
---|---|---|---|---|
年間の支払い 保険料額 | 12,000円以下 | 12,001円~32,000円 | 32,001円~56,000円 | 56,001円以上 |
控除額 | 支払保険料全額 | (支払保険料×1/2)+6,000円 | (支払保険料×1/4)+14,000円 | 一律28,000円 |
※住民税の各控除の適用限度額は最高28,000円で、一般生命保険料・介護医療保険料・個人年金保険料を合わせて最高70,000円です。28,000円×3=84,000円ではないことに注意が必要です。
【旧契約】
旧契約の締結分には、生命保険料控除の枠が一般生命保険料・個人年金保険料の2種類があります。
生命保険料控除額(所得税)
一般生命保険料・個人年金保険料(税制適格特約付加) | ||||
---|---|---|---|---|
年間の支払い保険料額 | 25,000円以下 | 25,001円~50,000円 | 50,001円~100,000円 | 100,001円以上 |
控除額 | 支払保険料全額 | (支払保険料×1/2)+12,500円 | (支払保険料×1/4)+25,000円 | 一律50,000円 |
※所得税の各控除の適用限度額は最高50,000円で、一般生命保険料・個人年金保険料を合わせて最高100,000円です。
生命保険料控除額(住民税)
一般生命保険料・個人年金保険料(税制適格特約付加) | ||||
---|---|---|---|---|
年間の支払い保険料額 | 15,000円以下 | 15,001円~40,000円 | 40,001円~70,000円 | 70,001円以上 |
控除額 | 支払保険料全額 | (支払保険料×1/2)+7,500円 | (支払保険料×1/4)+17,500円 | 一律35,000円 |
※住民税の各控除の適用限度額は最高35,000円で、一般生命保険料・個人年金保険料を合わせて最高70,000円です。
新旧制度の全体の適用限度額は、所得税が12万円で住民税が7万円です。新制度と旧制度の両方の生命保険料を支払っていてその両方ともを控除対象とするときは、新旧あわせて最高4万円が所得控除適用限度額になります。
また、新制度の生命保険料を10万円、旧制度の生命保険料を15万円支払った場合は、旧制度のみを控除対象とする場合の所得税控除額の5万円が、新旧両制度の生命保険料料を控除対象とする場合の所得税控除額の4万円より有利になるため、旧制度の生命保険料のみを控除対象とする5万円を限度に控除することができます。この場合でも所得控除の合計額は12万円が限度額となるので注意が必要です。
参考:旧生命保険料と新生命保険料の支払がある場合の生命保険料控除額|国税庁
保険の契約期間が5年未満の場合
教育費を蓄える目的で加入した学資保険であったとしても、保険期間が5年未満の学資保険の中には控除の対象にならないものもあります。このため、加入した学資保険が生命保険控除の対象となるのか保険会社に確認しましょう。
別の生命保険料を控除する場合
前述の通り、生命保険料控除の控除額には新契約・旧契約ともに上限があります。すでに生命保険料で上限額まで控除を受けている場合は、学資保険で支払っている保険料分は控除対象にならないので注意が必要です。
保険料支払いの当事者ではない場合
保険料支払いの当事者でない場合は控除が受けられません。控除を受けるための条件は「保険料を負担していること」です。通常の生命保険契約では契約者と保険料負担者がイコールになります。ですが、学資保険ではイコールにならない場合があるため、生命保険料控除は契約者ではなく実際に保険料を支払っている人が申告しましょう。
保険の契約 | 保険料を負担している人 | 申告をする人 | ||
---|---|---|---|---|
契約者 | 被保険者 | 受取人 | ||
夫 | 子ども | 夫 | 夫 | 夫 |
妻 | 子ども | 妻 | 夫 | 夫 |
妻 | 子ども | 妻 | 妻 | 妻 |
年末調整で学資保険が控除される金額
年末調整で学資保険が控除される金額について例を挙げて解説します。
前述の表に照らしあわせると所得税の控除額は40,000円、住民税の控除額は28,000円になります。
また、控除額と実際手元に戻る金額は異なりますので注意が必要です。手元に戻る金額は契約者の年収や配偶者が専業主婦かどうかによって異なります。
学資保険を年末調整で控除するための手続き
年末調整の際に学資保険を生命保険料控除として申告するには、「給与所得者の保険料控除申告書」に必要事項を記入し、就業している企業の担当部署へ提出する必要があります。
学資保険は生命保険料控除の中でも一般生命保険料に該当するため図A 1部分の「一般の生命保険料」の欄に記入をします。基本的には保険会社から送られてくる「生命保険料控除証明書」を参照して記入しますが、生命保険料控除証明書だけでは記入ができない部分・記入時に迷いやすい部分ががあるので以下ポイントを解説します。
- ポイント1 記入場所
学資保険は「一般の生命保険料控除」に該当するので図A 1部分へ記入しましょう。
- ポイント2 保険会社の名称、種類、保険期間
保険会社名が伝われば良いため、保険会社名が長いく該当欄に入りきらない場合は略称でも提出可能です。また、種類の欄には「学資」、保険期間は10年なら「10」、15年なら「15」と数字のみ記入します。これらは保険会社から送られてくる生命保険料控除証明書に記載されているので、該当箇所を参照しながら記入しましょう。
- ポイント3 契約者の氏名、受取人の氏名
契約者の氏名は、該当する学資保険の契約者を書きます。契約者の氏名は生命保険料控除証明書に載っているので該当箇所を参照して記入しましょう。受取人は通常であれば契約者もしくは子どもの名義ですが、契約内容を確認してから記入します。
- ポイント4 本年度中に支払った保険料の金額を記入する
本年度中に支払った保険料を記載するため、保険会社から送られてきた生命保険料控除証明書に記載されている「参考額(申告額)」を記入しましょう。その他にも生命保険料控除証明書には該当書類発行時点の支払額として「証明額」も記載されていますが、申告に必要なのは「参考額(申告額)」のため注意が必要です。
- ポイント5 新契約と旧契約、それぞれの保険料の合計を出す
図A 1部分内にAとB、それぞれ新契約の保険料の合計額と旧契約の保険料の合計額を記入します。加入している保険が複数ある場合は自分で計算して記入しましょう。
- ポイント6 ①②③の欄に記入する
①と②の欄には支払った保険料ごとにそれぞれ計算法が決められています。図A 3部分に書かれている計算式を参照して保険ごとに計算しその合計を記入しましょう。③には①と②を合計したものを記入します。
- ポイント7 イの欄に記入する
①と②を比較して数字の大きい方を記入します。最高で50,000円です。
- ポイント8 介護医療保険料の欄も記入する場合がある
加入している学資保険が医療保障特約付きで一定の条件を満たした場合には、生命保険料控除だけではなく介護医療保険料控除の対象にもなる場合があります。その場合は図A 2の部分も記入しましょう。保険料のうち生命保険料控除額と介護医療保険控除額がそれぞれいくらになるかは生命保険料控除証明書に載っているので、該当箇所を参照しながら記入します。
条件を満たせば学資保険も年末調整で控除可能
複数の条件を満たせば学資保険も年末調整の際に控除対象となること、ご理解いただけたでしょうか。条件や注意点、書類への記載は一見複雑そうですが、書類を確認したり保険会社へ問い合わせたりしながら一つずつ確認すれば、控除対象として申告することができます。ぜひこの記事を参考に、年末調整の際学資保険を控除対象に含めて申告してみてください。
※ 掲載している情報は記事更新時点のものです。
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