• 更新日 : 2024年9月6日

メンターとメンティーの違いは?メンター制度のメリットや導入事例も解説

メンター制度とは、年齢が近い先輩社員が新入社員や若手社員に対して支援やサポートを行う制度のことをいいます。この記事では、メンター制度の概要、注目され始めた背景、制度を導入するメリット、導入までの流れや導入時の注意点について解説します。最後にメンター制度を導入して成功している企業の事例も紹介しますので、参考にしてください。

メンターとメンティーの違いは?

基本的なこととして、メンター制度とはどのような制度なのでしょうか。また、メンター制度で出てくる用語に、「メンター」と「メンティー」がありますが、どのような違いがあるのか見ていきます。

そもそもメンター制度とは?

メンター制度とは、年齢が近い先輩社員が新入社員や若手社員に対して支援やサポートを行う制度のことをいいます。業務上の支援やサポートだけではなく、キャリア形成、職場での不安や悩みを聞くこと、問題解決などについても支援していく役割を担っています。

サポートしてくれる先輩社員は、新入社員や若手社員にとっては年齢も近いため、相談しやすいことが特徴です。

メンターとは?

メンターとは、指導者や助言者という意味です。自分自身がお手本になって、新入社員や若手社員に育成のための指導や助言を行う人をいいます。また、キャリア形成や人間関係などに関して支援する役割もあります。

メンターは、相談にのることによってメンティーの状況を把握し、持っている能力やキャリアを形成していくためのアドバイスを行っていきます。

メンティーとは?

メンティーは、メンターから指導や助言を受ける新入社員や若手社員のことをいいます。メンターは同じ部署の先輩社員ではないことが多く、メンティーにとっては相談しやすいお兄さん、お姉さん的な存在です。部署が異なるため、職場での悩みや不満に思っていることも気軽に相談できます。

メンター制度が注目されはじめた背景は?

メンター制度が注目されるようになった背景には、新入社員や若手社員の人材育成と離職率の増加の問題があります。日本の企業において、以前は終身雇用の制度のもと、学校と同じような先輩・後輩という関係性を構築し、若手社員は先輩社員を見習いながら業務を覚えていく職場環境が定着していました。

しかし、バブル経済の崩壊後からは、それまでの終身雇用の考え方から、在籍年数や年齢に関係なく、従業員の成績や実力に応じて評価や待遇を決める成果主義の考え方へと変化していきます。

成果主義に変わって以降、「先輩・後輩」という立場から「ライバル」という立場に変わったことで、先輩社員が後輩社員を指導する風土がなくなりました。若手社員は業務や人間関係の不安や悩み、不満について相談する相手がいないために孤立してしまい、それが離職につながることになったのです。

それを解消するために、若手社員のキャリア形成や人間関係などの不安や悩みを聞いたり、問題解決を支援する相手との関係性を人為的につくったりするメンター制度が注目されています。

メンター制度を導入するメリットは?

メンター制度を導入することにより、企業には多くのメリットがあります。

  • 新入社員・若手社員の定着率が向上する
  • 社内コミュニケーションが活性化する
  • 先輩社員(メンター)の指導力の向上につながる

順番に見ていきましょう。

新入社員・若手社員の定着率が向上する

新入社員や若手社員は、組織の風土に馴染めなかったり、不安な気持ちを相談できる人が社内にいなかったりすることが多いです。周りの人がその状況に気づかないまま、自分一人で抱え込んだ状態になって離職につながる恐れもあります。

メンター制度を導入してメンターをつけることにより、新入社員や若手社員がいつでも気軽に相談しやすい環境になるため、それが安心感につながるでしょう。ストレスや不安が少なくなると、結果として定着率が上がることが制度を導入するメリットです。

社内コミュニケーションが活性化する

メンター制度では、同じ部署の先輩ではなく他の部署の先輩社員がメンターになります。相談するのが他部署の社員のため、些細な悩みや不安を相談しやすく、部署の垣根を超えた人間関係の構築も可能です。

その結果、組織の風通しが良好になり、社内コミュニケーションが活性化される効果も得られることが制度導入のメリットになっています。

先輩社員(メンター)の指導力向上につながる

メンター制度は、新入社員や若手社員を指導・サポートすることが主な目的ですが、これは、部下を育成しながら取りまとめていく管理職に求められる能力でもあります。メンターとして新入社員や若手社員を指導・サポートした経験は、自身が管理職になったときに必要とされる指導力の向上のためのスキルを積み重ねていくことにもつながるでしょう。

また、メンターとメンティーの各々が成長していけば、組織にもプラスの効果をもたらす点もメリットです。

メンター制度を導入するまでの流れは?

メンター制度を導入するにはどのように進めていけばよいのでしょうか。主な手順について解説します。

課題を整理し目標を設定する

最初に、メンター制度を導入する目的を明確にします。人事に関する課題は企業ごとに異なります。自社が取り組まなければいけない課題を整理してメンター制度の対象をはっきりさせましょう。

全体計画を立てる

メンター制度を導入する目的を明確にしたら、滞りなく制度を実施できるように制度の全体計画を立てます。定量的な目標を設定することにより、制度を導入した効果がはっきりとわかるようになります。

経営幹部から合意を得る

作成した全体計画について、制度の目的や目標、メンター制度の運用によって得られる効果、成果などを経営幹部に説明して十分に納得してもらうようにすることも重要です。

制度の運用方法や運用ルールを決める

制度を円滑に運用するために運用方法や運用ルールを決めていきます。最低限、以下のようなルールを決めておきましょう。

  • メンターとメンティーが話し合った内容についての守秘義務
  • メンタリングの中で不都合が生じたときに連絡する「相談窓口」の設置
  • メンタリングは原則として「就業時間中」に行うこと

メンタリングの期間、面談時間や面談の回数、面談方法なども決めておくとよいでしょう。

対象者(メンターとメンティー)を決める

制度の運用方法や運用ルールが決まったら、メンター、メンティーの選定を行いましょう。メンターとメンティーのマッチングがメンター制度の効果を左右します。マッチングにあたって気をつけるのは、以下のような点です。

  • メンターの経歴がメンティーの目標とするキャリアに合っているか
  • メンターがメンティーの期待する人柄や経験と合っているか
  • メンターがメンティーのキャリア形成を補強できる人物か

全社員に通知する

メンター制度は、一部の社員(メンターとメンティー)だけが直接的な関係者になります。メンタリングを行うことについて、他の社員から誤解されることがないよう、全社員に制度の導入についての周知を行います。基本的な運用方法や運用ルールについて説明しておくとよいでしょう。

事前研修を実施する

メンター、メンティーが決まったら、実際のメンタリングを実施する前に事前研修を行います。メンター制度の目的や導入意義を理解してもらい、メンター、メンティーの双方にとって満足できるメンタリングにするためです。

なお、事前研修の目的は以下のような点です。

  • メンター制度やメンタリングの正しい知識を教え、混乱や誤解をを防いで不安を解消する
  • メンタリングが、効果的で有意義なものになるよう、必要なスキルを身につける
  • メンタリングで問題が発生したときの対処法を理解しておく

事前研修で研修する項目の一例は以下の通りです。

  • メンター制度をなぜ自社に導入するのか
  • メンタリングとはどのようなものか
  • メンタリングの進め方
  • メンタリングの中で話し合うこと
  • 問題が起きた場合の対処方法

実際の運用を始める

実際の運用を始めます。メンタリングの進め方は当事者に委ねられます。運用開始導入は、メンタリングを効果的に進めるために主幹部署(人事部など)がリードするなどして進めましょう。メンターとメンティーには、定期的に報告書を提出してもらうことも進捗状況を把握するために重要です。

フィードバックを受けて改善する

メンタリングの実施期間が終了した後は、メンター、メンティーにヒアリングやアンケート調査を行うなどして、今後のメンター制度運用の参考にします。収集できた情報を元に制度の課題を抽出し、改善して今後の制度運用に活かしましょう。

メンター制度を導入する際の注意点は?

ここでは、メンター制度を実施する際の注意点について解説します。

メンティーには寄り添う

メンターは、できるだけメンティーに寄り添った対応を行います。メンターの役目は、メンティー自身が考えて答えを出すことの支援です。サポートではなく、メンティーの意見を否定せず、サポートに徹するようにしましょう。

メンターとメンティーの相性に注意する

メンタリングを開始したら、メンターとメンティーのマッチングを確認をします。事前にどれほど慎重にペアリングしても、ミスマッチを完全に防ぐことは困難です。相性が合わない場合には、組み合わせを変更するなど、柔軟に対応しましょう。

メンターのフォローを行う

メンティーを支援するためのメンター制度ですが、メンターのフォローも必要です。メンターは、新入社員や若手社員に指導を行う役割がありますが、メンター自身にも向き・不向きがあります。

メンターを行うことにより、自身の仕事に支障が出るようでは本末転倒です。事務局は定期的に面談を行うなどして、メンターもフォローするようにしましょう。

メンター制度の導入に成功した企業事例は?

厚生労働省の「女性社員の活躍を推進するための『メンター制度導入・ロールモデル普及マニュアル』」をもとに、メンター制度を実際に導入・成功している企業事例をいくつかご紹介します。

参考:女性社員の活躍を推進するための「メンター制度導入・ロールモデル普及マニュアル」|厚生労働省

キリン株式会社

キリン株式会社では、女性の活躍推進やキャリア支援を目的に、公募によるメンバーで委員会を組織して女性社員の意識改革を推進しています。その中心的な役割を担っているのがメンター制度で、メンティーを経験した人が次のメンターになる「メンタリング・チェイン」を展開しています。

この取り組みによって、メンタリング経験者を増やすことができ、社内に女性の活躍推進の理解者と支援者が増えました。また、メンター同士が後輩のキャリア支援を相談し合うといったメンタリングの輪も広がっています。

その結果、女性社員の離職率低下や女性0人のポストへの女性の登用、女性社員の活躍支援を重要視する意識の向上という成果につながりました。

株式会社オークローンマーケティング

株式会社オークローンマーケティングでは、新入社員が職場に早期定着し順応すること、キャリアイメージを形成すること、社内ネットワークづくりを目的にメンター制度を導入しています。

メンターは、管理職への登竜門的な位置づけとして公募しています。メンター同士の情報交換、情報共有する育成懇談会の開催やメンターのために「メンタリング虎の巻」を作成してノウハウの継承も行っています。

メンター制度の導入後は離職率が低下しました。また、部署の垣根を超えたメンター同士の連携も強化され、メンター経験を持つ女性マネージャーも増えています。

住友スリーエム株式会社

住友スリーエム株式会社では、全社プロジェクトの一つとして「新しい企業文化の創造」をテーマにメンター制度を導入しました。メンタリングについては、メンター候補のプロフィールをイントラネットで公開し、必要性を感じている社員が自発的に申し込める体制を整えています。

メンター・メンティーの活動について、メンター制度を主管する人財開発部は、組み合わせの報告だけ受けてあとは当事者に任せる運用方法です。人材育成の重要な手段としてメンター制度が社内で認識されており、社員同士で育成し合う文化が定着しています。

メンター面談シートのテンプレート(無料)

以下より無料のテンプレートをダウンロードしていただけますので、ご活用ください。

メンター制度を活用して若手社員の早期離職を防ぎましょう

導入の目的を明確にして適切な運用を進めていけば、メンター制度はメンター・メンティー双方にとって、指導力・キャリア形成の面で非常に有効な手段です。新入社員や若手社員にとっては、メンターに不安や悩みを話せる点では安心感につながるため、離職に至るプロセスを減らす手段にもなります。

また企業にとっては、組織の風通しが良好になり、社内のコミュニケーションが活性化するメリットもあります。メンター制度を活用して、若手社員の離職を防ぎ、風通しのよい組織風土を作っていきましょう。


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