• 更新日 : 2023年11月7日

源泉徴収税額表の甲欄・乙欄・丙欄とは?年末調整の基礎知識

年末調整では、会社が従業員に毎月支払う給与から源泉徴収してきた所得などを、年末に精算して過不足を調整します。その源泉徴収する税額を決定するのが、国税庁の「給与所得の源泉徴収税額表」です。源泉徴収税額表には、甲欄、乙欄、丙欄という記載欄がありますが、どのような区分なのでしょうか。今回は、各欄の意味や見方について詳しく解説していきます。

源泉徴収税額表の甲欄・乙欄・丙欄とは?

国税庁では、毎年、「源泉徴収税額表」を公開しており、これに基づいて給与などを支払うときに源泉徴収をする「所得税及び復興特別所得税」の額を求めることになります。源泉徴収税額表は、給与所得については、「月額表」と「日額表」の2種類があり、従業員の給与の支払方法によってどちらを使用するかが決まります。

いずれも所得税の源泉徴収の際に従業員の事情によって税額を計算するための税区分が設けられており、月額表では「甲欄」「乙欄」、日額表では「甲欄」「乙欄」のほかに「丙欄」があります。税区分のそれぞれの意味を説明する前に月額表と日額表がどのような場合に使用されるのか、理解しておくことが大切です。

月額表は、基本的に従業員の給与の支払方法が月ごとの場合、つまり月給の場合に使用する税額表です。ただし、変形として、半月ごと、あるいは10日ごとに支払うものや、月の整数倍の期間ごとに支払うものも含まれています。

一方、日額表は、基本的に毎日支払う場合、もしくは日雇賃金の場合に使用する税額表です。ここでいう日雇賃金は、いわゆる日雇労働者が労働した日または時間を基準にして算出され、かつ労働日ごとに支払を受ける給与を意味しています。

賃金日額は、労働した日以外の日に支払われた場合も日ごとに算定していれば、該当します。ただし、1ヵ所の勤務先から継続して2ヵ月を超えて給与などが支払われた場合には、その2ヵ月を超える期間に該当する部分に支払われるものは含まれないことに注意が必要です。

日額表でも変形として、週ごとに支払うもの(日雇賃金を除く)、日割りで支払うもの(日雇賃金を除く)も含まれています。表の名称から、月給は月額表、日給は日額表というイメージですが、週払いの場合は、日額表を用いるということです。

日額表を用いて日ごとに支払われる給与から源泉徴収する額を計算し、その1週間分の合計が実際の源泉徴収税額となります。

なお、賞与については「賞与に対する源泉徴収税額の算出率の表」を使用しますが、前月中に給与の支払がない場合や賞与の金額が前月中の給与の10倍を超える場合には、「月額表」を使用します。

では、次に月額表と日額表にある甲欄、乙欄、丙欄の税区分の意味についてみていきます。

甲欄の意味は?

従業員が「給与所得者の扶養控除等申告書」を提出している場合には、税区分として甲欄が適用されます。税法の上では、日本国内で給与支給を受ける居住者は、源泉控除の対象となる配偶者や扶養する親族の有無にかかわらず、原則、扶養控除等の申告を行う必要があります。

扶養控除等の申告がない場合には、源泉徴収の際に受けることが可能な諸控除が受けられないことになります。また後述する年末調整も行われません。

パートやアルバイトを雇用している場合は、所得税の対象とならない年収103万円以下であっても、「給与所得者の扶養控除等申告書」を提出してもらい、甲欄を使用することになります。

乙欄の意味は?

従業員が「給与所得者の扶養控除等申告書」を提出している場合には、甲欄を適用しますが、それ以外の従業員には税区分として乙欄が適用されます。

法律上の扶養控除等申告書の勤務先への提出期限は、その年における初めての給与支給日の前日となります。しかし、会社が従業員に対して申告書の配布を忘れていたり、従業員が配布された申告書を提出し忘れたりした場合には、本来であれば甲欄を適用すべきものが乙欄として扱われることになります。

近年では、働き方改革により兼業や副業が推進されていますが、会社が兼業や副業を認め、他社との兼業従業員になっているケースも見られます。2ヵ所以上の企業から給与を支払われている場合には、扶養控除等申告書の提出がある従業員に支払う給与を主たる給与とし、甲欄を適用します。

そのため、実際には自社における給与がメインであっても、扶養控除等申告書を提出していないのであれば、その従業員へ支払う給与に対しては、乙欄が適用されることになります。従業員の兼業や副業を認めている場合には、税区分の適用について十分な注意が必要です。

丙欄の意味は?

丙欄は、基本的には日雇賃金に対して使用する税区分です。ただし、パートやアルバイトであっても、日給や時間給で支払う給与を雇用契約であらかじめ雇用契約期間が2ヵ月以内と決めている場合は、丙欄を使用して税額を決定します。

源泉徴収税額表の甲欄・乙欄・丙欄の見方

実際の源泉徴収税額表の見方について解説します。

まずは月額表からみていきましょう。

令和5年分 給与所得の源泉徴収税額表

出典:令和5年分 源泉徴収税額表|国税庁

月額表は、ご覧のように次の3つに区分されています。

  1. 「その月の社会保険料控除後の給与等の金額」
  2. 甲欄
  3. 乙欄

具体的な税額を算出するには、次のような段階を踏むことになります。

まず「その月の社会保険料控除後の給与等の金額」の欄で実際に支払った社会保険料控除後の給与の金額を当てはめます。

次に同じ行(オレンジ色の囲み)の甲欄または乙欄に記載されている税額を見つけます。例えば、給与が88,500円の場合で扶養親族がいない場合を想定した場合、「その月の社会保険料控除後の給与等の金額」の欄では、88,000円以上89,000円未満に該当します。

「給与所得者の扶養控除等申告書」を提出している従業員に支払う給与である場合は、甲欄を使用しますので、同じ行(オレンジ色の囲み)の扶養親族等の数が「0」の欄をみると130円であることがわかります。つまり、税額は130円ということになります。

また、同じ給与でも「給与所得者の扶養控除等申告書」を提出していない従業員に支払う給与の場合、乙欄を使用します。88,000円以上89,000円未満と同じ行(オレンジ色の囲み)をみると、税額は3,200円となっており、この金額が源泉徴収税額です。

次に日額表をみてみましょう。

令和5年分 給与所得の源泉徴収税額表 日額表

出典:令和5年分 源泉徴収税額表|国税庁

日額表は、4つに区分されています。

  1. 「その日の社会保険料控除後の給与等の金額」
  2. 甲欄
  3. 乙欄
  4. 丙欄

こちらも月額表の場合と同様の方法で、甲欄、乙欄、丙欄に該当する給与について源泉徴収税額を決定します。

税額表の使い方自体は難しくはありません。あらためて、重要なポイントを整理しておきます。

  1. 「その日の社会保険料控除後の給与等の金額」を正確に把握する。
  2. 健康保険料・介護保険料厚生年金保険料、雇用保険料等の社会保険料も源泉徴収されることになっています。これらを控除したあとの給与額を算出しなければなりません。
  3. 従業員の給与の支払方法に応じて月額表、日額表を使い分ける。
  4. 税区分(甲欄、乙欄、丙欄)によって源泉徴収税額を決定する。

甲欄については、扶養親族等の人数で最終的な源泉徴収税額が決まります。

甲欄・乙欄・丙欄は年末調整とどう関わる?

すでに述べたように、税区分のうち、甲欄が適用される場合、従業員は会社に「給与所得者の扶養控除等申請書」を提出しており、年末調整の対象となっています。つまり、年末調整することで会社が従業員に毎月支払う給与から源泉徴収してきた所得等を、清算し、過納分については還付されるわけです。

では、税区分の理解が不十分な場合や、必要な手続を怠った場合はどのような問題があるのでしょうか。

甲欄・乙欄・丙欄を間違って理解すると損をすることはある?

甲欄、乙欄、丙欄の税区分を間違うと、源泉徴収すべき税額が違ってくることがあります。原因はいくつか考えられます。前述したケースを取り上げてみましょう。

年末調整で必要な「給与所得者の扶養控除等申告書」は、会社から従業員に配布しますが、従業員が必要事項を記載して勤務先に提出する法的な期限がありました。その年の初めての給与支給日の前日です。

ところが、年末調整は年末に手続をすればよいという認識で、従業員からの回収を怠った状態で税区分を甲欄で源泉徴収してしまったとします。「給与所得者の扶養控除等申告書」を提出しなかった場合、税区分は乙欄でなければなりません。

例えば、学卒の新入社員(扶養親族なし)で社会保険料控除後の初任給が20万円であった場合、月額表に当てはめるとどうなるのでしょうか。

社会保険料等控除後の給与等の金額

出典:令和5年分 源泉徴収税額表|国税庁

上記の月額表をみると、「その月の社会保険料控除後の給与等の金額」では、「199,000円~201,000円」に該当します。次に甲欄を適用すると、扶養親族がいない場合は4,770円です。この例では、会社はこの金額で毎月源泉徴収しました。

ところが、実際には「給与所得者の扶養控除等申告書」を提出していないので乙欄が適用されるはずです。月額表をみると、税額は20,900円となっています。つまり、月額での差額は、20,900円-4,770円=16,130円、ということになります。

税務調査が入って指摘されると、当初に遡って納付しなければなりません。仮に8ヵ月間にわたって乙欄を適用していたとすると、遡及して納付しなければならない税額は、129,040円です。

新入社員でなく、中堅社員であれば、それだけ給与が高いわけですから、その税額はかなりの高額になるでしょう。源泉徴収すべき所得税を正当な理由なく、期限内に納付しなかった場合には不納付加算税も課税されます。

源泉徴収税額表の甲欄・乙欄・丙欄を理解しよう!

源泉徴収税額表の月額表と日額表、そして税区分である甲欄、乙欄、丙欄の重要性について説明してきました。年末調整との関係についても理解いただけたのではないかと思います。

勘違いによる税区分の間違いはもちろんですが、「給与所得者の扶養控除等申告書」の回収し忘れによる税区分の適用には十分に注意しましょう。

よくある質問

甲欄・乙欄・丙欄の違いについて教えてください。

甲欄は「給与所得者の扶養控除等申告書」を提出している人に支払う給与、乙欄はそのほかの人に支払う給与、丙欄は日雇賃金に適用されます。詳しくはこちらをご覧ください。

甲欄・乙欄・丙欄は年末調整とどう関わりますか?

「給与所得者の扶養控除等申告書」を提出している人に適用される甲欄について、年末調整による所得控除が生じます。詳しくはこちらをご覧ください。


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