- 更新日 : 2025年1月17日
労基署の臨検とは?書類の確認ポイント、是正勧告があった場合の対応
「立ち入り検査で何を見られるのか分からない」
「準備が整っていなかったらどうしよう」
労基署の臨検に対して不安を抱く人事労務担当者もいるでしょう。
臨検は企業の問題点を明らかにし、改善するための機会であり、適切な準備と対応を知れば、不安を軽減し信頼を築けます。
この記事では、臨検の流れや必要書類、是正勧告への具体的な対応方法を解説します。
最後まで読んでいただければ、不安を解消し安心して臨検に臨むための知識を身に付けられるでしょう。
目次
労基署の臨検とは?
臨検とは、労働基準監督署(労基署)が実施する監督活動のひとつです。
読み方は「りんけん」であり、正式名称は「臨検監督」です。
労働基準法第101条1項に基づき、企業が労働基準法や労働安全衛生法などを遵守しているかを確認するための立ち入り検査を行います。
労働者の権利擁護のため、具体的に以下の点がチェックされる対象です。
- 労働条件(労働時間、休憩、休日、賃金など)が法令に準拠しているか
- 安全衛生管理体制の整備状況
- ハラスメントや不当解雇の有無
臨検によって違反が確認された場合は、内容に応じて是正勧告や指導票の交付を受け、違反事項の改善が求められます。
違反が悪質であると判断した場合、刑事処分に至る可能性があります。
労基署の臨検は拒否できる?
労働基準監督署の臨検(立ち入り検査)は、原則として拒否することはできません。
臨検は、労働基準法第101条に基づく正当な行政手続きです。
監督官には事業所への立ち入りや帳簿類の調査、労働者への聞き取りなどの権限が認められています。
正当な理由なく拒否した場合、労働基準法第120条に基づき、6か月以下の懲役または30万円以下の罰金が科される可能性があります。
ただし、責任者の不在などやむを得ない場合には、日程調整を相談することが可能です。
日常的に法令を遵守し、必要書類を整理しておくことで、臨検にも適切に対応できます。
労基署の臨検が行われるタイミング
労基署による臨検は、状況に応じて以下の4種類に分けられます。
- 定期監督
- 申告監督
- 災害時監督
- 再監督
それぞれの実施基準やタイミングについて詳しく解説します。
定期監督:定期的に実施
定期監督は、労働基準監督署が計画的に行う臨検です。
特定の地域や業種を対象に、労働条件や安全衛生の遵守状況を確認する目的で実施されます。
実施時期は対象となる企業によってさまざまです。
主に建設業や製造業のような労働災害の多い業界や、法令違反が懸念される事業所に重点が置かれます。
調査対象はランダムに選ばれる場合が多く、事前通知がないケースもあります。
申告監督:労働者から申告があった時
申告監督は、労働者や第三者からの申告を受けて実施される臨検です。
申告内容には、未払い賃金、長時間労働、ハラスメント、不当解雇などが含まれます。
実施タイミングは、申告内容が確認された後、速やかに行われるのが一般的です。
申告者のプライバシー保護が徹底されるため、匿名の申告であっても実施されます。
対象事業所にとっては、事前に具体的な違反が指摘されるため、是正勧告や罰則のリスクが高まるケースが多いです。
災害時監督:労働災害が発生した時
災害時監督は、労働災害が発生した際に、その原因調査や再発防止を目的とした立ち入り調査です。
労働災害発生後、監督官が迅速に現場へ入り、安全管理体制や違法行為の有無を調査します。
事業所は労働災害を防止するために、労働安全衛生法に基づいた安全管理に努めることが大切な義務です。
特に死亡災害や重篤なケースでは、刑事罰の対象となることもあるため、調査は厳格に行われます。
災害発生時は即時対応が求められるため、事業者は日常的に労働安全衛生体制を整備しておくことが大切です。
再監督:是正勧告があった後
再監督は、過去の臨検で指摘された是正勧告が適切に対応されているかを確認するために実施されます。
是正勧告の発令時に期限が設定され、期日後に再度臨検が実施されるケースが一般的です。
再監督では、是正内容が十分でないと判断された場合、新たな指導や罰則が科されることもあります。
事業者は、過去の指摘内容を早急かつ適切に解決することが重要です。
再監督の実施は、職場環境の整備を通して、事業所の改善意識を高める効果があります。
労基署の臨検の流れ
労基署による臨検は、以下の流れで進められます。
- 臨検の通知(または無通知)
- 労働基準監督官による事業所の訪問
- 帳票や労働環境の確認
- ヒアリング
- 臨検の結果報告(指導点是正勧告)
- 再臨検や違反の対応(是正勧告の場合)
①臨検の通知(または無通知)
臨検は事前に通知が行われる場合と、無通知で実施される場合があります。
通知される場合、監督日や持参すべき書類が記載された文書が届きますが、無通知の場合は、監督官が抜き打ちで訪問することもあります。
特に申告監督や災害時監督では無通知で行われることが多いため、事業者は日常的に法令を遵守し、書類を整備しておくことが重要です。
②労働基準監督官による事業所の訪問
労働基準監督官が事業所を訪問し、臨検を開始します。
臨検を実施する際、事業所の代表者または労務管理の責任者が立会いが必須です。
立会人は監督官との質疑応答を行い、必要に応じて書類や情報を開示します。
代表者や労務責任者が不在の場合、後日改めて再訪される可能性があるため、迅速に対応できる体制を整えておく必要があります。
③帳票や労働環境の確認
監督官は、労働契約書、就業規則、タイムカード、賃金台帳などの帳票を確認します。
実際に現場へ出向き、現場の労働環境や安全設備が適切かどうかの視察を行います。
もし帳票の不備や労働環境の問題点があれば、その場で指摘される場合も多いです。
特に、労働時間や賃金関連の記録は重要視されるため、正確に管理しておく必要があります。
④ヒアリング
監督官は、代表者だけでなく、労働者に対してもヒアリングを行うことがあります。
労働者へ労働条件や職場環境についての聞き取り調査を行い、法令違反がないかを確認します。
帳票や書類と照らし合わせ、労働者からの申告内容が正確かどうかもチェックされるポイントです。
ヒアリングは、基本的にプライバシーが守られる形で行われるため、労働者は安心して対応できます。
⑤臨検の結果報告(指導・是正勧告)
臨検が終了すると、労働基準監督官から結果が報告されます。
報告は当日に直接行われるケースと、後日監督署から通知されるケースが一般的です。
問題が特に見つからなければ報告のみで完了しますが、法令違反が確認された場合は是正勧告書が交付されます。
是正勧告書には、具体的な改善指示とその期限が記載されており、事業者はこれに従って速やかに対応する必要があります。
軽微な違反の場合には指導票が交付されますが、重大な場合には使用停止命令書が発行され、行政処分の対象となることもあるため注意が必要です。
⑥再臨検や違反の対応(是正勧告の場合)
是正勧告を受けた場合は、指定された期限までに指摘事項を改善することが求められます。
期限後、再び臨検が実施され、改善内容が適切に履行されているかが確認されます。
もし改善が不十分である場合、追加の指導や罰則が科されるため、注意しましょう。
さらに、悪質なケースでは書類送検に発展することもあるため、速やかで誠実な対応が重要です。
是正勧告に対して適切に対処することで、法令順守を徹底し、企業の信頼性を保てます。
労基署の臨検の必要書類とチェックポイント
労基署の臨検において、重点的にチェックされるポイントや書類を理解しておくことは重要です。
ここでは、臨検の必要書類とチェック項目について詳しく解説します。
事前に書類を整理し、職場環境を見直しておきましょう。
臨検の必要書類
あらかじめ労基署から臨検実施の通知があった場合は、事前に必要書類を準備しておくよう求められることもあります。
必要書類は検査内容や事業所ごとに異なりますが、一般的にチェックされる書類は以下のとおりです。
書類の内容が事実と相反していないかなどの正確性が重要なポイントです。
書類ごとに法律で定められた保管期間は異なるため、法律に基づいた保管状況の妥当性も求められます。
臨検のチェックポイント
労基署による臨検の主なチェック項目は以下のとおりです。
労働時間の管理 |
|
---|---|
賃金の支払い |
|
就業規則 |
|
安全衛生管理 |
|
雇用契約 |
|
書類や職場環境の整備に不備が確認された場合、是正勧告や指導の対象となる可能性があります。
そのため、日頃から適切な管理をしておくことが重要です。
企業は労基署の臨検にどのような対応をしたらよいか
臨検は抜き打ちで行われることもあるため、対応のポイントや事前準備について理解しておくことが重要です。
臨検の対応の際に踏まえるべきポイントは以下のとおりです。
- 書類の用意・確認
- 立会人をあらかじめ決める
- 誠実な態度を示す
書類の用意・確認
労基署の臨検に備えるため、必要な書類をあらかじめ整備しておきましょう。
具体的には、以下の書類が求められるケースが多いです。
- 従業員名簿
- 労働契約書
- 賃金台帳
- 出勤簿
- 就業規則
- 36協定関係の書類
- 安全衛生管理に関する書類
各書類が最新かつ正確なものであるかどうかを確認することが重要です。
必要な書類は法律で保存期間が定められているため、適切に保管しなければなりません。
また、書類の種類によって、定められた保存期間が異なる点にも注意しましょう。
記録の不備や不正確なデータは指摘されるリスクが高いため、事前に十分な点検をしておくことも大切です。
立会人をあらかじめ決める
臨検に際しては、会社を代表して監督官とのやり取りに対応できる立会人を事前に決めておくことが重要です。
一般的には労務人事の責任者や管理職が担当します。
立会人は監督官の質問に迅速かつ適切に回答し、必要な書類を提示するため、責任重大です。
立会人に選出される人は、日頃から労働法令や職場の運用状況について理解しておく必要があります。
不在時の代行者も設定しておくと、臨検対応がスムーズになるでしょう。
誠実な態度を示す
臨検が実施される際は、事業者が誠実で協力的な態度を示すことが重要です。
監督官からの質問に対して事実を正確に伝え、書類提出や現場視察の要請に迅速に応じましょう。
不明な点があっても憶測で回答せず、追って正確な情報を提示する旨を伝えるのが適切です。
誠実な対応は監督官との信頼関係を築くだけではなく、無用なトラブルを回避することにも繋がります。
不適切な対応や拒否をすることは、違法と判断されて罰則が科される可能性もあるため、注意が必要です。
労基署から是正勧告が行われた場合
臨検の結果、実際に是正勧告を受ける事業所もあります。
労基署から是正勧告を受けた場合、迅速な改善が求められます。
まずは是正勧告書の内容を詳細に確認し、どのような問題が指摘されているのかを正確に把握しましょう。
その後、改善策を検討し、社内全体で実行計画を立てることが重要です。
是正勧告書には対応期限が記載されているため、期限内に完了することは必須です。
自社だけでの対応が難しい場合、社会保険労務士や労働法に詳しい弁護士などに相談しましょう。
専門家としての具体的なアドバイスや是正報告書の作成、監督署との調整などのサポートをしてくれます。臨検時の立会い依頼も可能です。
また、地域の商工会議所や経営者団体から助言を得られる場合があります。
指摘内容に不服な場合は、監督署に直接問い合わせて確認し、必要に応じて是正期限の延長を申請することも可能です。
臨検対応のポイントを踏まえて誠実な姿勢で信頼関係を築きましょう
労基署による臨検は、労働基準法に基づく監督行為であり、事業所が法律を遵守して正当に運営しているかを確認する目的で実施されます。
事業所は臨検を拒否できず、正当な理由なく拒否した場合、罰則を科せられる可能性があります。
臨検には定期監督・申告監督・災害時監督・再監督の4種類があり、それぞれ要件やタイミングが異なるのが特徴です。
臨検の対応に際して、事前に立会人の取り決めや必要書類の準備をしておくことでスムーズに行えるでしょう。
是正勧告を受けた場合は、迅速に改善への対応が求められます。
労基署の臨検に適切に対応することで、事業所の信頼性と労働環境の健全性を高めるきっかけとなるでしょう。
※ 掲載している情報は記事更新時点のものです。
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