• 作成日 : 2022年12月16日

転職における厚生年金・国民年金の手続き – 空白期間があったらどうなる?

公的年金である厚生年金や国民年金は、現役時代に保険料を負担し、老後は負担に応じた年金を受給できる制度です。

保険料の納付期間に空白がなければ相応の年金額になりますが、途中で退職して空白期間があれば年金額が少なくなる可能性があります。

本稿では転職・起業した場合を想定し、必要な公的年金の手続きについて解説します。

転職の際に厚生年金・国民年金の手続きはどうする?

長い人生では、予期せぬ出来事が起こることもあります。勤務先が経営不振でリストラされることもあれば、自らの意思で転職することもあるでしょう。

雇用される会社員ではなく、起業して経営者になることも考えられます。

そのような状況になった場合、新しい環境に対応することで精一杯で、年金の手続きはおざなりになりがちです。

しかし、年金は将来の生活において不可欠であるため、どのような手続きが必要なのか知っておくことが大切です。

説明の前に、公的年金の仕組みを押さえておきましょう。公的年金は、1階部分は全国民に共通の国民年金(基礎年金)、2階部分は会社員・公務員が加入する厚生年金という2階建て構造になっています。

自営業者は1階部分の国民年金だけですが、会社員は2階部分の厚生年金に加えて1階部分の国民年金にも加入しています(第2号被保険者)。保険料は厚生年金の分しか納付(源泉徴収)しないため、国民年金は関係ないと考えている会社員の方もいますが、そうではありません。

会社員の場合は、保険料を納付した厚生年金制度から国民年金制度に基礎年金の財源が拠出されます。会社員に扶養されている配偶者は国民年金の第3号被保険者であり、同様に国民年金保険料の納付義務はありません。

離職期間がなく転職先が株式会社などの法人の場合

以上を踏まえて、まずは在職中に転職先を探し、離職後にブランクなく転職する場合について考えてみましょう。

例えば、着々と転職の準備をして会社には1ヵ月以上前に退職を告げ、その間に転職先が決まって月末に退職。翌月初日から入社した場合、空白期間は生じません。

厚生年金保険については、転職先で被保険者資格取得届を年金事務所に提出しますが、その際に基礎年金番号あるいはマイナンバーが引き継がれ、年金の記録上は空白期間が生じません。

離職期間がなく退職後に個人事業主や雇用主になる場合

次に、在職中から計画的に独立する準備を進め、退職と同時に起業した場合を考えてみましょう。

会社員でなくなるため、2階部分の年金である厚生年金の被保険者ではなくなり、自営業者として1階部分の国民年金だけに加入することになります。

退職日の翌日から14日以内に、国民年金の第1号被保険者となる手続きを行う必要があります。

窓口は住所地の市区町村役場で、基礎年金番号通知書または年金手帳等の基礎年金番号を明らかにすることができる書類を提示します。

扶養する配偶者がいる場合は、本人が第2号被保険者でなくなったことで配偶者も第3号被保険者の資格を喪失し、同時に第1号被保険者になります。

本人と同様に、第1号被保険者の資格取得手続きが必要です。

退職後に空白期間があり転職先が株式会社などの法人の場合

在職中に転職先探しを行わなかった、あるいは条件に合うところが見つからなかったなどの理由で退職後に無職の期間があり、その後転職した場合はどうでしょうか。

この場合も、一旦会社を退職したことで厚生年金の被保険者でなくなり、同時に国民年金の第1号被保険者になります。

起業して個人事業主になった場合などのように、退職日の翌日から14日以内に国民年金の第1号被保険者となる手続きを行う必要があります。

年金の加入期間(被保険者期間)は月単位で計算するため、ブランクが生じないよう速やかに手続きを行うことが大切です。

退職後職に就かない場合

会社を退職後、自分を見つめ直すためにしばらく海外を放浪したり、あえて職に就かなかったりすることもあるでしょう。

そのような場合も厚生年金の被保険者でなくなり、国民年金の第1号被保険者になるため、所定の手続きを行い、国民年金保険料を納付する義務が生じます。

なお、海外在住者となる場合は国民年金の国内居住要件に該当しなくなるため、第1号被保険者ではなくなります。

ただし将来帰国する予定がある場合は、任意加入という制度があります。日本での老後生活のために、手続きを行って保険料を納付するとよいでしょう。

保険料の納付方法は、国内にいる親族が本人の代わりに納める方法と、日本国内の預貯金口座から引き落とす方法があります。

転職後の厚生年金・国民年金はいつから支払う?

転職した場合、保険料はいつから納付することになるのでしょうか。

離職期間がなく退職後に個人事業主や雇用主になる場合

退職後、ブランクなくすぐに起業した場合は、退職した翌月以降に国民年金保険料を納付することになります。

退職後の転職先が株式会社などの法人の場合

退職後に会社員として転職する場合は、引き続き厚生年金の被保険者となり、引き続き国民年金に第2号被保険者として加入します。

納付するのは厚生年金保険料だけですが、退職日と入社日によって徴収する企業が変わります。

厚生年金保険の保険料は、在籍する会社が退職翌日の前月分までを徴収します。月末の前日までに退職した場合は前月分まで、月末日に退職した場合は退職当月分までが徴収され、会社を通じて納付されます。その後は、転職先の会社が徴収して納めます。

転職後の厚生年金・国民年金までに空白期間があった場合

転職後に無職の期間があっても、国民年金の第1号被保険者の資格取得手続きをしなければなりませんが、失念した場合は保険料納付期間に空白が生じてしまいます。

このような場合は、どのような扱いになるのでしょうか。

空白期間の未払い分はどうなる?

当然ながら、保険料の未納期間は将来の年金額に反映されません。年金事務所は、未納期間がある被保険者には「国民年金未納保険料 納付勧奨通知書(催告状)」を送付しています。

国民年金保険料納付書で、金融機関・郵便局・コンビニエンスストアなどで納付します。納付書を紛失した場合は、年金事務所で再発行してくれます。

経済的に保険料の納付が難しい場合は国民保険料の免除制度があるので、所定の手続きを行えば免除を受けることも可能です。

空白期間があると将来もらえる年金額は減る?

保険料の納付に空白期間があれば、将来の年金受給額は少なくなります。

国民年金は1階部分の定額年金であり、保険料の納付期間に応じて年金額を計算します。会社勤めで厚生年金に加入していた分は、将来在職中の給与額を基準として報酬比例で計算され、2階部分の報酬比例部分として支給されます。

無職の期間があれば、その間は2階部分の厚生年金には加入していないため、厚生年金保険料の納付義務はありません。しかし、1階部分の国民年金では第1号被保険者であり、その間納付しなければ年金が減るだけでなく、納付期間が10年に満たなければ受給権自体がなくなります。

なお、保険料の免除を受けた期間の保険料については、後で納付(追納)することにより、老齢基礎年金の年金額を増やすことができます。

転職の際の厚生年金・国民年金の手続きを知っておこう!

転職や起業した場合を想定し、必要な公的年金の手続きについて解説しました。

転職や起業の準備で多忙だからといって必要な手続きを怠ると、将来の年金支給額に影響を及ぼすおそれがあります。

転職の際の厚生年金・国民年金の手続きについては、その重要性をしっかり認識しておきましょう。

よくある質問

転職の際の厚生年金・国民年金の保険料支払いは、どうなりますか?

引き続き会社員となる場合、厚生年金保険料は会社が徴収して納付しますが、起業した場合は自分で国民年金保険料を納めます。詳しくはこちらをご覧ください。

転職後、厚生年金・国民年金の保険料はいつから支払いますか?

国民年金保険料は退職した翌月以降に納付することになり、厚生年金保険料は会社が徴収して納付します。詳しくはこちらをご覧ください。


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