- 更新日 : 2024年10月22日
タイムカードの押し忘れ・打刻忘れを防ぐには?NG対応と防止策を解説
タイムカードの押し忘れは給与計算作業に影響を与え、給与計算担当者の負担も大きくなります。また、従業員の正確な労働時間の把握が困難になり、労務管理にも支障が出ます。
今回はタイムカードの押し忘れの理由、その対策について解説していきます。
目次
タイムカードの押し忘れ・打刻忘れの理由
タイムカードの打刻忘れに多いとされる主な原因は、以下のとおりです。
打刻機がわかりにくい場所に設置されている
出退勤時に打刻機が目に入りにくい場所に設置されていると、タイムカードの押し忘れが発生しやすくなります。たとえ打刻機が適切な位置にあっても、その周辺に物が置かれていると、従業員が打刻機に気づかず押し忘れてしまうことがあるでしょう。これを防ぐためには、打刻機を目立つ場所に設置し、周囲の視界を妨げるものを撤去することが効果的です。また、従業員の動線に配慮して、打刻しやすい環境を整えましょう。
打刻機の近くにトイレや休憩室がある
トイレや休憩室の近くに打刻機が設置されている場合、従業員が打刻機があることに気づいていても、先にトイレや休憩室を利用し、その後に打刻しようと考えることがあります。しかし、そのまま忘れてしまうケースが少なくありません。このような状況が、打刻忘れの原因となることがあります。これを防ぐためには、打刻機を通路の目立つ位置に設置するなど、打刻しやすい環境を整えることが重要です。
始業前から頭の中が仕事のことしか考えられなくなってしまっている
始業前に、その日の業務内容や準備、予定の確認に意識を集中させすぎてしまい、タイムカードの打刻を忘れる原因になることがあります。このような状況では、他のことに気を取られているため、打刻が後回しになり、最終的に忘れてしまうことが起こりがちです。これを防ぐためには、出社した直後にまず打刻するという習慣を徹底することが有効でしょう。
タイムカードの押し忘れによる欠勤・減給は違法か?
タイムカードの打刻を忘れたからといって、打刻をしていない間を欠勤扱いにする、もしくはその分の給料を減らすという行為は違法となります。タイムカードはあくまで従業員の勤務時間を管理するためのツールに過ぎません。従業員が打刻を忘れたからといって、その分の給料を支払わなくてもよいということにはならないのです。
なお、タイムカードの打刻忘れに対して欠勤扱いや減給をするというペナルティを課している職場も散見されますが、実際に勤務していたにもかかわらず、タイムカードを押し忘れたというだけで労働の対価である賃金を支払わないのは、労働基準法第24条の「賃金全額払いの原則」に違反する可能性があります。
一方で、何度注意しても打刻忘れが改善されなかった場合、職場のルールを守らなかったとして懲戒処分である減給処分にすることは可能です。この場合は必ず就業規則にルールを定めておきましょう。
タイムカードの押し忘れが起きた後の正しい対応方法
従業員によるタイムカードの押し忘れが発生した場合は以下のような対応をしましょう。
従業員に押し忘れが発生した経緯と勤務状況を確認する
まずは打刻忘れを起こした従業員に対して、打刻を忘れてしまった経緯と勤務状況を確認しましょう。「なぜタイムカードを押し忘れてしまったのか?」という理由を確認することで、今後の改善策にもつながります。特に打刻忘れが頻繁に起こる場合、その従業員ではなく仕組みに問題がある可能性も考えられます。
また、当該従業員の勤務状況もしっかりと把握しておきましょう。
従業員の勤務状況を記録し、給与計算を行う
従業員に対する聞き取りが終わったら、勤務状況を記録して給与計算時にそれを反映させましょう。タイムカードに記録が残っていないと給与計算にミスが発生し、後々トラブルに発展する恐れもあります。
再発防止策を検討・実施する
再度当該従業員もしくは他の従業員が打刻忘れをしないよう対策を検討しましょう。職場全体で打刻忘れが頻発している場合、先ほども述べたようにタイムカードの置き場や打刻するまでの流れなど、仕組みに大きな問題がある可能性が考えられます。
一方で特定の従業員のみが頻繁に打刻をし忘れる場合は、その従業員の行動や意識に問題がある可能性が考えられます。しっかりと本人と話し合って今後の再発防止策を考えましょう。これまで再三にわたって対応策を実施した、注意をしたのにもかかわらず改善されない場合、あるいは打刻忘れによって業務に支障をきたした場合などは、減給処分などのペナルティも含めて検討する必要があるかもしれません。
タイムカードの押し忘れを減給処分とする際の注意点
タイムカードの打刻忘れを理由として減給処分を行うこと自体は可能です。ただし、以下のようなルールを守った上で実際に処分するかどうかを慎重に検討しましょう。
就業規則に減給処分に関するルールを盛り込む
まずは就業規則にタイムカードの打刻忘れや不正打刻を行った場合に懲戒処分の対象となる旨を記載しておきましょう。就業規則に定めがないと減給処分ができない可能性が大きいです。
減給処分の妥当性を検討する
例えば、1~2回程度で減給処分を下すのはあまりにもペナルティとして重すぎるといえるでしょう。一般的には何度も打刻忘れが発生してそのたびに注意し、始末書も書かせても改善の兆しが見られなかった場合などに、ようやく懲戒処分が認められます。
法的な規制を遵守する
減給処分は度を過ぎてはいけません。労働基準法第91条では「1回あたりの減給処分の額は平均賃金の1日分の半分まで」「総額は1賃金支払期における賃金の総額の10分の1を超えてはいけない」と定められています。
平均賃金とは、原則として事由の発生した日以前3カ月間に、その従業員に支払われた賃金の総額を、その期間の総日数(暦日数)で除した金額です(労働基準法第12条)。例えば、平均賃金1万円の従業員を減給処分にする場合、平均賃金の1日分の半分までであり、最大で5,000円までの減給となります。
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タイムカードの押し忘れを防ぐ対策
ここでは、タイムカードの打刻忘れが多い場合の対策について例を挙げて見ていきます。
打刻機の置き場所を工夫する
まず、打刻機の置き場所を見直してみましょう。出退勤時に打刻機が目に入りにくい場所に置かれているために、打刻忘れが多くなっている場合がよく見受けられます。従業員の目に入りやすい場所であるかどうかを意識して設置してみましょう。
ただし、人が多く通る場所や外部の人が出入りする場所は通行する際の邪魔になる場合がありますので注意してください。
貼り紙などで周知する
社員の目につきやすい場所に貼り紙やポスターを掲示するなどして周知するのも効果があります。更衣室やロッカーの壁など、従業員の目につきやすい場所に下記のように記載して掲示することにより、それを見た従業員の意識がタイムカードに向かいます。
- 出勤時・退勤時はタイムカードを押そう!
- タイムカードの押し忘れがないか確認しましたか?
ただし、長い期間、同じ内容の掲示をしていると見慣れてしまい効果が薄くなります。定期的にデザインを変えて注意喚起する効果が持続するようにしましょう。
打刻機での押し忘れをチェックする仕組みを導入する
タイムカードの打刻忘れが発生した場合に備えて、チェックする機能が必要です。例えば、部署ごとにタイムカードのチェック担当者を決めて、始業時などにタイムカードが打刻されているかどうかを確認する仕組みを整えるのも一つの手です。当番制にして交替でチェックすることにより、本人の意識付づけにも効果が期待できるでしょう。
また、打刻忘れが多い従業員には、出勤時や退勤時に「タイムカード押しましたか?」と声がけするような方法も効果的です。
タイムカード押し忘れは勤怠管理システムの導入で解決しよう!
タイムカードの押し忘れの原因や対策について見てきました。しかし、根本的な解決を図るという点では、勤怠管理システムを導入することで解決できるのではないでしょうか?勤怠管理システムを導入することによって下記のような効果が見込めます。
打刻漏れを自動で知らせてくれる
勤怠管理システムには、各従業員の勤務の実態を管理してアラートで知らせてくれる機能があります。タイムカードの打刻忘れをした従業員に対して、自動でアラートを出して知らせてくれる機能もあります。
スマートフォンやタブレットでも打刻できる
慌ただしい始業前の時間帯で、頭からタイムカードの打刻が離れてしまっていても、スマートフォンやタブレットで打刻できる勤怠管理システムであれば専用アプリでログインして打刻するだけで済みます。
他にもICカード、GPSでの打刻や、指紋認証、顔判定など、さまざまな打刻方法があります。従業員への負担を考えながら、会社が利用可能な打刻方法とコストに合わせて選びましょう。
タイムカードの押し忘れ対策をしっかりして、正しく勤怠管理を行いましょう!
タイムカードの打刻忘れは、会社にとっては、給与計算作業に影響を与え、給与計算担当者の負担も大きくなります。また、従業員の正確な労働時間の把握が困難になり、労務管理にも支障が出ます。
タイムカードの打刻忘れは、会社にとってリスクになり得ますから、打刻忘れを防ぐ仕組みづくりや勤怠管理システムの導入などにより、根本的な解決ができるように話し合いましょう。
よくある質問
タイムカードの押し忘れの原因は何ですか?
押し忘れの原因としては、「打刻機が分かりにくい場所に設置されている」「打刻機の近くにトイレや休憩室がある」「始業前から頭の中が仕事のことしか考えられなくなっている」などが考えられます。詳しくはこちらをご覧ください。
タイムカードの押し忘れを防ぐ対策には何がありますか?
押し忘れを防ぐ対策としては、「打刻機の置き場所を目に入りやすい場所に置くなど工夫する」「貼り紙やポスターなどで従業員に周知する」「打刻機での押し忘れをチェックする仕組みを導入する」などが考えられます。詳しくはこちらをご覧ください。
※ 掲載している情報は記事更新時点のものです。
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