• 更新日 : 2024年8月21日

有給休暇の計算方法まとめ!付与日数、半休、時間単位、時給制の場合

有給休暇の計算は勤続年数に基づいて行い、所定の要件を満たした従業員に付与します。フルタイム勤務と短時間勤務では計算が異なるため、注意しましょう。有給休暇を取得した日の賃金計算はいくつかの方法があるため、効率の良いものを選んでください。

本記事では、1日単位や半休など、さまざまなケースにおける有給休暇の計算方法を解説します。

有給休暇が付与される要件

有給休暇とは、一定期間勤続した労働者に対し、疲労を回復してゆとりある生活を保障するために付与される休暇のことです。取得しても賃金が減額されることはありません。

有給休暇の取得には、次の要件を満たしていることが必要です。

  • 雇い入れの日から6ヶ月経過していること
  • その期間の全労働日の8割以上出勤したこと

有給休暇は労働基準法によって定められた制度であり、要件を満たす労働者に対しては必ず付与しなければいけません。

会社は、労働者の有給休暇の取得に際して、次のような行為を行うことは禁止されています。

  • 有給休暇取得の理由を聞いて、理由によって拒否する
  • 労働者が希望する日程で取得するのを拒否する
  • 有給休暇の取得によって、給与や昇進などで不利に取り扱う

有給休暇取得の拒否には例外があり、事業の正常な運営が妨げられる場合は「時季変更権」で日程を変更させることが可能です。

有給休暇の出勤率の計算方法

要件のひとつである8割の出勤率は、「出勤日÷全労働日×100」の計算式で求めます。

全労働日とは、算定期間の総暦日数から会社の就業規則などで決めた休日や不可抗力による休業日等を除いた日数です。

次に該当する場合は、全労働日・出勤日から除外して計算します。

  • 使用者の責による休業
  • 休日労働した日
  • 休職期間
  • その他、ストライキなど正当な争議により労働ができなかった日

実際に労働していなくとも、次の日は出勤日に含まれます。

  • 業務上の理由による怪我や病気で療養のために休業した期間
  • 育児・介護休業期間
  • 産前産後休業した期間
  • 有給休暇取得日

たとえば、4月1日に入社した従業員が10月1日に有給休暇を付与される場合を例にみてみましょう。

半年間の日数が184日で所定休日数が54日であれば、184−54=130日が全労働日となります。130×0.8=104となり、104日以上出勤していれば、8割以上の出勤という要件を満たしているということです。

有給休暇の付与日数の計算方法

ここでは、有給休暇の付与日数の計算方法について、フルタイム勤務とパート・アルバイトなど短時間勤務の場合に分けてみていきましょう。

フルタイムの場合(正社員など)

フルタイム勤務の場合、入社した日から6ヶ月経過し、その期間の全労働日の8割以上出勤したという要件を満たせば、初回に10日間の有給休暇が付与されます。

その後、1年を経過するごとに同じ要件を満たせば、次の表のように有給休暇が付与されるという仕組みです。

入社日から起算した勤続期間有給休暇の日数
6ヶ月10日
1年6ヶ月11日
2年6ヶ月12日
3年6ヶ月14日
4年6ヶ月16日
5年6ヶ月18日
6年6ヶ月以上20日

付与日数の計算は、まず、従業員の入社日から継続勤務年数を求め、出勤率を計算しすれば算出できます。

たとえば、2024年4月1日に入社した従業員の場合、2025年の10月時点では継続勤務年数が1年6ヶ月であるため、付与日数が11日ということになります。

短時間勤務の場合(パート・アルバイトなど)

パートやアルバイトなどの短時間勤務で、週の所定労働時間が30時間未満の場合は、1週間あたりの所定労働日数に応じて比例付与します。

1週間の所定労働日数を定めていない場合は、1年間の所定労働日数で計算します。

1週間の
所定労働日数
1年間の
所定労働日数
勤続年数
0.51.52.53.54.55.56.5
5日217日以上10日11日12日14日16日18日20日
4日169〜216日以上7日8日9日10日12日13日15日
3日121〜168日以上5日6日6日8日9日10日11日
2日73〜120日以上3日4日4日5日6日6日7日
1日48〜72日以上1日2日2日2日3日3日3日

フルタイム勤務と同じく、継続勤務年数に従って付与日数が増えていきます。継続勤務年数と週所定労働日数をもとに計算してください。

週の所定労働時間が30時間未満の場合でも、週5日で働いている場合は、フルタイム勤務と同じ日数の有給休暇が付与されます。

有給休暇の賃金の計算方法

有給休暇取得時の賃金を計算する方法は、労働基準法で次の3つが認められます。

  • 通常出勤と同じ金額を支給する
  • 平均賃金を用いて計算する
  • 標準報酬月額を用いて計算する

いずれかの計算方法を決定し、あらかじめ就業規則に明記しておくことが必要です。

通常出勤と同じ金額を支給する

通常出勤と同じ金額を支払う方法であれば、給与計算が複雑になりません。フルタイムの従業員は、有給休暇を取得した月も通常の出勤をしたときと同様に扱えるため、賃金計算の必要がなく、事務処理の手間がかからないのはメリットです。

パートタイムなど時給制の場合でも、有給休暇取得日の所定労働時間×時給で給与計算ができます。

平均賃金を用いて計算する

過去3ヶ月間の賃金から算出した平均賃金を用いる方法もあります。シフト制など、日によって労働時間が異なる働き方の場合に便利な方法です。

次の計算式で計算し、いずれか高い方で支給します。

  • 直近3ヶ月の賃金の総額÷休日を含んだ全日数
  • 過去3ヶ月間の賃金総額÷過去3ヶ月間の「労働日数」× 60%

賃金総額には、各種手当や通勤費、残業手当を含みます。

賃金の計算は、有給休暇の取得日数に平均賃金を掛けて求めます。

標準報酬月額を用いて計算する

標準報酬月額を用いて計算する方法です。標準報酬月額は、厚生年金保険料や健康保険料の金額を算出する際に使われます。

計算は「標準報酬月額÷30」で、すでに算出済みの金額を使って計算するため、平均賃金よりも手間がありません。

ただし、社会保険の対象ではないパート・アルバイトなどの従業員は個別に標準報酬日額に相当する金額を算出する必要があり、かえって手間がかかることになります。

なお、標準報酬月額には金額の上限が設けられており、人によっては有給休暇の取得で給与が少なくなる場合もあります。そのため、標準報酬月額を用いる方法を選ぶ場合は、労使協定を締結して就業規則に記載しなければなりません。

有給休暇の半休(半日取得)の計算方法

労働基準法では、有給休暇は1日単位で付与するものとしており、半休に関しては規定がありません。

ただし、厚生労働省では1日単位での取得を原則としながら、労働者が半日の有給休暇を希望して会社側が同意した場合は、1日単位取得を妨げない範囲で取得が可能としています。

半休制度を導入する場合、どの時点を「半日」と見なすかについては、2つの考え方があります。

  • 午前・午後で指定する
  • 所定労働時間を2で割って取得する

午前と午後のどちらかを指定する方法では、午前(9時〜12時)・午後(13〜18時)といったように分けると労働時間は同じではありません。このような場合でも、どちらかを申請した場合は有給休暇を半日分消化したことになります。

時間のバランスをとりたい場合は、1日の所定労働時間を2で割って取得することも可能です。

いずれの場合も、労使協定で「半日」の取り扱いを明確に定めておく必要があります。

半休制度を設けた場合の給与計算は、1日単位の有給休暇を取得したときと同様に、3つの方法から選びます。

有給休暇の時間単位での計算方法

有給休暇は、時間単位年休制度を設け、1時間単位で取得することもできます。柔軟に休暇がとれることを目的に制定された制度です。

1日丸ごとの休暇は必要ないが時間単位で利用したい場合などに休暇がとれ、有給消化率の向上を目的に導入する企業も増えています。

取得できる時間休は、1年に5日の範囲内です。

導入の要件は、次の2つです。

  • 労使協定の締結
  • 就業規則に記載

労使協定では、対象とする労働者の範囲や、有給休暇1日分は何時間分になるかを定める必要があります。1日の所定労働時間に端数がない場合は所定労働時間数を1日分とすればよいでしょう。

1日分が8時間であれば、「8時間×5日=40時間」で、40時間が上限となります。

所定労働時間に1時間未満の端数が生じる場合、数字を切り上げて1日分とします。たとえば、1日の所定労働時間が8時間30分であれば、9時間に切り上げるということです。「9時間×5日=45時間」となり、45時間が上限となります。

有給休暇を給与明細に記載する方法

有給休暇の取得日数や残日数について給与明細に記載する法的義務はありません。

しかし、有給休暇の残日数や取得日数を給与明細に記載することで、従業員は現在の残日数を確認でき、取得の促進につながります。

会社側も従業員の取得状況を把握でき、効率的な管理ができるでしょう。

記載方法には決まりはありませんが、「有給休暇取得日数」「有給休暇残日数」の項目を設け、数字を記載すると、従業員は自分の取得状況を把握しやすくなります。

有給休暇の使用期限と繰り越しのルール

2019年4月から有給休暇の取得が義務化され、 使用者は、条件を満たした従業員には年に5日間の有給休暇を取得させなければなりません。違反した場合の罰則も設けられています。

従業員が期間内に5日取得していない場合は、使用者が時季を指定して取得させる必要があります。

時季を指定する場合は、従業員の意見を尊重し、できる限り希望に沿った指定をしなければなりません。就業規則には、時季指定の対象従業員とその方法の明記が必要です。

余った有給休暇は翌年に繰り越しできますが、年5日の消化義務があるため、翌年に繰り越しができる日数は最大15日です。

たとえば、20日分の有給休暇が付与され、消化義務のある5日分だけ使用し、残りを翌年度に繰り越した場合、前年度の繰越分15日と当年度に新たに付与される20日を合計して、最大で35日の有給休暇を保有できることになります。

時間単位年休制度を導入している場合も、繰り越しが可能です。時間単位年休は年に5日以内、時間単位で付与できる制度であるため、次年度で使用できる時間単位年休の日数は、前年度からの繰越分も含めて5日以内となります。

また、取得日から2年以内に使用されなかった有給休暇は時効で消滅するため注意が必要です。

消化義務のある日数だけでなく、付与された有給休暇を計画的に消化できるよう、会社側からの働きかけも必要です。

有給休暇の計算は正確に行おう

有給休暇の日数は、入社日からの継続勤務年数に基づき、出勤率を計算して求めます。パート・アルバイトなど短時間勤務の場合は、週所定労働日数を計算して比例付与しましょう。

年に10日以上の有給休暇が付与されると年に5日の消化義務が発生するため、忘れずに管理してください。

有給休暇の計算方法について理解を深め、従業員の有給休暇取得を適切に管理しましょう。


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