• 更新日 : 2023年2月3日

厚生年金保険料の計算方法 – 標準報酬月額・標準賞与額など保険料額表をもとに解説!

厚生年金保険料の計算方法 - 標準報酬月額・標準賞与額など保険料額表をもとに解説!

厚生年金とは、会社員などが加入する公的年金制度のことです。厚生年金の保険料は、標準報酬月額と標準賞与額に決められた保険料率を掛けて計算します。保険料率は平成29年9月から18.300%のまま変わっていません。今回は厚生年金保険料の計算方法や厚生年金と国民年金との違い、保険料額の早見表もご紹介します。

そもそも厚生年金とは?

厚生年金とは、厚生年金が適用される事業所に勤務する、70歳未満の会社員や公務員などが加入する公的年金制度のことです。

会社員は厚生年金にのみ加入しており、国民年金には入っていないという誤った認識を持っている方もいるようですが、厚生年金制度を通じて国民年金にも加入しています。そのため、厚生年金に加入していると、国民年金と厚生年金の両方が受け取れることをおさえておきましょう。

厚生年金保険の詳細について知りたい方は、以下の記事をご参照ください。

厚生年金の被保険者区分は?

厚生年金の被保険者区分は、以下のとおりです。

被保険者の
区分
対象者
実施機関
第1号厚生年金被保険者第2号から第4号厚生年金被保険者以外の民間企業に雇用される者など日本年金機構
(厚生労働大臣から委託)
第2号厚生年金被保険者国家公務員共済組合の組合員国家公務員共済組合・国家公務員共済組合連合会
第3号厚生年金被保険者地方公務員共済組合の組合員地方公務員共済組合、
全国市町村職員共済組合連合会・地方公務員共済組合連合会
第4号厚生年金被保険者私立学校教職員共済制度の加入者日本私立学校振興・共済事業団

厚生年金は政府が管掌し、保険料の徴収金や運用に関する事務などは、それぞれの区分に応じた上記の実施期間が行います。

厚生年金と国民年金の違いは?

厚生年金と国民年金の違いには、まず対象者が挙げられます。前述のとおり厚生年金の被保険者は基本的に70歳未満の会社員や公務員であるのに対し、国民年金は日本国内に住む20歳以上60歳未満のすべての人が加入します。

納付する年金保険料も、厚生年金は給与を元にした標準報酬月額などに一定の保険料率を掛けて算出しますが、国民年金は一律の保険料である点が異なります。つまり、厚生年金の保険料は人によって違いますが、国民年金は誰でも同じであるという点をおさえておきましょう。

年金保険料の納付方法も、厚生年金は事業主と従業員とで折半した金額を被保険者負担分として給与から天引きし、まとめて事業主が納付します。一方、国民年金は自分で全額を納めます。

また受給する年金も、厚生年金の被保険者は国民年金と厚生年金の両方であるのに対して、国民年金の被保険者は国民年金のみです。

参考:いっしょに検証!公的年金|厚生労働省

厚生年金保険料の計算方法は?

厚生年金の保険料は、毎月の給与を基準にして決定された標準報酬月額と標準賞与額に、それぞれ同一の保険料率を掛けて計算します。

厚生年金では、標準報酬月額は32等級に区分されています。保険料率はこれまで毎年改定されていましたが、平成29年9月以降「18.300%」で固定されることになりました。令和5年度現在も、18.300%のまま変わっていません。

毎月の給与に対する保険料

毎月の給与に対する厚生年金の保険料は、以下の計算式で算出します。

毎月の給与に対する保険料額 = 標準報酬月額 × 保険料率

算出した保険料は事業主と従業員が折半し、給与天引きした従業員分をまとめて事業主が納付します。

賞与に対する保険料

賞与に対する保険料の計算式は以下のとおりです。賞与に掛ける保険料率も給与に対して掛ける料率と同じです。

賞与に対する保険料額 = 標準賞与額 × 保険料率

なお、標準報酬月額と標準賞与額について、詳しくは後述します。

令和4年度の厚生年金保険料額早見表

令和4年3月分からの厚生年金保険の保険料額表は、以下のとおりです。一番左に、標準報酬の等級と月額が記載されています。ここに給与額を当てはめ、報酬月額と厚生年金保険料を確認しましょう。

標準報酬報酬月額厚生年金保険料(一般、坑内員、船員)
等級月額18.300%
円以上 〜 円未満全額折半額
188,000 〜 93,00016,104.008,052.00
298,00093,000 〜 101,00017,934.008,967.00
3104,000101,000 〜 107,00019,032.009,516.00
4110,000107,000 〜 114,00020,130.0010,065.00
5118,000114,000 〜 122,00021,594.0010,797.00
6126,000122,000 〜 130,00023,058.0011,529.00
7134,000130,000 〜 138,00024,522.0012,261.00
8142,000138,000 〜 146,00025,986.0012,993.00
9150,000146,000 〜 155,00027,450.0013,725.00
10160,000155,000 〜 165,00029,280.0014,640.00
11170,000165,000 〜 175,00031,110.0015,555.00
12180,000175,000 〜 185,00032,940.0016,470.00
13190,000185,000 〜 195,00034,770.0017,385.00
14200,000195,000 〜 210,00036,600.0018,300.00
15220,000210,000 〜 230,00040,260.0020,130.00
16240,000230,000 〜 250,00043,920.0021,960.00
17260,000250,000 〜 270,00047,580.0023,790.00
18280,000270,000 〜 290,00051,240.0025,620.00
19300,000290,000 〜 310,00054,900.0027,450.00
20320,000310,000 〜 330,00058,560.0029,280.00
21340,000330,000 〜 350,00062,220.0031,110.00
22360,000350,000 〜 370,00065,880.0032,940.00
23380,000370,000 〜 395,00069,540.0034,770.00
24410,000395,000 〜 425,00075,030.0037,515.00
25440,000425,000 〜 455,00080,520.0040,260.00
26470,000455,000 〜 485,00086,010.0043,005.00
27500,000485,000 〜 515,00091,500.0045,750.00
28530,000515,000 〜 545,00096,990.0048,495.00
29560,000545,000 〜 575,000102,480.0051,240.00
30590,000575,000 〜 605,000107,970.0053,985.00
31620,000605,000 〜 635,000113,460.0056,730.00
32650,000635,000 〜118,950.0059,475.00

参考:令和4年3月分(4月納付分)からの健康保険・厚生年金保険の保険料額表|全国健康保険協会

標準報酬月額はどのように決まる?

毎月実際に受け取る給与を一定の幅に区分した標準報酬月額に当てはめ、保険料率を掛けて保険料を計算します。給与の金額に、直接保険料率を掛けるわけではないことがポイントです。

ここからは、以下の4つについて、どのように決まるかをそれぞれ解説します。

  • 標準報酬月額
  • 標準報酬月額の定時決定
  • 標準報酬月額の随時決定
  • 標準報酬月額の産前産後・育児休業終了時改定

なお、詳細については以下の記事をご覧ください。

標準報酬月額とは?

厚生年金において標準報酬月額とは、従業員の給与を1〜32等級に区分したものであり、年金の保険料や年金額を計算するために利用します。ちなみに健康保険でも、保険料を同じ標準報酬月額の表を用いて計算しますが、等級が50等級まで存在することが特徴です。

いずれの保険料においても毎月の給与の実際の金額を元にするのではなく、複数月の平均から算出した標準報酬月額を用いることで、計算を簡略化しています。

標準報酬月額は通常、毎月7月1日を基準に、その年の4月〜6月の3ヶ月間における給与の平均額を標準報酬月額の表に当てはめて算出します。給与には、基本給のほか残業手当や通勤手当、管理職手当など、労働の対償として従業員に支払われるすべてのものが含まれることに注意しましょう。

ここからは実際に、標準報酬月額の算出事例を確認していきましょう。2022年度に東京都内の事業所で勤務する、会社員を例に挙げます。4月〜6月は以下の給与額とします。

【4~6月の給与額】

  • 4月:31万円
  • 5月:36万円
  • 6月:32万円

標準報酬月額は、以下のように求めてください。

(31万円+36万円+32万円)÷3ヶ月=33万円

給与の3ヶ月平均が33万円の場合、「保険料額表」に当てはめると20等級の標準月額31万~33万円のレンジに含まれるため、標準報酬月額は32万円となります。

2020年に標準報酬月額の上限が改正

なお、厚生年金保険の標準月額は、2020年に改定されており、それまで「31等級」だったものが「32等級」と最上位等級が変更になりました。2020年9月からは、「32等級の65万円」が標準報酬月額の上限となっています。

この変更により、標準月額が60.5万円以上63.5万円未満の人は31等級、63.5万円以上の人は32等級となりました。31等級の従業員が32等級になった場合、それまでよりも従業員・会社側が負担する1ヶ月の厚生年金保険料額が増えることになります。ただし、保険料負担が増額した分、従業員は将来的に受け取れる年金額の増加も期待できます。

標準報酬月額の定時決定とは?

標準報酬月額の決定や改定を行うのは、主に以下のタイミングです。

  • 定時決定
  • 随時決定
  • 産前産後休業終了時、育児休業終了時

このほか、従業員が入社したときなど、資格取得時にも標準報酬月額の決定をします。

標準報酬月額の決定を行うタイミングの1つである定時決定は、毎年1回、必ず行う標準報酬月額の見直しを指します。企業は、定時決定の際に対象となる4月〜6月までに支払われた給与の金額などを「算定基礎届」に記入し、7月10日までに管轄の年金事務所か事務センターに提出しなけばなりません。

このときに決定した標準報酬月額は、原則、同年の9月〜翌年の8月までの1年間、基本給や各種手当の金額に大きな変動がない限り適用されます。

標準報酬月額の随時改定とは?

随時決定とは、基本給や原則毎月支払われる手当など、基本給や各種手当など固定的な給与が変更した際に行う可能性があるもので、具体的には下記の要件すべてを満たす場合に随時改定を実施します。随時改定で提出するのは、「月額変更届」です。

  • 固定的賃金に変動が生じた
  • 変動した月からの3ヶ月間の平均から算出した標準報酬月額と、従来の標準報酬月額に2等級以上の差が出た
  • 変動した月からの3ヶ月間について、給与計算の対象となる「支払基礎日数」がいずれも17日以上ある

ただし、たとえば「基本給は昇給したものの残業代が減ったため給与自体は下がった」というようなケースも存在します。このように、固定的賃金が上昇したにも関わらず、それ以外の要素によって標準報酬月額自体は下がったという場合は、随時改定の対象からは外れることに注意しましょう。

標準報酬月額の産前産後・育児休業終了時改定とは?

育児休業後に短時間勤務を取得すると、給与額が下がることが一般的です。それにも関わらず育休取得前の給与を元にして標準報酬月額を算出すると、保険料が高いままになってしまうため、給与の手取り額が減少してしまいます。

こういった事態を避けるため、育児休業終了後に従業員が希望すれば標準報酬月額を改定することが可能であり、この制度を「産前産後・育児休業終了時改定」といいます。

参考:産前産後休業終了時報酬月額変更届の提出|日本年金機構

標準賞与額はどのように決まる?

一方、標準賞与額はどのように決まるのでしょうか。

標準賞与額とは?

標準賞与額とは、支給された1回の賞与額から1,000円未満を切り捨てた金額のことです。150万円を超えるときには、150万円とします。標準報酬月額とは異なり、「等級」に当てはめる必要はありません。

標準賞与額の計算方法は?

標準報酬額の算出方法についても、具体例で確認しましょう。

1回の賞与額が480,500円であった場合、1,000円未満は切り捨てるため、標準賞与額は48万円となります。

標準賞与額の計算方法などに関する詳細は、以下の記事をご確認ください。

厚生年金保険の保険料率はどのように決まる?

厚生年金保険の保険料率は、年金制度改正にもとづき平成16年の13.934%から段階的に引き上げられてきました。しかし、平成29年の改正を最後に、現在は18.300%で固定されています。

厚生年金保険料を支払うことで受けられる控除は?

厚生年金保険料は、社会保険料控除の対象となります。支払った厚生年金保険料の全額が、年末調整時に所得金額から控除されます。なお、国民年金の保険料や国民健康保険の保険料などについては、生計を一つにしている配偶者や親族分を支払った場合にも社会保険料控除の対象となります。

会社勤めで給与から厚生年金保険料が天引きされている場合は、特段の手続きは必要ありません。配偶者や親族分で支払った保険料がある場合には、年末調整の際に社会保険料控除を受けるための手続きが必要となりますので、忘れないようにしましょう。

厚生年金の平均受給金額は?

厚生労働省が公表している「厚生年金保険・国民年金事業の概況(令和4年1月現在)」によると、厚生年金の受給額の平均は約14万円です。

厚生年金は、会社員や公務員が国民年金の上乗せとして加入できる公的年金であり、現役時代に受け取っていた給与や賞与の額に応じた保険料を納めた結果、受け取れるものです。

自分の年金見込額を知りたい場合は、「ねんきんネット」による試算や「ねんきんダイヤル」への申込み、電子申請による申込みなどで確認ができます。

参考:年金見込額試算|日本年金機構

厚生年金の概要と計算方法をおさえておこう

厚生年金とは、70歳未満の会社員や公務員などが加入する公的年金制度のことです。厚生年金の保険料は、毎月の給与と賞与にあらかじめ決められた保険料率を掛けて計算しましょう。保険料率は平成29年9月以降、18.300%で固定されています。

保険料は事業主と従業員とで折半した上で、被保険者分を天引きしまとめて事業主が納付します。従業員から厚生年金に関して質問される可能性があるため、人事担当者が仕組みや計算方法を理解し、正しく説明できるようにすることが重要です。

よくある質問

厚生年金保険料の計算方法は?

毎月の給与に対する保険料額は「標準報酬月額✕保険料率」、賞与に対する保険料額は「標準賞与額✕保険料率」で計算します。詳しくはこちらをご覧ください。

標準報酬月額はどのように決まる?

毎月7月1日を基準として、その年の4月〜6月の3ヶ月間における給与の平均額を当てはめて算出します。詳しくはこちらをご覧ください。


※ 掲載している情報は記事更新時点のものです。

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