• 更新日 : 2022年1月24日

社会保険の標準報酬月額・標準賞与額とは?保険料を求める計算方法

社会保険の標準報酬月額・標準賞与額とは?保険料を求める計算方法

給与や賞与にかかる社会保険料は、実際に支給された金額ではなく、標準報酬月額および標準賞与額に基づいて決定されます。それぞれに計算方法が異なるため、対象となる報酬の範囲や、保険料の徴収が免除される条件など、正しく理解した上で処理することが重要です。今回は、社会保険料の標準報酬月額・標準賞与額について解説します。

社会保険の標準報酬月額・標準賞与額とは

健康保険や厚生年金などの社会保険料は、人によって異なります。これらの保険料を決める基準となるのが「標準報酬月額」と「標準賞与額」です。社会保険料は収入に比例して負担額が大きくなり、その算定は、実際の月々の給与額に紐づいた標準報酬月額と賞与の金額の1,000円未満を切り捨てた標準賞与額をもとに行なわれています。

標準賞与額の特徴

標準賞与額とは、賞与にかかる保険料を計算するもととなる金額です。標準賞与額は、税引き前の賞与の支給総額から、1,000円未満を切り捨てて算出します。

たとえば、賞与の税引前支給総額が253,800円の場合、1,000円未満である800円を切り捨て、標準賞与額は253,000円となります。それに、健康保険(40歳以上の従業員の場合は介護保険料も含む)・厚生年金保険の保険料率をかけて、保険料を算出します。

賞与にかかる保険料 = 標準賞与額 × 健康保険・厚生年金の保険料率

健康保険と厚生年金保険でそれぞれ上限が異なり、健康保険では年間573万円(4月1日~翌年3月31日までの累計)、厚生年金保険では月間150万円を標準賞与額の上限とみなします。

標準賞与の対象となる賞与とは、期末手当や決算賞与といった名称を問わず、労働者が労働の対償として、年3回以下、支払われるものをいいます。業績や成果に対して支払われる報償的性格のもの、季節性のもの、一時的に支払われるものといった特徴があります。賞与として自社製品などの、現物で支給されるケースも含まれます。

ただし、恩恵的に支給される結婚祝い金や、出張旅費、傷病手当金など、保険料のかかる賞与の対象にならないものもあります。

【賞与にかかる保険料の対象外の報酬】
・結婚祝金、病気見舞金、災害見舞金など恩恵的なもの
・出張旅費、交際費など実質弁償的なもの
・大入袋、退職金、解雇予告手当など臨時的・一時的に受け取るもの
・株主配当金のように労働の対償ではないもの
・年金、休業補償給付、傷病手当金など公的給付として受け取るもの

標準報酬月額の特徴

標準報酬月額とは、社会保険料や保険給付額を計算するための基準になる金額です。「標準報酬月額表」(保険料額表)を用いて報酬月額を等級で表し、一定の幅で区分した報酬月額に受け取る給与を当てはめて決定します。

標準報酬月額を算出する場合に対象となる報酬は、基本給に加えて、役職手当や通勤手当など固定的な手当を含みます。また、残業手当や成果に応じた歩合給など、月により金額が変わる手当も含まれます。通勤定期券や回数券、食事・食券、社宅・独身寮のように現物で支給されるものも報酬に含まれるため、注意が必要です。

標準報酬月額と標準賞与額の違い

標準報酬月額と標準賞与月額の大きな違いは、標準報酬月額が等級に紐づくのに対して、標準賞与月額は、1,000円未満の切り捨てで算出する点にあります。

さらに、標準賞与月額の対象となる賞与は、年3回以下の支給である点に注意が必要です。年4回以上の支給が、就業規則等で定められている報酬については「賞与に係る報酬」とされ、標準報酬月額に含め計算されます。

賞与に係る報酬を標準報酬月額に含めるには

年4回以上支給される性質の報酬については、標準賞与額ではなく、標準報酬月額に含め算出します。標準報酬月額の定時決定の際、以下の方法で計算します。

ア.7月1日より以前に支給された1年の賞与の額を12で割った額
イ.7月1日以前1年内に賞与の支給回数が変更され、報酬(賞与に係る報酬)に該当したときは、支給実績をもとに7月1日より以前の1年間に受けたであろう賞与の金額を算定し、その額を12で割った額
⇒ 定時決定等の際には、ア、イで得た額を各月の報酬に加えて報酬額を算定します。

7月1日を基準にして、前の1年間に4回以上支給された実績があるときには、賞与の額を12で割った金額を各月の報酬に算入することになります。しかし、通常は年3回であったが、その年だけたまたま臨時に支給したことによって賞与の支給回数が4回になった場合には、報酬に含める必要はありません。

参考:賞与にかかる保険料|東京実業健康保険組合

年4回以上の賞与の対応について詳しくはこちら

標準報酬月額の等級

標準報酬月額は、現在は健康保険では第1等級の58,000円から第50等級の1,390,000万円まで、厚生年金保険は第1等級の88,000円から第32等級の650,000円までとされています。
各等級には報酬月額の範囲があり、その範囲内の金額によって等級が決定します。健康保険と厚生年金では上限と下限が異なっているので注意が必要です。

標準報酬月額の範囲と決定要因

標準報酬月額は、事業主が提出する届け出によって、日本年金機構(年金事務所)が決定します。標準報酬月額を決定する要因は以下の3種類です。

1.資格取得時の決定

従業員の入社の際に事業主が社会保険の手続きをし、雇用契約による報酬月額を届け出ることで決定します。これが資格取得時の決定です。この時期に決定した標準報酬月額をその年の8月まで使用しますが、社会保険の資格取得が6月1日~12月31日の間であった場合は、翌年の8月まで使用します。

2.定時決定

標準報酬月額は、毎年7月に事業主が日本年金機構(年金事務所)にその額を提出することにより決定します。これを定時決定といいます。4月~6月の3ヶ月間の各種手当を含む給与支給額から算出しますが、1ヶ月に17日以上報酬の対象となる日数(支払基礎日数)がある月が対象となります。
よって、3ヶ月のうちの支払基礎日数が17日に満たない月が1ヶ月ある場合は、その月を除いた残りの2ヶ月の平均額で標準報酬月額が決定されます。定時決定で決定された標準報酬月額はその年の9月から翌年の8月まで使用します。

3.随時改定

事業主は一度決定した標準報酬月額が大きくに変更となった際には(昇給や降級など)、標準報酬月額の変更を届け出る必要があります。これを随時改定といいます。随時改定には次の3つの要件を満たした場合のみ行われます。

  1. 固定的賃金(基本給や役職手当など毎月決まって支払われるもの)に変動があったとき
  2. 変動月から継続した3か月の報酬の支払基礎日数がすべて17日以上あること
  3. 変動月から継続した3か月の報酬の平均した額が、現在の標準報酬月額と比べて、2等級以上の差があること

7月以降に変更した場合は、翌年の8月まで変更後の標準報酬月額を使用します。

賞与の標準報酬(標準賞与額)

賞与にも社会保険料の負担があります。しかし、賞与に等級はなく、1回の支給に対して該当する標準賞与額に保険料率をかけた金額が保険料となります。従業員が受け取る報酬のなかで、年3回以下の報酬が対象となり、このなかには大入りや一時金としての報奨は含まれません。

企業は、被保険者へ賞与を支給した場合、管轄の年金事務所へ「被保険者賞与支払届」を提出します。届出のタイミングは、賞与を支給してから5日以内です。この届出により、標準賞与額が決定され、健康保険料・厚生年金保険料が決まります。

届出用紙は、日本年金機構に登録されている賞与支払い予定月の前の月に、事業所へ送られているので確認しましょう。用紙が届いたら、印字されている従業員氏名や生年月日をチェックします。用紙の情報は、賞与支払いの前々月19日までの情報がもととなるため、氏名の記載がない従業員は手書きで記入します。

賞与にかかる保険料は、月々の保険料と合算され、賞与を支給した翌月の「納入告知書」にて通知されます。

参考:従業員に賞与を支給したときの手続き|日本年金機構

産前産後休業や育児休業中に賞与を支給した場合

産前産後休業および育児休業中は、事業主が手続きをすることで、被保険者‣事業主共に社会保険料の納付が免除されます。そのため、該当期間中に支給された賞与に対しては、保険料はかかりません。ただし、保険料免除期間に賞与が支払われた場合には年間の累計金額には加算されるため、他の従業員と同様に賞与支払届の提出は必要です。

退職する月に賞与を支給した場合

保険料の徴収については、一般の保険料と同様に計算します。退職月に賞与が支払われ、月末に退職した場合、資格喪失日は翌月1日となるため、社会保険料の支払いが必要です。退職月に賞与が支払われ、月末より前に退職した場合は、資格喪失月に賞与が支払われるため保険料の支払いは不要です。ただし、退職日より前に賞与を支給している場合は、賞与支払届の提出が必要となります。

  • 12月10日に賞与が支給され、12月31日に退職した場合
  • →保険料の徴収あり、賞与支払届出の必要あり

  • 12月10日に賞与が支給され、12月20日に退職した場合
  • →保険料の徴収なし、賞与支払届出の必要あり

  • 12月10日に退職し、12月20日に賞与が支給された場合
  • →保険料の徴収なし、賞与支払届出の必要なし

賞与支払い予定月に支給をしなかった場合

日本年金機構にあらかじめ登録している賞与の支払予定月に、賞与を支給しなかった場合、企業は「賞与不支給報告書」を提出する必要があります。このとき、賞与支払届の提出は必要ありません。

参考:令和3年4月から賞与不支給報告書を新設します|日本年金機構

育児休業終了時の改定

3歳未満の子を養育中の被保険者は、定められた条件を満たす場合に、随時改定とは別に育児休業終了時の改定が認められています。

まず、満3歳未満の子供を子育てのための育児休業等(育児休業及び育児休業に準ずる休業)終了日に、育児休業終了の翌日が属する月以降3ヶ月間にわたり受け取った報酬の平均額を算出します。その金額をもとに4ヶ月目以降の標準報酬月額を改定することが可能です。

この場合の標準報酬月額は、育児休業が終了する翌日を含む月以降3ヶ月の平均額を算出することで決定します。手続きとしては、被保険者からの申し出を受けた事業主が「育児休業等終了時報酬月額変更届」を日本年金機構へ提出します。
標準報酬月額が1~6月に改定された場合、その年の8月までの各月に適用されます(随時改定等がない場合)。一方、7~12月に改定された場合、翌年の8月までの各月に適用されます。

  • 以下の条件を満たした場合、育児休業終了時の改定が認められます。以前提出した標準報酬月額の等級と比べて、1等級以上変動した場合
  • 育児休業終了日の翌日を含む月以降3ヶ月間に、少なくとも1ヶ月の報酬対象となる日数が17日以上ある場合

育児休業等終了時報酬月額変更届

事務処理の効率化と給与体系見直しの機会

社会保険料は、個人がその収入に応じて負担するため、できるだけ実際の収入に近い算出方法にする必要があります。しかし、事業所にとっても、国にとっても、毎月の事務処理が必要になるため管理が大変です。そのため、基準となる標準報酬月額を算出し、原則として1年に1度の提出にして事務処理の負担を軽減しています。

標準報酬月額・標準賞与額の取扱いに誤りがあると、社会保険料の負担額だけでなく、年末調整処理にも影響が及ぶ可能性があります。処理について正しく理解し対応しましょう。標準報酬月額・標準賞与額の基本的な特徴や算出方法を理解して、スムーズな事務処理を心がけましょう。

よくある質問

標準賞与額とは何ですか?

企業が支給した賞与にも社会保険料がかかります。この保険料を決定するもとの金額となるのが標準賞与額です。支給された賞与の税引前総額から、1,000円未満を切り捨てて算出します。詳しくはこちらをご覧ください。

標準報酬月額と標準賞与額の違いについて解説してください

標準報酬月額は月々の社会保険料を算出するもととなる額のことをいいます。4月から6月に支給された給与をもとに、等級に当てはめて算出します。標準賞与額とは賞与にかかる社会保険料のもととなる額をいいます。詳しくはこちらをご覧ください。


※ 掲載している情報は記事更新時点のものです。

HRプラス社会保険労務士法人 監修

HRプラス社会保険労務士法人
東京都渋谷区恵比寿を拠点に、HR(人事部)に安心、情報、ソリューションをプラスしていくというコンセプトのもと、全国の顧問先に対し、人事労務に関するコンサルティングを行っている。企業が元気にならないと雇用は生まれない、賃上げはできないとの思いから「人事労務で疲弊する日本中の経営者・人事マンを元気にする!」をミッションに掲げ、人事労務担当者の立場に立った人事労務相談、就業規則や諸規程の整備、IPO支援、海外進出支援、社会保険事務のアウトソーシングなどを展開。

関連記事