• 更新日 : 2023年10月24日

退職者に関して会社がやること – 手続きの方法を解説!

退職者に関して会社がやること - 雇用保険など

従業員が退職する際には、社会保険雇用保険、所得税・住民税などに関するさまざまな手続きが必要になります。

ここでは、労務担当者の方に向けて、退職者が出たときに必要な手続きや書類について詳しく解説します。

従業員の退職が決まったら、労務担当者が行う手続き

ここでは、従業員の退職にともなって労務担当者が行う手続きを、退職前・退職後に分けて解説します。

退職前に行う手続き

退職前に労務担当者が行う手続きは次のとおりです。

  • 退職日の決定・退職届の受け取り

従業員から退職の意向を伝えられた際には、退職者の希望に沿って正式な退職日を決定します。退職の申し出から退職までの日数に関しては、「1ヶ月前に申し出ること」など、就業規則に記載された内容を基準とします。ただし、法令では「退職の2週間前に申し出があれば企業は受け入れる必要がある」と定めている点には注意が必要です。

退職日が決まったら、退職者に退職届を提出してもらいます。後にトラブルとならないように、退職理由(会社都合なのか、自己都合なのか)に関して従業員の合意をしっかりと得てから記入を依頼しましょう。

  • 貸与物の回収

社用のパソコンや携帯電話、社員証・名刺、制服などの貸与物を、退職の当日までに回収します。特に退職者の健康保険証は、退職後の手続きでも必要となるため、忘れずに回収しましょう。

退職までの業務で使う貸与物に関しては、最終出勤日にまとめて回収すると、漏れがなくスムーズに手続きが進められます。

退職後に行う手続き

退職後に労務担当者が行う手続きは次のとおりです。

退職証明書の発行(従業員に求められた場合)

退職証明書は名前のとおり、労働者が退職したことを示す書類です。退職証明書の発行は必須ではありませんが、労働基準法第22条1項において「退職者が請求した場合、企業は必ず退職証明書などの書類を発行しなければならない」と定められています。

退職証明書に決められたフォーマットはないため、発行する際には、インターネット上で配布されているテンプレートを使うのも一つの方法です。厚生労働省のホームページでもテンプレートが公開されています。ただし、退職者が求めない事項については記載してはなりません。

参考:主要様式ダウンロードコーナー│厚生労働省
参考:労働基準法│e-Gov法令検索

退職金の支給

退職にともなって退職金が発生する場合には、退職者から「退職所得の受給に関する申告書」を受け取る必要があります。退職金による所得には退職所得控除と呼ばれる控除が適用されるため、同申告書は必ず提出してもらうようにしましょう。

申告書を受け取った後は、退職金の額を計算し、源泉徴収をしたうえで退職者へ支払いをします。その際には、退職金に係る源泉徴収票の発行も必要になります。

社会保険の手続き

健康保険や厚生年金の手続きは、従業員が退職した次の日から5日以内に行う必要があります。「健康保険・厚生年金被保険者資格喪失届」を発行し、退職者と扶養家族の健康保険証とあわせて、所轄の年金事務所または日本年金機構の事務センターへと提出しましょう。

健康保険の手続きに関しては、その後「健康保険被保険者資格喪失確認通知書」が発行されます。退職者が健康保険の切り替えなどを行う際に必要となるため、届き次第、すぐに送付しましょう。

源泉徴収票発行の手続き

退職した年の1月1日から退職するまでの間に支払った給与の額をもとに、源泉徴収票を発行して退職者に渡します。退職者が年内に転職する場合には、年末調整にあたって転職先に源泉徴収票を提出する必要がある旨を伝えましょう。

住民税の手続き

住民税の手続きの流れは、退職者の転職先が決まっているかどうかによって変わります。

まず、すでに転職先が決まっている場合には、「給与支払報告・特別徴収に係る給与所得者異動届出書」を特別徴収継続として作成して退職者に交付します。その際に転職先に提出するよう伝えましょう。「特別徴収」とは給与から住民税を天引きして納付する形式であり、同届出書によって転職先へと引き継ぎを行うイメージです。

一方、まだ転職先が決まっていない場合は、退職した時期に応じて以下の手続きを行います。

退職した時期手続きの方法
1月~4月退職金や最後に支払った給与から一括で徴収する
5月最後の給与から1ヶ月分を徴収する
6月~12月普通徴収へ切り替え or 退職金・最後の給与から一括で徴収

住民税は6月を基点として計算されます。そのため4月以前に退職した場合には残額を一括で徴収し、5月に退職した場合には従来どおりに1ヶ月分を徴収します。

6月以降に退職した場合は、住民税を普通徴収へと切り替えるか、退職者が希望する場合には一括での徴収をすることも可能です。

離職証明書の発行

離職証明書(雇用保険被保険者離職証明書)は、ハローワークが離職票を発行する際に必要となる書類です。退職証明書と同じく、退職者から求められた場合には必ず発行しなければなりません。なお、退職者が59歳以上の場合には、本人からの請求がなかったとしても交付が義務付けられています。退職者が59歳未満であり、離職票の発行を求めない場合は、雇用保険の喪失手続きをすることで足ります。

離職票の送付

ハローワークから離職票が交付されたら、失業保険の受給といった各種手続きに必要となるため、速やかに退職者へ送付しましょう。

退職手続きに必要な書類

ここでは、従業員の退職手続きをするにあたって必要になる書類を詳しく解説します。

退職者に渡す書類

退職者に渡す主な書類は以下の6つです。

  • 退職証明書(求められた場合)
  • 雇用保険被保険者証
  • 離職票(59歳未満の退職者から求めがあった場合)
  • 年金手帳(預かっていた場合)
  • 源泉徴収票
  • 健康保険資格喪失証明書(求められた場合)

退職者が退職後国民健康保険に加入する場合は、健康保険資格喪失証明書が必要になる場合がありますので、求められたら発行します。

源泉徴収票については、退職金を支給していた場合、通常の給与とは別で源泉徴収票を発行する必要がある点に注意してください。

退職者から回収する書類ほか

  • 貸与物
  • 業務に関する書類
  • 誓約書
  • 健康保険証

前述のとおり、退職の際には貸与物や業務に関する書類をまとめて回収します。退職後も会社の機密事項等を外部に漏らさない誓約書の提出を義務付けている会社も多いです。

退職者から提出してもらう書類

退職者から提出してもらう書類は、以下のとおりです。

  • 退職届

雇用保険に関する手続き

退職者が雇用保険に加入していた場合には、退職者の希望に応じて手続きが必要になります。
前述した雇用保険被保険者離職証明書に加えて「雇用保険被保険者資格喪失届」を用意し、退職届など退職を証明するものとあわせてハローワークに提出してください。

なお、手続きの期限は退職の翌日から10日以内とされています。

退職の手続きがもし遅れてしまったら?

退職に関する会社側の手続きが遅れた場合、各種保険の切り替えが遅くなるなど、退職者や転職先に迷惑をかけることもあります。期限内に手続きできるよう進めましょう。

なお雇用保険では退職翌日から数えて10日、社会保険では資格喪失日から5日が、手続きに設けられている期限です。期限を超えた場合でも手続きはできますが、雇用保険は3ヶ月(社会保険は60日)を超えると賃金台帳や出勤簿などの提出を求められることになります。

手続きの流れを把握し、従業員の退職にスムーズに対応しよう

従業員が退職する際には、書類の発行といったさまざまな手続きが必要になります。手続きによっては期限が短く設定されているものもあるため、用意しておくべき書類などはあらかじめ把握しておきたいところです。

手続きの要点を押さえて、従業員の退職にスムーズに対応できるよう準備を進めましょう。

よくある質問

従業員の退職が決まったら、人事労務担当者は何をすればよいですか?

各種書類を発行する、または退職者から提出してもらい、期限内に退職者または年金事務所などの機関へ提出します。詳しくはこちらをご覧ください。

退職手続きに必要な書類を教えてください

源泉徴収票のほか、退職証明書や離職証明書などの書類が必要です。 詳しくはこちらをご覧ください。


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