• 作成日 : 2022年8月5日

働き方改革の目的は?概要や具体的な取り組みをわかりやすく解説!

働き方改革の目的は?概要や具体的な取り組みをわかりやすく解説!

働き方改革は、第4次安倍内閣時代の2017年3月28日、総理が議長となり、労働界と産業界のトップと有識者が集まった「働き方改革実現会議」において働き方改革実行計画として決定されました。2018年7月6日には、「働き方改革関連法」として成立、同日より順次施行されています。今回は、働き方改革の目的や取り組みについて、わかりやすく解説していきます。

働き方改革の目的は?

我が国は、少子高齢化に伴う生産年齢人口の減少、慢性的な長時間労働、雇用形態による賃金格差など、労働制度と働き方に課題を抱えています。

働き方改革は、これらを解決し、生産性向上とともに、就業機会の拡大や意欲・能力を存分に発揮できる環境を作り、多様な働き方を選択できる社会を実現し、究極的には一人ひとりがより良い将来の展望を持てるようにすることが目的とされています。

労働者を確保するための多様な働き方の推進

少子高齢化の影響によって生産年齢人口(16歳以上65歳未満の人口)の減少に加え、日本は人口自体が減少する局面に入っています。

働き方改革では、働きたいと希望する人すべてが活躍できる柔軟な働き方ができる環境整備を目指しています。

具体的には、時間や空間の成約にとらわれないテレワーク、起業や第2の人生の準備として有効な副業や兼業を推進することを掲げています。

長時間労働を解消し労働環境の改善

我が国の長時間労働は常態化しており、時間外労働の長さや有給消化率の低さが問題とされてきました。

時間外労働の規制については、労働基準法において36協定で締結できる時間外労働の上限を、原則、月45時間以内、かつ年360時間以内と定めているものの、罰則等による強制力がない上、臨時的な特別の事情がある場合には労使が合意して特別条項を設けることで、上限なく時間外労働が可能な状況となっていました。

働き方改革では、労働時間の上限基準を法律に格上げし、罰則付きの上限規制にするとともに、終業時刻から次の日の始業時刻まで一定時間の休息時間を確保する勤務間インターバル制度の導入を努力義務化しています。

また、労働者の心身のリフレッシュをはかるための有給休暇を確実に取得させるために、年10日以上の年次有給休暇が付与される労働者に対して、年次有給休暇の日数のうち年5日については、使用者が時季を指定して取得させることを義務づけました。

雇用形態における賃金格差の是正

日本では、正社員か非正規社員かという雇用形態の違いだけで賃金等の不合理な処遇の格差が生じている企業も少なくありません。

正規と非正規の理由なき格差を埋めていけば、非正規で働く労働者の納得感とモチベーションを誘引し、労働生産性の向上にもつながります。

働き方改革では、パートタイム労働法を改正し、パートタイム・有期雇用労働法を施行しました。

パートタイム労働者だけでなく、有期雇用労働者も対象とし、賃金などあらゆる待遇について不合理な待遇差を禁止し、同一労働同一賃金のガイドラインを策定しています。また、派遣労働者についても、派遣法の改正により、同様の整備を行っています。

働き方改革の概要と背景

働き方改革実行計画では、上記を含め、全体で9つの分野について、具体的な方向性が示され、ロードマップに基づいた取り組みが進められてきました。改めて、働き方改革の基本的考え方の概要と背景についてみていきましょう。

労働力不足を解消することが大まかな概要

働き方改革実現会議では、日本の経済成長の行き詰まりが改善できずにいるのは、その根本に人口問題という構造的な問題があるとしています。

生産年齢人口に占める労働力人口(就業者+完全失業者)の割合を労働参加率といい、生産活動に従事し得る年齢層のうちどの程度の割合が労働市場に参加しているかを示す指標となっています。

生産性を定量的に表す指標の一つに就業者一人当たりあるいは就業1時間当たりの経済的な成果労働生産性がありますが、日本は米国を始めとするG7各国の中では最下位となっています。

少子高齢化と人口減少による労働力減少が経済成長に及ぼす影響を軽減させるためには、労働参加率の上昇による「量の増加」とともに、生産性の向上による「質の改善」が重要です。

日本では人口問題に加え、イノベーションの欠如による生産性向上の低迷、革新的技術への投資不足があることを挙げており、働き方改革の意義、基本的な考え方は、労働参加率の向上と生産性向上のために労働制度の抜本的改革を行うこととしています。

労働人口の低下による生産性の低下が背景

働き方改革が検討されていた時点では、65歳以上の高齢者の労働参加率については、我が国は国際的に高水準にあるものの大きな変化がなく、女性の労働参加率の伸びが大きい状態にありました。

しかし、労働力需給推計によるシミュレーションでは、少子高齢化が進む中で経済成長と労働参加が適切に進まない場合、2030年には就業者数が790万人減少(2014年比)する一方、適切に進めば182万人にとどまる見込みという推計がなされています。

「量の増加」については、女性は特に伸びしろがあり、高齢者についても65歳を超えて働きたいという人は約7割を占めています。

女性や高齢者の労働参加を阻害している要因を取り除くことで、労働参加率の上昇による「量の増加」を期待することができます。

一方、就労の形態については男性の正規雇用が多い一方、女性の労働参加は進んできたものの、非正規雇用で就労する割合が30歳以上の年齢階層で高まる傾向にあります。

働き方改革によって、納得性とモチベーションを誘引する労働参加を促進し、それによって労働生産性を向上していくことが重視されているのです。

参考:厚生労働省|(参考資料)働き方改革の背景

働き方改革で企業が行っている取り組み

働き方改革では、労働法の改正も含め、さまざまな取り組みが進められています。では、企業においては、具体的にどのような施策を講じているのでしょうか。いくつか代表的な施策を紹介します。

テレワークを導入した働き方の多様化

働き方改革では、時間や空間の制約にとらわれることなく働くことができる柔軟な働き方として、テレワークの普及を提言しています。育児や介護と仕事を両立させる有効な方法であり、労働参加率の向上にも効果が期待できます。

新型コロナウイルス感染症の影響もあり、ここ数年で導入企業は増加しました。在宅勤務だけでなく、カフェやホテルなどで業務をするモバイルワーク、オフィスから離れた共有オフィスで勤務するサテライトオフィス勤務などの形態があります。

フレックスタイム制の導入

フレックスタイム制は、総労働時間を規定してその枠内で労働者自身が始業・終業時間を自由に決定できる仕組みです。従来から労働基準法上の労働時間規制を弾力化する制度として、多くの企業で導入していました。

働き方改革に対応し、さらに柔軟な対応が可能な制度となっています。

具体的には、それまで1カ月を清算期間として時間外労働時間の清算を行ってきましたが、新しいフレックスタイム制では、3カ月間を清算期間としました。

これによって、例えば子どもが夏休みの7月から8月には労働時間を短縮し、それ以外には長く設定するなど、より柔軟な働き方が可能になりました。

育児休暇の取得や事業内保育所の開設

2022年4月からは改正育児・介護休業法が段階的に施行され、育児休暇の制度も変わります。育児休業取得の申出が円滑に行われるようにするため、企業に一定の措置を講じることが義務づけられました。

具体的には、次のいずれかの取り組みが必要になります。

  1. 育児休業・産後パパ育休に関する研修の実施
  2. 育児休業・産後パパ育休に関する相談体制の整備等(相談窓口設置)
  3. 自社の労働者の育児休業・産後パパ育休取得事例の収集・提供
  4. 自社の労働者へ育児休業・産後パパ育休制度と育児休業取得促進に関する方針の周知

2022年10月1日には、産後パパ育休が新設されます。子どもの出生後8週間以内、期間は4週間まで、分割して2回まで取得できます。また、育児休業中に、労使協定が締結されている場合、労働者が合意した範囲で、休業中に就業することも可能です。

また、事業所内保育施設または企業主導型保育所の設置・運営などを行う企業もあります。

このような子育てを支援するための取り組みについては、中小企業の場合、一定の要件を満たした場合、内閣府所管助成事業として、中小企業子ども・子育て支援環境整備助成事業(くるみん助成金)から助成を受けることができます。

育児支援についてのこれらの施策は、働き続ける女性の労働参加率の向上につながることが期待されます。

働き方改革を目的に沿って成功させるには?

実際に企業が働き方改革に取り組む場合、やみくもに制度を導入しても効果的とはいえません。企業として働き方改革をその目的に沿って成功させるには、どのような取り組み方がよいのでしょうか。

働き方改革の目的を数字をもとに決める

まず、自社が働き改革に取り組む目的を明確にすることが大切です。次のような目的のタイプを挙げることができます。

  1. 適正な量の働き方・休み方の実現
  2. メリハリある働き方・休み方の実現
  3. 仕事の特性やライフスタイルに応じた柔軟な働き方の実現
  4. 新しい働き方の実現

参考:厚生労働省「働き方・休み方改革取組事例集」

1.は、全社的に時間外労働を削減し、労働時間の適正化や年次有給休暇の取得率向上を目的としています。

2.は、業務の繁閑に対応しながら、連続した休暇を取得するなど、メリハリのある働き方と休暇の質の向上を目的とします。

3.は、柔軟な働き方とともに生産性の向上を目的とするものです。

4.は、テレワークやフレックスタイムの利用拡充などによって自社の事業特性に応じた新しい働き方の実現を目的とします。

いずれも、労働時間や年次有給休暇の取得状況など、自社における実態を数字で把握することからスタートする必要があります。従業員へのアンケート調査やヒアリング調査によってデータを収集し、自社が抱えている問題を明確にしましょう。

目的達成のために必要な取り組みを考える

自社での働き改革の目的が決まれば、具体的にそのための取り組みを決めることになります。前述の目的タイプ別の主な取り組みを挙げると次のようなものがあります。

  1. 適正な量の働き方・休み方の実現
  2. 長時間労働の抑制、年次有給休暇の取得率向上

  3. メリハリある働き方・休み方の実現
  4. 業務の繁閑に応じた働き方・休み方、生産性を高める業務体制・仕事の進め方

  5. 仕事の特性やライフスタイルに応じた柔軟な働き方の実現
  6. 勤務時間・勤務場所の柔軟化、働き方に関わらず成果や取り組みの公正な評価

  7. 新しい働き方の実現
  8. テレワーク・時差出勤・フレックスタイム制の利用拡充、顧客・取引先対応や採用・人材育成のリモート対応

取り組みについては、さらに詳細な方法を考える必要があります。例えば、長時間労働の抑制であれば、会議運営の見直し、減らす業務の見える化、業務の標準化、能力開発など、さまざまな方法が考えられます。

目的に沿った正しい取り組みができていれば、効果は表れるでしょう。

取り組みの結果をもとに検証と改善を行う

働き方改革に限ったことではなく、具体的な施策を導入した場合、結果に対する検証が不可欠です。

場合によっては結果が出ないこともあるでしょう。しかし、なぜ結果が出ていないのか、原因を検証し、改善策を講じれば、次の成果につなげることはできます。

働き方改革の取り組みの結果は、労働時間や年次有給休暇の取得率、採用力、離職率、女性管理職比率の向上など定量的なものだけでなく、従業員の満足感や働きがいの向上など、さまざまな指標で測定することが可能です。

働き方改革の目的を理解して導入しよう

政府主導でスタートした働き方改革の目的と概要、その背景について解説してきました。

少子高齢化の流れの中で、労働参加率を高めるとともに生産性向上が大きな課題となっています。この課題を解決することが働き方改革であり、それによって究極的には、働く労働者一人ひとりが、より良い将来の展望を持ち得るようにすることが目的とされています。

それぞれの企業においても、自社の状況を踏まえた目的達成のためにアイデアを出し合って働き方改革に取り組むことが求められています。

よくある質問

働き方改革を行う目的は?

究極的には、働く労働者一人ひとりが、より良い将来の展望を持ち得るようにすることです。詳しくはこちらをご覧ください。

働き方改革で代表的な取り組みは?

多様な働き方の推進、長時間労働の解消、雇用形態における賃金格差の是正などです。詳しくはこちらをご覧ください。

働き方改革を成功させるためにできることは?

それぞれの企業が自社の状況を踏まえて目的と具体策を策定して取り組むことが大切です。詳しくはこちらをご覧ください。


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