• 更新日 : 2023年5月19日

【テンプレート付き】再雇用契約書とは?作り方や手続きの業務を解説!

【テンプレート付き】再雇用契約書とは?作り方や手続きの業務を解説!

日本では少子高齢化が急速に進展し、人口が減少しています。その中で政府は経済・社会の活力を維持するため、働く意欲がある高年齢者がその能力を発揮できるように、就業機会の確保を進めてきました。定年後の再雇用制度もその1つです。

この記事では、再雇用契約の際に締結される再雇用契約書の定義などの基本的知識や、作成方法作成する際の注意点などについて解説します。

再雇用契約書とは?

まず、再雇用契約書の基本的知識として、その定義や雇用契約書との違いなどについて見ていきましょう。

再雇用契約書の定義

高年齢者雇用安定法では、定年年齢を定めている事業主に「65歳までの定年の引上げ」「65歳までの継続雇用制度の導入」「定年の廃止」のいずれかの措置(高年齢者雇用確保措置)を実施することを義務づけています。

再雇用制度は「65歳までの継続雇用制度の導入」に該当するものであり、本人が希望すれば定年後も引き続き雇用する必要があります。その際に締結される契約書が、再雇用契約書です。

雇用契約書との違い

再雇用契約書は、定年時に一度退職し、新たに再雇用される従業員との間で締結されるものですが、単に雇用契約書と称する場合は、初めて雇用される従業員との間で締結する際の契約書を指します。

再雇用が必要になるケース

再雇用契約書の締結が必要になる主なケースとして、以下の2つが挙げられます。

1つは定年後に再雇用される従業員との間で結ぶケースで、高年齢者雇用安定法に基づいて、65歳までの雇用の継続を可能にするためのものです。

もう1つは定年による退職ではなく、正社員だった従業員が育児などを理由に一旦退職し、雇用形態を嘱託社員や契約社員、パートなどに変更して再雇用される際に締結するケースです。

再雇用契約に関連する法律

再雇用契約に関連する法律は複数あり、まず「高年齢者雇用安定法」が挙げられます。事業主に対して、定年後の雇用継続を希望する65歳までの従業員に就労の機会を与えることを義務づけています。

次に「労働契約法」が挙げられます。この法律は、労働契約の締結や労働条件の変更、解雇などに関する基本的なルールを定めています。

1947年に制定された、労働者保護法の代表格である労働基準法もあります。これは戦前の状況を反省した上で、労働者が安心して働けるように労働条件の最低基準を定めた法律です。労働時間や休日、休暇、賃金、解雇などに関して労働者を保護する一方で、雇用する使用者に対しても一定の規制を設けています。

再雇用契約が可能になる条件

再雇用契約が可能になる条件について、ここでは定年後に再雇用される従業員との間で締結する場合を例に挙げて説明します。

高年齢者雇用安定法の改正により、2013年度以降は再雇用希望者全員を対象とすることが義務づけられています。

しかしながら、高年齢者の場合は健康面の不安があるでしょう。そのため、従業員の健康管理には十分に配慮し、労働時間だけでなく作業量や健康面にも配慮して職務に従事させるなど、柔軟な対応が求められます。

定年後に再雇用される場合の雇用形態は嘱託や契約、パートなどがありますが、一般的に賃金は低下します。しかし、2020年4月1日より(中小企業は2021年4月1日から)「パートタイム・有期雇用労働法」が施行され、同一労働同一賃金というルールにより、不合理な待遇差が禁止されています。そのため、同一労働同一賃金ガイドラインをしっかり確認しておく必要があります。

また、雇用保険法には高年齢雇用継続給付という給付金があります。これは60歳以後に退職して再雇用され、60歳到達時点に比べて賃金が75%未満に低下した場合、65歳までは減額された給与を補填するというものです。こうした制度についても熟知し、対応しなければなりません。

労働環境も見直す必要があります。例えば、職場の安全性や快適性を高めるための設備や備品の整備、高齢者に配慮した教育・指導の方法、若手社員とのコミュニケーション・協力体制の確立などが挙げられます。

再雇用契約書の作成方法

では、再雇用契約書はどのように作成すればよいのでしょうか。基本的なことから確認していきます。

再雇用契約書に記載する項目を洗い出す

再雇用契約書には、少なくとも以下のような項目を記載する必要があります。

  • 再雇用期間
  • 契約更新
  • 就業場所および仕事内容
  • 労働時間
  • 休日
  • 所定時間外労働
  • 休日労働
  • 休暇
  • 賃金

また、所定労働時間によっては社会保険の被保険者となる場合があるため、社会保険(健康保険、厚生年金保険、雇用保険など)の加入の有無についても項目を設けます。

雇用契約書の作成は法律で義務づけられているわけではありませんが、使用者は労働条件通知書を労働者に交付することが義務づけられています(労働基準法第15条第1項、労働準法施行規則第5条)。

定年後に再雇用する場合の労働条件通知書についても同様で、以下の事項をすべて盛り込む必要があります。

  • 労働契約の期間に関する事項
  • 就業の場所および従業すべき業務に関する事項
  • 始業および終業の時刻、所定労働時間を超える労働の有無、休憩時間、休日、休暇並びに労働者を二組以上に分けて就業させる場合における就業時点転換に関する事項
  • 賃金(退職手当および臨時に支払われる賃金などを除く)の決定、計算および支払いの方法、賃金の締切りおよび支払いの時期並びに昇給に関する事項
  • 退職に関する事項(解雇の事由を含む)
  • 退職手当の定めが適用される労働者の範囲、退職手当の決定、計算および支払いの方法並びに退職手当の支払いの時期に関する事項
  • 臨時に支払われる賃金(退職手当を除く)、賞与およびこれらに準ずる賃金並びに最低賃金額に関する事項
  • 労働者に負担させるべき食費、作業用品その他に関する事項
  • 安全および衛生に関する事項
  • 職業訓練に関する事項
  • 災害補償および業務外の傷病扶助に関する事項
  • 表彰および制裁に関する事項
  • 休職に関する事項

曖昧さのない明確な表現を用いる

再雇用契約書に限らず、雇用契約書は労働者と雇用主の権利と義務を定める文書であり、後々トラブルになった場合に訴訟などで重要な証拠資料となるものです。そのため、契約書に曖昧な表現や不明確な内容がないよう、以下の点に配慮することが大切です。

  • 契約期間や賃金などの重要事項は、具体的な数字や日付で記載する
  • 業務内容や労働条件の変更に関する条項は、変更の理由や範囲、手続きなどを明記する
  • 契約更新や契約解除に関する条項は、更新や解除の可否や条件、通知期間などを明確にする

いずれにしても、契約書では曖昧さのない明確な表現を用いることが大切です。

法令や規程と齟齬がないか確認する

再雇用契約書に「高年齢者雇用安定法」「労働契約法」「労働基準法」などの法令や、就業規則や社内規程などの規程と齟齬がないか、よく確認しましょう。法令に適合していない場合は、罰則が適用されることもあります。

被雇用者に合意を得た内容にする

定年後に再雇用される場合は一般的に賃金が下がるため、トラブルになるケースもあります。

「退職前よりも給与が下がるとは聞いていたが、ここまでとは知らなかった」などとならないように労働条件通知書を交付し、合意を得た上で再雇用契約書を締結することが大切です。

テンプレートを活用する

再雇用契約書は事業主側が作成するものですが、それなりに手間と時間がかかるため、最低限の記載事項が盛り込まれたテンプレートを活用するとよいでしょう。

この記事では、無料ですぐに使用できるテンプレートを用意しています。

自社の事情や再雇用する従業員の状況に応じて変更・追加し、活用してください。

再雇用契約書の締結手続きおよび関連業務

再雇用契約の締結に関連する業務として、事前に把握しておくべきことがいくつかあります。

再雇用希望者の選定基準の設定

高年齢者雇用安定法では、65歳までの再雇用については原則として希望者全員が適用対象とされています。心身の故障のため業務に堪えられないと認められることや、勤務状況が著しく不良で引き続き従業員としての職責を果たし得ないことなど、就業規則に定める解雇事由または退職事由(年齢にかかるものを除く)に該当する場合を除き、事業者側が選定基準を設けて希望者を除外することは認められません。

2021年4月1日に高年齢者雇用安定法が改正され、70歳までの就業機会の確保(努力義務)が規定されましたが、あくまでも努力義務であるため、65歳から70歳までの再雇用については対象者を限定する基準を設けることができます。

希望者への再雇用通知と確認

定年後に従業員を再雇用する場合、一旦退職した後の入社という感覚がなく、前述の労働条件通知書の交付を忘れるケースが少なくないようです。

後のトラブルを回避するために、必ず労働条件通知書を作成して交付しましょう。

再雇用条件の説明および交渉

長年勤務したことに敬意を表するという意味でも、再雇用条件の説明は定年退職前に十分な時間をかけて行いましょう。

再雇用契約書の作成と締結

労働条件通知書を交付し、労働条件を丁寧に説明して本人が納得した場合は再雇用契約書を締結し、双方が署名捺印します。労働条件通知書に雇用契約書が付属したものを使用してもよいでしょう。

再雇用後に労働条件を変更する場合

定年後の再雇用者の労働条件は、原則として会社側の裁量で決めることができますが、定年前と同等の労働条件を維持するのが望ましいでしょう。

労働条件を変更する場合は変更の理由や内容を社員に説明し、合理的な範囲内であることを示すことが大切です。

契約更新・終了時の対応

高年齢者雇用安定法では、65歳までは原則として契約を更新することが義務づけられています。

例外として、能力など年齢以外を理由として契約を更新しないことは認められますが、個別の状況に応じて判断されます。

ただし、解雇の場合と同様に、更新の拒絶には客観的合理性と社会通念上の相当性が必要になるため、安易に拒絶することは避けた方がよいでしょう。

再雇用契約書を作成する際の注意点

ここでは、再雇用契約書を作成する際の注意点を確認します。

以前雇用していた時と労働条件を変更する場合

労働条件の変更が合理的であるかどうかは具体的な事情によって判断されますが、一般的には以下の要素が考慮されます。

  • 再雇用前後の労働条件の差異の程度
  • 再雇用後の業務内容や責任範囲の変化
  • 再雇用後の社員の年齢や能力
  • 再雇用後の社員の生活状況や経済的負担
  • 企業の経営状況や人事方針

給与などの労働条件の低下を検討する場合は、これらの要素に照らし、その合理性を慎重に検討する必要があります。

再雇用の際の労働条件の不利益変更に対する訴訟で、事業主側の責任が認められた判例は複数あります(長澤運輸事件(最高裁2017年6月1日判決)、九州惣菜事件(福岡高裁平成2017年9月7日判決)など)。

昇給や賞与などの適用条件について

定年後の再雇用者に対する昇給や賞与は、同一労働同一賃金のルールにより同じ権限が与えられ、同じ業務に従事している場合は雇用形態を問わず、同じ賃金の支払義務が生じます。

昇給や賞与についても同様で、再雇用者についても就業規則で明確にし、就業の実態に応じて決める必要があります。

再雇用契約書の作り方や手続きを知っておこう!

再雇用契約の際に締結される再雇用契約書の定義などの基本的知識や作成方法、作成する際の注意点などについて解説しました。

定年後の再雇用では、労働条件の低下を巡ってトラブルになるケースが少なくありません。事業主側は、本人が長年勤務したことに敬意を表すことが大切です。

法的にも、適切な労働条件のもとに本人が納得する再雇用契約書を作成し、締結することが労使双方にとって重要です。

よくある質問

再雇用契約書とは何ですか?

定年などで一旦退職した従業員を再雇用する際に締結する契約書です。詳しくはこちらをご覧ください。

再雇用契約書を作成する際の注意点を教えてください。

労働条件を不利に変更する場合は、それが合理的でなければなりません。詳しくはこちらをご覧ください。


※ 掲載している情報は記事更新時点のものです。

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