• 作成日 : 2022年12月9日

厚生年金における経過的加算とは?計算方法などわかりやすく解説!

厚生年金における経過的加算とは?計算方法などわかりやすく解説!

長く加入するほど将来もらえる年金額が増えていくのが厚生年金保険ですが、50歳以上の方にハガキで届く「ねんきん定期便」に載っている経過的加算額を見て、経過的加算の意味がわからず疑問を感じている方もいるのではないでしょうか。

今回は、厚生年金保険の経過的加算についてわかりやすく解説するとともに、その計算方法も紹介します。

厚生年金における経過的加算とは?

経過的加算は、20歳未満や60歳以降に厚生年金保険に加入していた場合に、老齢厚生年金に上乗せして支払われる金額です。老齢厚生年金と特別支給の老齢厚生年金の違いとともに、経過的加算の仕組みについて見ていきましょう。

①老齢厚生年金と特別支給の老齢厚生年金の違い

国民年金と厚生年金保険は2階建てと聞いたことがある方もいるでしょう。1階部分の国民年金からは、日本に住んでいるすべての方共通の老齢基礎年金(いわゆる国民年金)が支給され、2階部分の会社員や公務員が加入する厚生年金保険からは、報酬に比例して支給される老齢厚生年金が支給されます。この2つは65歳から受け取るのが原則ですが、60歳以降に受給できる「特別支給の老齢厚生年金」と呼ばれるものがあります。

特別支給の老齢厚生年金は、昭和61年4月に厚生年金保険の受給開始年齢が65歳に引き上げられた際、経過措置として生年月日に応じて段階的に引き上げるために設けられた制度です。現在の老齢厚生年金との違いを見てみましょう。

  1. 受給期間
    現在の老齢厚生年金:65歳から亡くなるまでの間受給することが可能
    特別支給の老齢厚生年金:60歳から65歳までの有期年金となっており、65歳になると受け取る権利がなくなる
  2. 主な年金額
    現在の老齢厚生年金:加入期間や報酬に応じて金額が計算される「報酬比例部分」特別支給の老齢厚生年金:老齢基礎年金の金額に相当する「定額部分」と「報酬比例部分」の合計金額

②経過的加算とは

65歳になって特別支給の老齢厚生年金が支給されなくなっても、65歳からは現在の制度に基づく老齢基礎年金と老齢厚生年金を受け取ることが可能です。しかし、老齢厚生年金の加入期間や加入時期によっては、特別支給の老齢厚生年金の老齢基礎年金相当額である「定額部分」が老齢基礎年金の額よりも多くなることがあります。このような場合に、60歳以前に受給していた「定額部分」の金額を保障するために、65歳以降もその差額を老齢厚生年金に上乗せして支給するのが「経過的加算」です。

国民年金の制度からもらえる老齢基礎年金の金額は、20歳〜60歳までの国民年金や厚生年金保険の納付月数で計算します。しかし、20歳未満や60歳以降に厚生年金保険に加入していたとしても、老齢基礎年金の金額は増えません。

たとえば、22歳〜62歳まで会社員として働いていた場合はどうでしょう。同じ40年働いたとしても国民年金には38年しか加入していないこととなるため、老齢基礎年金は38年分しか計算されません。この場合、60歳〜62歳まで厚生年金保険に加入している期間があるため、「経過的加算」として2年分の老齢基礎年金の金額に相当する額が、厚生年金保険から加算されることになります。

20歳未満や60歳以降の厚生年金保険の加入期間は老齢基礎年金の金額には反映されません。特別支給の老齢厚生年金の「定額部分」の計算による金額と厚生年金保険に加入していた期間における老齢基礎年金との差額、つまり、老齢基礎年金の金額に反映しない「定額部分」による老齢基礎年金相当額が、厚生年金保険から加算される仕組みになっているのです。

また、老齢厚生年金を受け取りながら企業で働く場合には、在職老齢年金の計算の仕組みによって年金額の一部または全部が支給停止になることがあります。在職老齢年金として老齢厚生年金が一部支給停止となったとしても、経過的加算は支給停止の対象にならないことも覚えておきましょう。

広告
広告

老齢厚生年金および経過的加算の対象となる人

老齢厚生年金は、老齢基礎年金の受給資格である「10年間の受給資格期間」を満たせば、厚生年金保険の加入期間が1ヵ月だったとしても受給することが可能です。受給資格期間には、国民年金、厚生年金保険、共済組合等に加入していた期間のすべてをカウントすることができます。

経過的加算がもらえる人は、厚生年金保険に加入していた人です。したがって、国民年金の加入期間しかない人、つまり、厚生年金保険がもらえない人は、経過的加算の対象にはなりません。なお、経過的加算は厚生年金保険の加入期間のうちの480ヵ月が限度となるため、20歳〜60歳までの40年間、厚生年金保険に加入している場合にも原則として加算はありません。ただし、現状は、老齢基礎年金よりも特別支給の老齢厚生年金の「定額部分」の金額の方が計算方法の違いによって若干多くなるため、その差額が支給されています。

参考:老齢年金ガイド(令和4年度版)|日本年金機構

広告
給与計算の内製化 何を準備すべきかこれで解決! 資料をダウンロードする(無料)
広告

経過的加算の計算方法

経過的加算は、特別支給の老齢厚生年金の定額部分の計算による金額と厚生年金保険に加入していた期間における老齢基礎年金との差額から計算します。計算方法は以下のとおりです。

(令和4年度の年金額で各種経過措置による計算率を考慮せずに計算)

定額部分の金額 - 777,800円 × 20歳以上60歳未満の厚生年金保険加入月数 ÷ 480

定額部分の単価(令和4年度の単価単価)は1,621円となりますので、定額部分は以下のように計算します。

定額部分の金額 = 1,621円 × 厚生年金保険加入月数(上限480月)

22歳から62歳まで40年間厚生年金保険に加入した場合で、経過的加算額を具体例から計算してみましょう。

  • 定額部分:1,621円×480ヵ月=778,080円
  • 老齢基礎年金:777,800円×38年×12ヵ月÷480=738,910円
  • 経過的加算:778,080円-738,910円=39,170円

このケースでは厚生年金保険の掛け込み期間は40年間ありますが、老齢基礎年金の計算期間は38年しかないため、2年分の老齢基礎年金相当額が経過的加算として厚生年金保険に上乗せされることになります。

参考:老齢厚生年金の受給要件・支給開始時期・年金額|日本年金機構

広告

経過的加算を受け取るために手続きは必要?

経過的加算を受け取るための特別な手続きはありません。65歳になって老齢厚生年金と老齢基礎年金を受け取る手続きをすれば、経過的加算は自動的に計算されて支給されます。

経過的加算は厚生年金保険を受給しなければ受け取ることができません。「以前厚生年金保険に加入していたことがあるけれども、期間が短くてもらえない」という方もいるのではないでしょうか。しかし、受給資格期間が10年に満たないからといって、あきらめる必要はありません。

受給資格期間の10年には、国民年金、厚生年金保険、共済組合等に加入していた期間のほか、年金額には反映されなくても期間だけ加算できる合算対象期間と呼ばれる期間や、保険料免除期間も含めることができます。70歳以降も厚生年金保険に加入できる高齢任意加入の制度や、国民年金に最長70歳まで加入できる任意加入制度もありますので、受給資格期間が足りない人は年金事務所などで相談することをおすすめします。

参考:70歳以上の方が厚生年金保険に加入(高齢任意加入)するとき|日本年金機構任意加入制度|日本年金機構

広告

60歳以降も働くことで厚生年金の経過的加算を増やせるケースがある

厚生年金保険の経過的加算は、老齢基礎年金の金額に反映しない老齢基礎年金相当額が、厚生年金保険に上乗せされる金額です。たとえば、大学卒業後、22歳で就職して厚生年金保険に40年加入していないという場合、60歳以降も厚生年金保険に加入すれば、報酬比例部分だけではなく、経過的加算によっても厚生年金保険の年金額を増やすことができます。

近年、多くの企業で定年引上げや継続雇用制度により、65歳、70歳まで働く方が増えています。厚生年金保険は70歳になるまで加入することができ、加入期間が長いほど受け取る年金額が増加する仕組みです。厚生年金保険の加入期間によっては、60歳以降も働くことで年金額を増やせるケースもありますので、今一度、年金定期便などで加入期間の確認をしましょう。

よくある質問

厚生年金における経過的加算とはなんですか?

特別支給の老齢厚生年金の「定額部分」の計算による金額と厚生年金保険に加入していた期間における老齢基礎年金との差額が、厚生年金保険に上乗せされます。この上乗せされた金額を経過的加算といいます。詳しくはこちらをご覧ください。

老齢厚生年金と特別支給の老齢厚生年金の違いについて教えてください。

特別支給の老齢厚生年金は、65歳で失権する有期年金であり、その年金額は老齢基礎年金の金額に相当する定額部分と報酬比例部分の合計額です。老齢厚生年金は亡くなるまで受け取れますが、定額部分はありません。詳しくはこちらをご覧ください。


※ 掲載している情報は記事更新時点のものです。

監修:加治 直樹(経営労務コンサルタント)

銀行に20年以上勤務し、融資融資から資産運用、年金相談まで幅広く相談業務の経験あり。中小企業の決算書の財務内容のアドバイス、資金調達における銀行対応までできるコンサルタント。退職後、かじ社会保険労務士事務所として独立。現在は行政で企業及び労働者の労働相談業務を行いながら、セミナー講師など幅広く活動中。

関連記事