• 更新日 : 2025年7月18日

介護休暇とは?同居していない場合や取得条件、介護休業との違いを解説

介護休暇は、介護を要する必要な家族を持つ従業員が取得できる法定休暇です。従業員が申し出れば、会社は原則として断ることができません。家族の世話や入院の付き添いをしながら働く従業員にとって、介護休暇制度は重要なサポートです。

こちらの記事では、介護休暇制度の取得条件や申請方法、介護休業との違いについて解説します。

介護休暇とは?

介護休暇は、労働者が要介護状態にある対象家族の介護や世話をするための休暇です。ここでいう要介護状態とは、「負傷、疾病または身体上もしくは精神上の障害により、2週間以上の期間にわたり常時介護を必要とする状態」を指します。

労働者は年次有給休暇とは別に取得することが可能です。育児・介護休業法に定められた休暇制度であり、会社は、従業員から申し出があった場合、原則として断ることはできません。

参考:育児休業、介護休業等育児又は家族介護を行う労働者の福祉に関する法律 第2条| e-Gov法令検索

介護休暇の利用目的

介護休暇が有給か無給かは、企業の就業規則によって異なります。介護を必要とする家族のために利用できる休暇となるため、従業員が短期間でも休みが欲しいときに以下の目的で有効に活用することができます。

  • 家族の通院の付き添い
  • 家族の入院手続き
  • 介護保険手続きや介護サービスの申込みの代行
  • ケアマネとの打ち合わせ など

    介護休暇の取得条件

    「日々雇入れられる労働者」いわゆる日雇い労働者は除かれますが、介護休暇は原則として誰でも取得することが可能です。介護休暇の取得条件について見ていきましょう。

    参考:介護休業制度|厚生労働省

    雇用期間

    介護休暇は雇用期間を問わず取得できるのが原則です。ただし、労使協定を結ぶことによって、以下に該当する従業員からの介護休暇の申出を拒むことができます。

    • 雇用されてから6カ月未満の従業員
    • 所定労働日数が週2日以下となる従業員
    • 時間単位で介護休暇を取得することが困難な業務に就く従業員※(1日単位で取得することは可能)

      ※ 国際路線の客室乗務員(CA)のように航空機内で従事する業務や、長時間の移動が必要な遠隔地での業務、流れ作業や交替制勤務など、時間単位の介護休暇の取得が困難な業務などが考えられます。

      介護休暇で取得可能な休暇日数

      初年度の取得可能な休暇の日数は以下のとおりです。

      • 介護対象家族1名・・・5日
      • 介護対象家族2名以上・・・10日(上限)

        介護休暇は、1日単位でも時間単位でも取得することができます。時間単位で取得する場合には、1日の時間数は「1日の所定労働時間数」とするのが原則です。1日の所定労働時間が7時間30分などと1時間未満の端数がある場合は、端数を切り上げて(この場合は8時間)計算します。

        また、パートやアルバイトなどで 日によって異なる所定労働時間数を設定している場合は、1日あたりの平均所定労働時間数を1年間の所定労働時間数から計算する流れですします。1年間の総所定労働時間数を定めていない場合は、所定労働時間数が定められている期間で1日あたりの平均所定労働時間数を計算することになります。

        家族の入院の手続きや介護保険の手続きなどで、従業員が半日や2時間だけ休みたいということもあるでしょう。時間単位で取得して始業から遅れて出勤するケースや早退するケース、就業時間の途中で時間単位で取得するケース(中抜け)などがあるため、従業員の希望によって柔軟な対応ができるように配慮することが求められます。

        介護休暇の家族の範囲

        家族範囲は以下のとおり定義されています。

        • 配偶者(事実婚を含む)
        • 父母
        • 子(養子を含む)
        • 配偶者の父母
        • 祖父母
        • 兄弟姉妹

          家族の範囲_介護休業

          引用:介護休業制度|厚生労働省

          介護の範囲(要介護状態の判断)

          要介護状態といえるかは、「2週間以上の期間にわたり常時介護を必要とする状態」」であるかで判断します。ただし、要介護認定の通知書や病院の医師の診断書を提出しなければ、介護休暇の利用を認めないとする運用は認められていません。対象家族が要介護認定を受けていなかったとしても、介護休暇を取得することは可能です。厳格な判断をするのではなく、介護する従業員の事情に配慮して柔軟な運用をすることが大切です。

          常時介護を必要とする状態の判断基準は、厚生労働省が2024(令和6)年1月に作成した「育児・介護休業法のあらまし」にも掲載されているので参考になるでしょう。

          要介護を必要とする状態

          要介護を必要とする状態2

          引用:「育児・介護休業法のあらまし (育児休業、介護休業等育児又は家族介護を行う労働者の福祉に関する法律) ~令和4年4月1日、10月1日、令和5年4月1日施行対応~」(61,62ページ)|厚生労働省
          引用:常時介護を必要とする状態に関する判断基準|厚生労働省

          同居していない場合でも介護休暇は取得可能か

          介護休暇は対象となる家族が同居している、していないにかかわらず取得できます。遠方に住んでいたとしても問題ありません。「同居していないから」といって職場は介護休暇の取得を拒むことはしてはいけません。

          対象家族は先ほども挙げたように、配偶者(事実婚を含む)、父母、子(養子を含む)、配偶者の父母、祖父母、兄弟姉妹、孫となります。

          また、同様に直接介護を行うケースはもちろん、通院の付き添いや介護サービスに関わる手続きのために介護休暇を取得することができます。

          介護休暇中の給料・賃金はどうなる?

          労働基準法に定められた年次有給休暇は、文字どおり有給の休暇となるため賃金の支払いが伴います。しかし、介護休暇は、年次有給休暇とは異なり、会社の規定で無給扱いとすることも有給扱いとすることも可能です。そのため、介護休暇で賃金が支払われる企業もあれば、賃金が支払われない企業もあり、企業によってさまざまです。

          なかには年次有給休暇を利用して家族の介護をする従業員がいることもあるでしょう。年次有給休暇を利用するか、介護休暇を利用するかは、労働者が自由に選べます。そのため、介護休暇が取得できるケースでも、給与が支払われないために年次有給休暇を利用する従業員も一定数います。

          家族の介護は誰にでも起こり得ることです。従業員が仕事と介護の両立ができるように、介護休暇を有給扱いとすることも検討しましょう。

          介護休暇取得による給与控除のフロー【無給の場合】

          介護休暇は法律上「無給」とされており、取得日または取得時間分の給与控除が必要です。就業規則や労使協定によって有給とすることも可能ですが、ここでは無給の場合の給与控除の計算方法と処理フローについて解説します。

          日単位・時間単位での控除方法を整理する

          給与控除の方法は、介護休暇が「日単位」か「時間単位」かによって異なります。

          【日単位の場合】
          月給者であれば、「月給 ÷ 月の所定労働日数」で1日あたりの給与額を算出し、その金額を控除します。たとえば、月給30万円で月所定労働日数が20日であれば、1日あたり15,000円が控除額となります。

          【時間単位の場合】
          同様に、1日の所定労働時間で割った時間単価を基に控除します。1日8時間勤務であれば、15,000円 ÷ 8時間 = 1,875円/時間が基準となり、たとえば2時間取得した場合は3,750円の控除となります。

          時給制のパートタイマーやアルバイトの場合は、そのまま時給×取得時間分で控除を計算できます。

          勤怠情報と給与計算の連携を確実に行う

          介護休暇の取得状況は、必ず勤怠記録に正しく反映されていなければなりません。紙やExcelで管理している場合も、給与計算担当者が毎月の勤怠と照合し、介護休暇の取得日・時間を見落とさないよう注意が必要です。

          勤怠システムがある場合は、休暇区分に「介護休暇(無給)」として登録し、取得数が自動で給与計算に連携される設定を行うと効率的です。連携が自動でない場合は、月次締めのタイミングで人事が取得データを確認し、手動で給与システムに反映する運用も想定されます。

          また、介護休暇が有給となる特殊なケースでは、給与計算時の判断ミスを防ぐため、休暇種別ごとの処理ルールをマニュアル化し、担当者間で共有しておくことが望ましいです。

          介護休暇の時間単位取得に対応した勤怠管理の設定

          介護休暇は法律上、1日単位・半日単位に加えて「時間単位」での取得も可能となっています。勤怠管理においても時間単位の記録・管理が求められるため、制度に合わせた適切な運用ルールの設計と記録方法の整備が必要です。

          時間単位での取得ルールを就業規則に反映する

          まず重要なのは、時間単位取得を認める場合の条件や運用ルールを、就業規則または介護休暇規程に明文化しておくことです。たとえば、取得単位を「1時間以上、1時間単位」と定める、1日の中で取得できる上限時間を設定する、1年間で取得できる回数や総時間数を管理するなど、制度の誤用や濫用を防ぐための具体的なルールが必要です。

          あわせて、事前申請の期限(例:前日までに上長へ申請)や、業務引き継ぎの方法など、現場での実務運用に支障が出ないよう配慮した制度設計が求められます。

          勤怠管理上の申請・承認フローを整備する

          時間単位で介護休暇を取得するには、他の休暇や遅刻・早退と明確に区別した申請・承認フローを整備する必要があります。たとえば、通常の勤怠届とは別に「介護休暇(時間単位)申請書」を用意し、開始・終了時間、介護理由の簡易記載、上司の承認欄を含めた書式を作成します。

          勤怠管理システムを導入している企業であれば、休暇区分に「介護休暇(時間単位)」を追加し、対象者が正確に入力できるようなフォーム設計を行います。システムがない場合でも、Excelや紙の勤怠表に記載欄を設け、他の休暇と識別できるよう管理することが重要です。

          時間数管理と年次上限の記録方法を明確にする

          介護休暇の付与日数は年5日(対象家族が2人以上の場合は10日)ですが、時間単位取得を許可した場合は、これを時間に換算して管理する必要があります。たとえば、所定労働時間が8時間であれば、1日を8時間と換算し、5日=40時間として残時間数を管理します。

          勤怠管理においては、休暇を取得するごとに残時間数を自動または手動で更新し、月次や年次で取得状況を確認できる仕組みを整えることが求められます。システム未導入の企業であっても、管理台帳やExcelを用いて日数→時間への換算と消化履歴を記録する運用が望ましいです。

          介護休暇の申請方法、手続きの流れ

          介護休暇の申請方法や手続きの流れについて、具体的に解説します。

          介護休暇の申請方法

          介護休暇の申請方法は口頭での申出が可能です。しかし、法令で以下の事項を明らかにしなければならないことが定められているため、書面で申請するのが一般的です。

          • 従業員氏名
          • 対象となる家族の氏名・続柄
          • 取得年月日(時間単位で取得する場合は開始と終了日時)
          • 対象となる家族が要介護状態となっている事実

            介護休暇申出書の無料テンプレート

            介護休暇申出書の書式は厚生労働省の育児・介護休業等に関する規則の規定例にも示されています。書式を参考にひな型形を作成しておくのがよいでしょう。マネーフォワード クラウド給与では、介護休暇申出書(エクセル)のひな形を無料でダウンロードすることが可能です。法令で定められた事項がカバーされているため、必要項目を入力するだけでそのまま利用ができて便利です。

            参考:育児・介護休業等に関する規則の規定例|厚生労働省

            介護休暇取得の手続きの流れ

            介護休暇取得を希望する従業員がいる場合には、事前に介護休暇申出書の書式に必要事項の記入を依頼して提出してもらうだけです。急遽休暇を必要とするケースもあるため、当日の電話の申出により事後書面の提出を認めるなどといった柔軟な対応をしましょう。

            介護休暇と介護休業の違い

            介護休業も介護休暇も家族の介護のために取得できることは変わりがありませんが、取得できる日数などに大きな違いがあります。介護休暇と介護休業の違いについてまとめると以下のようになります。

            介護休業介護休暇
            対象者原則としてすべての従業員(日々雇用される労働者は除く)※有期雇用の場合は、申出時点で介護休業取得予定日から一定期間、労働契約期間が満了して更新されないことが明らかでないこと
            原則としてすべての従業員(日々雇用される労働者は除く)
            原則としてすべての従業員(日々雇用される労働者は除く)
            労使協定で除外できる従業員
            • 勤続1年未満の従業員
            • 93日以内に雇用が終了する従業員
            • 所定労働日数が週2日以下の従業員
            • 勤続6カ月未満の従業員(2025年4月1日から廃止)
            • 所定労働日数が週2日以下の従業員
            • 時間単位で介護休暇を取得することが困難な業務に就く従業員(1日単位で取得することは可能)
            対象家族の範囲配偶者(事実婚を含む)
            父母
            子(養子を含む)
            配偶者の父母
            祖父母
            兄弟姉妹
            配偶者(事実婚を含む)
            父母
            子(養子を含む)
            配偶者の父母
            祖父母
            兄弟姉妹
            回数対象家族1人につき3回まで1年度に対象家族1人の場合は5日まで
            対象家族が2人以上の場合は10日まで
            期間対象家族1人につき通算 93 日

            参考:「育児・介護休業法のあらまし (育児休業、介護休業等育児又は家族介護を行う労働者の福祉に関する法律) ~令和4年4月1日、10月1日、令和5年4月1日施行対応~」|厚生労働省

            介護休暇と介護休業はどちら選ぶと良い?

            介護休暇は、家族の通院の付き添いや家族の入院手続き、介護保険手続きや介護サービスの申込みの代行など、介護が必要な家族のために短期間の休暇が必要なときに利用するのがよいでしょう。短時間で終わるケアマネとの打ち合わせや、医師から話を聞くだけのケースでは、時間単位の介護休暇を取得によって用事が済むケースもあります。

            介護休業は、対象家族1人あたり、通算で93日、3回に分けて休業をすることが可能です。介護を必要とする家族の介護ができる体制を整えるために、一定の期間がかかるケースで利用します。介護施設や老人ホームなどに入居させるために準備をするケース、自宅で介護を行うためにリフォームするケースなど、介護の体制を整え、さまざまな手続きや今後の介護の方法を相談をしなければならないケースでは、家庭で介護をするための制を整えるのに一定の期間がかかります。

            介護休暇と介護休業は目的に応じて使い分けるのがよいでしょう。

            介護休暇取得に関する社内規定の整備と周知方法

            介護休暇制度を円滑に運用するためには、法令に基づいた社内規定の整備と、従業員への適切な周知が不可欠です。明文化と共有によって、トラブル防止と取得促進の両立が図れます。

            制度の根拠と運用ルールを社内規定に明記する

            まずは、育児・介護休業法に基づいた制度の根拠を就業規則または別途の「介護休暇規程」に明文化する必要があります。記載すべき内容としては、対象者の範囲、取得単位(日・半日・時間)、取得可能日数、申請手続き、承認フロー、給与(原則無給)、給与控除方法などが挙げられます。

            時間単位取得に対応する場合は、取得単位(例:1時間単位)や残数管理の方法まで具体的に記載することが重要です。また、法定よりも手厚い制度(例:有給扱い)を導入する場合は、その条件も明示しておく必要があります。

            社内イントラや説明会で全従業員に制度を周知する

            制度を整備した後は、従業員全体に向けた丁寧な周知が求められます。社内イントラネットやメール配信、就業規則の改定通知書の配布など、従業員がアクセスしやすい手段を活用して、制度内容を明示します。

            さらに、管理職向けには運用ルールに関する研修や説明会を実施し、現場での適切な対応を促すと効果的です。個別相談窓口やQ&A形式の社内資料を用意することで、取得希望者の不安や疑問にもきめ細かく対応できます。

            介護離職を防ぐためには従業員への配慮が必要

            近年、育児や介護を理由に離職する労働者が発生しないように、育児・介護休業法の法改正がたびたび行われています。企業としても、育児や介護を理由に優秀な従業員が退職してしまうことは大きな損失です。

            介護休暇は、対象家族が1人の場合は年5日まで、2人以上の場合は年10日まで介護のために取得できる休暇です。介護を必要とする家族がいる従業員には、介護休業や介護休暇など、利用できる制度について事前に説明し、介護のために離職するようなことがないように配慮をすることが必要です。


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