- 更新日 : 2024年3月19日
出社とは?企業や従業員のメリット・デメリット、リモートの課題を解説
ここ数年の労働環境は、リモートワークの普及により大きく変化しましたが、出社の重要性は依然として高いままです。この記事では、出社の定義、コロナ禍を経てなぜ出社率が再び高まっているのか、そして出社が企業と従業員にもたらすメリットとデメリットを解説します。また、新しいノーマルとして注目される出社とリモートワークのハイブリッドモデルについても取り上げ、その効果的な運用方法を考察します。
目次
出社とは?
まず、ごく普通に使われている出社という言葉について考えてみましょう。
出社の使い方・例文
出社とは、従業員が職場に物理的に行くことを意味します。この用語は、日常的に仕事をするためのオフィスや職場への移動を指す場合に使用されます。例えば、「明日は9時に出社してください」という指示は、従業員に対し、翌日の9時にはオフィスに来るよう求めるものです。
出社は、職場の環境で直接仕事を行うことを前提としており、チームメンバーや上司との面と向かったコミュニケーションや物理的な書類の取り扱い、オフィス機器の使用など、職場特有の業務を遂行する際に必要とされます。出社という言葉は、単にオフィスに行くこと以上の意味を持ち、職場における対面での社員間の協力を促進する目的を含んでいるといえるでしょう。
出社と出勤の違い
出社と出勤はよく似た概念ですが、一定の違いがあります。出社は実際に職場へ行く行為を指すのに対し、出勤はより広い意味を持ち、勤務を開始すること全般を含みます。つまり、出勤は出社することを含み、リモートワークや在宅勤務をしている場合の勤務開始も出勤に含まれます。
例えば、自宅で仕事をする場合も、従業員は出勤しているととらえることができますが、この場合は出社していないことになります。出勤は勤務の状態やステータスを示し、出社はその勤務が物理的な職場で行われる他の同僚との対面での仕事を意味します。この違いは、昨今の多様な働き方が叫ばれ、リモートワークが普及する中では、出勤と出社を区別する意味は大きいと考えられます。
コロナ禍以降オフィスの出社率が高まった理由
コロナ禍によるテレワーク拡大で一時的に出社率が低下しましたが、最近では出社率が回復傾向にあることが各種データからうかがえます。 では、どのような理由があるのでしょうか。
人間関係とコミュニケーションの改善
コロナ禍によるリモートワークの長期化は、人間関係の希薄化やコミュニケーションの課題を浮き彫りにしました。テレワーク実施に伴うコミュニケーション不足やチームワークの低下を指摘する調査結果もあります。従業員やチーム間のコミュニケーションを円滑にし、社内の人間関係を強化するため、出社を促す方針を取り始めた企業も少なくありません。対面でのやり取りは、非言語的コミュニケーションを含む豊かな情報交換を可能にし、チームの結束力を高める効果があります。
オフィス環境の再評価
リモートワークの普及で、オフィスの役割に対する再評価が進みました。オフィスは単なる作業空間を超え、創造性やイノベーションの源泉としての価値が見直されています。特に、クリエイティブな作業やブレインストーミングを必要とするプロジェクトでは、対面での議論の方が効果的であるという認識が広がっています。また、企業文化の醸成や新入社員のオンボーディングにおいても、オフィスでの学習や体験の機会が重視されるようになりました。
メンタルヘルスへの配慮
長期間のリモートワークは、一部の従業員にとって孤独感やアイデンティティの喪失感を引き起こしました。出社を通じて社会的なつながりを持ち、ルーチンを確立することで、メンタルヘルスの維持を図ることができます。また、職場での直接的なサポートやメンタルヘルス対策の利用がしやすくなるなど、出社が従業員の心理的安定に寄与していると考えられます。
出社による企業・従業員のメリット
オンラインではなく、従業員が出社することによるメリットとしては、どのような点が挙げられるのでしょうか。ここでは、企業と従業員の両者に分けて整理してみます。
企業のメリット
出社がもたらす企業のメリットは多岐にわたります。
まず、社内コミュニケーションの向上が挙げられます。対面でのやり取りは情報伝達の速度と正確性を高め、種々の誤解を減らします。これは、迅速な意思決定やプロジェクトのスムーズな進行に直結するでしょう。
また、企業文化の醸成と強化があります。対面によって価値観や目標を共有することは、従業員のモチベーション向上や組織への帰属意識を高め、企業全体のパフォーマンス向上に寄与します。
このほか、イノベーションの促進を挙げることもできます。オフィスはアイデアが交差し、新たな発想が生まれる場所です。対面の場で偶発的かつ非公式な会話から生まれるアイデアは、リモート環境では得られにくい価値あるものです。
従業員のメリット
従業員にとって出社には、個人の成長とウェルビーイング(幸福感)の向上という2つの大きなメリットがあります。
個人の成長に関しては、対面でのフィードバックやコーチングを通じて、より効果的なスキルアップが可能です。また、共に働く仲間からの直接的な学びや刺激は、自己成長を促します。
ウェルビーイングの観点では、出社は人のつながりを強化し、孤独感を軽減します。同僚との対面での交流は、職場での居場所感や所属意識を高め、メンタルヘルスの向上につながるでしょう。さらに、家庭と職場の物理的な分離は、ワークライフバランスの改善に貢献し、仕事と私生活の境界を明確になります。これらのメリットは、従業員の満足度と仕事への熱意を高めることにつながります。
出社による企業・従業員のデメリット
メリットの一方、出社にはデメリットもあります。
企業のデメリット
出社には企業にとっていくつかのデメリットが存在します。
まず、オフィス維持にかかる費用は無視できません。賃貸料、光熱費、設備の維持管理費など、物理的なオフィス空間を維持するためには大きな経済的負担が伴います。さらに、従業員の交通費の負担も生じます。
このほか、コロナ禍で学んだように固定されたオフィス空間では、従業員間の感染症のリスクも高まることが懸念されます。業務を継続するうえでも従業員の健康と安全性を確保することが一層重要になりますが、出社することでそのリスク管理が難しくなるというデメリットがあります。
従業員のデメリット
従業員にとっては、通勤時間の負担が最も大きな問題となります。
特に大都市圏では、交通の混雑や長時間の通勤は日常的であり、この時間はストレスの原因となります。通勤のストレスは従業員の仕事へのモチベーション低下や健康問題にもつながります。
また、育児中の従業員にとっては、出社によって子どもに関与する時間がなくなるという家庭への影響もあります。
出社×リモートによるハイブリッドワークとは?
企業と従業員双方の出社のメリットとデメリットをみてきました。最近では、出社×リモートによるハイブリッドワークも注目されるようになっています。その概要、メリット、具体的な事例についてみていきます。
ハイブリッドワークの概要
ハイブリッドワークは、従業員がオフィスでの出社とリモートワークを組み合わせる勤務形態を指します。このモデルでは、週の一部をオフィスで過ごし、残りを自宅やその他の場所で働くことが可能です。
ハイブリッドワークは、パンデミック期間中にリモートワークの利点が広く認識されたことを受けて、多くの企業で採用されるようになりました。この勤務形態は、従業員にとっての柔軟性を大幅に向上させると同時に、出社がもたらす対面でのコミュニケーションやコラボレーションの利点を保持します。
ハイブリッドワークは、従業員が個々の仕事の性質や生活のニーズに応じて勤務地を選択できるようにすることで、ワークライフバランスの向上を目指します。
ハイブリッドワークのメリット
ハイブリッドワークの最大のメリットは、柔軟性と効率性のバランスを従業員に提供することです。
従業員は、集中して単独作業を行う日は自宅で働き、チームミーティングやクライアントとの対面会議が必要な日はオフィスに出社するなど、仕事の内容に応じて勤務地を選択できます。これによって、従業員のモチベーションと生産性を向上させることができます。また、通勤時間の削減によるストレス軽減や、自宅での仕事によるプライベートとのバランスの取りやすさも大きなメリットです。
企業にとっては、オフィススペースの最適化、従業員の満足度向上による人材の引き留め、幅広い地域からの人材獲得が可能になるなどのメリットを挙げることができます。
ハイブリッドワークの具体的事例
多くのグローバル企業がハイブリッドワークモデルを採用し、それぞれのニーズに合わせてカスタマイズしています。
例えば、従業員が週に2、3日オフィスに出社し、残りをリモートで働くというガイドラインを設定している企業もあります。オフィス出社日はチームミーティングやブレインストーミングセッションに充てられ、自宅での作業日は個別のタスクに集中する時間とされています。また、プロジェクトのフェーズやクライアントの要望に応じて柔軟にオフィス以外の勤務地を選択できる制度を導入しているところもあります。
ハイブリッドワークは、単一の形式に限定されているわけではなく、その企業や従業員のニーズなどによって柔軟な形で導入されています。
柔軟な働き方の再設計で企業競争力を高めよう!
出社が企業と従業員にもたらすメリットとデメリットを深掘りしました。出社とリモートワーク、それぞれのメリットとデメリットを理解し、これらを組み合わせたハイブリッドワークが企業に新たな働き方の選択肢を提供しています。
今後、企業と従業員双方にとって最適なバランスを見つけることが、生産性の向上、従業員満足度の高い職場環境の構築、そして持続可能な成長への鍵となるでしょう。
※ 掲載している情報は記事更新時点のものです。
人事労務の知識をさらに深めるなら
※本サイトは、法律的またはその他のアドバイスの提供を目的としたものではありません。当社は本サイトの記載内容(テンプレートを含む)の正確性、妥当性の確保に努めておりますが、ご利用にあたっては、個別の事情を適宜専門家にご相談いただくなど、ご自身の判断でご利用ください。
関連記事
裁量労働制とは?2024年の法改正の内容は?対応方法についても紹介!
裁量労働制とは、実際に働いた時間ではなく、あらかじめ労使で取り決めた時間を労働したものとみなして賃金を支払う制度です。裁量労働制には一定のルールがあり、適用可能な職種も限られています。本記事では、裁量労働制の概要や種類、フレックスタイム制等…
詳しくみる短時間勤務制度とは?育児・介護休業法との関わりも解説!
「短時間勤務制度」とは、その会社で定めている所定労働時間を短縮して働くことを認める制度のことをいいます。政府による働き方改革やワーク・ライフ・バランスの推進を背景に、仕事と家庭の両立を図る多様な働き方が普及しつつあります。今回は、その一つで…
詳しくみる妊娠・出産前後に使える労務の制度を解説!
妊娠中、出産前後の休業、復職後にはこんな制度が使えます 妊娠して、出産、休業そして復職して子が一定の年齢に達するまで、妊産婦の母体保護・育児と仕事の両立のために様々な制度が整備されています。いずれも法定の制度であり、「就業規則にない」からと…
詳しくみる1ヶ月単位の変形労働時間制とは?届出方法や就業規則の記載例についても解説
企業が定める労働時間の管理方法に「1ヶ月単位の変形労働時間制」があります。この制度では、1ヶ月に定められた総労働時間内であれば、繁忙期や閑散期に合わせて1日の労働時間を柔軟に調整が可能です。 休日がとくに忙しい宿泊業や飲食業、小売業に導入さ…
詳しくみる12連勤・13連勤は合法、違法?ルールや賃金の計算方法、防止策を解説
労働基準法第35条1項によると、12連勤は合法であり、連続勤務数の上限です。13連勤以上になると、労働基準法に違反する可能性があるため注意が必要です。ただし、労働基準法では労働時間や休憩、休日にルールが定められており、違反すると罰則が科され…
詳しくみる産休前に有給休暇をくっつけることは可能!社会保険料や出産手当金への影響も解説
「産休前に有給休暇を使って早めに休みたい」「有給と産休を組み合わせることで、どのような影響があるのか知りたい」と考えている方もいるのではないでしょうか。 産前休業(産休)は、労働基準法にもとづいて取得できる休暇で、有給休暇と併用することでさ…
詳しくみる