- 更新日 : 2024年8月21日
特定技能2号とは?特定技能1号や技能実習の違い、給与の注意点
特定技能2号は、外国人材の中でも、高い技能を持つ熟練労働者が対象の資格として注目を集めています。以前は2分野だった特定技能2号ですが、2023年の制度改正により外食や宿泊などが追加され、11分野に拡大されました。本記事では、特定技能2号の概要、該当する産業分野、技能実習や特定技能1号との相違点、賃金の設定方法などを紹介します。
目次
特定技能2号とは?
特定技能とは、人材不足が顕著な産業分野において、一定の技能や経験のある外国人を「労働者」として受け入れるための制度です。2018年に成立し、2019年4月から受け入れが始まりました。
特定技能には1号と2号があり、1号より2号の方が高水準の技能を要求されます。特定技能2号の在留資格を取得するには、長期間の実務経験による「熟練した技能」が必要です。
特定技能2号の受入可能な分野は、以前は建設と造船・舶用工業のみでしたが、2023年の制度改正によりビルクリーニングや飲食料品製造業などが加わり、11分野に拡大されました。2024年5月末現在、特定技能2号の外国人は98人に留まっていますが、分野の拡大に伴い、今後の人数増加が予測されています。
特定技能1号と特定技能2号の職種
特定技能には「1号」と「2号」があり、それぞれ受入可能な分野が決められています。
特定技能1号は12分野
特定技能1号は、次の12分野について受け入れができます。
- 介護
- ビルクリーニング
- 素形材・産業機械・電気電子情報関連製造業
- 建設
- 造船・舶用工業
- 自動車整備
- 航空
- 宿泊
- 農業
- 漁業
- 飲食料品製造業
- 外食業
特定技能2号は11分野(介護分野以外)
特定技能2号は、以前は建設と造船・舶用工業(溶接区分のみ)の2分野だけでしたが、2023年の制度改正により9分野が追加されました。また造船・舶用工業分野では、溶接区分以外の業務も解禁されています。
2024年7月現在、特定技能2号は、次の11分野について受け入れが可能です。
- 建設
- 造船・舶用工業
- ビルクリーニング
- 素形材・産業機械・電気電子情報関連製造業
- 自動車整備
- 航空
- 宿泊
- 農業
- 漁業
- 飲食料品製造業
- 外食業
特定技能1号のとの違いは、特定技能2号には「介護」がないことです。介護福祉士資格を持つ外国人材には、専門的・技術的分野の在留資格「介護」が設けられているためです。
特定技能1号と特定技能2号の違い
特定技能1号と特定技能2号は、在留期間や求められる技能水準などが異なります。2つの違いについて、順に解説しましょう。
在留期間の違い
在留期間とは外国人が日本に滞在できる期間のことで、在留資格によって異なります。外国人が定められた在留期間を超えて日本に滞在したいときは、在留期間が満了する前に更新手続きをしなければなりません。
特定技能1号の在留期間は「5年」が上限です。その間、1年ごと・6ヶ月ごとまたは4ヶ月ごとに、在留期間を更新する必要があります。
特定技能2号の在留期間に上限はなく、無制限に日本に在留することが可能です。ただし在留期間の更新は必要で、3年ごと・1年ごと・6ヶ月ごとのいずれかで、更新手続きをしなければなりません。
技術水準の違い
特定技能1号の在留資格を取得するには「相当程度の知識または経験を必要とする技能」を持っていることが必要です。相当程度の知識または経験を必要とする技能とは、一定の実務経験があり、特別な訓練を受けなくても業務が遂行できる水準とされています。
特定2号の在留資格取得には「熟練した技能」が必要です。熟練した技能とは、長年の実務経験により身につけた技能のことで「自分の判断で専門的・技術的な業務が遂行できる」「職場の監督者として業務を指揮できる」といったレベルを指します。
特定技能1号も特定技能2号も、上記の技能があることを証明するため、分野別の試験に合格しなければなりません。ただし技能実習2号を良好に終了した場合は、特定技能1号の試験が免除されます。
なお、特定技能2号に該当するような高い技能水準を持つ外国人は、特定技能1号を経ることなく、直接、特定技能2号の在留資格取得が可能です。
外国人支援が必要か
特定技能1号の外国人を雇い入れる会社は、その外国人が仕事や日常生活を円滑に行えるよう、職業生活上・日常生活上・社会生活上の支援をする義務があります。
支援の内容は、事前ガイダンス・生活オリエンテーション・住居の確保や銀行口座開設の補助・空港等への送迎・公共手続きへの同行・日本語教室などの情報提供・相談や苦情処理・定期的な面談・一定の場合の転職支援など、多岐にわたります。
このような支援を自社で行うことは難しいため、外部の登録支援機関に委託することが一般的です。
一方、特定技能2号の外国人を受け入れる場合は、技能実習1号に必要とされるような各種の支援をする義務はありません。
日本語能力の試験があるか
特定技能1号の在留資格を取得するためには、仕事や日常生活に必要な日本語能力が不可欠です。この日本語能力を証明するために、以下いずれかの試験に合格する必要があります。
- 日本語能力試験(JLPT)
- 国際交流基金日本語基礎テスト(JFT-Basic)
日本語能力試験は国際交流基金と日本国際教育支援協会が運営する試験で、N1からN5までのレベルに分かれ、数字の小さい方が高い難易度となっています。特定技能1号には、N4以上の合格が必要です。
国際交流基金日本語基礎テストは、C2からA1までの6レベルがあり、特定技能1号の在留資格にはA2以上での合格を要します。
なお、技能実習2号を良好に終了した場合は、日本語試験は免除されます。また、特定技能1号の「介護」の在留資格には、「介護日本語評価試験」の合格も必要です。
特定技能2号の取得には、日本語能力の試験は課されていません。
家族帯同ができるか
特定技能1号は、家族の帯同ができません。ただし、家族帯同が認められる他の在留資格から特定技能1号に資格変更した場合、すでに日本に在留している家族は「特定活動」として在留を認められることがあります。
一方、特定技能2号は、配偶者と子に限り、正式に帯同が認められています。帯同した家族が取得する在留資格は「家族滞在」です。
永住権取得の可能性
特定技能1号からは「永住者」の在留資格を取得できません。「日本に引き続き10年以上在留し、そのうち直近5年以上が就労・居住資格であること」が「永住者」の要件ですが、特定技能1号や技能実習の期間は就労期間として扱われないためです。
一方、特定技能2号の在留期間は無制限です。そのため特定技能2号として就労を続けていれば、在留資格「永住者」を取得できる可能性があります。
特定技能と技能実習の違い
特定技能と混同されがちな制度に「技能実習(1号・2号・3号)」があります。
技能実習は「人材育成を通じた国際協力」のための制度で、技能実習生が日本で学んだ技能を母国に伝えることを目的としています。
それに対し特定技能は、人材不足が深刻な分野に一定の技能を持つ外国人を労働者として受け入れるために設けられた制度です。
技能実習と特定技能には、以下のような違いがあります。
技能実習 | 特定技能 | |
---|---|---|
受入可能な職種・分野 | 移行対象職種 90職種165作業 (2023年10月時点) | 特定技能1号 12分野 特定技能2号 11分野 |
在留期間 | 技能実習1号 1年以内 技能実習2号 2年以内 技能実習3号 2年以内 | 特定技能1号 通算5年 特定技能2号 上限なし |
永住の可能性 | 不可 | 特定技能1号 不可 特定技能2号 可 |
入国時の試験 | なし 介護職種のみ日本語能力N4が必要 | あり 技能水準 日本語能力(特定技能1号、ただし技能実習2号を良好に終了した場合は免除) |
家族帯同 | 不可 | 特定技能1号 不可 特定技能2号 可 |
受入方法 | 監理団体からの紹介 | 原則として自由 |
転職 | 不可 | 同じ職種に限り可 |
技能実習から「育成就労」へ
2024年6月に改正入管法が成立し、技能実習制度が廃止され、替わりに「育成就労制度」が創設されることになりました。
技能実習制度は、国際協力の看板を掲げながらも、人手不足解消の手段に使われていた事情があります。また、技能実習と特定技能との分野・職種が一致していないため、技能実習から特定技能への移行がスムーズにいかないなど、制度上の問題も指摘されていました。
創設される育成就労制度は「人材育成と人材確保」を目的とし、転籍の要件緩和、キャリアパスの明確化など、外国人材の就労しやすい制度が想定されています。
育成就労制度は、2027年までに施行される予定です。
特定技能の賃金、給与の決め方の注意点
ここでは、特定技能の人材を雇い入れたとき、賃金をどのように設定すればよいかについて解説します。
日本人と同等以上の報酬
特定技能外国人には、日本人と同等以上の賃金を支払う必要があり、以下の基準で賃金を設定します。
- 技能などが同レベルの日本人従業員がいる場合は、その日本人と同等以上の賃金とする
- 技能などが同レベルの日本人従業員がいない場合は、会社の賃金規程により、賃金の額を決める
- 会社に賃金規程がないときは、特定技能外国人の職務内容や責任の程度などを考え、最も近い日本人従業員の賃金に照らして賃金の額を決める
なお、外国人であることを理由に、賃金に不合理な差をつけることは禁止されています。また、時間外手当の計算方法などが労働基準法に違反していないか、最低賃金法に抵触していないかなどにも注意が必要です。
その他雇用上の注意点
特定技能外国人を雇用する際は、次の事項にも留意する必要があります。
- 外国人であることを理由として、賃金の決定のほか、教育訓練や社宅・保養所など福利厚生施設の利用などについて、差別的取り扱いをしないこと
- 一時帰国するときには、必要な有給休暇を取得できるよう配慮すること
- 原則として週5日・週30時間以上の契約で雇用すること
なお、特定技能外国人は派遣労働者として雇用できません。ただし農業分野と漁業分野には、例外的に認められています。
特定技能2号を取得した外国人労働者の熟練スキルを活用しよう
特定技能とは、国内人材の確保が難しい特定産業分野において、即戦力となるような技能や経験を持つ外国人を労働者として受け入れるための制度です。特定技能には1号と2号があり、2号の在留資格を取得するには、長い経験により培われた熟練した技能が求められます。
以前は2分野のみだった特定技能2号ですが、2023年、ビルメンテナンスや宿泊などの追加により11分野に拡大され、今後の人数増加が期待されています。制度をよく知り、特定技能2号の熟練人材の活用を考えてみてはいかがでしょうか。
※ 掲載している情報は記事更新時点のものです。
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