- 更新日 : 2023年11月7日
独身者用の年末調整の書き方と記入例を紹介!
年末調整は、所得税を正確に納付するための手続きです。会社で年末調整が実施される際、会社員は必要な書類に記入し、勤務先に提出しなければなりません。年末調整で会社員が記入・提出しなければならない書類には、基礎控除申告書や扶養控除等申告書、保険料控除申告書などがあり、独身者も所定の書き方で記入のうえ、提出する必要があります。今回は、独身者の年末調整の書き方と記入例を紹介します。
目次
そもそも年末調整とは?
年末調整は、正確な所得税納付のため、年末に行う手続きです。
会社員は毎月の給料から「所得税」や「源泉所得税」、「所得税の源泉徴収分」といった項目名で、給与所得に対する所得税が差し引かれています。しかし、所得税は1年間の給与所得で金額が決まるため、正確な金額はその年の最後の給料額がわからないと計算することはできません。毎月の給料から差し引かれている所得税はあくまで概算額で、当然違いが生じます。この違いを正す手続きが年末調整です。
1月から12月までの給料で所得税として差し引かれた金額と正しい所得税額を比べて多い場合には還付、少ない場合には追加徴収が行われます。
年末調整については、以下の記事を参考にしてください。
年末調整は、基本的にその年の最後の給料で行われます。そのため、会社は1年の最後の給料となる12月支払分の計算の前に年末調整の書類を集めておく必要があり、会社員には必要書類が11月中旬から12月上旬にかけて配布されます。
会社員は必要書類が渡されたら、該当する欄に記入したり申告内容に合わせて必要な証明書などを揃えたりして、会社に指示された期限までに提出できるように準備しなければなりません。提出期限は会社の規模や給料支払日・計算期間によって異なりますが、12月上旬とされることが一般的です。
年末調整で記入が必要な書類とは?
会社で年末調整をするためには、いくつかの書類に必要事項を記入して提出する必要があります。提出が求められている書類にはそれぞれ目的があるため、きちんと揃えて提出しなければなりません。また書類には書き方が定められているので、それぞれ決められている通りに書くことが必要です。
基礎控除申告書
基礎控除申告書(正式名称:基礎控除申告書 兼 配偶者控除等申告書 兼 所得金額調整控除申告書)は、会社員が自分自身の基礎控除を申告するために必要な書類です。配偶者控除と配偶者特別控除、所得金額調整控除を申告する欄もあり、該当する欄に記入することで、これらの控除を受けることができます。
保険料控除申告書
保険料控除申告書は、生命保険や地震保険などの保険料について控除を受けるための書類です。保険会社との契約により支払った保険料のほか、家族分や追納分として納付した国民年金保険料などについて控除を受ける際も記入して提出します。
扶養控除等申告書
扶養控除等申告書は、扶養控除の申告に用いる書類です。自身の所得により生計が維持されている家族・親族の氏名や生年月日などを記入して提出することで、扶養親族の年齢といった状況に応じた控除を受けることができます。
独身者の基礎控除申告書の書き方・記入例
基礎控除申告書には、基礎控除と配偶者控除・配偶者特別控除、所得金額調整控除を受ける場合に必要な内容を記入します。独身者は配偶者控除・配偶者特別控除の申告はありません。
独身者は以下の内容をそれぞれの欄に記入します。
出典:令和5年分給与所得者の基礎控除申告書兼給与所得者の配偶者控除等申告書兼所得金額調整控除申告書|国税庁
- 1年間の給与収入の見積額
- 給与収入金額に相当する次の表の給与所得金額
- 給与所得以外に所得がある場合の金額
- ②と③の合計額
- ④の金額によって次の表から判定される基礎控除額
給与の収入金額 | 給与所得の金額 |
---|---|
1円以上550,999円以下 | 0円 |
551,000円以上1,618,999円以下 | 給与の収入金額-550,000円 |
1,619,000円以上1,619,999円以下 | 1,069,000円 |
1,620,000円以上1,621,999円以下 | 1,070,000円 |
1,622,000円以上1,623,999円以下 | 1,072,000円 |
1,624,000円以上1,627,999円以下 | 1,074,000円 |
1,628,000円以上1,799,999円以下 | (給与の収入金額/4)×2.4+100,000円(給与の収入金額/4は千円未満切り捨て) |
1,800,000円以上3,599,999円以下 | (給与の収入金額/4)×2.8-80,000円(給与の収入金額/4は千円未満切り捨て) |
3,600,000円以上6,599,999円以下 | (給与の収入金額/4)×3.2-440,000円(給与の収入金額/4は千円未満切り捨て) |
6,600,000円以上8,499,999円以下 | 給与の収入金額×90%-1,100,000円 |
8,500,000円以上 | 給与の収入金額-1,950,000円 |
④の金額 | 基礎控除額 |
---|---|
2,400万円以下 | 48万円 |
2,400万円超2,450万円以下 | 32万円 |
2,450万円超2,500万円以下 | 16万円 |
2,500万超 | 0円 |
独身者の扶養控除等申告書の書き方・記入例
独身者も扶養控除ありの場合・扶養控除なしの場合、それぞれに応じた書き方で、扶養控除等申告書を記入する必要があります。
独身で扶養控除なしの記入例
扶養控除のない独身者は、自分の名前など以外に扶養控除等申告書に記入する必要はありません。
赤枠の部分(①)に自分の名前、生年月日、マイナンバー、住所、世帯主名と続柄を記入します。配偶者の有無欄は「無」に○をつけます。
独身で扶養控除ありの記入例
独身で扶養控除ありの場合は、自分の名前などのほかに、扶養親族の名前や生年月日などを記入します。
- 16歳未満の子を扶養している場合の記入例
- 16歳以上の子を扶養している場合の記入例
- 親を扶養している場合の記入例
- 親族が非居住者である場合の記入例
16歳未満の子は扶養控除の対象ではありませんが、住民税で申告が求められています。赤枠部分に自分の名前などを記入したうえで、黄色の枠(①)に扶養している子の名前、生年月日、住所、続柄、マイナンバーなどを記入します。また、16歳未満の子が国内に住所を有しない場合には、住民税に関する事項欄の控除対象外国外扶養親族に〇を付けてください。
赤枠部分に自分の名前などを記入したうえで、青枠に扶養している16歳以上の子の名前、生年月日、住所、続柄、マイナンバーなどを記入します。(a)には子がアルバイトなどで得ている所得額を記入しますが、48万円を超えると扶養控除を受けることはできません。
子が19歳以上23歳未満のときは特定扶養親族に該当するので、(b)にチェックを入れます。
16歳以上の子供の申告と同じように、赤枠部分に自分の名前などを記入したうえで、青枠に扶養している親の名前、生年月日、住所、続柄、マイナンバーなどを記入します。
扶養している親が70歳以上の場合は「老人扶養親族」に該当します。同居している直系尊属の場合は「同居老親等」に該当するため、(c)では同居老親等にチェックを入れます。
また、退職手当等(源泉徴収されるものに限ります)の支払いを受ける扶養親族がいる場合には、「退職手当等を有する配偶者・扶養親族」欄に名前や生年月日、住所、続柄、マイナンバーなどを記入することが必要です。
非居住者の年齢が16歳以上30歳未満または70歳以上である場合には「非居住者である親族」欄の「16歳以上30歳未満または70歳以上」にチェックを入れます。
また、30歳以上70歳未満の場合は、「留学」「障害者」「38万円以上の支払」のうち該当するいずれかの項目にチェックを入れます。名前や生年月日、続柄、住所などは他の場合と同様に記入します。マイナンバーも同様ですが、マイナンバーの指定を受ける前に出国した場合であれば、記載は不要です。また、非居住者である親族が退職手当等の支払いを受ける場合には、「退職手当等を有する配偶者・扶養親族」欄に名前や住所などを記入し、「非居住者である親族」欄の該当する項目にチェックを入れてください。
独身者の年末調整の書類の書き方を正しく理解しよう!
年末調整では、書類にきちんと記入のうえ、提出することが必要です。不備があったり間違えたりしていると、正しく控除を受けることができなくなるので、独身者も記入しなければならない書類や書き方を理解して、間違いのないように正しく書きましょう。
年末調整の提出書類については、以下の記事も参考にしてください。
※ 掲載している情報は記事更新時点のものです。
人事労務の知識をさらに深めるなら
※本サイトは、法律的またはその他のアドバイスの提供を目的としたものではありません。当社は本サイトの記載内容(テンプレートを含む)の正確性、妥当性の確保に努めておりますが、ご利用にあたっては、個別の事情を適宜専門家にご相談いただくなど、ご自身の判断でご利用ください。
関連記事
年末調整はサラリーマンの特権
サラリーマンは、所得税および復興特別所得税を毎月の給料から天引きされています。 しかし、天引きされている額は確定ではなく、あくまでも概算です。保険などの諸事情は考慮せず、1年分の給料を見越して分割して先払いしているわけです。税額が確定するの…
詳しくみる青色事業専従者に年末調整は必要?
個人事業者でも従業員がいる場合、年末調整によって源泉徴収した税額の年間の合計額と年税額を一致させる精算をしなければなりません。家族を従業員として雇用していると、青色事業専従者として扱われることがありますが、ほかの従業員と同じように年末調整は…
詳しくみる源泉徴収票はペーパーレス化できる?進めるメリット・流れを解説
企業にとって、源泉徴収票の発行業務は毎年欠かせない手続きの1つです。しかし、従来の紙による発行は、印刷や郵送に時間とコストがかかる上、保管スペースの確保も必要です。近年では、こうした業務をデジタル化する取り組みが進んでおり、ペーパーレス化の…
詳しくみる給与支払報告書と総括表の書き方徹底ガイド
給与支払報告書と総括表は、住民税を計算するために、会社から各従業員の住む市区町村へ提出するものです。 ここでは給与支払報告書と総括表の書き方を項目ごとに紹介するとともに、給与支払報告書を市区町村へ提出しなかった場合、会社はどのようなペナルテ…
詳しくみる遺族年金に年末調整は必要?
受け取った遺族年金による年金収入は非課税であるため、年末調整は原則不要です。また、扶養に入るためには年間所得が一定額以下である必要がありますが、税法上、遺族年金はこの所得に含まれません。今回は遺族年金における年末調整の必要性や、税金あるいは…
詳しくみる退職後の年末調整のやり方 – 無職なら確定申告が必要?
退職後、12月時点で離職中である場合、年末調整をおこなう必要はありません。しかし、所得税を払いすぎている可能性があるため、退職した会社から発行された源泉徴収票をもとに、退職した翌年に確定申告をするとよいでしょう。今回は、退職後の年末調整の必…
詳しくみる