• 更新日 : 2024年12月11日

従業員の所得税はいつ払う?納期や納付方法、納付期限を過ぎた場合を解説

従業員の給与には所得税が課せられます。企業は、給与から徴収した所得税を納付期限までに納めなくてはなりません。

当記事では、所得税の納付期限や納付方法、特例などについて解説します。納付期限を過ぎた場合には、ペナルティが発生する場合もあります。正しい知識を身につけてペナルティを回避してください。

従業員の所得税はいつ払う?

企業は、従業員に支払う給与から所得税を天引きしたうえで支給しなければなりません。天引きした所得税は、企業が従業員に代わって納付します。このような仕組みを「源泉徴収」と呼び、天引きされる所得税は「源泉所得税」と呼ばれます。

源泉徴収の対象となるのは、正社員だけではありません。パートやアルバイトであっても、月給8.8万円を超える場合には源泉徴収の対象となります。源泉徴収される源泉所得税の額は、「給与所得の源泉徴収税額表」を参照することで確認可能です。

原則として企業が徴収した源泉所得税は、給与などを実際に支払った月の翌月10日までに納付しなければなりません。ただし、納付期限には特例が設けられています。この制度の詳細は後述します。

納付期限後に納付するとペナルティが発生することもあるため、企業は期限を守ることが重要です。

参考:給与所得の源泉徴収税額表(令和6年分)|国税庁

従業員の所得税はどこに支払う?

所得税は、相続税や贈与税などと同様に国税であるため、国に対して納付します。実際の支払い先となるのは、企業の所在地を管轄する税務署や銀行等の金融機関です。

従業員の所得税を年2回にまとめて納める特例とは?

従業員から徴収した源泉所得税の納期には、特例があります。一定の条件を満たす必要がありますが、特例の適用を受ければ、毎月ではなく年に2回半年分ずつを納付することが可能です。

給与支給が常時10人未満の事業者が対象

特例の対象となるのは、給与を支払うべき従業員数が常時10人未満の事業所です。毎月の納税事務が負担となる小規模な事業所で、事務の負担を軽減できるのがメリットです。また、納付回数が減るため、納付期限後の納付で発生する不納付加算税の発生リスクを抑えることにもつながります。

年2回の所得税の納付期限

特例の適用を受けた場合の納付期限は、以下の通りです。

  • 1月から6月分:7月10日が納付期限
  • 7月から12月分:翌年1月20日が納付期限

特例の適用を受ければ、事務手続きの負担は軽減されますが、半年分を一度で納付しなければなりません。毎月の納付よりも資金繰りが難しくなる点はデメリットといえるでしょう。

源泉所得税の納期の特例の手続き

納期の特例の適用を受けるためには、管轄の税務署に対して申請書を提出し、承認を受けなければなりません。申請が却下されなければ、申請書提出月の翌月末に承認があったものとみなされ、提出月の翌月に源泉徴収する所得税から特例の適用対象となります。また、10人以上の従業員を常時雇用することとなった場合には、適用の要件を満たさなくなるため届出を行うことが必要です。

従業員の所得税の支払い方法

源泉所得税の支払い方法は、管轄税務署や金融機関の窓口における現金納付だけではありません。窓口納付のほかにも、以下のような方法が認められています。

  • クレジットカード納付

インターネットで、クレジットカードの支払い機能を利用する方法です。国税庁長官が指定した納付受託者へ立替払いを委託することで、源泉所得税を納付します。なお、一度で1,000万円以上となる支払いには利用できず、利用には決済手数料がかかります。

  • ダイレクト納付

e-Taxを利用し、源泉徴収税を口座振替により支払う方法です。利用するには事前にe-Taxで利用開始手続きを行い、届出書を管轄税務署へ提出しなければなりません。

  • インターネットバンキング

インターネットバンキングやATMなどを利用して電子納付する方法です。利用の前にe-Taxでの利用開始手続きが必要となります。

  • スマホアプリ納付

国税庁長官により指定された納付受託者が運営する専用Webサイトで、Pay払いを選択して納付を委託する方法です。利用可能なPay払いには「PayPay」「amazon pay」「LINE pay」などがあります。

  • コンビニ納付

出力したQRコードや税務署が発行するバーコード付き納付書などを利用して、コンビニ店頭で支払う方法です。なお、支払い時にクレジットカードや電子マネーは利用できないため注意してください。

いずれの支払い方法を選択するかは企業の自由です。確実な納付が望める方法を選択し、未納を防ぎましょう。

従業員の所得税の納付期限を過ぎた場合

源泉所得税の納付期限を過ぎた場合には、ペナルティが発生する恐れがあります。未納状態となった場合には、本税の10%で計算された「不納付加算税」が課されます。ただし、災害の発生など、やむを得ない理由による場合には、不納付加算税は免除されます。また、不納付加算税の金額が5,000円未満となる場合も対象外です。

納付期限を超過した場合には、できうる限り早く納税することが重要です。納付期限となる日から1か月以内の納付であり、過去の1年以内において納付期限後に納付したことがないのであれば、不納付加算税が発生しません。仮に期限を超過してしまっても早めに納税することで、ペナルティを回避できます。

また、納付期限の翌日から「延滞税」も発生します。延滞税は日割りされるため、早めに納付すれば、それだけ延滞税の額を抑えることが可能です。納付期限を超過しないことが最善ですが、過ぎた場合にも早めに納税することを心掛けましょう。

従業員の所得税が確定するまでの流れ

企業が従業員の所得税を計算するためには、様々な手続きを経る必要があります。従業員の所得税が確定するまでの流れをステップごとに解説します。

1.従業員から「扶養控除等申告書」の提出を受ける

所得税を計算するためには、従業員から「扶養控除等申告書」を回収しなければなりません。扶養控除等申告書は、源泉徴収税額表の適用区分の決定や、扶養する人数の確認に用います。

また、その年における最初の給与を支払うまでに回収する必要があり、申告書を提出しない従業員には年末調整を行えません。したがって、扶養する親族の有無を問わず、提出を求める必要があります。

2.毎月の給与から源泉所得税を徴収

源泉所得税額は、社会保険料等を控除した後の給与の額と、扶養する人数に応じて決定される仕組みです。たとえば、月給30万円で扶養する人数が1人であれば、月額6,740円が徴収されます。扶養控除等申告書の提出によって、毎月徴収すべき金額が決定するため、その額を給与支払いの都度徴収し、従業員に代わって翌月10日までに納付します。

参考:給与所得の源泉徴収税額表(令和6年分)|国税庁

3.11月頃に従業員から年末調整書類を受けとる

年末調整とは、源泉徴収された所得税額と本来納めるべき所得税額との調整を行う手続きです。この手続きを行うためには、以下のような書類が必要です。

また、該当する従業員がいる場合には、以下のような書類も回収しなければなりません。

多くの企業では、11月中に年末調整書類の回収を行っています。

4.12月に従業員の年間支給額が確定する

12月に支給すべき給与と賞与の額が決まれば、従業員の年間における支給額が確定します。給与の支給額合計や社会保険料額、源泉所得税額などの確認を行いましょう。

5.年末調整を行い、1年間の所得税額が確定する

確定した年間における課税支給額および社会保険料、従業員より回収した書類などを基に年末調整します。この手続きによって、従業員が納めるべき所得税額が確定することになります。

6.所得税の過不足税額を給与に反映

年末調整の結果、所得税に過不足が生じる場合もあります。確定した年間の所得税額と源泉徴収した所得税額に差があれば、過不足額を清算しなければなりません。通常12月の給与を支給する際に不足額があればその額を徴収し、過納であれば還付を行います。

たとえば、確定した所得税額が50万円、源泉徴収した所得税額が53万円だった場合、差額となる3万円を還付します。逆に3万円の不足があった場合、12月の給与から3万円を徴収する必要があります。

年末調整による所得税の還付金はいつ支払われる?

年末調整によって、源泉所得税が過納だったことが判明した場合、通常は12月の給与支払い時に還付します。年末調整後に発行する源泉徴収票と一緒に渡すことで、年末調整によって、いくら所得税が戻ってきたか明確になります。

ただし、還付すべき時期が明確に決まっているわけではありません。1月の給与で調整したり、現金をそのまま渡したりするケースも見られます。所得税の還付金がいつ支払われるかは、給与の支給形態と併せて企業によるでしょう。

納付期限を理解し所得税を正しく収めよう

従業員の給与には所得税が発生し、企業は給与から所得税を源泉徴収する義務を負っています。源泉徴収した所得税は、翌月10日までに納付しなければならず、遅れた場合にはペナルティが科せられてしまいます。当記事の解説を参考に、正しく源泉所得税の納付期限を理解し、未納を防いでください。


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