• 更新日 : 2023年11月17日

タレントマネジメントとは?導入のメリットや方法、システム利用について解説!

タレントマネジメントとは?導入のメリットや方法、システム利用について解説!

タレントマネジメントとは、社員が持つ個々の経歴やスキル、経験などを一元管理し、人材戦略に活用する手法をいいます。

個々の社員の情報をシステムなどを用いて可視化することができれば、採用、人材育成計画の作成、配属などに役立てることが可能です。ここでは、タレントマネジメントのメリットや事例について紹介します。

タレントマネジメントとは?

「タレントマネジメント」とは、従業員の経験やスキルなどを企業が一元管理することによって、戦略的かつ効果的な人材配置や人材育成を行うことをいいます。1990年代ごろから発展した概念であり、アメリカの大手コンサルティング会社であるマッキンゼー&カンパニーが掲げた「War for talent」(人材育成競争)というキーワードを発端に広まったともいわれます。

タレントマネジメントは、人材の採用や適材適所の人材配置、リーダーの育成や評価など、人材マネジメントプロセスを通じて優秀な人材を発掘・育成し、定着を図ることによって、企業の生産性の向上につなげることを目的としています。

戦略人事との関係

戦略人事とは、経営戦略に人事戦略を連動させ、「ヒト(人材)」という経営資源を適切にマネジメントする手法や取り組みのことをいいます。戦略人事の最大の目的は、人事業務を通じた経営目標の達成です。近年、「ヒト」を「資本」として捉えて、その価値を最大限に引き出すことにより企業価値の向上につなげる「人的資本経営」への取り組みが注目されていることからも、タレントマネジメントは重要視されています。

情報を一元管理し、効果的にさまざまな施策を実行するタレントマネジメントは、戦略人事の取り組みの一つともいえます。

タレントマネジメントが注目される背景

タレントマネジメントが注目される背景には、仕事に対する価値観の変化や、組織のなかでの人材活用のあり方の変化が関係しています。

社会的意義への注目・ワークライフバランスの浸透

タレントマネジメントでは、個人のスキルや経験を可視化させるだけではなく、個人のキャリアのあり方や仕事への価値観を可視化させることができます。たとえば、「在宅勤務を増やしたい」「地方に移住したい」という従業員の考えを日頃から把握しておけば、従業員の想いを考慮した人材配置を人事異動に反映させることが可能です。

人材は企業組織の歯車ではなく、大切な「資本」です。企業が発展し、社員ひとり一人が仕事のやりがいを実現するためには、タレントマネジメントは重要な鍵を握っているのです。企業の社会的意義が注目されている現代、社員のワークライフバランスの浸透も重要な取り組みの1つといえるでしょう。

社会状況の急速な変化

グローバル化やビジネス環境のスピードの変化も、多くの企業がタレントマネジメントに注目するきっかけとなっています。テクノロジーの急速な発展により、日々新しいサービスが生まれ、ビジネスでは競争が激化しています。予測不可能な時代と呼ばれる現代において、企業は常に挑戦と変化を求められているといってよいでしょう。

企業が競争力を保ち生き抜くためには、市場の変化やニーズの変化に対応できる経営戦略が不可欠です。しかし、市場の急速な変化に対応できる人材を育て、組織を強化していかなければ、市場の変化やニーズの変化に対応することはできません。企業の競争力向上には、人材戦略と経営戦略が連携していることが必要となるのです。タレントマネジメントは、経営戦略に合わせた適材適所を実現するための重要なポイントといえます。

労働人口の減少および流動化

労働人口の減少や、市場の流動化により、企業にとって優秀な人材の確保は大きな課題となっています。既存社員のポテンシャルを最大限活用することが、企業に求められているのです。適切な人材配置や効果的な人材育成という点で、タレントマネジメントは有効に活用することができます。

タレントマネジメントを導入する目的

タレントマネジメントを導入する大きな目的は、人材の戦略的活用により経営目標を達成することです。そのためには、タレントマネジメントを活かしたリーダー人材の育成や部署間のコミュニケーションの活性化も重要なポイントになります。

リーダー人材の育成

経営目標を達成するためには、組織力強化を図り、社員の成長を支えるリーダー的人材が不可欠です。タレントマネジメントを活用により組織にいる人材の経歴・スキル・キャリア観等を一元管理することで、「リーダー志向の人材」の可視化が可能になります。また、現在組織でマネジメント職についている人材を分析し、組織に適した次世代リーダーの育成に役立てることもできます。

部署横断でのコミュニケーション強化

自社の人材について、自分が管轄する部署内のことしか知らないというケースは珍しくありません。タレントマネジメントは、部署をまたぎ、横断的に人材についての情報を共有することが可能です。部署に必要なスキルや経験を持った人材は、他の部署にいる可能性もあります。そうした可能性を逃さず、人材育成や適材適所の人材配置に役立てることができます。

タレントマネジメントを導入するメリット

タレントマネジメントを導入することで、企業が得られるメリットをみてみましょう。

戦略人事を実現できる

タレントマネジメントで一元管理・可視化した情報を人事施策に活用できます。個々の社員をどのように伸ばしていくべきかという人材育成計画と、組織としてどのように成長していくかという人材戦略の両輪を回すことで、効果的な戦略人事を実現できるでしょう。

人事評価を明確化できる

明確かつ公平な人事評価制度の構築にも、タレントマネジメントは活用できます。タレントマネジメントは、個々の従業員の能力やスキル、業績、経験を一元管理しスコアリングすることが可能です。そのため、評価基準を明確にし、属人的な評価判断を防ぎます。

人材の異動・配置を適切に行える

従業員のデータをもとに、個々の能力を最大限発揮できる異動や配置が行えます。面談等で上司に伝えられるような本人のキャリアの希望も、他部署との連携のもと人事異動に反映させることが可能です。

育成や研修の充実化

既存社員の能力・経験を可視化することで、自社にとって不足している弱点に気づくことができます。経営目標に合わせて、強化したいスキルを人材育成計画や研修計画に反映させることも可能です。

目標設計の参考になる

組織の目標であっても、従業員が納得しない目標設定は、モチベーションの低下を招きます。従業員が個々に持つキャリア観をタレントマネジメントで管理することで、個人のパフォーマンスを最大化するような目標設定を行うことができます。

従業員のエンゲージメントが向上する

適材適所の配置転換や、個人の能力を引き出す育成計画を行うことで、従業員は自身の成長を実感できます。日々の仕事と組織の成長に関連性が見い出せるため、モチベーションを維持しながら意欲的に業務に取り組めるようになります。タレントマネジメントの導入は、従業員のエンゲージメント向上、離職率の低下の効果が期待できます。

タレントマネジメントの導入方法

タレントマネジメントを効果的に導入するための基本的な流れを紹介します。

① 現状把握

まずは自社の現状を把握しましょう。従業員にまつわる情報について、どのように管理しているかを把握します。従業員の入社時の経歴だけではなく、入社してからの経験業務や業績、取得した資格、受講した研修内容、キャリアについての興味、評価の内容など、どの情報がどのようにしてまとまっているのか、誰が把握しているのかなどを調査します。

さまざまな情報がバラバラに管理されている、というケースも少なくありません。現状を正しく把握することが、タレントマネジメントを効果的に導入する第一歩です。

➁ 課題抽出

現状を把握したあと、自社の課題を抽出します。「評価面談が紙で行われており、直属の上司しか把握していない」「部署異動をした際、前の部署での経験が業務内容が引き継がれていない」など、さまざまな課題が見つかるでしょう。課題をグループ分けし、優先順位をつけることで、自社にとって取り組むべき課題が明確になります。

③ 課題解決のための目標やゴールの設定

解決したい課題を抽出し、ゴールを設定します。どのような状態になれば目標が達成できるのか、ゴールを数値化するのもよいでしょう。「ばらばらに管理している情報を一元的にまとめる」といった抽象的なものから、管理するべき情報を細分化することによって具体化した細かいゴールを設定することで、理想の状態に近づきます。

④ アクションおよび振り返り

タレントマネジメントを導入したあと、定期的な振り返りを行います。タレントマネジメントのツールにはさまざまなものがあり、導入したものの機能の全てが使えていない、全社的に普及させるには時間がかかるといったケースも少なくありません。定期的に振り返りを行うことで、取り組みを改善し、前進させることができます。

タレントマネジメントに使えるツール

タレントマネジメントに活用できるツールには以下のものがあります。

タレントマネジメントシステム

従業員の経歴やスキルを一元管理するシステムが、タレントマネジメントシステムです。さまざまな会社が独自のタレントマネジメントシステムを開発・提供しています。代表的な機能としては、以下のものがあります。

  • 社員情報の登録
  • スキルや経歴の検索機能
  • 目標管理と評価
  • コミュニケーション機能
  • 配属・異動計画の分析
  • 育成計画の管理

組織では、さまざまな情報がバラバラに管理されています。「評価面談の内容は紙で管理している」「社員が受講した研修内容は人事だけが知っている」といったケースも少なくありません。情報を紙情報で管理したり、部署ごとに把握している情報が異なっていたりするのでは、必要なときに必要なデータを確認することができず、手間と時間がかかります。タレントマネジメントシステムなら、必要な情報を入力することで、分析や計画が容易になります。

エニアグラム等の性格診断

エニアグラム性格診断とは、人の性格を9つの類型でとらえたものです。エニアグラムの性格論は1960年代にはじまったもので、アメリカをはじめ世界各国で研究が重ねられ、心理学や精神医学の分野の研究者が理論を発展させてきました。長年の研究結果を元に発展してきたこの性格診断は、新たなタイプの人間学、心理学として世界各国に広がりをみせています。人の特性を把握するエニアグラムは、タレントマネジメントに活用できるでしょう。

タレントマネジメントの導入事例

実際にシステム等でタレントマネジメントを推進している事例をご紹介します。

評価フローをタレントマネジメントシステムで可視化

ポテトチップスなどを販売する湖池屋では、各部門で取り扱っていた評価を可視化するためにタレントマネジメントシステムを導入しました。システムには、希望職種の欄を設け社員全員に記入を促しています。人事や管理職の間でクローズになっていた情報がオープンとなり、キャリアパスを会社に伝えるチャンスが広がりました。リアルタイムでアップデートされる情報も踏まえた人員配置を行い、ネガティブな理由による離職防止に取り組んでいます。

参考:多様な人を支える仕事だから「まだまだ慣れない」。人を中心に置く湖池屋人事のタレントマネジメント推進(後編)|カオナビ

部門を横断した多様なキャリアデザイン情報を公開

サントリーは、「全社員型タレントマネジメント」を掲げ、社員・上司・人事が三位一体となりキャリア支援に取り組んでいます。キャリアビジョンシートをもとに直近・中期のプランを組み、フィードバックされる仕組みを構築し、公正かつ納得性の高い評価制度を導入しています。そのほか、イントラネット上に情報サイトを設け、多様なキャリアデザインを支援する情報を公開し、部署を横断したジョブローテーションも盛んです。

参考:PEOPLE & CAREER 教育研修・人事制度|新卒採用情報|サントリーホールディングス株式会社

従業員の能力を引き出すタレントマネジメント

タレントマネジメントは、従業員のスキルや経歴を一元管理することで、人事施策に活用できる手法です。従業員の情報といっても、前職の経歴のほか、担当した業務、受講した研修内容など多岐にわたります。

さまざまな情報を効率的に管理することが、タレントマネジメントの要です。従業員の状態やキャリアのビジョンを把握することで、能力を最大限引き出す人材育成や戦略人事を実現できるでしょう。


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