• 更新日 : 2024年9月13日

社会保険の手続き・届出一覧 – 被保険者と事業所に分けて解説

社会保険には、健康保険や雇用保険厚生年金保険など、労働者の生活の安定や雇用の維持・促進をサポートするためのさまざまな制度が含まれます。労働者を雇用する企業(事業主)は、法令に従い、適切に社会保険の手続きを行う義務があります。

ここでは、社会保険の手続きのなかでも、企業が行うべき主な手続きをまとめました。

そもそも社会保険とは

社会保険とは、病気や怪我から、出産、老齢、死亡、失業、介護に至るまで、日本国民が生活する上でのさまざまなリスクに備える公的な保険制度をいいます。ここでは、企業となじみが深い5つの保険制度について見ていきましょう。

  • 雇用保険
  • 労災保険
  • 健康保険
  • 厚生年金保険
  • 介護保険

雇用保険

雇用保険とは、労働者の生活の安定や就業促進を目的とした保険制度です。「雇用」という名の通り、会社に雇われる立場の人々を対象とした保険です。失業中に受給できる「基本手当(いわゆる失業手当)」や、一定の教育訓練を受講した際に受講費の一部がカバーされる「教育訓練給付」などがあります。介護や育児を理由に休業する際に支払われる給付金も、雇用の維持のために必要な給付として雇用保険から支払われます。

労災保険

労災保険とは、業務が原因となる災害による労働者の病気や怪我、障害、死亡など不測の事態に対する補償として給付が行われる公的保険制度です。「労働者災害補償保険法」を略して労災保険と呼び、仕事中だけではなく、通勤途中の災害によって負った怪我や障害、死亡などに対しても給付が行われます。他の保険とは異なり、労災保険の保険料は全額事業主が負担します。

健康保険

健康保険とは、業務外で病気や怪我を負った際に病院に支払う医療費や、傷病中の生活をサポートするための保険制度です。療養のために病院などでかかる医療費の負担を軽減する療養の給付、療養により休業を余儀なくされ、給料が支払われない場合に収入を保障する傷病手当金などがあり、出産手当金や出産一時金なども、健康保険の給付の一種です。健康保険の保険料は、従業員と事業主で折半します。

厚生年金保険

厚生年金保険とは、会社に勤める人向けの公的年金制度です。厚生年金保険に加入していた方やその遺族は、老齢、障害、死亡などの保険事故が発生した場合に年金給付を受けることができます。会社員にとっては、厚生年金保険に加入することで国民年金の第2号被保険者となるため、老後に「老齢基礎年金」と「老齢厚生年金」の2階層の年金を受給することができるため、老後の生活の安定にもつながるメリットの大きい制度といえるでしょう。厚生年金保険の保険料も、健康保険と同様に従業員と事業主で折半します。

介護保険

介護保険とは、被保険者が介護が必要と認定されたときに、少ない自己負担で、必要度合いに応じたさまざまな介護サービスが受けられる保険制度です。介護保険は、40歳以上の国民が加入対象です。会社員の場合、40歳に達した月から「第2号被保険者」となり、健康保険に介護保険料が上乗せされて徴収するのが通常の形です。

社会保険の手続き・届出一覧 ~被保険者編~

社会保険の対象となるのは、企業に雇用される労働者です。したがって、新たな従業員が入社したタイミングと退職したタイミングで加入・資格喪失の手続きが発生します。また、それ以外に、従業員が妊娠したとき、病気や怪我を負ったとき、休職するときなど、さまざまなケースで手続きを行う必要があります。

以下に、社会保険の手続きが必要なタイミングと届出の内容、提出期限や必要書類をまとめました。

届出保険の種類提出先納期提出・確認書類
従業員を採用したとき雇用保険被保険者資格取得届雇用保険ハローワーク被保険者となった日(雇用した日)の属する月の翌月10日まで賃金台帳、労働者名簿、出勤簿、タイムカード、労働条件通知書等雇用期間を確認できる資料など
健康保険・厚生年金保険資格取得届健康保険
厚生年金保険
年金事務所事実発生から5日以内基礎年金番号通知書・年金手帳またはマイナンバーカードなど
従業員が退職・死亡等したとき雇用保険被保険者資格喪失届雇用保険ハローワーク被保険者でなくなった事実があった日の翌日から起算して10日以内出勤簿、退職辞令発令書類、労働者名簿、賃金台帳、離職証明書(離職票が不要のときは提出しなくてよい)、離職理由が確認できる書類等
雇用保険被保険者離職証明書
健康保険・厚生年金保険資格喪失届健康保険
厚生年金保険
年金事務所
事務センター
事実発生から5日以内
任意継続被保険者資格取得申出書健康保険会社が加入している
全国健康保険協会
または健康保険組合
退職日の翌日(資格喪失日)から20日以内
従業員の転勤があったとき雇用保険被保険者転勤届雇用保険ハローワーク事実のあった日の翌日から10日以内異動辞令書類、賃金台帳、転勤前事業所に交付されている被保険者資格喪失届・氏名変更届
従業員の氏名に変更があったとき雇用保険被保険者氏名変更届雇用保険ハローワーク被保険者が氏名を変更したその都度その事実が確認できる書類
高年齢雇用継続給付を受けようとするとき高年齢雇用継続給付支給申請書雇用保険ハローワーク(初回)支給対象月の初日から起算して4ヶ月以内

(2回目以降)ハローワークから指定された日又は月
賃金台帳、出勤簿、(初回のみ)六十歳到達時等賃金証明書、高年齢雇用継続給付受給資格確認票・(初回)高年齢雇用継続給付支給申請書、労働者名簿、年齢が確認できる書類の写し等
従業員の産休・育休関連産休中の社会保険料免除:
健康保険・厚生年金保険産前産後休業取得者申出書
健康保険
厚生年金保険
年金事務所
事務センター
産前産後休業中
育休中の社会保険料免除:
健康保険・厚生年金保険育児休業等取得者申出書
健康保険
厚生年金保険
年金事務所
事務センター
被保険者から育児休業等取得の申し出があったとき
雇用する被保険者が育児休業を開始したとき:
育児休業給付受給資格確認票
(初回)育児休業基本給付金支給申請書
雇用保険被保険者休業開始時賃金月額証明書(育児)
雇用保険ハローワーク育児休業を開始した日の翌日から10日以内(事業主が被保険者に代わって支給申請書を提出する場合には、支給申請書と同時、または、支給申請書の提出時期までに提出可能)賃金台帳、出勤簿、労働者名簿、被保険者の母子健康手帳等育児の事実が確認できる書類の写し
育児休業基本給付金支給申請書雇用保険ハローワーク安定所から指定された日等賃金台帳、出勤簿
従業員の介護関連介護休業給付金を受けるとき:
介護休業給付金支給申請書
雇用保険ハローワーク安定所から指定された日等介護休業申出書、賃金台帳、出勤簿、対象家族の氏名・本人との続柄・性別・生年月日が確認できる住民票記載事項証明書等の写し
介護休業を開始したとき:
休業開始時賃金月額証明書・介護
雇用保険ハローワーク介護休業を開始した日の翌日から10日以内(事業主が被保険者に代わって支給申請書を提出する場合には、支給申請書と同時、または、支給申請書の提出時期までに提出可能)賃金台帳、出勤簿、労働者名簿
従業員が業務外の怪我や病気で一定期間以上休んだとき傷病手当金支給申請書
(被保険者記入用、事業所記入用、療養担当者記入用の4ページ)
健康保険会社が加入している
全国健康保険協会
または健康保険組合
事態が発生してから2年以内(時効により日ごとに2年)※本人確認書類ほか状況に応じて必要書類が異なる
労災保険を請求するとき療養補償給付たる療養の給付請求書
療養補償給付たる療養の費用請求書
休業補償給付支給請求書 など
労災保険病院経由または
労働基準監督署長
療養の費用は支出が確定日の翌日から時効は2年(療養の給付には時効なし)
休業補償給付の時効は日ごとに翌日から2年
※制度によって必要書類は異なる

参考:雇用保険制度 手続き一覧表|厚生労働省

社会保険の手続き・届出一覧 ~事業所編~

企業として社会保険の手続きで必要な届出は以下の通りです。

届出保険の種類提出先納期提出・確認書類
適用事業を開始したとき
適用事業に該当するに至ったとき
雇用保険適用事業所設置届雇用保険ハローワーク保険関係が成立した日の翌日から10日以内出勤簿、労働者名簿、賃金台帳、源泉徴収簿、法人の場合は登記簿謄(抄)本等、法人でない場合は事業の開始を証明する書類等
健康保険・厚生年金保険新規適用届健康保険・厚生年金保険年金事務所・事務センター事実発生から5日以内法人(商業)登記簿謄本
法人番号指定通知書のコピー等
保険関係成立届労災保険所轄の労働基準監督署保険関係が成立した日の翌日から起算して10日以内
事業を廃止したとき、又は被保険者を雇用しなくなったとき雇用保険適用事業所廃止届雇用保険ハローワーク事業所を廃止した日の翌日から10日以内法人の場合は、登記簿謄(抄)本等
法人でない場合は、その事実を証明する書類
健康保険・厚生年金保険適用事業所全喪届健康保険・厚生年金保険年金事務所・事務センター事実発生から5日以内解散登記の記載がある法人登記簿謄本のコピーまたは雇用保険適用事業所廃止届(事業主控)のコピー
事業主の名称又は所在地等に変更があったとき雇用保険事業主事業所各種変更届雇用保険ハローワーク名称・所在地等変更のあった日の翌日から10日以内法人の場合は、登記簿謄(抄)本等
法人でない場合は、その事実を証明する書類
健康保険・厚生年金保険適用事業所名称/所在地変更(訂正)届健康保険・厚生年金保険年金事務所・事務センター事実発生から5日以内法人(商業)登記簿謄本のコピー等
独立した一の事業所と認められないとき事業所非該当承認申請書ハローワーク申請をしようとするときその都度申請に係る施設の従業員数がわかる書類、会社の組織図等、申請書の記載事項が確認できる書類
事業主が代理人を選任又は解任したとき雇用保険被保険者関係届出事務等代理人選任・解任届ハローワーク代理人を選任又は解任したその都度

参考:雇用保険制度 手続き一覧表|厚生労働省健康保険・厚生年金保険 適用関係届書・申請書一覧|日本年金機構

被保険者資格取得届などの書類のダウンロード方法は?

従業員の入社時に届ける「被保険者資格取得届」など、利用頻度の高い書類は、以下の場所からダウンロードができます。公開されている記入例を参考に、手続きを進めましょう。

被保険者資格取得届

引用:健康保険・厚生年金保険 被保険者資格取得届/厚生年金保険 70歳以上被用者該当届(記入例)|日本年金機構

社会保険の届出書類の提出方法は?

社会保険の各種届出書類は、郵送または窓口への直接提出、インターネットでの電子申請による提出が可能です。年金事務所、ハローワーク、労働基準監督署などで提出先を確認し、適切な提出方法で手続きを行いましょう。

健康保険・厚生年金保険資格喪失証明書のテンプレート(無料)

以下より無料のテンプレートをダウンロードしていただけますので、ご活用ください。

社会保険の届出は必ず期限内に行いましょう!

社会保険関連の届出は、提出期限が定められています。特に注意したいのは、従業員の入社や退職、育児休業や介護休業などに伴う社会保険の手続きです。期日までに行うことで、従業員に社会保険制度が正しく適用されます。手続きに漏れがないように、従業員の勤怠管理システム等と連動し、適切な運用を行いましょう。

よくある質問

社会保険とは何ですか?

社会保険とは、病気や怪我、出産、老齢、死亡、失業、介護などのリスクに備える公的な保険制度です。会社と関係が深いものに、健康保険、厚生年金保険、介護保険、雇用保険、労災保険の5つの保険があります。詳しくはこちらをご覧ください。

入社時の社会保険の手続きとは?

管轄のハローワークに「雇用保険被保険者資格取得届」を提出します。また、健康保険と厚生年金保険の適用事業所の場合は、従業員が加入対象であるかを確認し、年金事務所に資格取得届を提出します。詳しくはこちらをご覧ください。

社会保険の届出を手に入れるには?

雇用保険関連はハローワークのサイト、健康保険・厚生年金保険関連は日本年金機構や全国健康保険協会のサイトでそれぞれダウンロード可能です。労災保険の届出は厚生労働省のサイトでダウンロードできます。詳しくはこちらをご覧ください。


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