• 作成日 : 2023年1月20日

退職時に会社側が行う社会保険手続きは?離職票と離職証明書の違いも解説!

退職時に会社側が行う社会保険手続きは?離職票と離職証明書の違いも解説!

従業員が退職する際には、決められた期限までに健康保険や雇用保険の喪失届を提出する必要があります。また、従業員が退職後にハローワークに基本手当など失業時に受け取れる給付を申請することを踏まえ、離職証明書も作成しなければなりません。

ここでは、従業員の退職の際に会社として行うべき社会保険関連の手続きについて解説します。

従業員の退職時に会社側が行う社会保険手続きは?

従業員が退職する際、会社は社会保険の資格喪失届を行う必要があります。

健康保険・厚生年金保険の資格喪失届の提出

従業員退職後、健康保険・厚生年金保険の資格喪失に必要な書類を加入する保険組合または管轄の年金事務所・事務センターに提出します。資格喪失届を提出する際の注意点としては、従業員とその扶養家族の健康保険証の回収があります。万が一、回収するのが難しい場合には、企業は「健康保険被保険者証回収不能届」を提出する必要があります。

なお、健康保険や厚生年金保険は1カ月単位の加入となるため、月の途中で退職となった際は、資格喪失日(退職日の翌日)が属する月の「前月」までの保険料を支払う必要があります。保険料が発生する期間は入社した月から資格喪失日が属する月の前月までです。

従業員が月末に退職した場合は、資格喪失日が翌月の1日となりますので、賃金締切日によっては退職月分と前月分の2か月分の保険料を給与から控除するケースが発生します。給与計算の際に間違えないよう注意しましょう。

【手続き】
提出期限:退職の事実があった日から5日以内(資格喪失日を含め5日以内)
提出先:事業所所在地を管轄する事務センターまたは年金事務所
提出方法:郵送・電子申請・窓口(年金事務所のみ)
添付書類:健康保険被保険者証(回収できない場合は健康保険被保険者証回収不能届)
※高齢受給者証、健康保険限度額適用・標準負担額減額認定証等の交付を受けている場合には回収が必要)

雇用保険の資格喪失届の提出

従業員が退職した場合、退職日の翌々日から10日以内に、事業主は以下の2点を管轄のハローワークに提出します。

  • 雇用保険被保険者喪失届
  • 雇用保険被保険者離職証明書
【手続き】
提出期限:退職日の翌々日から10日以内
提出先:ハローワーク(事業所所在地を管轄する公共職業安定所)
提出方法:郵送・電子申請・窓口
確認書類:労働者名簿、賃金台帳、出勤簿、タイムカード、雇用契約書等、就業規則や労使協定等、離職理由が確認できる書類など必要に応じて

雇用保険被保険者喪失届

引用:雇用保険被保険者資格喪失届│ハローワーク ネットサービス
なお、雇用保険被保険者資格喪失届は、退職のほか、従業員の死亡により被保険者でなくなったとき、労働条件の変更等で被保険者資格を喪失した際にも使用します。

雇用保険の離職証明書の提出

離職証明書には、ハローワークが当該従業員の基本手当(失業手当)の金額や、受給期間を定める上で必要となる情報が記載されています。賃金額や退職理由について、事業主が記載をしハローワークに提出します。記載の際は、正確な情報を記入しなければなりません。

離職票と離職証明書の違いは?

雇用保険の退職手続きには、「離職証明書」と「離職票」が関係します。似た名前ですが、用途は異なります。以下で、2つの違いを解説します。

離職票を発行するには離職証明書が必要

離職票とは、従業員がハローワークで基本手当の申請を行う際に必要となるものです。離職票の発行は、事業主が行うのではなく、ハローワークが発行します。そして、離職票の発行のためには、事業主が提出する離職証明書が必要です。

離職証明書の提出は、本人が離職票の交付を希望した場合に必要となります(離職者が59歳以上の場合は希望の有無にかかわらず必要)。したがって、退職する従業員がいる場合には、当該従業員が退職後の基本手当の受給などで困ることがないよう、あらかじめ離職票を必要とするかどうかを確認しておかなければなりません。離職票の交付を希望する場合には、事業主は資格喪失届とともに離職証明書を提出をする必要があります。

離職証明書の書き方

離職証明書は、3枚つづりの書類です。事業主控え、ハローワーク提出用、および退職者に交付する「離職票‐2」の3枚の複写式となっています。ハローワークのサイトでは、離職票-2についての記入例が公開されています。

離職証明書

引用:雇用保険被保険者離職票|ハローワーク ネットサービス

離職証明書に記載する内容は、事業所・事業主の名称・所在地・氏名、従業員の住所・氏名のほか、被保険者番号や事業所番号、賃金支払基礎日数や賃金額の情報、そして退職理由です。

「賃金支払状況等」の部分では、離職日から1カ月単位でさかのぼり、順次記載します。原則として離職日以前2年間に賃金支払い日数が11日以上となる月が12カ月以上ある場合(解雇や会社倒産、退職することにやむを得ない理由があるなど、特定受給資格者や特定理由離職者に該当する場合は1年間に6カ月以上)に、退職した従業員は雇用保険の基本手当を申請できます。なお、賃金支払基礎日数が11日以上となる月が12カ月以上ない場合、賃金支払いの基礎となった時間が完全月で80時間以上となる月を1カ月にカウントする緩和措置も設けられています。

離職票のハローワーク提出用(2枚目部分)には、賃金支払基礎日数や賃金額の情報について離職者(従業員)が確認して氏名を記載する欄と、事業主の記載した離職理由を離職者(従業)が確認して異議の有無と氏名を記載する欄があります。従業員が退職後すぐに引越しするなどによって署名がもらえない場合には、署名がもらえない理由と事業主の氏名を記載することで手続きをすることは可能です。しかし、正確に内容を記載しないと後日退職した従業員とのトラブルになることもありますので、離職証明書には必ず正確な情報を記載しましょう。

退職証明書の提出が必要となるケースも

従業員退職時には、退職する従業員からの要望があった場合、離職証明書の作成だけではなく、「退職証明書」の発行が必要となるケースもあります。

退職証明書とは

退職証明書とは、当該従業員が過去に企業に在籍し、退職した事実を証明するための書類をいいます。ハローワークに提出する離職証明書とは異なり、公的機関に提出するものではありません。会社が、希望する従業員にのみ発行します。

労働基準法第22条には、「労働者が、退職の場合において、使用期間、業務の種類、その事業における地位、賃金又は退職の事由(退職の事由が解雇の場合にあつては、その理由を含む。)について証明書を請求した場合においては、使用者は、遅滞なくこれを交付しなければならない」と、企業の証明書の交付義務が定められています。退職者全員に発行する必要はありませんが、要望を受けた際には会社は発行する義務を負う点に注意が必要です。

引用:労働基準法 | e-Gov法令検索

退職証明書の書き方

退職証明書は、会社が独自に発行する書類であることから、決まったフォーマットは存在しません。基本的には、在職中の契約内容などを証明するものとして、以下の項目を記載します。

  • 使用期間
  • 業務の種類
  • 事業における地位
  • 賃金
  • 退職の事由

なお、従業員本人が希望しない内容を記載してはいけません。

参考:退職時の証明(第22条)|秋田労働局

退職に伴う社会保険関連の手続きをチェックしよう

社会保険の資格喪失届など、提出が遅れると余計に保険料が発生してしまう恐れがあります。また、手続きが遅れることや離職証明書の内容に誤りがあれば、退職した従業員とのトラブルになることもあります。

手続き漏れが発生しないように、退職に伴う社会保険関連の手続きについてのチェックリストなどを作成するのも効果的です。退職予定の従業員がいる場合には、必要となる手続きをリストアップし、スムーズに事務作業を行えるようにしましょう。

よくある質問

従業員の退職時に会社側が行う社会保険手続きは?

健康保険・厚生年金保険の資格喪失届を提出するほか、雇用保険では資格喪失届に加えて離職証明書の提出が必要です。ハローワークに離職証明書を提出しないと離職票が発行されないため、スムーズに対処しましょう。詳しくはこちらをご覧ください。

離職票と離職証明書の違いは?

離職票は、労働者がハローワークに失業手当などの給付申請を行う際に必要な書類です。離職票は退職後にハローワークから本人に交付されますが、発行には会社が提出する離職証明書が必要となります。詳しくはこちらをご覧ください。


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