• 作成日 : 2022年12月23日

労災保険の給付期間や申請期限は?休業補償などの種類別に解説!

労災保険の給付には療養補償給付や休業補償給付、葬祭料などがあります。それぞれいつまで補償が受けられるのかに加え、申請可能な期限を確認しておきましょう。うつ病が労災認定されるまでには通常よりも時間を要することが多いため、早めに請求することもポイントです。本記事では、労災保険の給付期間や申請期限について解説します。

そもそも労災保険とは?

労災保険とは、業務中や通勤中の事故でけがをする、病気になる、障害を負うといった場合に、必要となる保険給付をする保険です。従業員を1人でも雇用している事業主は労災保険に加入する義務があり、雇用形態を問わずすべての労働者が加入対象者になる点が特徴です。

労災保険の保険料は、全額を事業主が負担します。労働者が保険料を負担することはありません。

労災というと建設現場で高所から転落したり、工場で機械に巻き込まれたりして怪我をするといった状況をイメージする方が多いかもしれません。しかし、過重労働やセクハラ、パワハラによって心身に異常をきたしたような場合も、労災と認定されることがあります。

労災保険の手続きの流れ

労災が生じたときに、必要な手続きは以下のような流れで行います。

  1. 従業員が労災が発生したことを会社に報告する
  2. 労災保険給付の請求書をダウンロードする
  3. 労災の請求書に必要事項を記入し、労働基準監督署長に提出する
  4. 労働基準監督署長による調査が実施される

労災給付に関する請求書は、従業員が直接労働基準監督署長に提出することも、会社経由で提出することも可能です。

会社を通じて提出をする場合、労災の請求書の作成に必要となる以下の事項を記録しておくとよいでしょう。

  • 被災した従業員の氏名
  • 労災の発生日(病気の場合は診断を受けた日)
  • 労災が発生した状況を確認した者の氏名
  • けがや病気の場所や状態
  • 受診した医療機関

参考:労災保険とは|東京労働局

労災保険の給付期間・申請期限は?

労災保険には業務中の負傷や病気での療養時に支給される「療養補償給付」や、療養で働けず賃金を受けられないときに受け取れる「休業補償給付」などさまざまな補償があります。

ここでは、下記の補償制度の給付を受け取れる期間や申請が可能な期限について、それぞれ確認していきましょう。

  • 療養(補償)給付
  • 休業(補償)給付
  • 傷病(補償)年金
  • 障害(補償)年金
  • 障害(補償)一時金
  • 介護(補償)給付
  • 遺族(補償)年金
  • 遺族(補償)一時金
  • 葬祭料等(葬祭給付)
  • 二次健康診断給付

療養(補償)給付

業務中の負傷や病気での療養に対して支給される療養補償給付の給付は、病気やけがが治癒するまで受け取ることが可能です。基本的に療養に必要な期間、給付が継続します。

労災保険指定医療機関を受診した場合は、そもそも窓口での自己負担がないため、請求手続きの期限はありません。一方、労災保険指定医療機関以外での治療を受けたり薬を処方してもらったりした場合は、請求手続きの期限は療養の費用を支払った日の翌日から2年です。

費用を支払った日ごとに請求権が発生するため、数回にわけて費用の支出があった場合はそれぞれの日に対して2年が期限になることをおさえておきましょう。

休業(補償)給付

休業補償給付は、業務中のけがや病気の療養で働けず、賃金を受けられないときに、休業4日目から給付基礎日額の60%相当が支給されます。仕事中や通勤中のけがあるいは病気の療養で休業していて、かつ医療によって治癒の効果が期待できるときは、支給が続きます。

請求の期限は、賃金を受けなかった日の翌日から2年です。

傷病(補償)年金

業務中に負傷した、または病気になった労働者がその療養を始めてから1年6ヵ月を経過したときに、以下のいずれにも該当している場合に支給されるのが傷病補償年金です。

  • けがや病気が治っていない
  • けがや病気による障害の程度が、疾病等級第1級~3級

傷病補償年金は傷病が治癒するまでの期間、受け取れます。なおこの場合の「治った状態」とは、治療を行っても改善が見込まれず、症状がそれ以上改善も悪化もしないと判断された状態を指します。

傷病補償年金は、そもそも労働者に請求権がありません。労働基準監督署長の職権によって支給が決まります。そのため、請求期限という概念自体がないことはポイントです。

障害(補償)年金

障害補償年金は業務上の傷病が治癒した際、障害等級の第1〜7級にあたる障害が残った場合に支給される年金です。労災保険の認定条件を満たすことを条件に、無期限で支給されます。ただし、途中で障害等級が変更した場合には、変更後の等級に応じた支給額に変わります。

請求期限は、けがや病気の症状が固定して治癒したと判断された日の翌日から5年です。

障害(補償)一時金

業務上の傷病による障害の程度が、第8級から14級に該当する場合には、障害補償一時金の対象になります。一時金のため、受け取れるのは1回のみです。請求期限は障害補償年金と同様、けがや病気の症状が固定して治癒したと判断された日の翌日から5年です。

介護(補償)給付

介護補償給付は、業務中あるいは通勤中の被災によって生じる介護費用の補填を図るためのもので、次の要件をすべて満たしている場合に給付されます。これらの認定条件を満たし、介護を受けている期間は補償が受けられます。

  • 障害補償年金または傷病補償年金を受ける権利がある
  • 上記の年金の支給事由となる障害が一定の程度であり、常時または随時介護が必要な状態である
  • 実際に常時または随時介護を受けている

請求期限は介護を受けた月の翌月1日から起算して2年です。月単位での支給であるため、実際に介護を受けた日から起算するわけではない点に注意が必要です。

遺族(補償)年金

遺族補償年金は、受給権者が失権するまで支給されます。つまり、受給権者が死亡したり、婚姻したり、離縁によって亡くなった労働者との親族関係が終了するといったときまで支給が継続します。労働者が亡くなった日の翌日から5年が、請求期限です。

遺族(補償)一時金

遺族補償年金の受給権者にあたる遺族がいない場合に支給される遺族補償一時金は、受け取りは1回のみです。請求期限は労働者が亡くなった日の翌日から5年となります。

葬祭料等(葬祭給付)

業務災害によって亡くなった労働者の葬儀を行う者に対して支給される葬祭料は、労働者の死亡した日の翌日から2年が請求期限です。なお葬祭給付は、通勤災害によって亡くなった場合に支給されるものです。

二次健康診断給付

二次康診断給付は、直近の労働安全衛生法の規定による健康診断で、規定の項目いずれにおいても以上の所見が認められたときに受ける健康診断のことです。具体的には、業務上の事由による脳血管疾患や心臓疾患などの発生にかかわる検査などにおける異常の所見が該当します。

二次健康診断給付の請求期限は、 一次健康診断の受診日から3ヶ月以内です。

参考:労災保険の各種給付の請求はいつまでできますか。|厚生労働省

うつ病で労災申請する場合の期限は?

うつ病で労災申請する場合の期限も、その他の病気やけがのケースと同じです。うつ病が労災として認定されるためには、業務との因果関係の証明が必要になるため、通常よりも時間がかかる傾向にあることを踏まえ、早めに請求するようにしましょう。

なお、うつ病は労災認定のハードルが比較的高いため、まずは健康保険の傷病手当金の申請を行い、そのうえで労災申請をするのが一般的です。

アスベスト(石綿)による健康被害で労災申請する場合の期限は?

アスベストとは、建築材料やビニール床のタイルなどに用いられてきた天然素材のことです。業務上の事由でアスベストを吸引し、中皮腫や肺がんなどを発症した場合は労災保険の補償対象になり、先述のとおり給付金の請求期限は2年または5年です。

しかし、アスベストに起因する疾病は吸引後長い期間が経過してからの発症がほとんどのため、補償を受けたくても請求期限を過ぎてしまっているという実態が多くみられました。

そのため、アスベストによって被災労働者を亡くした遺族に対し、救済措置として設けられているのが「特別遺族給付金」です。特別遺族給付金は制度改正によって、申請期限が2022年3月27日まで延長されています。

参考:石綿健康被害救済法が改正されました|厚生労働省

民事上の損害賠償請求の期限は?

これまで損害賠償請求権の時効は、債務不履行を理由とする請求は10年、不法行為を理由とする請求は3年と定められていました。そのため不法行為を根拠とする請求では3年の消滅時効に該当しても、安全配慮義務違反の配慮不履行を原因とした請求では10年までは損害賠償請求が可能でした。

しかし、2020年4月以降は民法の改正により、法律構成にかかわらず5年の消滅時効に統一されています。

一人親方が労災保険に特別加入する場合の保険期間は?

一人親方が労災保険に特別加入する場合の保険期間は、原則4月1日から3月31日です。ほとんどの場合、2月前後に更新の連絡が届きます。

期間が短い工事を行うなどの場合、団体によっては必要に応じて短期加入に対応しているケースもみられます。

労災保険の支給期間や請求期限を知っておこう

労災保険は、業務中や通勤中のけがや病気を理由として休業しており、治療の効果が見込める場合は、補償が継続するというのが基本の考え方です。また補償によって、2年あるいは5年で権利が失効することを確認しておく必要があります。

労災保険は、従業員を1人でも雇用している事業主は加入する義務があり、雇用形態を問わず労働者であれば加入対象者になります。労災保険の支給期間や請求期限を正しくおさえ、知識を深めましょう。

よくある質問

労災保険の給付期間・申請期限は?

補償によって異なりますが、受給要件を満たしていれば支給が継続するものも多いです。申請期限はほとんどの補償が2年もしくは5年となります。詳しくはこちらをご覧ください。

一人親方が労災保険に特別加入する場合の保険期間は?

原則4月1日から3月31日です。詳しくはこちらをご覧ください。


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