• 更新日 : 2024年8月21日

バーンアウトからの立ち直り方7ステップ!原因や予防策を解説

ストレスとうまく付き合えずに、心身ともに疲れ果ててしまう「バーンアウト」は、現代社会の深刻な問題の一つです。仕事へのモチベーションの低下や情緒的な枯渇、同僚への無関心などの症状が現れ、最悪の場合には長期休職や退職に至ってしまいます。

本記事では、バーンアウトの原因と具体的な症状、立ち直るための方法や期間の目安、さらには企業としてのサポート体制や予防策について解説します。社員一人ひとりのメンタルヘルスを守り、健全な組織運営につなげていきましょう。

バーンアウトとは?

バーンアウト(燃え尽き症候群)とは、過度のストレスや負荷が原因で、心身のエネルギーが尽き果てた状態のことです。特に、対人サービス業に従事する人々に多く見られ、情緒的消耗感、脱人格化、個人的達成感の低下という3つの主要な症状が特徴として挙げられます。

バーンアウトの提唱者は?

バーンアウトという概念は、1970年代にアメリカの精神科医ハーバート・フロイデンバーガー(Herbert J. Freudenberger)によって初めて提唱されました。彼は、対人サービス業に従事する人々が過度のストレスにさらされることで、情緒的に消耗し、燃え尽きたような状態になることを観察しました。

その後、社会心理学者のクリスティーナ・マスラック(Christina Maslach)が、バーンアウトの研究をさらに進め、情緒的消耗感、脱人格化、個人的達成感の低下という3つの主要な症状を特定しました。彼女の研究は、バーンアウトの診断と評価において重要な役割を果たし、現在でも広く使用されている「Maslach Burnout Inventory(MBI)」を開発しました。

フロイデンバーガーとマスラックの研究は、バーンアウトの理解と対策に大きな貢献をし、現代の職場環境におけるメンタルヘルスの重要性を強調するものとなっています。

バーンアウトとうつ病との違い

バーンアウトは、医学的にはうつ病の一種とされています。しかし、異なる部分もあります。

原因の違い

バーンアウトは主に職場のストレスや過労が原因で発生します。しかし、うつ病は職場のストレスだけでなく、家庭問題や個人的なトラウマなど、さまざまな要因が複合的に影響して発症します。

症状の違い

バーンアウトの主な症状は、情緒的消耗感、脱人格化、個人的達成感の低下です。一方、うつ病の症状は、持続的な憂うつ感、自己評価の低下、興味や喜びの喪失、睡眠障害、食欲の変化など、より広範な生活全般に影響をおよぼします。

感情の向き

バーンアウトでは、怒りや苛立ちが他者に向かうことが多いです。これに対し、うつ病では、自己批判や罪悪感が強く、自分自身を責める傾向があります。

回復のアプローチ

バーンアウトの回復には、職場環境の改善や業務負荷の軽減、適切な休息が重要です。一方、うつ病の治療には、薬物療法や心理療法が必要であり、専門的な医療機関での治療が推奨されます。

バーンアウトの症状、具体例

ここでは、バーンアウトの症状をさらに詳細に見ていきましょう。具体的な症状を挙げてみます。

気力や意欲がわかない

バーンアウトの最も顕著な症状の一つは、気力や意欲の喪失です。これまで熱心に取り組んでいた仕事に対して、突然やる気がなくなり、無気力な状態に陥ります。このような症状が単なる一時的な疲労とは異なり、長期間にわたって続くことが特徴です。

先延ばしにしがち

バーンアウトのもう一つの典型的な症状は、物事を先延ばしにすることが挙げられます。以前は守れていた締め切りに間に合わなくなり、仕事が遅延することが増えます。一つのタスクに集中できず、頻繁に作業を中断してしまうことが多くなります。また、重要なタスクとそうでないタスクの区別が付かなくなり、結果として重要な仕事が後回しにされることがあります。

イライラや怒りっぽい

バーンアウトの症状として、感情のコントロールが困難になり、イライラや怒りっぽくなることも挙げられます。些細なことで同僚や顧客に対して苛立ちを感じ、冷たい態度を取ることが増えます。小さなストレスでも感情が爆発しやすくなり、怒りを抑えられなくなることもあります。そして、イライラや怒りっぽさが原因で、職場での対人関係が悪化し、孤立感を感じることが増えます。

疲労が取れない

バーンアウトの症状として、慢性的な疲労感が挙げられます。これは、十分な休息を取っても疲労が回復しない状態が指摘できるでしょう。十分な睡眠を取っても疲労感が残り、日中の活動に支障をきたすことがあります。これによって、頭痛、筋肉痛、消化不良など、身体的な不調が続くことも多くなりがちです。また、仕事だけでなく、日常生活全般においてエネルギーが枯渇し、何をするにも疲れを感じるようになります。

バーンアウトになる原因

バーンアウトはどのような原因でなるのでしょうか。その原因について、具体例を挙げて説明していきます。

仕事量や質、評価への不満

バーンアウトの主要な原因の一つは、仕事量や質、評価に対する不満です。過剰な仕事量や質の高い業務をこなすことが求められる一方で、適切な評価が得られない場合、従業員は次第に疲弊していきます。

過度な期待やプレッシャー

過度な期待やプレッシャーもバーンアウトの大きな原因です。特に、完璧主義や高い目標を持つ人は、自分に対する期待が大きく、それがストレスとなりやすいでしょう。強い責任感を持つ人も同様の傾向があります。

ストレスへの対処が不足

ストレスへの対処が不足していることも、バーンアウトの原因となります。適切なストレス管理ができないと、心身のバランスが崩れ、バーンアウトに陥りやすくなります。具体的には、リラクゼーション不足、不十分な職場でのサポート体制、ストレスを発散する方法の欠如などを挙げることができます。

バーンアウトからの立ち直り方:回復過程

では、バーンアウトに陥った場合、どのように立ち直ればよいのでしょうか。回復するための詳細なステップを解説します。

十分な休息を取る

バーンアウトからの回復には、まず十分な休息が不可欠です。以下のようなことを心がけます。

睡眠時間を確保する

長期間の過労は睡眠不足を招きます。睡眠不足が続くと、心身ともに回復が遅れてしまいます。十分な睡眠時間を確保し、質のよい睡眠を取ることが大切です。

リフレッシュする時間をつくる

作業から離れ、趣味や運動、旅行などでリフレッシュする機会を設けましょう。気分転換することで、ストレスを発散し、心身ともにリセットできます。ある程度、長期の休暇を取ることはより効果があります。

仕事から距離を置く

仕事から一時的に距離を置き、そこから離れることも重要です。

思い切って休職する

可能であれば、休暇ではなく一定期間、休職することで、仕事から完全に離れる時間を確保しましょう。これにより、心身のリセットが図れます。家族、会社と相談のうえ、休職についても検討するとよいでしょう。

転職や転職を検討する

場合によっては、転職や転勤を検討することも立ち直る選択肢の一つです。環境を変えることで、気分転換につながり、新たな活力を得られるかもしれません。

ストレスの原因を見つける

バーンアウトからの回復には、ストレス要因を特定し、対処することが重要です。

仕事の環境を見直す

過重労働やハラスメント、人間関係のトラブルなど、ストレス要因となる仕事環境を見直しましょう。環境を改善することで、ストレスを軽減できる可能性があります。

価値観や人生観の再考

仕事と個人の価値観や人生観の不一致がストレスの原因になっていないか、振り返る必要があります。自分自身の人生設計を見直すきっかけにもなるでしょう。

業務内容や役割の見直し

業務負荷が重すぎたり、役割に見合わない責任を負ったりしていないか確認しましょう。業務内容や役割の調整を検討する必要があるかもしれません。

信頼できる人に相談する

一人で抱え込まず、信頼できる人に相談することも大切です。

家族や友人に打ち明ける

バーンアウトは深刻な症状を伴う場合があり、一人で抱え込むのは危険です。家族や親しい友人に状況を打ち明け、理解と支えを求めましょう。

専門家に相談する

自力で立ち直るのが難しい場合は、カウンセラーや医師など、専門家に相談することをおすすめします。的確なアドバイスや治療を受けられます。

上司や人事部に相談する

仕事がストレス要因の場合、上司や人事部に状況を伝えましょう。適切な対応があるかもしれません。隠さずにオープンに話し合うことが重要です。

生活環境を整える

バーンアウトからの回復には、生活環境の見直しも欠かせません。

趣味や運動を取り入れる

趣味や運動を通じてリフレッシュする時間をつくりましょう。ストレス発散やリラックスにもなり、気分転換にもつながります。

睡眠環境を整える

質のよい睡眠が取れるよう、就寝時間や寝室の環境を整えましょう。十分な睡眠は回復のために不可欠です。

バランスの取れた食生活を心がける

偏った食生活は体調不良の原因にもなります。バランスの取れた食事を心がけ、体力の維持に努めましょう。

小さな目標を設定する

立ち直りの過程では、大きな目標よりも小さな目標を設定することで、着実に自信を取り戻していくことが重要です。

現実的で達成可能な目標

最初は、現実的で達成可能な小さな目標を設定しましょう。例えば「1日1時間は読書をする」などが考えられます。 小さくても、目標を達成したときに「やった!」と実感できるものを設定し、目標達成の体験を積み重ねることが大切です。

わかりやすい目標を立てる

目標は簡単で明確なものがよいでしょう。目標が曖昧だと、達成感を感じにくくなってしまいます。

小さな成功体験を積み重ねる

前項とも重なりますが、バーンアウト回復には、小さな成功体験を重ねることで、自信と意欲を少しずつ取り戻していくことが肝心です。

感謝の気持ちを忘れずに

小さな成功にも感謝の気持ちを忘れずにいることが大切です。感謝の気持ちが、次の行動への糧になります。

他者からの賞賛を求める

周囲の人から小さな成功を賞賛してもらえると、さらに自信がつきます。周りの人に協力を求め、承認を得ることも大切なプロセスです。

バーンアウトからの立ち直り方:期間の目安

バーンアウトからの回復に要する期間は、個人差が大きく一概に言えませんが、一応、目安があります。前項の回復過程を踏まえて説明します。

軽症のバーンアウトの場合

軽症のバーンアウトであれば、比較的短期間で回復が見込めます。軽症の場合、十分な休息を取ることで、1~2週間程度で症状が改善する可能性があります。この間、完全に仕事から離れ、心身ともにリフレッシュすることが重要です。短期の旅行などで心身を癒やすことで、ストレスを解消できるでしょう。環境を変えることで、気分転換を図ることができます。また、適度な運動や趣味の実践で対処できる場合もあります。

中等症のバーンアウトの場合

中等症のバーンアウトでは、回復に数ヵ月を要するケースがあります。ある程度、長期の休職を取得し、完全に仕事から離れることが望ましいでしょう。この期間中、カウンセリングなどの専門的なケアを受けることで、回復を促進できます。現在の職場環境が回復の妨げになる場合は、転職や転勤を検討する必要があります。

環境を変えることで、新たな活力を得られるかもしれません。また、睡眠、食事、運動など、生活リズム全般を見直すことも重要です。健康的な生活習慣を身につけることで、徐々にコンディションを整えていきましょう。

重症のバーンアウトの場合

重症のバーンアウトでは、回復に1年以上を要することもあります。重症の場合、数ヵ月から1年以上の長期休職を取得する必要があるでしょう。状況によっては、一旦退職して療養に専念することも選択肢の一つです。重症のバーンアウトでは、医師や臨床心理士などの専門家によるケアが欠かせません。投薬治療や心理療法を組み合わせた集中的なケアが必要になります。そして、単に休息を取るだけでなく、価値観や人生設計自体の見直しが求められます。ゆっくりと自分自身を見つめ直す時間が必要です。

社員がバーンアウトになったときの企業のサポート方法

社員がバーンアウトになった場合、企業は制度的な支援はもちろん、環境改善や教育の側面から、バーンアウト対策に取り組む必要があります。具体的な4つの施策を紹介します。

休息、休暇制度を整える

バーンアウトした社員に休息を取らせることが何よりも重要です。そのため、企業は適切な休暇制度を整備する必要があります。

有給休暇の取得促進

まずは、有給休暇を自由に取得できる環境づくりが大切です。上長や同僚から「有給休暇は気兼ねなく取れ」という雰囲気づくりが不可欠になります。

病気休暇の整備

バーンアウトした社員には、うつ病の一種であることから一定期間の病気休暇を認めるべきです。長期の休養が必要な場合もあり得ますので、柔軟な対応が求められます。

リフレッシュ休暇制度の導入

バーンアウト予防の観点から、リフレッシュ休暇制度を設けるのも一案です。気分転換を図り、心身をリフレッシュする機会を設けることで、症状の重症化を防ぐことができます。

相談できる体制を整える

相談できる体制を整えることも大切です。

社内カウンセリング体制の構築

社内に、専門のカウンセラーを配置し、気軽に相談できる環境を整備します。プライバシーが確保された相談スペースを設けることも肝心です。

人事部門の相談窓口の設置

人事部門に、バーンアウトなどの相談に専門的に対応する窓口を設けるのも効果的でしょう。社員の悩みを広く受け付ける体制が必要です。

産業医や外部カウンセラーの活用

社内だけでは十分な対応が難しい場合は、産業医や外部のカウンセラーなどの専門家を活用することをおすすめします。

職場環境を改善する

バーンアウトの要因となる職場環境を改善することも、企業に求められます。

長時間労働の是正

長時間労働がバーンアウトの大きな要因です。労働時間の適正管理や、業務の効率化を図り、長時間労働を是正する必要があります。

ハラスメント対策の徹底

上司や同僚からのハラスメントもバーンアウトにつながります。ハラスメントへの厳しい姿勢を示し、問題が起きた際の対応体制を整えましょう。

コミュニケーション促進

人間関係のトラブルもバーンアウトの一因です。職場のコミュニケーションを活性化し、良好な人間関係を築ける環境づくりが求められます。

メンタルヘルス教育を提供する

社員一人ひとりのメンタルヘルスへの理解を深めるため、教育の機会を設けることも重要です。

バーンアウト予防研修の実施

バーンアウトの症状や要因、予防法などを学ぶ研修を定期的に開催しましょう。気付きを促し、早期対処につなげることができます。

ストレスマネジメント研修

ストレス対処法を学ぶ研修も有効でしょう。ストレスをコントロールする具体的な方法を身につけられます。

マネジャー向けの研修

部下のメンタルヘルスをサポートする方法を学ぶ、マネジャー向けの研修も検討すべきです。上司の役割は大きいためです。

バーンアウトへの予防策

バーンアウトへの予防対策は、個人だけでなく企業全体での取り組みが不可欠です。具体的な予防策について説明します。

仕事量を調整する

過剰な業務量はバーンアウトの大きな要因となるため、適切な仕事量に調整することが重要です。

業務の棚卸しと見直し

まずは現状の業務量を正確に把握することが不可欠です。自分自身の担当業務を一つひとつ洗い出し、必要な作業時間を算出しましょう。そして、過剰な業務がないか確認します。

優先順位の設定

業務量が多すぎる場合は、優先順位を付けて対応する必要があります。重要度の高い業務から着手し、緊急性のない業務は後回しにするなどの工夫をするとよいでしょう。

役割分担の見直し

一人で過剰な業務を抱え込まないよう、上司や同僚との役割分担を適切に行うことも大切です。協力し合える環境を整えましょう。

働く時間と休む時間を明確に区別する

適切な業務量設定だけでなく、時間の使い方にも気を付ける必要があります。

集中して働く時間を確保する

メールチェックや雑務に時間を取られがちですが、そうした作業を一旦オフにし、本業に集中できる時間をつくりましょう。

しっかりと休む時間を確保する

一方で、休憩時間や退社後の時間は、仕事から離れ、リフレッシュできる環境を整えることが大切です。家族や友人との時間、趣味の時間など、気分転換の機会を設けましょう。

リモートワークのメリハリ

テレワークの普及により、仕事と私生活の境界線が曖昧になりがちです。リモート環境でも、しっかりと休憩を取れるようにルール化することが重要です。

セルフチェックを行う

バーンアウトへの備えとして、自分自身の心身の状態を常に把握することが不可欠です。

体調の変化に気付く

体のストレス反応には、集中力の低下や頭痛、不眠などがあります。このような症状がないか、日頃から体調の変化に気を配りましょう。

心理的変化にも注意

イライラ感や意欲の低下、やる気のなさなど、精神的な変調サインにも注意を払う必要があります。仕事に対する姿勢の変化などにも気付くことが重要です。

セルフチェックリストの活用

セルフチェックリストを活用することで、自分自身の状態を客観的に把握できます。定期的に自己評価を行い、早期にバーンアウトを予防しましょう。

組織の健全化のためにバーンアウト対策を講じましょう!

バーンアウトは、個人だけでなく組織全体に深刻な影響を与えかねません。社員が徐々にやる気を失い、生産性が低下すれば、企業の業績にも直結してしまいます。そのため、企業には、バーンアウトに対する適切な予防策と対処法が求められています。

仕事量の調整や、休暇制度の整備、相談体制の構築など、さまざまな施策を講じる必要があります。また、メンタルヘルス教育を通じて、一人ひとりの意識向上も重要です。社員のメンタルヘルスに配慮することが、結果的に組織の活性化と発展につながるでしょう。


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