- 更新日 : 2024年10月21日
顛末書とは?始末書との違いや書き方、作成例を解説(テンプレート付き)
顛末書とは仕事上でのトラブルやミスが発生した際に、発生日時や経緯などを客観的に記録する文書のことです。場合によっては謝罪を伝える役割も果たすものの、主な目的は再発防止です。就業規則などで規定されていれば、業務命令によって従業員に提出を命じられます。今回は、顛末書の目的や例文、始末書や謝罪文の違いなどについて解説します。
目次
顛末書とは?
顛末書とは仕事上でのトラブルや事故、ミスなどが発生した際に、発生日時や経緯などを記録する文書のことです。顛末書の「顛末」が物事の最初から最後までの事情を意味するとおり、一般的には事態の収束後に提出します。提出先は社内であることがほとんどです。
顛末書を書く意味、目的
顛末書は、トラブルや事故などの再発防止を主な目的とする文書です。そのため、経緯や発生日時といった事実だけでなく、考えられる具体的な再発防止策を示す必要があります。なんのために作成するのか、目的を意識して書くことが重要です。
顛末書を作成する主なシーン
顛末書を作成するのは、主に次のようなシーンです。
- 発注ミスや書類の誤記など、手続きや事務処理上でミスがあったとき
- 会社が提供する商品やサービスに不備や欠損があったとき
- 業務中の事故があったとき
- 懲戒処分に該当する事案が発生したとき
- 職場内で特定の人物の行為へのクレームがあったとき
顛末書は、社内処分の対象にならない程度のミスから法的措置が講じられるトラブルまで、さまざまなケースで用いられます。
顛末書の提出を求められたら?
顛末書の提出が求められたときは、事態の詳細を正確に記載することが重要です。トラブルやミスなどの経緯が事実と異なると、再発防止策を講じることは困難でしょう。また顛末書は、場合によって謝罪を伝える役割を果たすものであるため、誠意を持って作成することが求められます。
トラブル収束次第、速やかに提出することもポイントです。前述のとおり顛末という言葉が事態の最初から最後までを意味することを踏まえると、トラブルや事故に対処している最中に顛末書を提出することは少ないといえます。しかし上司への報告は、問題発生後すぐに行うことが大切です。
顛末書をメールに添付して提出しても良い?
一般的に、顛末書は封を開けたまま封筒に入れ、手渡しで提出します。ただし、提出先から要求された場合は、文書ファイルを作成しメールに添付して送りましょう。また、顛末書のファイルを暗号化してメールで送るという方法もあります。
通常、顛末書をメールに添付して提出することは問題ありませんが、企業によっては、顛末書をメールで送ることを禁止している場合もあります。メールで送付する必要がある場合は、社内規定を確認しておく必要があるでしょう。送付先や目的に応じた、適切な提出方法を選択してください。
顛末書と始末書の違い
顛末書と始末書は混同されやすいものですが、目的や提出先、提出のタイミングなどが異なります。ここでは顛末書と始末書の相違点をみていきましょう。
目的やケースの違い
顛末書は、トラブルやミス、事故などが発生したときに、再発防止を目的として、原因・経緯・再発防止策などを社内に報告する文書です。
顛末書を提出させるケースとしては、発注や納品のミス、業務上の事故、社内トラブルなどが挙げられます。懲戒処分の前段階として、顛末書を提出させることもあります。
始末書は、ミスや不祥事があったときに、経緯を報告するとともに謝罪の意を表明する文書です。
始末書が求められるケースとしては、就業規則違反や法律違反、会社に重大な損失を与える事故、会社の名誉を著しく傷つける行為などが挙げられます。
作成者の違い
顛末書は、ミスや事故を起こした当事者のほか、直属の上司などが作成することもあります。
ミスなどを再発させないためには、原因や事実関係、経緯などを客観的かつ公平に報告する必要があります。そのため本人以外に適任者がいる場合は、その人に作成させることがあるのです。
始末書は、謝罪や反省を表明する文書ですから、作成者はトラブルの発端となった本人です。原因や経緯を説明するとともに、今後の対応や対策も示し、誠意を相手に伝えます。
提出先の違い
顛末書は、トラブルの原因や事実関係を会社の上層部に報告するものであるため、通常は社長あてに提出します。ただし会社の規模やトラブルの重大さによっては、支店長や工場長あてになる場合もあるため、その都度、確認した方がよいでしょう。
始末書は、トラブルで迷惑をかけた顧客や取引先などに向けて、反省や謝罪の表明をします。しかしトラブルの内容によっては、社内あてに作成することもあります。
提出のタイミングの違い
顛末書は通常、トラブルなどが収束したタイミングで提出します。顛末書では、トラブルの発生から収束に至るまでの経緯を報告するため、トラブル収束後に作成した方が効率がよいのです。
ただし収束までに長時間を要すると考えられる場合は、収束前でも経過報告の形で提出することがあります。
始末書は、トラブルが発覚したら、すぐに作成します。起こったトラブルに迅速に対処し、適切な謝罪を行うことは、信頼の回復に大きく役立つでしょう。
懲戒処分の有無の違い
顛末書は、ミスや事故に関する報告書の性質が強く、提出したとしても懲戒処分の対象にはなりません。ただし後に、人事異動などの資料になることはあり得ます。
始末書は謝罪や反省を示す文書ですが、始末書を提出するような事態になると、懲戒処分に発展する可能性が高いでしょう。始末書の提出自体が、懲戒処分(けん責)となることもあります。
また始末書は、より重い懲戒処分を科すときの証拠として使われることもあります。
提出の強制力の違い
顛末書は、ミスや事故の事実関係や経緯を報告させるためのものです。ミスなどの再発防止が目的の報告書であるため、提出を命令できます。
一方、始末書はミスや不祥事の原因が自分にあると認め、謝罪や反省を表明する文書です。自分の気持ちや考えを示す内容であるため、強制して書かせることはできません。
もし強制すれば、憲法第19条が保障する「思想および良心の自由」に抵触するおそれがあるため、注意が必要です。
顛末書と謝罪文との違い
顛末書に似ているものに「謝罪文」があります。共にトラブルやアクシデントが起きたときに作成する文書ですが、目的や提出相手が違います。
目的・提出先の違い
顛末書は、ミスやトラブルなどを繰り返さないために、原因や事実関係、経緯、結果などを社内に報告して共有するための文書です。多くの場合、顛末書は社長あてに提出されます。
謝罪文は、自分のミスや不手際により迷惑をかけた相手に対し、謝罪を伝える文書です。相手は社内のことも社外のこともあります。
始末書と謝罪文との違い
自分の不手際などを謝罪するという意味で、謝罪文は始末書と類似するものです。
始末書は、懲戒処分につながるような損害発生時に提出されますが、謝罪文は懲戒に至らない比較的軽度のミスや不手際について作成される傾向があります。
顛末書のひな形、テンプレート
以下より、今すぐ実務で使用できる、テンプレートを無料でダウンロードいただけます。自社に合わせてカスタマイズしながらお役立てください。
顛末書の作成に必要な情報、望ましい書き方は?
顛末書は社内で共有する内容であるため、事案に関係していない社員でも内容が理解しやすいように作成することがポイントです。一文を短く、箇条書きにすることもおすすめです。
また、再発防止のために必要な情報が網羅されている必要があります。ここでは、顛末書に記載する項目や、作成上のポイントなどを解説します。
顛末書に記載する項目
一般的な顛末書に記載する項目は、以下のとおりです。
- 発生日時・発生場所
- 内容
- 原因
- 損害や被害の規模
- 対応状況
- 再発防止策
- 担当者の見解
顛末書には公的なフォーマットがありません。社内で使われているフォーマットがあれば使用し、ない場合は会社の指示に従って作成しましょう。
顛末書を記載する際のポイント
顛末書は客観的に伝えること
顛末書においては、発生したトラブルや事故について、客観的に伝えることが重要です。担当者個人の感想や思いなどを書くことは避けましょう。
推奨形式は5W1H
顛末書で推奨される形式は「5W1H」です。5W1Hとは、情報を正確に伝えるためのフレームワークで、具体的には以下の内容を指します。
When | いつ |
Where | どこで |
What | 何か |
Who | 誰によって |
Why | なぜ |
Why | どのように |
5W1Hの法則に従い、トラブルの経緯や原因、現在の対処状況、再発防止策などをわかりやすく記載しましょう。
顛末書の例文・作成例
ここからは、顛末書の実際の例文・作成例を、社内用と社外用に分けてご紹介します。顛末書を作成する際に参考にしてください。
社内用の顛末書の一例
発生日時:〇年〇月〇日発生場所:社外〇〇にて発生
内容:〇〇の紛失
当事者:〇〇部〇〇課〇〇〇〇
状況:社外での使用時に紛失。取得者からの連絡により発覚
原因:本来持ち出し禁止である〇〇を、〇〇が外部に持ち出したため
損害:特になし
対応:確認後、ただちに〇〇課長に報告。総務部〇〇部長の承認のもと〇〇を無効化
今後の対策:
・社外への持ち出しが禁止されている物品について、改めて周知徹底する
・上記の物品を持ち出すリスクに関しても周知する
・〇〇の保管ルールを徹底する
・退勤時の保管場所への返却を確認するリストの作成、およびリストへの記入を義務化する
社外用の顛末書の一例
発生日時:〇年〇月〇日内容:仕様変更前での納品
当事者:〇〇部〇〇課〇〇〇〇
経緯:納品後、依頼内容が仕様に反映されていないことに気づいた先方からの連絡により、発覚
原因:担当者の確認不足
損害:商品〇個分〇〇万円分の損失
対応:ただちに仕様を実装した商品を製造、〇月〇日に先方へ送付
今後の対策:
・納品前の複数名によるチェックの徹底
担当者コメント:この度は、私の不注意よりご迷惑をおかけしてしまい大変申し訳ございませんでした。今回のことは、確認不足と思い込みが原因です。今後はこのようなことがないよう、ご依頼内容の確認を徹底していく所存であります。
顛末書の提出に法的効力はあるか
パートやアルバイトを含め、顛末書を提出させる強制力があるのか気になっている方もいるでしょう。結論からいうと、基本的には業務命令として書かせることが可能です。そのほか、顛末書の提出を拒否した場合の対応についても解説します。
パート・アルバイトにも顛末書を提出させることは可能?
契約書や就業規則に顛末書提出の義務が明記されている場合は、パートやアルバイトであっても、業務命令として顛末書を書いてもらうことは問題ないでしょう。
たとえば始末書の場合、企業が従業員に対して提出を強制することは困難です。始末書には従業員の反省や謝罪、誓約などが含まれます。そのため始末書の提出を強制することは、憲法に定められている「思想・良心の自由」に反する可能性があるためです。
それに対して顛末書は、再発防止を主な目的とした事実報告であるため憲法の「思想・良心の自由」には触れません。
しかし、契約書や就業規則で規定されていない場合は、顛末書の提出を強制することは適切な対応とはいえず、状況に応じた判断が求められます。
顛末書の提出を拒否した場合
前述のとおり、契約書や就業規則に顛末書の提出拒否が業務命令違反であることが記載されていれば、従業員の顛末書の提出拒否に対して、懲戒処分を下すことも可能です。ただし、提出拒否に対する処分内容についても、就業規則などに明記されている必要があります。
顛末書の作成を依頼する際の注意点
ミスや事故が発生し、現場の当事者に顛末書を作成してもらうには、どのようにしたらよいのでしょうか?
状況を把握する
ミスや事故が判明したときは、関係者に状況や原因を尋ね、概要を把握します。そのうえで顛末書が必要だと判断した場合は、誰に顛末書を書いてもらうか決めましょう。
顛末書の目的などを理解してもらう
顛末書を書いてもらう従業員に作成依頼をします。顛末書を書いた経験のない従業員もいるため、次のことを説明し、理解を得たうえで作成してもらいましょう。
- 顛末書の目的は再発防止であること
- 顛末書は、始末書や謝罪文とは異なること
- ミスなどを起こした当事者以外に書いてもらう場合は、その理由
顛末書の書き方を説明する
社内に顛末書のテンプレートがある場合は、テンプレートを使用させます。「手書きかPCでの作成か」「書面提出かデータ提出か」等の社内ルールがあるときは、それに従うよう指導しましょう。
テンプレートがない場合は、書き方についておおまかに説明する必要があります。
顛末書の提出を拒まれたら
従業員が顛末書を出そうとしないとき、就業規則等に顛末書の提出義務について記載がある場合は、再度、提出を命じましょう。
就業規則などで義務とされていない場合は、無理に書かせることは適切ではありません。しかし事故などの規模によっては、担当者からの状況報告が必要な場合もあるはずです。
そうしたときは、従業員にその旨を説明して協力してもらうなどの対応が必要となります。
なお、顛末書を提出したがらない従業員は、顛末書と始末書を混同していることもあり得ます。その場合は、顛末書の目的について再度説明し、理解してもらいましょう。
パワハラと言われないために
顛末書は、事故などの原因や経緯を報告させるものですが、内容に謝罪や反省の意が含まれることもあります。
謝罪や反省の部分の修正を命じたり、極めて軽微な事故などでも顛末書を出させたりすると、パワーハラスメントと解されることもあり得るでしょう。
そのため顛末書を提出させるときは、本当に顛末書が必要なトラブルかを考え、また従業員の意思にかかわる部分については、修正を強要しないことも大切です。
顛末書を受け取った上司が対応すべきこと
部下から顛末書を受け取ったら、上司は内容を把握し、必要に応じて確認を行い、再発防止策が適切か検討する必要があります。ここでは、顛末書を受け取った後にすべきことについてみていきましょう。
問題の経緯の把握
まず、発端から収束までの経緯を把握します。必要に応じ、本人や関係者にヒアリングをし、事実関係を確認しましょう。
原因の分析
トラブルが発生した原因は何か、何が不足していた結果、トラブルが起きたかなど、原因の分析を行います。
再発防止策の検討
顛末書に記載された再発防止策について、実行可能性を検討します。再発防止のために備品の購入や追加人件費が必要になる場合は、コストの試算も必要でしょう。
提出された顛末書に「具体性がない」「実行可能性が薄い」といった問題がある場合は、再提出を依頼します。
関係者への報告
顛末書を承認したら、会社上層部や外部関係者に報告を行います。社内・社外に被害者がいる場合は、適切な対応を取る必要があるでしょう。
フォローアップ
再発防止策を講じた後も、継続的に実施されているか定期的にチェックします。時間の経過とともに実施が疎かになったり、実態に合わなくなったりすることもあるため、必要に応じて再発防止策を改善していきましょう。
顛末書を活用して組織の成長につなげよう
顛末書とは仕事上でなんらかのトラブルが発生した際に、再発防止を主な目的として発生日時や経緯などを記録する文書のことです。基本的に従業員への業務命令で提出を求められますが、契約書や就業規則で顛末書の作成について規定されていない状況での強制は、適切とはいえません。
トラブルやミスの再発防止のための書類であることを考慮し、経緯や考えられる原因を正しく客観的に書くことが求められます。顛末書を理解し適切に活用することで、組織の成長と発展につなげましょう。
よくある質問
顛末書とはなんですか?
仕事上でなんらかのトラブルが発生した際に、再発防止を主な目的として、発生日時や経緯などを記録する文書のことです。詳しくはこちらをご覧ください。
顛末書の作成において、必須の記入項目について教えてください
「発生日時・発生場所」「内容」「原因」「損害や被害の規模」「対応状況」「再発防止策」「担当者の見解」などです。詳しくはこちらをご覧ください。
※ 掲載している情報は記事更新時点のものです。
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