• 更新日 : 2024年12月24日

特定退職金共済制度とは?メリット・デメリットやおすすめの企業を解説

特定退職金共済制度は、国が提供する退職金制度で、従業員の福祉を支えるために作られました。事業主は毎月一定額を掛金を支払うことにより、従業員が退職した際にまとまった退職金を支払う準備を整えられます。

本記事では、特定退職金共済制度について徹底解説します。特定退職金共済制度に関するメリットとデメリットについても解説しているため、今後制度の利用をご検討している方はぜひ参考にしてみてください。

特定退職金共済制度とは

特定退職金共済制度(特退共)は、所得税法施行令第73条で定められている「特定退職金共済団体」が運営している共済型退職金制度です。

毎月決まった掛金を支払うことにより、従業員の退職金を用意できるようになります。ただし、原則従業員全員が加入する必要があり、経営者や役員は加入できません。

下記では、特退共について具体的に解説します。

仕組み

特定退職金共済制度(特退共)は、将来支払う必要がある従業員の退職金を準備するための社外積立型制度です。

特退共では、企業は商工会議所の地域で従業員の同意を得た後、加入申し込み書を提出し、退職金共済契約を締結するのが一般的です。契約後は、毎月掛金を口座振替で納付します。掛金は、事務経費を差し引いた後、特定退職金団体が定期預金や証券投資信託などで運用します。

企業が掛金を納めることで、従業員が退職した際に退職金が支給される仕組みです。

従業員が退職した際は、事業主が必要な書類を提出し、退職金が団体から直接支払われます。上記の仕組みにより、企業は退職金を計画的に準備でき、従業員は安定した退職金の受取が可能です。

運営母体

特定退職金共済制度(特退共)は、所得税法施行令第73条により定められた特定退職金共済団体が運営しています。所得税法によると、特定退職金共済団体は、退職金共済事業を主に行っており、さらに税務署長から認可を受けている組織や法人のことです。

特定退職金共済団体の例は以下のとおりです。

  • 商工会議所
  • 商工会
  • 商工会連合会
  • 都道府県中小企業団体中央会
  • 一般社団法人
  • 一般財団法人
  • 市町村(特別区を含む)など

制度の内容は、特定退職金共済団体により異なるため、事前に確認しておきましょう。

契約対象

特定退職金共済制度(特退共)の契約対象は、商工会議所の地区内に事業所を持つ事業主です。従業員数や企業規模に関係なく申請できます。そのため、中小企業から個人事業主まで幅広く利用されている制度です。

特退共は、事業主が従業員の同意を得て加入手続きを進めることで適用され、従業員の退職金を計画的に準備するサポートとなります。

そのため、事業主にとっても従業員にとっても安心できる退職金制度だといえるでしょう。

加入対象

特定退職金共済制度(特退共)に加入した場合、原則すべての従業員を加入させる必要があるため注意が必要です。加入対象となるのは、年齢満15歳以上、満70歳未満の従業員と従業員給与部分を受ける使用人兼務役員です。

ただし、以下の従業員は加入対象とはなりません。

  • 事業主および事業主と生計を行う親族
  • 法人の役員(使用人兼務役員を除く)
  • 他の特定退職金共済団体の加入者

また、下記の従業員も必ずしも加入する必要はないため事前に確認しておきましょう。

  • 特定の期間だけ雇われている人
  • 使用期間中の人
  • 休職期間中の人
  • 季節による仕事で雇われている人
  • 非常勤の人

特退共に加入する際は、加入すべき従業員についての確認も重要です。

特定退職金共済制度と似た制度の比較

特定退職金共済制度には似た制度があり、他の制度と混同することも珍しくありません。特定退職金共済制度によく似た制度は、特定業種退職金共済と中小企業退職金共済が挙げられます。

下記では、特定退職金共済制度と似た制度との違いを解説します。

特定業種退職金共済との違い

特定退職金制度と特定業種退職金共済は、どちらも独立行政法人勤労者退職金共済機構により運営されている退職金制度ですが、対象や仕組みが異なります。

特定退職金共済制度は、幅広い中小企業の従業員を対象に、毎月一定額の掛金を企業が負担し、退職時に従業員に支給されます。

一方、特定業種退職金共済とは、厚生労働大臣が指定した特定の業種(建設業、林業、清酒製造業)向けの退職金制度です。働いた日数に応じて掛金を納め、業界を退職する際に支給されます。

中小企業退職金共済との違い

特定退職金共済制度と中小企業退職金共済は、似ている制度ですが運営期間が異なります。特定退職金共済制度は特定の市町村や商工会議所の団体が運営していますが、中小企業退職金共済は独立行政法人の勤労者退職金共済機構が運営しています。

中小企業退職金共済制度は、会社が勤労者退職金共済機構の中小企業退職金共済事業本部と「退職金共済契約」を締結し、毎月金融機関から掛金を納めることが一般的です。

従業員が退職した際は、従業員が本部へ請求手続きを行うと、従業員に直接退職金が支払われます。

特定退職金共済制度を導入するメリット・デメリット

特定退職金共済制度は、企業が毎月一定の掛金を納付することにより、従業員が退職時に退職金を受け取れるように設計されています。本制度は、企業だけでなく従業員にとっても安心感のある制度ですが、メリットとデメリットがあるため事前確認が重要です。

下記では、特定退職金共済制度を導入するメリットとデメリットを解説します。

メリット

特定退職金共済制度を導入するメリットは、導入が簡単であることが挙げられます。申請の際は、商工会議所や商工会などに申し込み手続きするだけです。掛金の積立も外部の保険会社が代行してくれるため、気軽に導入できます。

また、従業員の数に関する制限が設けられていないため、商工会議所の地区内に事業所がある事業主は、中小企業以外でも契約可能です。

一定期間以上加入している従業員は、運用益や国からの補助が退職金に加算される場合があります。そのため、従業員が受け取れる退職金が支払った掛金よりも多くなることがあるのも、大きなメリットです。

デメリット

特定退職金共済制度には、注意点があります。まず、役員は加入できません。特定退職金共済制度は従業員を対象としているため、会社法で定められた「取締役」「会計参与」「監査役」などの役員は対象外です。

また、掛金を減額する場合は手続きが複雑です。事業主は全従業員の同意を得る必要があり、さらに「掛金を減額しなければ事業継続が困難である」と特定退職金共済団体に認めてもらう必要があります。

先に触れたメリットの裏返しになりますが、加入期間が短く早期に退職する場合は、退職金が支払った掛金額を下回る「元本割れ」が発生することもあります。

特定退職金共済制度はメリットもありますが、デメリットも存在することを理解しておきましょう。

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特定退職金共済制度は中小企業退職金共済と重複加入できる?

特定退職金共済制度(特退共)と中小企業退職金共済(中退共)は、重複加入しても問題ありません。

重複して加入することにより、事業主は従業員ごとに退職金制度を組み合わせて活用し、福利厚生をより充実させられます。

特退共は、従業員の退職金をサポートする仕組みです。従業員数や規模に関係なく加入できますが、中退共と併用することで、より計画的で柔軟な退職金プランを設計できます。

ただし、他の特定退職金共済制度に加入している場合、重複加入できないため注意が必要です。

事業主は制度の特徴をしっかり理解し、従業員にとって最適な退職金制度を選んで組み合わせることが重要です。

中小企業が増資した場合、中退共から特退共に移行できる?

中小企業による増資で、中小企業の範囲を超えたために中小企業退職金共済(中退共)の加入資格を失ったとしても、一定の要件を満たすことで特定退職金共済制度(特退共)へ移行が可能です。

中退共は、中小企業に属する従業員の福祉の充実や雇用安定のための制度です。しかし、事業拡大や増資により、中退共の加入資格を失うことがあります。

上記の場合、特退共への移行も選択肢の一つです。

中退共から特退共に移行手続きを進めるためには、まず特退共の加入資格を確認する必要があります。その後、従業員の同意を得たうえで、移行手続きを行いましょう。

手続きの際は、特退共加入前に中退共の脱退が求められるため、「解除通知書」の提出が必要です。中退共から特退共に移行する際は、事前に要件を確認して必要に応じて対応してください。事前準備を整えていれば、よりスムーズに移行が進められます。

特定退職金共済制度がおすすめの企業は?

特定退職金共済制度(特退共)がおすすめの企業は以下のとおりです。

  • 節税効果を得たい企業
  • 長期雇用を促進したい企業
  • 従業員の退職金を確実に管理したい企業

特退共は、企業の節税対策として役立つ仕組みです。掛金は全額が損金や経費として計上でき、課税対象から外れます。また、従業員も給与に係る所得税を抑えられ、双方にとって節税効果が得られるため、大きなメリットです。

さらに、特退共は、長期雇用を支える仕組みとしても注目されています。特退共では、10年以上の従業員が退職する際、希望すれば年金形式で10年間退職金が支払われます。

上記の仕組みにより、従業員が会社に定着しやすくなるため、長期雇用促進を目指す企業に最適です。

また、特退共は従業員の退職金を効率的に管理したい企業にも最適です。働いた日数に応じた掛金を納めるため、雇用形態や業種に応じて柔軟に対応できます。企業も従業員も安心して利用できる制度として、将来の備えにおすすめです。

必要に応じて特定退職金共済制度に加入しよう

特定退職金共済制度(特退共)は、特定退職金共済団体として国の認可を得た商工会議所や商工会などが実施する退職金制度です。商工会議所の地区内の事業主であれば加入できます。

加入事業主は、特定退職金共済団体と退職金共済契約を締結し、掛金を納めることにより、所属する従業員の退職時に退職給付金の支給を受けられます。

特退共を利用する際は、事前に制度の概要やメリット・デメリットを理解したうえで契約することが重要です。今後、特退共を利用する際は、ぜひ本記事を参考にしてみてください。


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