• 更新日 : 2021年11月4日

マイナンバーの「独自利用」とは?関係条文と具体例

行政機関や地方公共団体の行政事務スマート化を目的として導入されるマイナンバー
主な利用シーンとしては税、社会保障、災害対策の行政手続きが挙げられますが、「市町村の機関による独自利用」(以下、独自利用)という利用方法があるのをご存知でしょうか?
ここではこの根拠となる「行政手続における特定の個人を識別するための番号の利用等に関する法律」(以下、「番号法」)の条文を解説するとともに、実際に利用が検討されている事例を紹介します。

マイナンバーの独自利用に関する条文を解説

番号法第9条(利用範囲)第2項の解説

地方公共団体の長その他の執行機関は、福祉、保健若しくは医療その他の社会保障、地方税(地方税法(昭和二十五年法律第二百二十六号)第一条第一項第四号に規定する地方税をいう。以下同じ。)又は防災に関する事務その他これらに類する事務であって条例で定めるものの処理に関して保有する特定個人情報ファイルにおいて個人情報を効率的に検索し、及び管理するために必要な限度で個人番号を利用することができる。当該事務の全部又は一部の委託を受けた者も、同様とする。

引用元:番号法
番号法第9条はマイナンバーを利用できる者と利用できる事務の種類と範囲を明らかにしている条文です。
このうち第2項に書かれている「その他これらに類する事務であって条例で定めるもの」が独自利用を指します。各地方公共団体の実情にあった利用方法を条例によって定めることにより、マイナンバーを国民の利便性の向上や行政事務の効率化に役立てることが目的です。

番号法第18条(個人番号カードの利用)の解説

番号法第18条は個人番号カードを誰がどのように利用できるのかを定めた条文です。このうちの1号が独自利用についての記述となっています。
一 市町村の機関 地域住民の利便性の向上に資するものとして条例で定める事務
引用元:番号法
現在すでに全国の市町村では住民基本台帳カード(以下、住基カード)を使って様々な住民サービスを展開しています。
この住民サービスは条例に基づいて展開されており、そのために活用されているのが住基カードに埋め込まれたICチップの空き領域です。
住基カードはマイナンバーの導入に伴って2015年12月で発行が停止されますが、住民サービスまで停止するわけにはいきません。そこで番号法第18条1号によって、これまで住基カードによって利用されていたサービスを個人番号カードでも利用できるようにしたのです。

【豊橋市】マイナンバーの独自利用の具体例

豊橋市のマイナンバーの独自利用案

豊橋市マイナンバーの独自利用の具体例

(出典:「マイナンバー制度における独自利用事務の選定等」について(案) |豊橋市HP
豊橋市が「『マイナンバー制度における独自利用事務の選定等』について(案)」で公表・意見募集を行ったマイナンバーの独自利用案は全部で15個。
国民年金課では医療費の一部負担金の支払いが難しい後期高齢者のための助成金事務に、こども家庭課では母子父子福祉手当の審査等や支給、愛知県遺児手当の審査等や支給の事務に利用することを検討しています。
他にも障害福祉課やこども保健課、教育政策課など独自利用を検討している課は全部で7つです。これにより今まで必要だった所得証明等の添付書類の省略が可能となり、行政手続きがスムーズになるとしています。

情報連携する場合も条例が必要

地方税の事務で取り扱ったマイナンバーをこども家庭課の事務で利用する場合など、別の事務同士でマイナンバーを融通する場合にも条例を定めることが必要とされています。
また、市長部局と教育員会など別の執行機関同士でマイナンバーを融通する場合にも条例が必要です。
これは税、社会保障、災害対策の行政事務だけでなく、独自利用においても同様です。豊橋市は「『マイナンバー制度における独自利用事務の選定等』について(案)」の中で、前述の15個の独自利用案とともにこれらの条例の制定も検討しています。

【高知市】マイナンバーの「独自利用」の具体例

高知市のマイナンバーの独自利用案

高知市長は2015年6月11日の定例記者会見で独自利用について「図書館の利用者カード」や「コンビニでの住民票の交付」などに言及しています。また市での保険証の個人番号カードへの一元化についても検討中としています。
高知県にとって南海トラフ地震は重要な懸案事項。高知市長は地震発生時に数千人規模の避難者が出た場合、本人確認の方法としてマイナンバーの記帳を検討していることも明らかにしています。

独自利用の利便性とコスト

高知市長が独自利用を考える際に検討すべきポイントとして挙げているのがコストパフォーマンス。どの独自利用案についても立ちはだかる問題です。
高知市では独自利用はあくまで「コストに見合うものでいけそうなものがあれば、それにのせていく」ということで検討しています。
マイナンバーの独自利用とは、各地方公共団体が個別に条例を制定して、それに基づいて行うものです。
高知市のようにコストとシステム、パフォーマンスの観点から独自利用の導入を考えている地方公共団体もあります。自分が住む地方公共団体がどのような条例を制定することになるのか、それが自分に関係のある行政事務なのか、事前に調べておきましょう。


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