• 更新日 : 2026年9月1日

ジョブローテーションとは?導入するにはどうすればいい?メリット・デメリットと成功事例を解説

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Pointジョブローテーションとは何か?

ジョブローテーションとは、人材育成を目的として従業員の職種・部署を定期的に変更する制度です。

  • 国内企業の53.1%が導入済み
  • 期間は目的に応じて6か月〜5年が目安
  • 成功には事前ヒアリングとサポート体制が必須

Q. ジョブローテーションの主なメリットは?

A. 企業側には業務の属人化防止と適材適所の実現、従業員側にはキャリア形成とモチベーション維持の効果があります。

ジョブローテーションとは、人材育成を目的として従業員の職種や部署を定期的に変更する制度です。人事異動や配置転換と混同されやすいものの、目的や運用の考え方には明確な違いがあります。本記事では、ジョブローテーションの基本的な意味から、メリット・デメリット、導入手順、成功事例までを網羅的に解説します。

ジョブローテーションとは?

ジョブローテーションとは、従業員の能力開発を目的として、定期的に職種や部署の変更を行う制度のことです。「経理部から監査部」といった部門をまたぐ異動や、小売店でレジ打ち・品出し・倉庫管理を順に担当するような部門内の異動も含まれます。さまざまな業務を経験させることで、幅広いスキルと視野を持つ人材の育成を狙いとしています。

人事異動との違い

両者の違いは「実施する目的」にあります。人事異動は昇格・降格・解雇・配置転換などを組織の活性化のために行うのに対し、ジョブローテーションは人材育成計画に基づき戦略的に行われる点が特徴です。人事異動が組織側の都合を主軸とするのに対し、ジョブローテーションは従業員の成長を主軸とした施策と言えます。

社内公募制度との違い

社内公募制度は、社員が自らの意思で希望するポジションに応募できる仕組みで、社内転職とも呼ばれます。ジョブローテーションが会社主導の育成計画に基づいて実施されるのに対し、社内公募制度は従業員自身がキャリアを主体的に形成するための制度である点が異なります。

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ジョブローテーションが必要とされる背景とは?

ジョブローテーションが日本企業に広く普及した背景には、終身雇用や新卒一括採用といった雇用慣行があります。新卒から定年まで長期にわたり在籍することを前提とした「メンバーシップ型雇用」のもとでは、社内を横断的に理解するゼネラリストの育成が重視されてきました。

近年はジョブ型雇用や専門性重視の流れが強まったことで、ジョブローテーションを「時代遅れ」と捉える声も出ています。ただし、業務の属人化防止や人材の適性把握といった効果は依然として有効であるため、自社の事業特性に合わせて設計することが重要です。

参考:日本におけるジョブ型雇用の展望|財務省

ジョブローテーション制度の実施状況は?

日本の企業では過半数がジョブローテーションを導入しており、人事異動は3年周期で行われる傾向が最も高くなっています。

独立行政法人 労働政策研究・研修機構の調査によると、全国の常用労働者300人以上の企業10,000社のうち、ジョブローテーションが「ある」とする企業は53.1%でした。正社員規模が大きい企業ほどその割合は高くなる傾向があります。また、人事異動の頻度は「3年」が27.9%で最多、次いで「5年」が18.8%という結果でした。ジョブローテーションが「ある」企業のほうが「ない」企業に比べて、3年周期での異動を行う割合が高いことも報告されています。

参考:調査シリーズNo.174『企業の転勤の実態に関する調査』|労働政策研究・研修機構(JILPT)

ジョブローテーションのメリットは?

ジョブローテーションは、企業側には属人化の防止と適材適所の実現、従業員側にはキャリア形成とモチベーション維持というメリットをもたらします。

企業側のメリット

メリット 内容
業務の属人化防止 複数の従業員が業務内容やノウハウを共有できるため、担当者が退職してもほかの従業員がカバーできる
適材適所の人材配置 複数の部署や業務を経験させることで、面接や研修だけでは見極めにくい従業員の適性を把握できる

従業員側のメリット

メリット 内容
具体的なキャリアプランの形成 さまざまな部署や業務を経験することで自分の適性を把握し、将来像を描きやすくなる
モチベーションの維持 定期的な配置転換により、同じ環境に慣れることで生じるマンネリを防げる

ジョブローテーションのデメリットは?

ジョブローテーションには、異動直後のパフォーマンス低下や教育コストの増加、専門性が身につきにくいといった課題があります。

企業側のデメリット

異動直後は新しい部署や業務に不慣れなため、従業員のパフォーマンスが一時的に低下します。本人が業務に慣れるまでほかの従業員がフォローする必要があり、体制が整っていない場合は生産性への影響が大きくなります。また、異動のたびに教育が発生するため、教育コストや人事担当者の負担も増加します。

従業員側のデメリット

ジョブローテーションはもともと社内を横断的に把握する「企業内ゼネラリスト」の育成を目的とした制度のため、特定分野の専門性を高めにくいという課題があります。また、自分の適性に合わない部署へ配置された場合、精神的な負担につながることもあります。

ジョブローテーションの失敗例は?

ジョブローテーションは、事前準備や従業員への配慮を欠くと、生産性の低下や離職につながるリスクがあります。

期待通りの効果を得られないケース

ある自動車メーカーでは、製造ラインの従業員を対象にジョブローテーションを実施した際、一部の従業員が異なる工程に対応できず、生産ラインの遅延と品質低下を招きました。事前トレーニング不足が要因であり、必要なスキルの洗い出しと教育の徹底が欠かせないことを示す事例です。

従業員の意向を考慮しないケース

ある企業では、従業員の意向を確認せずにジョブローテーションを実施した結果、複数の退職者が発生しました。不得意な業務を任せることで従業員のモチベーションが低下し、生産性の低下と人材流出を招いたのです。企業方針としての配置転換であっても、事前のヒアリングが重要になります。

ジョブローテーションの効果的な期間は?

ジョブローテーションの期間は目的によって異なり、短期は6か月以内、長期は2〜5年が一般的な目安です。

期間の目安 主な目的
2週間〜1か月(研修型) 新人研修として複数部署を体験させ、基礎理解を促す
6か月以内(短期) 若手社員の適性を見極める
3〜5年(育成型・中長期) 企業内ゼネラリストや幹部候補としての育成を図る

実施期間が短すぎると適性の判断やスキルの定着が難しくなり、逆に頻度が高すぎると従業員の負担が増します。期間設定に迷う場合は、多くの企業が採用している「3年」を目安にするとよいでしょう。

ジョブローテーションが向いている企業の特徴は?

ジョブローテーションは、新卒採用の規模が大きく、多様な職種を抱え、教育コストを負担できる体力のある企業に向いています。

具体的には、以下の特徴を持つ企業が導入に適しています。

  1. 新卒一括採用の人数が多い
  2. 社内に多様な職種・業務がある
  3. 教育コストをかけられる人的・資金的な余裕がある
  4. 業務内容をマニュアル化できる
  5. 退職率が低い(年間10%以下)

社会人経験のない新卒を一括採用している企業では、ジョブローテーションを通じて個々の適性に合った配置を見つけやすくなります。一方で、教育コストを無駄にしないためにも、退職率の低さが前提条件となります。

ジョブローテーションを導入するにはどうすればいい?

ジョブローテーションを効果的に運用するには、目的と期間の明確化、従業員の希望の反映、サポート体制の整備という3つのステップを踏む必要があります。

STEP1 実施する目的・期間を明確にする

導入前に、「適性を判断するために半年ごとに実施する」「企業内ゼネラリスト育成のために3年ごとに実施する」など、目的と期間を具体的に定めます。配置転換は従業員にとって負担となるため、実施の意義を事前に伝えて理解を得ることが大切です。

STEP2 従業員の希望を考慮する

従業員には「専門性を身につけたい」「特定の職種は避けたい」といった希望があります。希望を全く反映しないと、メンタルヘルスの不調や離職につながる恐れがあるため、実施前のヒアリングと実施後のエンゲージメント確認を行いましょう。

STEP3 サポート体制を整える

配置転換直後は、元の部署で優秀だった従業員でもパフォーマンスが落ち込むことがあります。生産性の一時的な低下をある程度許容したうえで、指導担当者の配置やマニュアルの整備など、フォロー体制を構築しておく必要があります。

ジョブローテーションの導入で成功した企業の事例は?

大手企業では、事業特性や育成目的に応じてジョブローテーションの運用方法を工夫し、人材育成の効果を上げています。

双日株式会社

総合商社である双日株式会社は、2009年10月より人材育成・組織力向上・従業員の活性化を目的にジョブローテーションを導入しました。原則として部署を超える異動を行い、海外赴任や国内事業会社への出向機会が多い事業特性を生かして、異動機会が少なかった従業員にも異なる職務経験を提供できるようになりました。

富士フイルムグループ

富士フイルムホールディングス株式会社は、本人の育成状況に応じて事業や職種をまたぐジョブローテーションを実施しています。年1回の上長面談を通じて本人の価値観やキャリア希望を踏まえたうえで異動を決定する点が特徴で、課題形成力・業務遂行力・関係構築力の向上につながっています。

ソニー株式会社

ソニー株式会社は、入社10年程度の若手社員が自らの専門性を確立することを目的にジョブローテーションを活用しています。世界7カ所の拠点に配置された「タレントダイレクター」と呼ばれる人事担当者が、異動先のポジション発掘を担っており、グローバル人材の育成に成功しています。

ジョブローテーションを効果的に活用するために

ジョブローテーションは、人材育成と組織の活性化を両立できる配置転換の手法です。導入にあたっては、実施する目的・期間を明確にし、従業員の希望を考慮したうえで、サポート体制を整えることが成功の鍵となります。自社の事業特性や人事戦略に合わせて、無理のないジョブローテーションを設計しましょう。

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