• 更新日 : 2024年10月21日

採用証明書とは?必要な理由や書き方、テンプレート、申請の流れを紹介!

採用証明書とは、失業手当を受給している方が再就職手当を適正に受給するために必要な書類です。再就職が決定した失業手当の受給者と、再就職先の企業の双方が記入することにより、採用の証明もできます。なお、ハローワークに書類を提出するのは受給者です。本記事では採用証明書の書き方や注意点、無料でダウンロードできるテンプレートなどについて紹介します。

採用証明書とは

採用証明書は事業主に採用の証明をしてもらい、正しい雇入年月日を把握して手当を適正に給付するための書類です。失業手当受給者の再就職が決定したときに採用した企業と受給者が記入し、受給者がハローワークに提出します。しかし、多くの項目を記入するのは採用した企業側です。

なお、2023年10月より採用証明書への事業主の押印は不要になりました。ただし、正面欄への記載は今まで通り必要です。

参考:採 用 証 明 書|厚生労働省

採用証明書が必要な理由

要件を満たしていれば、仕事を辞めたときに失業手当を、再就職したときに再就職手当をもらえます。ただし、正しい手続きをしなければ手当の不正受給になってしまいます。採用証明書はそれらの手当を適正に受給するための手続きに必要となります。

失業手当の受給停止のため

失業手当は再就職するまでの生活費を支給し、再就職活動する人の生活を守ることを目的とした制度です。再就職先が決まればその会社から給料を受け取れるので、失業手当の受給は停止しなければなりません。再就職したのにも関わらず失業手当をもらい続けるのは不正受給であり、発覚した場合は不正行為によって受給した金額を全額返還する必要があります。加えて、最大で不正受給額の2倍の金額(合計で不正受給分の3倍の金額)の支払いを命じられるなど、厳しい処分を受けなければなりません。

なお、採用証明書を提出するとすぐに失業手当をもらえなくなるわけではなく、雇用契約が開始する前日分までが支給されます。採用証明書を早く提出すると損をするということはないので、再就職先が決まったら速やかに停止の手続きをしましょう。

参考:不正受給について(事例等)| 厚生労働省

再就職手当を受給する申請のため

失業手当を受給する資格を満たしていて、受給資格の決定を受けた人が、早期に再就職するとハローワークから支給される手当が再就職手当です。失業者が長期間求職活動をしないまま失業手当を受給することを防ぎ、早期の再就職を促すことを目的としています。再就職が決定すると失業手当を受給できなくなる一方、失業から再就職までの期間が短いほど受給できる再就職手当の金額は大きくなるという仕組みです。

しかし再就職手当は誰でももらえるわけではなく、下記の要件を全て満たしていなければなりません。

【再就職手当の受給対象者】

  • 受給手続き後、7日間の待機期間満了後に就職、または事業を開始したこと。なお、待機期間中に仕事などをして失業の状態ではなかった日や、失業認定を受けていない日は待機期間に含まれない。
  • 就職日の前日までの失業認定を受けたうえで、残りの基本手当の支給日数が、所定給付日数の3分の1以上あること。
  • 離職した前の事業主のもとに再び就職したものでないこと。また、離職した前の事業主と資本や賃金、人事、取引面で密接な関わりがない事業主に就職したこと。
  • 受給資格に係る離職理由により基本手当が支給されない期間がある方は、求職申込みをしてから待機期間満了後1ヶ月の期間内はハローワークまたは職業紹介事業者の紹介によって就職したものであること。
  • 1年を超えて勤務することが確実であること。なお、生命保険会社の外務員や損害保険会社の代理店研修生のように1年以下の雇用期間が定められており、雇用契約を更新するにあたって一定の目標を達成することが条件づけられている場合や、派遣就業で雇用期間が定められ、雇用契約の更新が見込めない場合はこの要件に該当しない。
  • 原則として雇用保険の被保険者であること。
  • 過去3年以内の就職で再就職手当または常用就職支度手当の支給を受けたことがないこと。なお、事業開始による再就職手当も含む。
  • 受給資格決定前から採用が内定していた事業主に雇用されたものでないこと。

参考:再就職手当のご案内|厚生労働省 

再就職手当の受給金額

再就職手当の受給金額は、失業保険の1日あたりの支給額(以下、基本手当日額)と所定給付日数のうち失業手当を受給していない日数(以下、支給残日数)によって次の通り計算します。

ただし、基本手当日額には上限(60歳未満は6,395円、60歳以上65歳未満は5,170円、毎年8月更改)があるので注意しましょう。

再就職手当の受給金額=基本手当日額×支給残日数×給付率

給付率は支給残日数により次の通りです。

  • 支給残日数が所定給付日数の2/3以上:給付率70%
  • 支給残日数が所定給付日数の1/3以上2/3未満:給付率60%

早く再就職して支給残日数が多いほど給付率は高くなります。なお、支給残日数が所定給付日数の1/3未満の場合、再就職手当は受給できません。次のモデルケースを使用して再就職手当の金額をシミュレーションしてみましょう。

  • 基本手当日額が5,000円、所定給付日数300日
  • 基本手当を90日受給して支給残日数は210日(給付率は70%)

上記ケースの受給金額は次の通りです。

  • 再就職手当の受給金額=5,000円×210日×70%=73万5,000円

採用証明書の準備と再就職手当の申請の流れ

再就職先が決まったら、以下の手順で再就職手当の受給手続きをします。

  1. 再就職先で採用証明書を記載・証明してもらう
  2. ハローワークに採用証明書を提出し申請書をもらう
  3. 再就職先で申請書に必要事項を記入してもらう
  4. ハローワークで再就職手当の申請を行う

それぞれの手続きについて解説します。

1.再就職先で採用証明書を記載・証明してもらう

再就職が決まったら、採用証明書の「本人記入欄」を記載した上で再就職先に証明書を提出します。再就職先に「事業主記入欄」への記載と証明をしてもらい、証明書を受け取ります。

採用証明書は、失業手当の受給手続き時に交付された「受給資格者のしおり」に掲載されているので確認しましょう。また、ハローワークのホームページからダウンロードできます。

2.ハローワークに採用証明書を提出し申請書をもらう

採用証明書の準備ができれば、ハローワークで証明書を提出します。ハローワークに行くときは、雇用保険受給資格者証と失業認定申告書も持参しましょう。

ハローワークが再就職手当の受給要件を確認し、「再就職手当支給申請書」を交付します。

3.再就職先で申請書に必要事項を記入してもらう

再就職手当支給申請書にも、本人記入欄と事業主記入欄があります。本人記入欄を記載の上、再就職先に提出して必要項目に記入してもらいましょう。採用証明書と同様、2023年10月より事業主の押印は不要になりました。

4.ハローワークで再就職手当の申請を行う

再就職手当支給申請書の準備ができたら、ハローワークに申請書と雇用保険受給資格証を提出します。申請期間は、再就職日の翌日から1ヶ月間です。期間内に申請できなかった場合でも、再就職日の翌日から2年以内なら請求可能です。

なお、再就職手当が振り込まれるのは、申請書が受理されてから1ヶ月半程度かかります。

採用証明書の書き方

採用証明書には本人記入欄と事業所記入欄、事業所証明欄がありますが、本人が記入しなければならないのは「支給番号」のみで、記入するのはほとんど企業です。

事業所記入欄

事業所記入欄には採用した従業員の情報を記入します。記入する項目は以下の通りです。

  • 雇入(予定)年月日、一週間の所定労働時間
  • 従業員数
  • 職種
  • 雇入年月日前の貴社における就労の有無
  • 採用経路
  • 雇用形態
  • 雇用期間の定めの有無

雇入年月日は雇用契約が開始する日です。日付が間違っていると給付金を返還しなければならないなど、従業員と労使トラブルになってしまうかもしれないので注意しましょう。

従業員数には営業所や支店、支社などの全ての事業所を含む全体の従業員数を記入します。

職種には経理事務員や小学校教員など、従事する業務内容がわかるように記入しましょう。

雇入年月日前の貴社における就労の有無は、本採用の前にパートやアルバイト、日雇いなどで一定期間働いた場合にを、自社で働いたことがなければを選びます。有の場合は働いた期間も記入してください。

採用経路は安定所の紹介、求人広告など採用に至った経路で該当するものを選びます。方法によっては職業紹介事業所名や所在地、電話番号、担当者名の記入も必要です。

雇用形態はパートやアルバイトであっても、1年以上の長期間にわたって日常的に勤務する場合は「常用」を選ぶなど、どのように雇用するかを基準にします。迷った場合はその他に雇用形態を記載するか、ハローワークに問い合わせましょう。

雇用期間の定めの有無は、有期雇用の労働者を採用した場合にを選んでください。再就職手当を受給するためには1年以上の勤務が確実でなければなりません。そのためこの項目は大きく影響します。間違いがないように注意しましょう。

事業所証明欄

事業所証明欄には企業側が自社の情報を記入します。内容は以下の通りです。

  • 事業所所在地
  • 事業所名称
  • 代表者氏名
  • 電話番号
  • 雇用保険適用事業所番号

雇用保険適用事業所番号は、ハローワークから交付される「雇用保険適用事業所設置届 事業主控」や、資格取得の手続きをするときに交付された「雇用保険被保険者資格取得等確認通知書(事業主通知用)」で確認することができます。

また、ハローワークに届け出た雇用保険適用事業所の登録印で、指定の場所に押印するのを忘れないようにしましょう。

採用証明書のテンプレート

テンプレートを利用することで、採用証明書の発行までの手間を簡略化することができます。以下のURLから無料でテンプレートをダウンロードできるので、ぜひ活用してみてください。
前述の通り、ハローワークのホームページからもダウンロードできます。

採用証明書を作成する時の注意点

採用証明書を作成するにあたっていくつかの注意点があります。トラブルに発展するのを防ぐために、あらかじめしっかりと確認しておきましょう。

支給番号は求職者が自ら記入

本人記入欄にある支給番号は、本人が持っている雇用保険受給資格者証に記載されています。雇用保険受給資格者証は失業手当の受給のためにハローワークから失業者へ発行される書類で、個人情報なので企業側は見ることができません。そのため、本人が支給番号を記入する必要があります。氏名や生年月日、住所などは本来企業側が記入する欄なので空欄でも問題はありませんが、記入ミスを防いだり事務作業を簡略化したりするために、本人があらかじめ記入してから企業に渡すのがおすすめです。

雇入年月日は雇用期間の初日を記入

事業所記入欄にある雇入年月日の記入には特に注意してください。雇入年月日の欄には企業と採用者が締結した雇用期間の初日を記入します。雇入年月日は雇用契約締結の日や内定日、出勤予定日、出勤日ではありません。

例えば1月1日から雇用期間であるものの、出勤は1月4日からといった休日や祝日が雇入日であるケースや、2月1日から雇用期間かつ出勤日であったが欠勤し、2月2日に出勤したケースはいずれも1日が雇入日となります。

なお、研修期間や試用期間があったり、臨時従業員やパート、アルバイトを経て正社員になったりする場合も、雇用期間の初日が雇入年月日です。臨時期間が終わった日や正社員になった日ではありません。

従業員数は正社員だけではない

事業所記入欄に記入する従業員数は正社員の人数だけではなく、パートやアルバイトなど、非正規雇用の労働者も含みます。正規、非正規問わずに営業所や支店、支社などの全ての事業所で雇っている従業員数を記入しましょう。

提出期限は雇入日の前日まで

採用証明書の提出期限は雇入日の前日までです。しかし、企業側の事情により勤務開始以降でないと発行できないことがあります。その場合は採用者にその旨をなるべく早く伝え、ハローワークに相談して指示に従ってもらいましょう。

なお、記入した内容に誤りがあると再提出を求められることがあるかもしれません。採用者への再就職手当の給付がその分遅れてしまう可能性があるため、余裕を持って作成しておきましょう。

採用証明書は再就職手当に必要な書類

採用証明書は失業手当の受給停止と再就職手当の受給申請のための書類です。受給の手続きでトラブルが起きないように企業側と採用者側の双方でしっかりと記入内容を確認しましょう。採用証明書の作成経験がない方は、紹介したテンプレートもぜひ活用してください。


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