- 更新日 : 2023年11月2日
AQ(Adversity Quotient)・逆境指数とは?意味や具体例を紹介
AQとは日本語では逆境指数と呼ばれ、逆境や困難に直面した際の対応力を示す指標です。従来は、IQの高い人材がビジネスで成功を収めると考えられてきました。しかし、現在では逆境に強い人材こそが成功者であるという考え方が一般的です。今回は、心理テストや心理検査などでIQやEQと並んで注目すべきAQについて解説します。
目次
AQ(Adversity Quotient・逆境指数)とは?
AQとは「Adversity Quotient」の頭文字を取った略語で、日本語では逆境指数を意味します。人間は日々何らかの逆境に直面しており、逆境指数は逆境や困難に直面した際の対応力を示す指標です。ここでは、AQと並んで心理テストなどに度々登場するIQやEQとの違いについて解説します。
IQとの違い
IQとは「Intelligence Quotient」の頭文字を取った略語で、日本語では知能指数を意味します。論理的思考能力や問題解決能力、認知機能などを始めとした知能水準を表す指標で、一般的に認知テストによって測定される数値です。
IQが高い人材は複雑な問題に直面した際、迅速かつ正確に対処できるため、ビジネスで成功するには必須の要素と考えられてきました。しかし、現在では先天的な要素の強いIQだけが成功の鍵ではなく、AQやこの後紹介するEQなども大きな要因であると考えられています。
EQとの違い
EQとは「Emotional intelligence Quotient」の略語で、日本語では心の知能指数などと訳されます。他者の感情を察する能力と自己の感情をコントロールする能力からなり、自分や相手の心の状態、すなわち感情を把握し活用する能力を表す指標です。
先天的な要素の強いIQはいわゆる頭の良さを表す指標であるのに対し、心の機微を汲み取る能力であるEQや、逆境への対応力を示すAQは後天的なもので、トレーニングなどによって高められます。
AQ(逆境指数)の歴史
逆境への対応力を示すAQは、アメリカの組織的コミュニケーションおよび組織発展の研究者ポール・G・ストルツ博士が提唱し、欧米を中心に注目を集めている概念です。ストルツ博士は自身の研究を通し、会社社長や経営幹部などビジネスにおいて目覚ましい活躍をみせる人材は、必ずしも高いIQやEQを有しているわけではないということに気付きます。
従来、高いIQやEQは成功者の必須条件と考えられてきましたが、ストルツ博士はAQこそが成功への鍵を握る重要な要素であると考えました。その後の調査では、成功者はIQやEQが高いだけでなく、AQも圧倒的に高いことが判明します。
現在では、ビジネスにおける成功にはAQが大きな鍵を握っているとの考え方が一般的です。日本においても、AQは人材開発などの分野で注目を集める概念となっています。
AQ(逆境指数)における4つの要素
AQには「CORE」と呼ばれる4つの要素があり、その組み合わせによって逆境に直面した際の反応が決まると考えられています。逆境に直面した際の反応はAQのレベルといい、以下の5段階に分類が可能です。
- 逃避(Escape)
- 生存(Survive)
- 対処(Cope)
- 管理(Manage)
- 滋養(Harness)
レベルについては、次章で詳しく解説します。一方、AQのレベルを決定付けるのは今回解説する「CORE」です。
- コントロール(Control)
- 責任(Ownership)
- 影響の範囲(Reach)
- 持続時間(Endurance)
ここでは、AQのレベルにかかわる4つの要素について解説します。
コントロール(Control)
「コントロール(Control)」には2つの側面があります。
1つ目の側面は、何らかの逆境に直面した際にどの程度自分の反応をコントロールできるかという要素です。セルフコントロールに関する要素とも捉えられます。
2つ目の側面は、現状にどの程度プラスの作用を与えられるかという要素です。現状をコントロールする変革力とも言い換えられます。セルフコントロールにたけていて変革力のある人材は、ビジネスを成功に導くAQの高い人材です。
責任(Ownership)
「責任(Ownership)」は、どのような困難に直面しても他者や周囲の環境のせいにするのではなく、自分自身の問題として捉えて真摯に対応する責任感に関する要素です。与えられた責務に対し、責任感と主体性を持って取り組む姿勢をオーナーシップといいます。オーナーシップを持った人材は逆境に晒されても責任転嫁せず、自分の問題として受け止め強い自覚を持って責務を果たすAQの高い人材です。
影響の範囲(Reach)
「影響の範囲(Reach)」は、現在直面している逆境が仕事や人生にどの程度影響を及ぼすと考えるかという要素です。逆境の影響は大きいと考える人材は、不安や無力感にさいなまれ、現実逃避や見て見ぬふりといった反応を示す可能性が高まります。一方、逆境の影響は小さいと考える人材は、困難に怯むことなく冷静な対処が可能です。
持続時間(Endurance)
「持続時間(Endurance)」は、現在直面している逆境がどの程度持続すると考えるかという要素です。長期間にわたって逆境が継続すると考える人材は、逆境指数が低い傾向にあります。一方、逆境は一時的なものでいずれ必ず解決すると考える人材は、逆境指数も高い傾向にあるのが一般的です。
AQの高い人材は、悪いことや良いことは一時的なものでいつまでも続かないと理解しているため、困難に直面しても冷静に対処できます。
まとめて「CORE」と呼ばれる
ここまで紹介した「コントロール(Control)」「責任(Ownership)」「影響の範囲(Reach)」「持続時間(Endurance)」は、まとめて「CORE」と呼ばれています。
逆境に直面した際の反応は、これら4つの要素からなる「CORE」の組み合わせによって決まるという考え方が一般的です。また、ストルツ博士は「CORE」の4要素をトレーニングなどによって強化することで、AQのレベルを後天的に高められると述べています。
AQ(逆境指標)における5つの段階
前章では、AQのレベルを決定付ける4つの要素である「CORE」について解説しました。ここでは、5段階に分類されるAQのレベルについて解説します。
① 逃避(Escape)
レベル1の「逃避(Escape)」は、逆境に直面しても立ち向かえずに逃げ出してしまうレベルです。現在置かれている状況から逃避するいわゆる現実逃避は、すべきことから目を背け逃げ出す行為や心理状態を指します。
現実逃避してしまう人材は自己や状況をコントロールする力が弱く、逆境への対応力も低いのが一般的です。セルフコントロールや変革が苦手で、オーナーシップや自制心が低い人材とも言い換えられます。
➁ 生存(Survive)
レベル2の「生存(Survive)」は、逆境に直面した際にダメージを受けつつもどうにか生き延びられるレベルです。
現状維持を良しとする偏見や先入観を意味する現状維持バイアスが示す通り、人間は変化を恐れ、嫌う生き物であると考えられます。何らかの逆境や変化に晒されたときに、人間は遺伝子に刻まれた生存本能から守りの姿勢を取りがちである、という考え方も一般的です。先行きが不透明な状況では不安が募り、逆境に立ち向かう姿勢を取ることは一層難しくなります。
③ 対処(Cope)
レベル3の「対処(Cope)」は、逆境や困難に晒されても自分の問題として対峙し、適切に対処できるレベルです。
困難な問題を克服したり現状を変革したりするほどの力はありませんが、逆境に対してある程度の対処力はあります。大多数の人材はこのレベルにあるといわれていますが、度重なる逆境や困難は精神的な負荷が大きく、自己や現状に対するコントロールが効かなくなる恐れもあるため注意が必要です。
④ 管理(Manage)
レベル4の「管理(Manage)」は、逆境に直面した際に困難な状況を管理し、最善の方法で解決や克服をしようと試みるレベルです。
このレベルの人材は多くの逆境や困難にうまく対処できるため、大抵の試練や挫折にも動じません。一方、キャパシティを超えた逆境に直面したり、非常に困難な状況が続いたりすると、精神的な負担を大きく感じてしまうかもしれません。なお、ストルツ博士はリーダーや経営者にはレベル4以上の資質が求められると述べています。
⑤ 滋養(Harness)
レベル5の「滋養(Harness)」は、逆境に晒され困難に直面した際に、ピンチの状況をチャンスに変えられるレベルです。
英語圏には「blessing in disguise」という格言があります。日本語では「災い転じて福となる」などと訳すのが一般的です。このレベルの人材は、逆境に直面しても自分自身の問題として真正面から受け止め、困難な状況を利用してさらなる成長を実現できます。逆境や困難に臆することなく挑む姿勢が、成長に必要な栄養素となるのです。
AQ(Adversity Quotient)・逆境指数は逆境への対応力を示す指標
今回はAQ(Adversity Quotient)について解説しました。AQは日本語では逆境指数を意味し、逆境や困難に直面した際の対応力を示す指標です。従来、ビジネスで成功するにはIQが重要であると考えられてきました。しかし、近年の調査では先天的なIQだけでなく、後天的なAQが大きな鍵を握っていることがわかっています。
逆境への対応力を示すAQは、日本でも人材開発などの分野で注目を集めている概念です。当記事を参考に、AQについて改めておさらいしておきましょう。
※ 掲載している情報は記事更新時点のものです。
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