- 更新日 : 2024年12月9日
なぜ働き方改革にペーパーレス化が必要か?現状や進め方、成功事例を解説
政府は、多様な働き方の実現や不合理な格差の是正等を目指し、働き方改革を推進しています。国や地方公共団体だけでなく民間においても、その流れは波及しており、各社様々な施策を講じています。
当記事では、働き方改革の実現に不可欠なペーパーレス化について解説します。当記事を参考に、ペーパーレス化を促進してください。
目次
なぜ働き方改革にペーパーレス化が必要か?
働き方改革とは、生産性向上と労働環境の改善を目指し、長時間労働や雇用形態による不合理な格差の是正および、高齢者や女性等の多様な人材の活用を図る国の施策です。また、働き方改革を推進するためには、「ペーパーレス化」が不可欠となっています。
ペーパーレス化とは、紙の書類を電子ファイルに置き換えたり、契約締結手続きを電子的な方法で行ったりすることです。様々な業務の効率化につながるため、長時間労働の是正などの働き方改革を推進するうえで、非常に重要な要素となっています。
文書管理の効率化
紙の契約書類などを管理する場合、多くのスペースが必要です。必要書類を探し出すために時間や手間が掛かるため、非効率的な手法であるともいえるでしょう。一方、書類を電子化するとパソコンやクラウド上で保管できるため、スペースが不要です。書類が電子化されると検索性も高くなり、手間や時間を掛けずに目的の書類を探し出せます。
働き方の多様化
現在では、リモートワークやテレワークなど、出社を要しない多様な働き方を選択できる企業が増えています。しかし、このような働き方は、出社して打刻しなければならない紙媒体による勤怠管理との相性がよくありません。書類をやり取りする際にも、その都度郵送する必要があります。
勤怠管理や書類のやり取りをペーパーレス化を推進すれば、打刻のためだけに出社する無駄や郵送に掛かる手間やコストを削減できます。業務の効率化が図れるようになり、多様な働き方の実現を目指す働き方改革にも資する方法となります。
労働時間の削減
ペーパーレス化によって業務効率が向上すれば、残業時間等を抑制して労働時間を削減できます。長時間労働の是正を目的とする働き方改革の実現を大きく助けるでしょう。
スムーズなコミュニケーション
ペーパーレス化は、社内のコミュニケーションをチャットツールやSNSなどの方法に置き換えることでも実現できます。気軽に上司や同僚とコミュニケーションを取れるようになり、社内におけるコミュニケーションが活性化されるでしょう。
また、チャットツールやSNSを通して休暇等の申請が可能となれば、印刷や押印など多くの工程が必要だった申請手続きをシンプルかつスムーズに進められます。いつでも申請や承認が可能となるため、急な休暇申請にも対応できるでしょう。
災害時・非常時への対応
企業には契約書類をはじめ、多くの書類が保管されています。しかし、自社が被災した場合、これらの書類が汚損や滅失してしまいます。書類をペーパーレス化して電子ファイルでクラウド上に保存しておけば、災害時にも汚損や滅失の心配はありません。基になるデータがあれば、災害時や非常時でも業務をすぐに再開できます。
世界の働き方改革、ペーパーレス化の状況は?
働き方改革を進めているのは日本だけではありません。世界各国も働き方改革やペーパーレス化に取り組んでいます。
デンマークは、世界でも有数の電子政府として、ペーパーレス化を強力に推進しています。 原則として全市民が電子私書箱「Digital Post」を保有しており、行政機関からの通知は私書箱に届きます。書類送信も可能なほか、保険会社や銀行といった民間企業からの通知も可能です。政府ポータルサイトとして「GOV.UK」も運用しており、パスポートの更新や自動車の仮免許証申請、各種税金の支払いまで行えます。このように、デンマークではペーパーレス化の推進によって、ほぼ全ての事務手続きやコミュニケーションがパソコンやスマートフォンなどで行えるようになっています。
オーストラリアとシンガポールでは、二国間のデジタル経済協定に沿って、貿易手続きの簡素化やペーパーレス化に取り組んでいます。ペーパーレス化のためのデジタル認証プラットフォームを開発し、2020年11月から試験運用を開始しました。この試験運用は、オーストラリア政府により発表された貿易要件手順の改革、および貿易のデジタル化を推進する政策に基づくものです。
参考:
令和3年版 情報通信白書|総務省、第1章第3節 公的分野におけるデジタル化の現状と課題 「海外におけるデジタル・ガバメントの動向」
オーストラリアとシンガポール、ペーパーレス化に向けた試行運用を開始|日本貿易振興機構
日本の働き方改革、ペーパーレス化の現状
総務省の調査によると、ICT化に関連した業務慣行の改善施策として「ペーパーレス化」と答えた割合が最も多く、60%以上※を占めています。つまり、過半数以上の企業が、業務改善のための施策としてペーパーレス化を選択していることになります。なお、ICT化とは、情報通信技術の利用により、コミュニケーションの円滑化やサービスの質向上などを図る取り組みのことです。※3年以上前から実施、3年以内に実施の総計
改善施策としてペーパーレス化が多く選択される背景には、「e-文書法」「電子署名法」などのペーパーレス化に関連する法律の施行があります。帳簿等の電子ファイルでの保存が認められ、契約合意を電子的方法で示せるようになったことが要因となっているでしょう。2020年の調査ですが、非対面が推奨されるコロナ禍を経て、ペーパーレス化の導入率は、より増えたものと推測できます。
電子帳簿保存法の改正によって、2024年1月からは企業規模を問わず電子取引に関する書類は全てデータによる保存が義務化されました。そのため、2024年に入ってからは、多くの企業でこれまで以上にペーパーレス化が進展しています。さらに2020年4月からは、資本金1億円以上の法人など特定の法人で、一部の社会保険手続きや労働保険の電子申請が義務化されました。このような法律の定めによるペーパーレス化の推進は今後も続くものと考えられ、日本におけるペーパーレス化は、今後ますます進展するでしょう。
参考:令和2年版 情報通信白書|総務省、第3章第2節「デジタルデータ活用の現状と課題」
政府が進める働き方改革とペーパーレス化
政府は、働き方改革を実現するために、以下のような取り組みを行っています。
- 時間外労働の上限規制
- 月60時間超の時間外労働に対する割増率の引き上げ
- 年5日の有給休暇取得義務
- 同一労働同一賃金
- 勤務間インターバルの導入
- フレックスタイム制拡充
- 産業医・産業保健機能の強化
時間外労働の上限規制を守るためには、ペーパーレス化による業務効率化が不可欠です。上限規制を遵守すれば、自ずと月60時間超の時間外労働の発生を抑制できるでしょう。また、勤怠管理システムを導入し、ペーパーレス化を図れば、有給取得義務の期限を見逃すことがなくなるなど、働き方改革とペーパーレス化は密接な関係があります。
政府は上記以外にも「行政手続きのオンライン化」に取り組み、ペーパーレス化を推進しています。スマートフォン等による行政手続きの完結に取り組むものであり、行政手続効率化と国民の利便性向上を図ることが目的です。この取り組みによって、罹災証明書のオンライン申請などが可能となっており、2023年3月時点において1,000を超える自治体でオンライン申請が可能となっています。
オンライン申請は、被災という緊急時に自治体役所の訪問が不要となるだけでなく、自治体も窓口で対応する職員が不要になる効果があります。その結果、人的リソースに空きができ、効率的に災害対応にあたることが可能となるでしょう。
ペーパーレス化により働き方改革が実現した事例
全国の自治体でも、ペーパーレス化による働き方改革に取り組んでいます。自治体におけるペーパーレス化による働き方改革の事例を紹介します。
愛媛県西予市
愛媛県西予市では、「西予市オフィス改革モデルプロジェクト」として、ICTの活用による職員の働き方改革に取り組んでいます。デジタルツールの導入や情報の電子化などで業務の速度向上と効率化を図るだけでなく、議員にタブレットを配布してペーパーレス化にも取り組んでいます。7割以上が効率の向上を感じたと回答し、書類保管量50%減、コピー使用量半減など、ペーパーレス化の効果も見られたそうです。
参考:ICTを活用したペーパーレス化から働き方改革への取組み|総務省
千葉県成田市
千葉県成田市は「成田市ペーパーレス宣言」を発表し、自治体をあげてペーパーレス化に取り組んでいます。紙を「出さない、持たない、欲しがらない」をスローガンに掲げ、年度ごとの数値目標を定めて紙の削減に努めています。同市の行政改革推進状況を見ると、伝票の電子化率は2022年で18.4%、2023年で27.9%です。また、コピー用紙の調達量は過去5年平均と比較して2022年で5%減、2023年で15%減と、ペーパーレス化が着実に進展しています。
参考:
成田市行政改革推進計画(令和4年度から令和6年度)の進捗状況|成田市、「行政改革推進計画(令和4年度~令和6年度)の進捗状況」
埼玉県さいたま市
埼玉県さいたま市は、政令指定都市として全国で2番目の導入事例となるタブレットを使ったペーパーレス会議システムを採用する自治体です。原則として会議はペーパーレスで実施することで、印刷・回収・廃棄コストの圧縮に取り組んでいます。窓口のデジタル化や行政手続きのオンライン化も推進し、2023年にはオンラインによる手続きが累計69%に達しました。
参考:
「さいたま市行財政改革推進プラン2013」を策定しました|さいたま市、「さいたま市行財政改革推進プラン 2013」
令和6年度さいたま市DX推進本部会議|さいたま市、「今後のDX推進について」
ペーパーレス化と働き方改革の進め方
ペーパーレス化による働き方改革を進展させるためには、以下のステップを踏んでいく必要があります。
- 紙の使用状況の把握
- 必要な機能の洗い出し
- 段階的に自社に合ったシステムを検討する
- 無料トライアルで試験導入する
- 従業員に周知とサポートを行う
- 効果検証と業務効率化を進める
以下でステップごとに解説します。
1.紙の使用状況の把握
ペーパーレス化を進めるためには、まずどの部署のどのような作業で、どの程度の紙を使用しているか把握しなければなりません。この使用量を基にして、削減する目標を決定します。ただし、100%削減といった大きな目標を最初から立てると達成が困難となり、改革が途中で終わってしまいます。達成可能な目標を立てて、着実に改革を進めましょう。
2.必要な機能の洗い出し
自社におけるペーパーレス化に必要な機能は何かを洗い出します。ペーパーレス化を助けるシステムは多種多様です。たとえば、リモートワークを行う従業員が多く、打刻方法が課題であれば、スマートフォン等でも打刻可能な機能を備えたシステムを選択しましょう。
3.段階的に自社に合ったシステムを検討する
ペーパーレス化で解決したい課題が複数あっても、全てを一度にペーパーレス化すると従業員の対応が困難です。従業員がスムーズに対応できるよう、まずは優先順位の高い課題からペーパーレス化で解決しましょう。複数のシステムを比較検討し、自社の働き方改革を推進できるシステムの導入を検討してください。
4.無料トライアルで試験導入する
無料トライアルで試験導入すると、自社とのマッチ具合やどれだけ効率化を図れるかを把握できます。トライアル期間を積極的に活用し、自社に最適なシステムを見つけましょう。想定していた効果が望めなかった場合は、固執することなく他のシステムへの乗り換えを検討してください。
5.従業員に周知とサポートを行う
従業員にシステムを導入した旨を周知し、ペーパーレス化を促進しましょう。システムの利用に不慣れな従業員がいる場合には、サポート担当者などを選任し、利用方法のレッスンなどを行う必要があります。従業員の協力なくして、働き方改革の実現は不可能です。
6.効果検証と業務効率化を進める
システム導入後は、ペーパーレス化による効果を検証しましょう。検証によって生産性向上の妨げとなっている紙の書類などがあれば、ペーパーレスできないか検討してください。検証と改善を繰り返しながら、業務効率化を推進することが働き方改革の実現には重要です。
ペーパーレス化と働き方改革の進めるポイント
ペーパーレス化によって働き方改革を進める際には、段階を踏むことが重要です。いきなり全ての業務をペーパーレス化すると、従業員が対応できずかえって働き方改革の実現を妨げるでしょう。目標達成が容易なものからペーパーレス化し、実績を積みながら進めればスムーズに移行していけます。
文書管理のペーパーレス化を進める際には、セキュリティ体制の構築も忘れてはなりません。誰でも書類にアクセスできる状態では、個人情報の流出なども懸念されます。適切なアクセス権限を設定するとともに、セキュリティ講習を実施するなどして意識を高めましょう。
ペーパーレス化による働き方改革はマネーフォワードがサポート
ペーパーレス化によって、働き方改革を実現したいと考えていても、自社のみで可能なのか不安を感じる方もいるでしょう。そのような方は、マネーフォワードの利用をご検討ください。
「マネーフォワード クラウド勤怠」では、スマートフォンによる場所を選ばない柔軟な打刻が可能です。リモートワークを行う従業員が多い企業のペーパーレス化を大きく助けます。
「マネーフォワード クラウド給与」では、給与明細をWeb上で確認可能です。リモートワークに適しているだけでなく、紙の給与明細が不要となるため、自社におけるペーパーレス化の実現も大きく前進するでしょう。
「マネーフォワード クラウド会計」を利用すると、紙で行っていた会計作業をクラウド上で行えます。インボイス制度や電子帳簿保存法にも対応しているため、法令を遵守した保存が可能です。
「マネーフォワード クラウド請求書」では、見積書や納品書、請求書のテンプレート利用による作成が可能です。紙の見積書等が不要となるだけでなく、作成の手間も削減できるため、業務効率化にもつながります。
マネーフォワードを利用することで、自社におけるペーパーレス化は大きく進展します。ペーパーレス化による業務効率の向上も最大化されるため、働き方改革の実現も大きく近づくでしょう。
参考:
集計・管理が楽になる 勤怠管理システム|マネーフォワード クラウド勤怠
勤怠集計データ・自動計算・Web明細発行 給与計算をもっと簡単に|マネーフォワード クラウド給与
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ペーパーレス化で社内の働き方改革を実現
ペーパーレス化は、業務の効率化やコスト削減に大きな効果を発揮する方法です。効率化を図れれば労働時間も抑制できるため、働き方改革が掲げる長時間労働の是正も容易となるでしょう。当記事の解説を参考にしてペーパーレス化を進め、自社における働き方改革を実現してください。
※ 掲載している情報は記事更新時点のものです。
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