- 更新日 : 2025年5月27日
源泉徴収票に印鑑は必要?社印やシャチハタなどの決まりはある?
企業が給与の支払いをした者に対して発行する「源泉徴収票」は、押印がないのが一般的です。社印がなくても法的には問題はありません。ただし、銀行への住宅ローン申請では社印のある源泉徴収票が求められるケースがあります。その際、シャチハタなど、どんな印鑑でも認められるのか、ここでは源泉徴収票の押印について解説します。
目次
基本的に源泉徴収票の印鑑(社印等)は不要
源泉徴収票には、押印は基本的に不要とされています。企業が源泉徴収票を発行するタイミングは、退職者が発生したときや年末調整を行ったあとです。
企業は、年末調整後に源泉徴収票を従業員に交付し、かつ税務署に提出する必要があります。国税庁の作成の手引きには、源泉徴収票に記載するべき項目が書かれていますが、そこに印鑑や社印の規定はありません。つまり、年末調整で税務署に提出する源泉徴収票に押印は求められていないということです。
参考:
令和3年分 給与所得の源泉徴収票等の法定調書の作成と提出の手引|国税庁
源泉徴収票は個人の収入を証明する書類です。そのため、転職した場合は前職の会社から退職時に受け取った源泉徴収票を転職先に提出します。この際も、基本的に源泉徴収票に押印は必要ありません。
以前は確定申告の際に源泉徴収票を提出していました。2019年4月より国税関係の手続きが簡素化され、現在は提出を省略できます。このときの源泉徴収票にも、社印などの押印の求めはありません。
参考:
国税関係手続が簡素化されました|国税庁
税務署窓口における押印の取扱いについて|国税庁
法律でも源泉徴収票の印鑑の必要性は明記されていない
法的な面でも、源泉徴収票に印鑑が必要とは記されていません。所得税法施行規則の第93条を確認してみましょう。給与支払いにもとづく源泉徴収票についての記載がありますが、「載せなければいけない」とされているのは、事業所の所在地・電話場号、そして給与の支払いを受ける者の氏名です。
一 次に掲げる源泉徴収票の区分に応じそれぞれ次に定める事項
イ 所轄税務署長に提出する源泉徴収票 その給与等の支払を受ける者の氏名、住所又は居所及び個人番号並びにその給与等の支払をする者の氏名又は名称、住所若しくは居所又は本店若しくは主たる事務所の所在地、個人番号又は法人番号及び電話番号
退職にともない発行する源泉徴収票について定めた第94条でも、同様の記載がされています。つまり、源泉徴収票に発行した会社や事業所、支店がある住所と電話番号は必要ですが、発行元の社印や代表者の印鑑といった押印は不要なのです。
ただし源泉徴収票の印鑑が必要なケースもある
源泉徴収票に押印が求められるケースは、銀行やカード会社などに収入の証明として提出する場合です。賃貸契約や住宅ローンの申し込みの際、収入証明書類として源泉徴収票の提出を求めるのは一般的です。その際「手書きの場合は社印の押印が必要です」と規定しているケースがあります。
また、記載内容を修正する「訂正印」として印鑑が必要になることもあります。
民間企業で源泉徴収票への押印が求められるケース
企業名・氏名・年月が確認できるものに限ります。
手書きの場合は、社印の押印が必要です。
手書き(複写)の源泉徴収票・給与明細書については必ず社印(社判)の押印が必要です。
引用:「収入額を証明できる書類」ご提出に関するお願い|株式会社アプラス
また、源泉徴収票の一部が手書きの場合でも、社印を求めるケースもあります。
勤務先の社印・社判は不要です。
ただし、源泉徴収票の全部もしくは一部が手書きの場合は、勤務先の社印・社判が必要となります。
引用:Q「【住宅ローン】<本審査の必要書類>源泉徴収票に「社印(会社の印鑑)」がありません。どのように対応したらいいですか。|auじぶん銀行
このように押印が求められる場合は、源泉徴収票の支払者の欄に押してもらうのが一般的です。支払者の「所在地」「氏名または名称」が記載されている箇所に社印を押します。
訂正印として印鑑を押すケース
印鑑には「正確性の証明」という意味合いがあります。書類の記載事項に誤りがあった場合、修正しその上に訂正印として印鑑を押すのが一般的な対応です。
訂正印は、二重線で訂正した箇所に重ねて押すか、または修正箇所の近くに押印します。訂正印を押せるのは、その書類を修正する権限を持つ人です。訂正印があることで、修正が勝手になされたものではないとの証明になります。
最近では押印廃止に伴い、契約書などにも印鑑を押すケースは少なくなっています。訂正する場合には、訂正印の代わりに訂正箇所のすぐ近くにフルネームで署名する方法が増えています。書類の提出先によって対応が異なるため、訂正する場合にはよく確認するようにしましょう。
印鑑が必要な場合、シャチハタでも大丈夫?
源泉徴収票に押印が必要な場合、どのような印鑑でも大丈夫なのでしょうか。結論からいえば、明確な決まりはありませんが、用途に合わせてなるべく書類の正当性を証明できる印鑑が望ましいといえます。
印鑑の種類
印鑑の種類は、主に「実印(代表者印)」「銀行印」「認印」に分けられます。
実印とは、個人が使用する印鑑のなかで、役所に印影の印鑑登録を行ったものです。公的証明など大きな手続きの際に使用され、本人を証明する法的な有効性があります。実印のように、法人が法務局に印鑑登録を行ったものは、代表者印とも呼ばれます。
法人が口座開設をするケースでは印鑑証明書の提出を求められるケースが多くあります。必ずしも銀行印が実印でなければならないということはなく、銀行印は一般的に金融機関に届け出た印鑑を指します。定期の解約など、銀行印が求められる手続きでは、金融機関が印影を登録した印鑑以外は受け付けてもらえません。
認印とは、とくに印鑑証明が不要の手続きで使用される印鑑です。個人の手続きでいえば、婚姻届や役所への届出の書類に使用されます。法人の場合、この認印にあたるのが社印と考えられます。印鑑登録など公的な有効性は強くありませんが、会社が作成した書類であると証明するために一般的に利用されます。
では、よく耳にするシャチハタとはなんでしょうか。シャチハタとはインクが内蔵されたハンコのことをいいます。朱肉を押す手間がないため、事務作業に適しています。大量生産されている点も特徴です。
既製品であることから、実印や代表者印の印鑑登録にシャチハタは用いません。銀行印の届出でも、シャチハタは不可とされるのが一般的です。「シャチハタの代表者印」などは存在しませんが、「シャチハタの社印」「シャチハタの認印」は事務作業で使われます。
源泉徴収票に適した印鑑は?
源泉徴収票に押印が必要な場合、一般的に使用されるのは社印といえます。代表者印のような法的有効性はありませんが、民間企業へ提出する源泉徴収票の押印としては問題がないと考えられます。また源泉徴収票に訂正印を押す場合、源泉徴収票に押印した同じ社印または修正を行った者の印鑑が押されるのが基本です。
このとき、シャチハタの社印や認印を利用する人もいるかもしれません。もともと法的に源泉徴収票に印鑑が必要な記載がないことを考えれば、どのような印鑑を使用しても問題はないといえます。しかし社印がある源泉徴収票を提出する先によっては、印鑑の種類に気を配る必要がでてきます。なぜなら、「シャチハタは不可」とされる場合があるからです。
シャチハタの問題点は、既製品であるという点です。同様の印影の印鑑が他にも存在します。それゆえ、本人であることを証明する有効性に弱いと考えられます。また、素材がゴムであることから、使っているうちに印影が歪んでしまう可能性もあります。
源泉徴収票の押印に明確な印鑑の規定はありませんが、提出先が「シャチハタ不可」としていないか気をつけましょう。
源泉徴収票への押印について必要有無を理解しておこう!
源泉徴収票の作成にあたって、基本的には社印などの押印は不要です。ただし、住宅ローン申請やカードの申し込みなど、場合によって押印を求められるケースがあります。とくに、一部または全部を手書きで作成した源泉徴収票へ、社印を求める流れが見受けられます。また内容に修正を加えた場合は、修正が適切なものであるとの証明に、訂正印を用いるのが一般的です。
法的には求められない源泉徴収票の押印ですが、民間企業の手続きで必要になることを理解し、柔軟に対応しましょう。
よくある質問
源泉徴収票に印鑑は必要ですか?
源泉徴収票への印鑑は基本的に不要です。従業員に交付する際も、税務署に提出する際も法的には押印は求められていません。ただし銀行の住宅ローン申請など民間企業に提出する際、印鑑が必要となる場合があります。詳しくはこちらをご覧ください。
印鑑が必要な場合、シャチハタでも大丈夫ですか?
源泉徴収票の印鑑の種類について明確な規定はありません。ただしシャチハタはその性質上、書類の押印として企業や役所が認めない場合があるので注意が必要です。社印や認印が望ましいといえます。 詳しくはこちらをご覧ください。
※ 掲載している情報は記事更新時点のものです。
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