• 更新日 : 2024年6月21日

ジェンダーギャップとは?意味や日本が低い理由、企業の対策・事例を解説

ジェンダーギャップという言葉を聞くけど、どういう意味なのかわからないという方も多いでしょう。今回は、男女の性差によって生じる格差であるジェンダーギャップについて詳しく解説します。

ジェンダーギャップの概要のほか、ジェンダーギャップによって生じる問題、日本の世界から見たジェンダーギャップにおける立ち位置など、さまざまな情報をまとめたので、ぜひ参考にしてください。

ジェンダーギャップとは?

ジェンダーギャップとは、男女の性差によって生じる格差のことを指します。「ジェンダー」とは、「女性・男性」といった性別に対して、社会的・文化的に作られた性別のことです。ジェンダーギャップと同じ意味の言葉としては、男女差別、性差別、セクシス、セクシズム、男女間の開きなどの言葉があります。

ジェンダーギャップに該当する例としては、「外回り営業は男性のほうが向いている」「お茶くみは女性の仕事」など、慣習的な「女性だから〇〇」「男性だから××」といった考え方が挙げられるでしょう。

ジェンダーギャップは雇用機会の不平等や賃金格差など、働く人々にとっても影響を与えるため、企業にはジェンダーギャップをなくして社員が働きやすい環境を作ることが求められます。

ジェンダーギャップによって生じる問題

ジェンダーギャップによって生じる問題としては、雇用機会や賃金格差、教育格差などがあります。ジェンダーギャップは、主に女性に対しての被害が大きいといわれているため、問題をしっかり理解しておくことが大切です。順番に解説します。

雇用機会や賃金の不平等

ジェンダーギャップによって男女間に雇用機会や賃金の格差が生じています。OECDのデータによると、2022年における日本の男女間賃金格差は下位4番目(21.3%)に入っているのが実情です。最も格差の少ないベルギー(1.2%)と比べてみると、いかに男女間賃金格差が大きいかがわかります。

また、雇用機会の格差においても同様です。男女共同参画局の発表している「諸外国の国会議員に占める女性の割合の推移」を見てみると、2022年時点で日本が9.7%と低くなっています。日本の上に位置する韓国ですら18.6%であることを考えると、約2倍もの差がついているのが現実です。

理由としては、日本古来の考え方によるところが多くなっています。

参考:男女間賃金格差|OECD
参考:諸外国の国会議員に占める女性の割合の推移|男女共同参画局

教育の格差

ジェンダーギャップによって教育にも差が出ています。国連が発表したデータによると(2013年時点)、読み書きができない15歳以上の成人は7億5700万人にものぼり、そのうちの3分の2が女性でした。

法整備が十分にされていないことや各家庭の経済的な問題が原因として挙げられます。

参考:質の高い教育をみんなに|国際連合広報センター

暴力・虐待による被害

暴力・虐待による被害もジェンダーギャップによって生じています。男女共同参画局「女性に対する暴力の現状と内閣府の取組」によると、女性の約4人に1人は配偶者から暴力を振るわれた被害経験があるということでした。また、配偶者暴力相談支援センターへの相談件数も、令和2年度に過去最高となり、その後も高水準で推移しています。

参考:女性に対する暴力の現状と内閣府の取組|男女共同参画局

未成年の早期婚や児童婚

ジェンダーギャップによって未成年の早期婚や児童婚といった被害も増えています。児童婚とは、18歳未満での結婚、または18歳未満での結婚に相当する状態にあることです。ユニセフによると、世界で7億5000万人以上の女性や女の子が18歳未満で結婚しており、そのうちの3人に1人以上が、15歳未満で結婚しています。

児童婚が行われる背景には、子どもを多く養っているといった経済的な要因や慣習、教育の欠如などが挙げられます。児童婚は子どもの権利を侵害するほか、女性の学習機会を奪う慣習です。また、成熟していない児童の身体で妊娠・出産をすると、妊産婦の死亡リスクもあります。

参考:子どもの保護 児童婚|ユニセフ

ジェンダーギャップ指数ランキング

ジェンダーギャップを表すものに、ジェンダーギャップ指数があります。ここでは、ジェンダーギャップ指数の概要やジェンダーギャップランキングについて解説します。

ジェンダーギャップ指数とは?

ジェンダーギャップ指数とは、世界各国の男女格差を数値化したものです。「男女平等格差指数」ともいわれています。男女格差を数値化する目的は、各国に男女格差の認識を促し、格差を解消させることです。

なお、ジェンダーギャップ指数はスイス非営利財団世界経済フォーラム(WEF)が2006年から毎年発表しています。ジェンダーギャップ指数を構成する要素は、健康/教育/経済/政治の4分野で、分野ごとの細かい内容は以下の表のとおりです。

健康出生時性比

平均寿命の男女比

教育初等教育就学率の男女比

中教育就学率の男女比

高等教育就学率の男女比

識字率の男女比

経済労働参加率の男女比

同一労働における賃金の男女格差

推定勤労所得の男女比

管理的職業従事者の男女比

専門技術者の男女比

政治国会議員の男女比

閣僚の男女比

最近50年における行政府の長の在任年数の男女比

【2023年】世界のジェンダーギャップ指数ランキング

世界経済フォーラムによって発表された2023年の世界ジェンダーギャップ指数ランキングは、以下のとおりです。

1位:アイスランド(0.912)
2位:ノルウェー(0.879)
3位:フィンランド(0.863)
4位:ニュージーランド(0.856)
5位:スウェーデン(0.815)
-----
125位:日本(0647)

ジェンダーギャップ指数によると、日本は146ヶ国中125位でした。参加国の数に変動があるため一概には言えませんが、この順位は過去最低順位です。

「教育」「健康」に関しては世界トップクラスの数値でしたが、「政治」「経済」の数値が低いことが問題点として挙げられます。

参考:GGI ジェンダー・ギャップ指数|男女共同参画局

日本のジェンダーギャップ指数が低い理由

世界的に見てきわめて低い日本のジェンダーギャップ指数の理由について解説します。

まずは、結果としても低かった「経済」分野から見てみましょう。経済分野の数値が低くなっている要因として、日本の女性管理職の割合が低いことが挙げられます。出産や育児で仕事を離れてキャリアがストップしてしまうことや育児休暇の制度が整っていないこと、男性の育児休暇取得率が低いことなどが書壁となって、女性管理職が生まれにくい状況につながっているといえるでしょう。

「政治」分野の数値が低い原因は、女性の政治参加が少ないためです。国会議員の女性の割合が低いだけでなく、女性閣僚の比率も低くなっており、国政はもちろん地方議会においても女性の割合が低くなっています。女性議員や女性閣僚が増えないかぎり、数値上昇は叶わないでしょう。

そのほかの要因としては、「教育」分野における大学・大学院の在学率を表す高等教育項目が増えたことで、スコアにマイナスの影響が出ています。男女の大学進学率に差があることが大きくかかわっていますが、なかでも理系学部への女性の進学率が低いことも理由の1つです。

ジェンダーギャップと感じることは?

ここでは、ジェンダーギャップを感じる実際に身近なことについて解説します。ジェンダーギャップと思っていなくても、実はジェンダーギャップだったということもあるため、しっかり事例も押さえておきましょう。

家庭内の役割分担

身近に感じるジェンダーギャップとして、家庭内での役割分担があります。日本には古来「男は仕事、女は家庭」という考え方が根強くあるのが実情です。

ほかにも、家事・育児のほとんどを女性に任せている家庭も多く存在します。

職場での昇進や評価

職場においてもジェンダーギャップが存在します。たとえば、女性が管理職になりにくい、昇進・昇格のスピードが遅いといった職場環境などです。

教育やキャリアの選択

教育やキャリア選択においても、女性には高い学歴やキャリアは不要、理系の進路は女性には不向き、女性は男性のサポートにまわるべきといったようなジェンダーギャップが存在します。

こういった考え方は、深刻なジェンダー不平等につながるため、状況の是正が求められます。

ジェンダーギャップを解消するための国の取り組み

ジェンダーギャップを解消するために国もさまざまな取り組みを実施しています。主な取り組みの一例は以下のとおりです。

  • 産後パパ育休制度
  • 埼玉県働く女性応援メンター制度
  • 輝く女性活躍パワーアップ企業・スタートアップ企業登録制度

産後パパ育休制度は、男性の育児休暇取得率が低いことから2022年10月より始まった制度です。産後8週間以内に4週間(28日)を限度として2回に分けて取得できる休業で、1歳までの育児休業とは別に取得できます。

そのほか、女性がキャリアを継続する過程で出てくる悩みをメンターに相談できる、埼玉県「埼玉県働く女性応援メンター制度」や、女性の管理的地位への積極登用へ向けて人材育成や環境整備に取り組む企業を登録する、鳥取県「輝く女性活躍パワーアップ企業・スタートアップ企業登録制度」など、地方自治体でも支援制度や取り組みを進めています。

参考:育児休業制度 特設サイト|厚生労働省
参考:埼玉県働く女性応援メンター制度|埼玉県
参考:輝く女性活躍パワーアップ企業・スタートアップ企業登録制度|鳥取県

ジェンダーギャップを解消するための企業の取り組み

ジェンダーギャップを解消するためには、企業での取り組みも欠かせません。ここでは、企業における取り組みを紹介します。

ハラスメントの防止

ハラスメントの防止は、ジェンダーギャップの問題としてよく挙げられるものです。なかでも、セクハラ対策は必須の取り組みといえます。

セクハラは女性だけでなく、男性に対しても発生しうる行為です。企業はセクハラ行為への対処を明文化し、社内に周知しセクハラを生じさせないようにすることが求められます。

同時に、発生した場合の対処を検討しておくことも重要です。被害者が相談できる窓口を設置したり、事実確認や行為者への対処・被害者への配慮などを迅速に行える体制を整備したりすることが考えられるでしょう。

女性管理職の登用

日本のジェンダーギャップ指数が低い理由にもなっている、女性管理職の登用も企業の取り組みとして大切です。原因として出産や育児で仕事を離れてキャリアがストップしてしまうことが挙げられるため、男性も含めた育児休暇の制度を整えることが求められます。

労働条件や待遇の見直し

昇進・昇格に関して性差のない職場環境にすることも、企業に求められる取り組みの1つです。昇進や昇格の機会が性別によって変わることがないように、現在の制度を見直していく必要があります。

多様な働き方を支援する就労体制

労働条件や待遇の見直しとともに、社員が働きやすい環境作りをすることは、ジェンダーギャップをなくすためには欠かせません

リモートワークやフレックスタイムなど柔軟な働き方を採用したり、育児をしている社員向けに短時間勤務制度を設けたりするなどの対策が考えられるでしょう。社員が働きやすい職場環境を作るためにも、日頃から社員とコミュニケーションをとり、意見交換できる体制を整備することから、始める必要があります。

ジェンダー平等に向けた教育と研修

根本的な取り組みとして、ジェンダー平等に向けた教育と研修も必要です。無意識に「女性だから〇〇」「男性だから××」という性別による区別をしている可能性も否定できません。男性、女性の意識改革のための研修や教育の実施もあわせて行うようにしましょう。

たとえば、以下のような取り組みが挙げられます。

■女性社員への取り組み

  • キャリアアップのための研修を実施する
  • 管理職の仕事内容、やりがいなど魅力を伝えるようにする

■男性社員への取り組み

  • 評価・昇進の検討、仕事の割り振りで男女差が生まれないよう意識する
  • 女性管理職を増やす必要性を伝え、意識付けをする

ジェンダーギャップを解消するための企業事例

最後に、ジェンダーギャップを解消するための企業事例を3つ紹介します。

味の素株式会社

味の素グループでは、性別、年齢、国籍、障がいの有無などの属性にかかわらず個人の多様な経験や専門性を尊重し、多様な意見を受け入れて活かすというインクルージョンのもと、ジェンダーギャップ解消に向けて取り組んでいます。

実際、2018年に取締役がトップの女性人財の育成委員会を設置し 、2年後に開始した女性人財の育成施策を通じて、2023年度までに481人にキャリアワークショップやカレッジ、メンタープログラムなどを実施しています。さまざまな取り組みの結果、男性のみであった営業支社長や国内グループ会社の代表取締役社長、役員への女性登用が進んでいるそうです。

参考:味の素(株)、女性活躍推進企業として令和5年度「なでしこ銘柄」に選定|味の素株式会社

ANAホールディングス株式会社

ANAホールディングス株式会社では、年齢・国籍・性別・価値観・障がいの有無などのダイバーシティを尊重し、それぞれが生き生きと働けるインクルーシブな職場作りに取り組んでいます。

社内では、女性社員を含む社員一人ひとりの能力を活かして力に変えていくため、管理職を対象に部下育成やチームの在り方などについて学ぶ研修を実施しているほか、仕事と育児の両立支援の一環としてセミナーを開催するなど、さまざまな取り組みを実施しています。

そのほか、航空業界におけるジェンダーバランスについてのパネルディスカッションの実施や、社内食堂において国際女性デーをイメージした食事提供など、ジェンダー平等について考える機会作りも積極的に実施されているようです。

参考:ジェンダー平等に関する取り組み|ANAホールディングス株式会社

株式会社荏原製作所

株式会社荏原製作所では、これまでの日本人男性中心の会社経営に性別や国籍などにとらわれないさまざまな人材を参加させ、従業員一人ひとりが個性を活かして、能力を最大限に発揮できる就業環境を整える取り組みを行っています。

たとえば、女性の活躍を推進する施策として、女性従業員が仕事を通じて成長している、能力を発揮できていると感じながら働けるための会社作りや、実現に向けたキャリアアップ支援などの実施が挙げられるでしょう。そのほか、女性の活躍推進の取組状況などが優良な企業に与えられる「えるぼし」認定第3段階を取得するなど、積極的に取り組んでいます。

参考:ダイバーシティ・エクイティ&インクルージョン(DE&I)の推進|株式会社荏原製作所

まずはジェンダーギャップについて理解することが大切

ジェンダーギャップとは、男女の性差によって生じる格差のことです。ジェンダーギャップによって雇用機会や賃金の不平等や教育の格差など、さまざまな問題が生じます。

また、世界各国の男女格差を数値化したジェンダーギャップ指数ランキングでは、日本は146ヶ国中125位と非常に低い順位です。政治や経済の数値が低いことが問題点として挙げられるため、女性管理職の割合や女性議員・女性閣僚を増やすことが改善点として求められます。

これらのジェンダーギャップはすぐに解決できることではありません。日頃の生活や会社での振る舞いなど、さまざまなシーンで一人ひとりの心掛けが重要です。意識を持ってジェンダーギャップ解消に取り組んでいきましょう。


※ 掲載している情報は記事更新時点のものです。

※本サイトは、法律的またはその他のアドバイスの提供を目的としたものではありません。当社は本サイトの記載内容(テンプレートを含む)の正確性、妥当性の確保に努めておりますが、ご利用にあたっては、個別の事情を適宜専門家にご相談いただくなど、ご自身の判断でご利用ください。

関連記事