- 更新日 : 2024年8月21日
ポテンシャル採用とは?面接の質問例や企業事例
採用の現場では、近年さまざまな採用方法が採られています。ポテンシャル採用もそのうちの1つで、応募者の潜在的な能力(伸びしろ)を選考時に評価する採用方法です。
本記事では、ポテンシャル採用の概要や注目されている理由、新卒採用や中途採用との相違点などについて解説します。導入企業も紹介するので、ぜひ参考にしてください。
目次
ポテンシャル採用とは?
まずは、ポテンシャル採用について解説します。
潜在能力を評価する採用方法
ポテンシャル採用とは、評価基準を応募者の潜在能力とする採用方法です。即戦力で採用するというよりは、将来発揮されるであろう能力に期待して人材を選考します。そのため、仮に未経験の業種へ応募したとしても採用にいたる場合があるのが特徴です。
ポテンシャル採用は何歳まで?
ポテンシャル採用には、対象年齢があるのでしょうか?結論としては、対象となる年齢は明確に定められていません。
しかし、企業は将来発揮されるであろう能力に期待して採用するため、新卒や第二新卒など20〜30代の若手人材が主な対象となっている傾向にあります。
ポテンシャル採用の反対語
ポテンシャル採用の反対語としては、プロフェッショナル採用があります。プロフェッショナル採用とは、本人の経験・スキルなどから即戦力となる人材を採用する、いわゆる中途採用方法です。
ポテンシャル採用では専門スキルは問われず、その人の考え方や仕事への熱意・姿勢などで判断されるため、一般的な中途採用であるプロフェッショナル採用と比べて、応募ハードルは低いといえます。しかし、その分、応募可能な対象者の幅も広がるため、倍率が高くなる求人もあるようです。
ポテンシャル採用が注目されている理由
近年ポテンシャル採用が注目されているのは、なぜでしょうか?背景には、2つの理由が挙げられます。
- 採用競争の激化
- 潜在能力の高い人材を採用するため
日本の求人倍率は、出生率の低下や生産年齢人口の減少などの影響で年々上昇しています。採用市場は、人材の獲得競争が起きているのが現状です。
なかでも即戦力の人材は、売り手市場で企業もなかなか採用を確保できていません。そこで、将来性のある人材を採用し自社で育てるポテンシャル採用が注目されているというわけです。
また、潜在能力の高い人材を採用することは、既存の採用方法では難しいことも理由の1つです。ポテンシャル採用では、採用の間口を広げることで、第二新卒や海外大学の卒業者、海外留学経験者など、さまざまな人材を採用できます。
ポテンシャル採用と新卒採用、中途採用との違い
ポテンシャル採用について解説してきましたが、ここでは、ポテンシャル採用と新卒/中途採用との違いを紹介します。
それぞれの違いは、次の表のとおりです。
時期 | 対象者 | 年齢 | |
---|---|---|---|
ポテンシャル採用 | 通年/不定期 | 社会人未経験 職種未経験(社会人経験はあり) | 新卒 20~30歳前後 第二新卒 |
中途採用 | 不定期 | 社会人経験あり 企業の求めるスキルや業務経験を持っていること | 20~40歳前後 |
新卒採用 | 年1~2回 | 社会人未経験 | 大学/大学院を3月末に卒業する学生・大学卒業後3年以内の人(既卒) |
中途採用は、即戦力になり得る人材を確保するために行います。そのため、応募者は企業の求めるスキルや業務経験を持っていることが条件です。その点、ポテンシャル採用では応募者が募集職種に対してスキルや能力を有している必要はありません。
新卒採用とポテンシャル採用では、ともに能力を求められない点は共通していますが、対象者の年齢が異なります。新卒採用では、就業経験のない、学校を卒業する予定の学生が対象ですが、ポテンシャル採用では広い範囲の求職者を対象としています。
ポテンシャル採用のメリット
ポテンシャル採用で得られるメリットを解説します。
多様な人材を獲得できる
ポテンシャル採用では、多様な人材を獲得できるのがメリットです。第二新卒や海外大学の卒業者、海外留学経験者などが採用対象のため、新卒採用や中途採用では出会えない人材と出会えます。
また、ポテンシャル採用では、入社後に必要なスキルを覚えていけば良いため、潜在的・顕在的能力を兼備した人材を獲得できる可能性もあるといえます。
ビジネスマナーが予め身についている
ポテンシャル採用の対象者の中には、就業経験がある人も多いため、社会人としてのビジネスマナーやコミュニケーションスキルが身についている人材を獲得できる点もメリットです。
中途採用における即戦力人材のようにはいきませんが、新卒採用と比べれば初期の育成コストを抑えられるでしょう。
未経験でも応募しやすい
社会人経験のある人の中には、前職やこれまでの職業とは異なる業種や職種で働いてみたいと考える人も少なからずいます。そのような人でも、応募しやすいのが、ポテンシャル採用です。
ポテンシャル採用を取り入れれば、多くの人からの応募を見込めるだけでなく、求職者にとっても活躍できる場が広がる、お互いにWin-Winな採用方法といえます。
ポテンシャル採用のデメリット
ポテンシャル採用にはメリットだけでなく、デメリットも存在します。デメリットを3つ紹介します。
選考基準が曖昧になりがち
選考基準そのものが曖昧なものにもなりがちな点はデメリットです。ポテンシャル採用では、人柄や経験などを重視します。しかし、これまでに実務経験やスキルのない応募者から入手できる情報は限られているため、応募者の本質を見抜くことは難しいでしょう。
また、話を誇張して伝える応募者がいるかもしれませんません。適切に見極めができていない場合、入社後にミスマッチが発生してしまうでしょう。企業にとっては、採用から入社・退職までにかかった費用・教育費用など、すべてムダになってしまう恐れがあることには注意が必要です。
転職する可能性がある
ポテンシャル採用で入社してもらえたとしても、転職を繰り返す可能性があることは理解しておきましょう。転職につながる理由としては、以下の2点が考えられます。
- 入社後のミスマッチ
- 転職に対して抵抗が低い
ポテンシャル採用の場合、同期がいないケースも散見されるため、会社へのいづらさを感じることも多いようです。また、ポテンシャル採用される人は20代が大半で、前職を比較的短期間で辞めた人が多い傾向にあります。転職に対する抵抗感も低く、この会社は合わないと感じたり、他に良い会社がないかなと思ったりすれば、次の転職先をすぐに探す可能性が高いです。
働き続けたいと思ってもらうためは、採用して満足するのではなく、入社後のアフターフォローも手厚く行うようにしましょう。
育成が必要な場合も多い
人材育成に時間がかかる可能性があることもデメリットです。ポテンシャル採用では、中途採用のようにスキルを求められて入社しているわけではないため、経験者よりも未経験者が集まりやすく、入社後は業界の専門知識や職種に必要なスキルを一から育成しなければいけません。人によって得意・不得意もあるため、時間がかかる可能性もあることは理解しておきましょう。
ポテンシャル採用時の面接の質問例
ポテンシャル採用では、応募者の能力や意欲などを測るために使える要素が限られています。そのため、面接時では質問に対する返答でそれらをくみ取ることが重要です。ここでは、面接時に応募者の意欲や姿勢を把握するために有効な質問例を紹介します。
学習意欲があるかどうか
応募者の学習意欲は、本人が面接時に「やる気がある」といっていても、本心であるかはわかりません。本当にやる気があるかを判断するためには、自分で何か学習やスキルアップにつながる行動を起こしているか確認するとよいでしょう。
<質問例>IT業界で未経験からプログラマーやSEに就きたいと考えている応募者の場合
- 「IT関連の資格を何か取得していますか?」
- 「自主的に学んでいることや取り組んでいることはありますか?」
新しい情報をキャッチアップしているか
仕事を進めるうえでは、上司や先輩社員から指示を待つだけでなく、主体的に物事を考えて行動していくことが重要です。ポテンシャル採用では業界未経験かつ実務経験のない応募者もいるため、主体的な姿勢を持っているかの判断は難しいでしょう。
その際は、面接時に次のような質問をしてみてください。
<質問例>
- 「最近気になったニュースはありますか?」
- 「入社後、弊社のサービスで取り組んでみたいことはありますか?」
応募者自身が自主的に業界の最新情報を収集しているか、学習しているかは主体性を見極めるうえでのポイントとなります。
目的やキャリアプランを描いているか
入社後の目的やキャリアビジョンについても確認しておきたい項目です。
<質問例>
- 「入社できたとして、10年後にはどういったキャリアを描きたいと思っていますか?」
- 「将来的にどのような役割や役職を担いたいですか?」
自社とマッチしているか
やる気や明確な目標があっても、自社の雰囲気にマッチしていなければ、すぐ離職される恐れがあります。自社とのマッチ度も確認しておきたいところです。
<質問例>
- 「弊社の社員と仲良くやっていけそうですか?」
- 「会社の経営理念についてどう思いますか?また、共感できるポイントはありますか?」
ポテンシャル採用の企業事例
ここでは、実際にポテンシャル採用を導入している企業の事例を紹介します。
ヤフー株式会社(現:LINEヤフー株式会社)の事例
ポータルサイト「Yahoo! JAPAN」などの運営を行うヤフー株式会社では、新卒一括採用を2016年10月から廃止し、ポテンシャル採用を導入しています。従来の採用方法では、第二新卒者や既卒者などに対して採用選考機会を平等に提供できないことや、より柔軟な採用の枠組みが必要であることからポテンシャル採用に乗り出したそうです。
サイボウズ株式会社の事例
グループウエア「サイボウズ Office」などを提供するサイボウズ株式会社では、29歳以下の多様なバックグラウンドを持つ人材を広く募る「U-29(ユニーク)採用」を行っていました。しかし、現在では年齢制限を撤廃し、「ポテンシャル採用」という名称へと変更し、IT業界未経験・職種未経験でもチャレンジできる体制を整えています。
富士通株式会社の事例
コンピュータ機器や通信システムなどを事業とする、電機メーカーである富士通株式会社では、従来の請負型ビジネスからDXカンパニーへと変革を遂げるべくポテンシャル採用の強化に乗り出しています。
DXカンパニーを目指すにあたり、2022年4月から「ジョブ型人材マネジメント」へとフルモデルチェンジし、若手人材やキャリア入社者が早期に活躍できる環境も整備されました。
あわせて、ポテンシャル採用で入社した人は新卒入社者と同じ研修プログラムに参加でき、業務に必要なJavaなど基礎的なスキルを学べる機会も提供されているそうです。
参考: 舞台はグローバル。経験が活きるジョブ型採用でキャリアを磨く|富士通株式会社
エイベックス株式会社の事例
エンタメ業界大手のエイベックスでは、管理部門限定で「“志”ポテンシャル採用」を実施しています。応募資格さえ満たしていれば、誰でも何度でもチャレンジできるオープンポジション採用です。
配属予定先の職種例としては、企画・制作や営業・販促、広報、新人発掘、マーケティング・アナリティクスなど多岐にわたります。
参考:【現場部門】“志”ポテンシャル採用(第2新卒)|エイベックス株式会社
ポテンシャル採用を成功させるコツや注意点
ポテンシャル採用を成功させるためには、押さえておきたいコツや注意点が存在します。ポイントは、次の3点です。
- 自社が求めるポテンシャルの基準を明確にする
- 入社後の育成・サポート体制を充実させる
- 幅広い層に情報が伝わるように情報発信方法を工夫する
入社後のミスマッチを防ぐためにも、自社が求めるポテンシャルの基準を明らかにしましょう。基準を明確にしておけば、曖昧な判断で採用してしまうことを防止できます。
また、入社後の育成・サポート体制を充実させることも大切なことです。入社した人が早く戦力になれるようにサポートを積極的に行いましょう。
そして応募者を募る際には、幅広い層に採用情報が伝わるようにSNSなど情報発信方法を工夫することも大事です。さらに、情報発信をする際には自社が求める人材の要件・サポート体制・キャリアアップの内容などもあわせて発信すれば、自社のポテンシャル採用に興味を持つ人材からの応募を増やせるでしょう。
ポテンシャル採用のメリット・デメリットを理解して採用につなげよう
ポテンシャル採用とは、評価基準を応募者の潜在能力とする採用方法です。ポテンシャル採用では、多様な人材を獲得できるほか、ビジネスマナーが身についていること、未経験でも応募しやすいことなどがメリットとして挙げられます。一方で、選考基準が曖昧になりがちになったり、再度転職される可能性があったりする点はデメリットです。
ポテンシャル採用では、応募者の能力や意欲などを測るために使える要素が限られています。そのため、面接時では質問に対する返答でそれらをくみ取らなければなりません。
一見すると簡単に見えるポテンシャル採用ですが、成功させるためにはコツや注意点も存在します。本記事で紹介した内容を参考に、自社の採用活動に活かしてください。
※ 掲載している情報は記事更新時点のものです。
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