• 作成日 : 2022年5月13日

傷病手当金は年末調整の対象?

傷病手当金」に所得税はかからず、年末調整の対象にはなりません。給料の代わりに休職中に受け取っていたとしても、年末調整での申告は不要です。扶養控除の申告での基準にも関係しませんが、社会保険の扶養家族の収入基準には関係します。傷病手当金受給者は確定申告を行うことで、医療費控除による還付金が受け取れる可能性があります。

傷病手当金とは?

傷病手当金は、病気やケガで働けなくなった人を対象とした給付です。無給となる人の生活を保障するために、健康保険から支払われます。条件や金額、期間などは以下の通りです。

受給の条件

1.仕事以外の理由で生じた病気やケガであること
仕事が理由で生じた病気やケガが原因の休業は、労災保険の休業補償給付の対象になります。

2.就労できないこと
医師などの意見と仕事内容で判定されます。

3.連続して4日以上休んでいること
継続して休んでいることが必要ですが、土・日・祝日や有給休暇であっても問題ありません。3日間は待機期間とされ、傷病手当金は支払われません。

4.給料が支払われないこと
傷病手当金は、生活保障を目的としているためです。

支給金額

1日あたりの支給金額は「支給前1年間の標準報酬月額の平均/30×2/3」です。支給前に1年の期間がない場合は、直近の期間の平均額か、標準報酬月額の平均値のいずれか低いほうになります。

支給期間

支給期間は、2022年4月1日から「通算して1年6ヵ月」に変更されました。以前は「最長1年6ヵ月」で、このため2020年7月1日以前に支給が始まった傷病手当金は「最長1年6ヵ月」が支給期間とされます。

健康保険の傷病手当金については、以下の記事で詳しく説明しています。参考にしてください。

傷病手当金は年末調整の対象?

傷病手当金は、年末調整の対象ではなく、受け取った場合でも年末調整時に申告する必要はありません。傷病手当金は、所得税の課税対象ではないためで、金額にかかわらず年末調整での申告は不要です。

傷病手当金は、労働の対価として給料を得ている会社員が、病気やケガで働くことができずに給料収入がなくなった場合に、収入を失った本人や家族が生活に困ることのないように、生活保障の意味で健康保険から支払われる手当金です。給料の代わりとして支払われるものの性質は異なり、所得税はかかりません。

そのため、休職中に傷病手当金を受け取っていたとしても、年末調整の対象にはなりません。

傷病手当金の受給について年末調整で注意すること

年末調整は、所得税の正しい納付のため、欠かせない手続きです。受け取った傷病手当金は年末調整の対象ではありませんが、年末調整実施時に気をつけるべきことはないのでしょうか?間違いのないよう、そしてスムーズに年末調整を行うために、注意すべき点を確認しましょう。

休職中、傷病手当金は年末調整に関係しない

傷病手当金は、会社員などの給料によって生活している人が、病気・ケガの療養中で収入を失った場合に、健康保険から支払われる手当です。給料の代わりとして受け取るものですが性質は異なり、給料とは違って所得税はかかりません。

年末調整は所得税の精算手続きのため、傷病手当金は年末調整には関係しません。したがって受け取った金額や期間に関係なく、年末調整で傷病手当金を申告する必要はありません。

退職した場合は確定申告が必要

休職中で会社から給料が支払われていなくても、在籍中は基本的にほかの社員と同じように年末調整が行われます。しかし退職した場合は、会社の年末調整を受けることはできません。退職して会社に籍がなくなった際に所得税の精算手続きが必要な場合は、確定申告が必要です。

確定申告でも、傷病手当金は収入として申告する必要はありません。しかし退職した場合に確定申告をすると、払い過ぎとなっている金額の還付を受けることができます。給与にかかる所得税は1年分に対して計算するのが本来ですが、まとめて徴収すると負担が大きいため、おおよその金額で毎月の給料から源泉徴収されています。毎月の源泉徴収は、生命保険料控除などが加味されていないため、払い過ぎとなっていることがほとんどです。

退職すると年末調整は行われず、還付を受けることはできません。このため確定申告をして、所得税の精算をする必要があります。

医療費控除で還付が受けられる可能性大

傷病手当金を受けているということは、病気やケガの療養中だということになります。療養にかかる医療費を支払っていることになり、医療費控除を受けられる可能性が大いにあります。

医療費控除の金額は、以下の通りです。

(実際に支払った医療費の合計額-保険金などで補填される金額)-10万円

参考:国税庁「No.1120 医療費を支払ったとき(医療費控除)」
医療費控除は、年末調整では申告できないため、確定申告をする必要があります。

扶養家族が傷病手当金を受け取っている場合に気をつけること

傷病手当金を受け取っているのが自分自身ではなく、配偶者などである場合もあります。扶養家族が傷病手当金を受け取っていると、どのような影響があるのでしょうか?扶養家族の傷病手当金受給では、次のことに気をつける必要があります。

年末調整の扶養家族基準に傷病手当金は含めない

生計を一つにしている配偶者や家族がいる場合は、配偶者控除や扶養控除の適用によって、所得税の負担を軽くすることができます。配偶所控除、扶養控除の金額は以下の通りです。

配偶者控除の金額

一般の控除対象配偶者老人控除対象配偶者
控除を受ける者の合計所得金額控除額控除を受ける者の合計所得金額控除額
900万円以下38万円900万円以下48万円
900万円を超え950万円以下26万円900万円を越え950万円以下32万円
950万円を超え1,000万円以下13万円950万円を超え1,000万円以下16万円

参考:国税庁「No.1191 配偶者控除」

扶養控除の金額

区分控除額
一般の控除対象扶養親族38万円
特定扶養親族63万円
老人扶養親族同居老親等以外48万円
同居老親等58万円

参考:国税庁「No.1180 扶養控除」

扶養控除の対象とすることができるのは、親族の1年間の合計所得金額が48万円以下(所得が給与のみの場合は給与収入が103万円以下)の場合ですが、この所得に傷病手当金は含まれません。傷病手当金は、所得税の対象とならないため、扶養控除の対象の判定でも無関係となります。

社会保険の扶養家族基準には傷病手当金が影響する

扶養は税金だけでなく、社会保険でも適用があります。社会保険で扶養の取り扱いを受けると家族が自分自身で健康保険に加入しなくて済んだり、配偶者が年金で第3号被保険者として年金保険料負担を免れたりすることができます。

社会保険の扶養家族基準には収入が関係し、この収入には傷病手当金が含まれます。1年間の収入が130万円(60歳以上か障害者の場合は180万円)を超えると、社会保険では扶養家族として認定されません。傷病手当金も収入に含まれることに注意が必要です。

傷病手当金は年末調整では申告不要だが医療費控除に注意しよう

傷病手当金は、病気やケガのために仕事ができない・働けないときに受け取れる給付です。継続した休みの4日目以降に、健康保険から支払われます。所得税がかからない給付で、年末調整で申告する必要はありません。所得税の対象ではないことから扶養控除を受ける際の扶養家族基準にも関係せず、配偶者特別控除にも影響しません。

ただし社会保険で扶養家族とするために問われる収入に傷病手当金は含まれるため、配偶者が傷病手当金を受け取っている場合などは注意が必要です。

傷病手当金は、年末調整で申告する必要はありませんが、医療費控除は年末調整では申告できないため、確定申告が必要です。傷病手当金受給者は、病気やケガで療養を受け、相応の医療費を支払っていると考えられます。医療費控除が受けられないか、忘れずに確認しましょう。

よくある質問

傷病手当金は年末調整の対象ですか?

傷病手当金には所得税がかからないため、年末調整の対象からも外れます。詳しくはこちらをご覧ください。

傷病手当金を年末調整することで還付金は受け取れますか?

傷病手当金によって年末調整で還付金が出ることはありませんが、かかった医療費を確定申告することによって還付が受けられる可能性があります。詳しくはこちらをご覧ください。


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