- 更新日 : 2024年9月3日
昇進とは?昇格との違いや昇進できる人の特徴、基準の策定方法を解説
昇進とは一般社員から主任、主任から課長になるなど、従業員の役職を上げる人事のことです。職能資格制度のもとで等級が上がる昇格とは意味が異なります。昇進の基準・プロセスには、主に人事評価や昇進試験などがあげられます。
本記事では昇進と昇格の違いや昇進の基準、企業が昇進を行う際に注意したいポイントを解説します。
目次
昇進とは?
昇進とは、社内での役職が上がることです。役職とは、「課長」や「部長」など、会社を運営する上で定められた職位を指します。昇進により、一般社員から主任に、主任から課長になるなど、職位が上がります。
昇進により社内での地位が高まると同時に、これまでよりも責任の大きな仕事を任されるようになるでしょう。
昇進と昇格との違い
昇進と混同しやすいのが「昇格」です。どちらも英語にすると「promotion」ですが、意味は異なります。
昇進は役職を上げる人事であるのに対し、昇格は「1級・2級」など等級が上がることを指す言葉です。人事評価における「職能資格制度」を採用している会社では、職務遂行能力に合せて等級が定められています。能力が上がったと評価されたときに昇格し、業務内容や範囲が変わります。
昇進と昇格の意味は異なるため、昇進しても昇格するとは限りません。昇格しても役職は同じこともあります。一般的には、まず能力が評価されて昇格し、等級が上がります。その等級の中から、適性を認められた人材が選ばれて昇進するという流れです。
昇進の基準・プロセスの一例
昇進の基準やプロセスは、企業により異なります。一般的に基準とされるのは、人事評価や目標の達成度、勤続年数などです。
ここでは、昇進の基準・プロセスの一例を解説します。
人事評価
人事評価とは、一定期間における従業員の能力や実績、勤務態度などを評価し、報酬や等級などの処遇に反映させる仕組みです。評価の指標として、「業績評価」「能力評価」「情意評価」という3つがあり、評価項目は会社によって異なります。
従来、直属の上司のみが評価する形式が一般的でしたが、近年は上司のほかに同僚や部下など、さまざまな関係者が評価する360度評価を取り入れる企業も増えています。
目標設定の達成度
目標設定の達成度を昇進の判断基準とする場合もあります。目標管理制度(MBO)とも呼ばれ、従業員が自ら目標を設定し、その進捗や達成度合いによって人事評価を行う方法です。従業員が自分で目標を決めるため、主体性を養う人材育成としての役割も果たします。
人事制度が年功序列から能力主義へとシフトする潮流を受けて、人事評価に目標管理制度を取り入れる企業も増えてきました。その結果を昇進の判断材料とする事例も見られます。
従業員自身が目標設定をするため、昇進の材料となると達成率を上げるために目標設定を低くしてしまう可能性もあります。上司は面談などで部下が適切な目標設定を設定ができるよう、サポートする必要があるでしょう。
資格の取得
上位の役職に上がるために資格取得を要件とする企業も少なくありません。金融業ではファイナンシャルプランナー、 不動産業では宅地建物取引士の資格など、業務に必要な資格を設定している場合もあれば、企業のグローバル化に合わせて英語力を要件とするケースもあります。
英語力の場合はTOEICのスコアを昇進の要件としている、もしくは参考にしている企業も多く、求められるスコアは一般的に500〜600点以上といわれています。
勤続年数
「入社5年以上」「4等級の滞留年数が2年以上」など、勤続年数や等級などを昇進の条件にしている会社もあります。
年功序列制を採用している企業に多くみられる基準で、会社に長く勤めていれば評価されやすいのがメリットです。一方で、成果を出してもすぐに反映されないため、従業員はモチベーションを維持しにくいという側面もあります。
上司からの推薦
昇進の条件が揃っていることに加えて、上司からの推薦を求める会社もあります。推薦状には、部下の実績や優れた部分、今後の役職で活躍が見込まれることを書くのが一般的です。
昇進試験では面接を行う会社もありますが、その際に推薦状に書かれた内容を質問されることもあります。推薦状の内容は部下と共有しておくとよいでしょう。推薦状の内容を知ることで、部下のモチベーションを上げるなどの効果も期待できます。
昇進試験・面接
昇進試験は主に、面接や適性検査、小論文などが実施されます。面接では主に、実績や能力のほかにマネジメント能力をチェックする場面です。
適性検査は、業務遂行能力や適性などを測定するため、性格検査や能力検査などを行います。
小論文では昇進させるのに適した人物かをチェックし、テーマの意図を理解して、論理的に展開できる能力を評価します。テーマは、「自社の企業理念を実現させるために必要なこと」など、大きな視野で客観的に論述する内容が出題される傾向にあります。
職場で昇進できる人の特徴
誰でも同じように昇進できるとは限らず、昇進できる人には特徴があります。昇進しやすい人の主な特徴について、みていきましょう。
自分で考えて行動できる
自分で考えて行動できる人は、昇進しやすい傾向にあります。いつも与えられた仕事だけをする、人の指示を待っているという人は、昇進しにくいでしょう。
主体的に行動できる人は仕事への意欲があり、積極的に仕事をこなします。上司の目につきやすく、仕事を評価されて責任のある仕事を回してもらいやすくなります。多くの仕事をこなすことで実績を積み、さらに評価を高めるでしょう。
解決策を自ら提案できる
昇進しやすい人は、問題の解決策を提案できるという特徴があります。役職についてからは、社内で問題が起きたとき、迅速に原因を見つけて解決策を提案できる能力が求められます。
責任の所在を追求するのではなく、状況を冷静に判断し、問題の本質を見極めることが必要です。論理的な思考力で、最適な解決策を導ける人が昇進しやすいといえるでしょう。
仕事に対して責任感がある
仕事に対して責任感があることも、昇進しやすい人の特徴です。任された業務は最後まで責任をもって取り組み、参加したプロジェクトでも積極的に行動します。スケジュール管理もしっかりしており、納期に遅れることがありません。
より良い結果を出すためにはどうしたら良いか考え、努力します。また昇進しやすい人は、仕事の質を向上させるために、情熱をもって仕事に取り組むことも特徴のひとつです。
コミュニケーション能力が高い
昇進しやすい人は、コミュニケーション能力が高いという特徴があります。社交性があり人付き合いの良い人は人間関係が良好であり、上司や同僚からも信頼されます。
特に役職について部下を持つ立場になると、リーダーシップやマネジメント能力が必要になり、コミュニケーションが必要になる場面が多くなります。部下をまとめ、チームを牽引する能力が求められるでしょう。
企業が昇進を行う際のポイント
従業員の昇進へのモチベーションを高めるには、公平な基準で実施されなければなりません。そのため、評価基準を明確にするなどの対応が必要です。
ここでは、企業が昇進を行う際に押さえるべきポイントを解説します。
評価基準を明らかにする
昇進について従業員の納得感を得るためには、評価基準を明確にすることが大切です。評価基準は昇進のための基準と、役職で任される仕事の基準の2つに分けられます。
昇進のための基準は、事業計画に基づいて序列をどう位置付けるかを考え、昇進に必要な要件を定めます。役職で任される仕事の基準は、職種ごとに業務の詳細を定める方法と、職種を超えてその役職に共通する一般的な概念を行動に反映させる方法があります。
策定した基準は社内に公開し、積極的に周知して浸透させることが大切です。社内報や社内イントラなどに掲載し、従業員がいつでも確認できるようにしましょう。
役職や等級の定義を明確にする
役職を定める目的は、企業理念やミッションを実現するために各自の役割を明確にすることです。そのためには、役職や等級の定義を明確にすることが必要です。役職の定義が曖昧なままでは責任の所在も明らかにできないでしょう。
また、役職は経営戦略と連動したものでなければならず、状況に応じて、柔軟に役職の増減を図ることも大切です。
評価者の認識を一致させる
昇進の公平を保つためには、評価者の認識を一致させることも必要です。評価を行う目的や要件を明確にして、評価者が理解できるようにしなければなりません。
1人の上司が多くの部下を評価する体制では、主観が入る可能性があります。評価者と評価対象者の人数を適正なバランスに調整し、公平な評価ができるように努めましょう。
昇進の伝え方やタイミング
昇進の時期は会社によってさまざまで、基本的に年1〜2回行われます。昇進の伝え方は、まず内示を出してから、その数ヶ月後に正式な辞令を出すのが一般的です。内示とは、会社が昇進を社内外に発表する前に、上司や人事担当者から昇進する従業員に通知することを指します。
内示により昇進が確定するわけではありません。内示の役割は、対象者に心の準備を促すことと、正式な辞令が出るまでに異動の準備を行ってもらうことにあります。
内示のタイミングは辞令を出す1ヶ月〜4ヶ月前で、何ヶ月前かは会社により異なります。内示の後、上司か人事担当者から正式な辞令を伝えます。
昇進を伝える際の注意点
内示は限られた範囲で行われ、正式な辞令が出るまでは未確定の状態です。発令まで当事者は秘密を守り、発令を成功させなければなりません。
辞令が出るまで口外しないよう、従業員に対して明確な指示が必要です。
昇進を断られた場合の対応
近年は昇進を目指していない従業員も増えており、昇進の内示をしても断られる可能性があります。
しかし、断られた場合にも、従業員には受け入れてもらう必要があります。会社には適切な人材配置する人事権があり、その裁量は大きいため、従業員は正当な理由がない限り拒否できません。
ただし、「介護を要する家族がいて仕事の時間を増やせない」「持病があり、役職のストレスや長時間労働には対応できない」というようなやむを得ない事情がある場合は、正当性があるとして昇進の拒否を受け入れなければならない可能性はあります。
昇進辞令の無料テンプレート・ひな形
昇進辞令とは、従業員が新しい職位や役職に昇進する際に発行される公式な文書です。昇進辞令には、昇進の詳細な条件や職務内容、給与変更、開始の日付などを記載します。
マネーフォワードクラウドでは、実務で使用できる、昇進辞令のテンプレート(エクセル・ワード)を無料でダウンロードいただけます。
ベースを保ちつつ、自社の様式に応じてカスタマイズすれば使い勝手の良い書類を作成できるでしょう。この機会にぜひご活用ください。
昇進について正しく理解しよう
昇進とは社内での役職が上がることです。主任や課長、部長といった役職があり、順を追って任命されます。職能資格制度のもとで等級が上がる「昇格」とは、意味が異なります。
昇進の基準は人事評価や目標管理制度、資格取得などがあり、面接や小論文などの試験が行われるのが一般的です。企業が昇進を行う際は、判断基準を明確にするなど公平性を保ち、従業員の信頼を得ることが大切です。
※ 掲載している情報は記事更新時点のものです。
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