- 更新日 : 2024年9月13日
リーダーに必要なスキル・能力とは?具体的な役割や特徴を紹介
優れたリーダーに恵まれると、そのチームのメンバーは能力を発揮し、成長し、相乗効果によりチームの成果もより大きなものとなります。リーダーの役割と使命は何か、条件やスキルには何が求められるのでしょうか。
リーダーの意味や役割、条件、リーダーに向いている人の特徴を解説するとともに、リーダーシップの種類について紹介します。
目次
リーダーとは?
スポーツやクラブのチームリーダーと同じように、ビジネスの世界でもリーダーが果たす役割は重要です。リーダーは、統率者、指導者、先導者などといった意味を持ち、何らかの任務や使命を果たすためにその組織やチームを引っ張る役割を担う人を指します。優れたリーダーは、チームのメンバーを育成し、パフォーマンスを向上させるのです。
組織を管理し、指導するという意味では、リーダーとマネージャーは似ていますが、その役割には違いがあります。
マネージャーとの違い
リーダーは、何らかの任務や使命を果たすために組織やチームを率いて遂行し、成果を上げる役割を担います。一方、マネージャーは円滑な業務が遂行できるように環境を整え、組織やチームの任務や使命の達成度合い、成果の達成状況を管理する役割を担います。
リーダー、マネージャーともに、部下を指導し、任務や使命を果たすという点は同じです。しかし、リーダーは任務や使命を果たすためにメンバーを引っ張り、メンバーの核となる行為者、マネージャーは組織やチームの成果が目的に叶っているかをチェックし、達成させる管理者となるところに違いがあります。
リーダーの条件・スキル – 良いリーダーとは?
リーダーに求められる条件やスキルを8つ紹介します。
1.コミュニケーションのスキル
メンバーにチームの任務や使命を説明し、メンバーの理解を得るためには、コミュニケーションのスキルが必要です。メンバーからの意見やアイデアを取り入れ、業務に活かすことも重要であり、意見が出やすいようにチーム内のコミュニケーションを活発にするスキルも必要となります。
2.決断力と行動力
任務の遂行が難しい場面や時間がなくて迷う場面では、リーダーの決断力や行動力が必要です。リーダーが迷っているとチームのメンバーは不安となり、パフォーマンスが低下します。すぐに決断し行動で示すことも良いリーダーの条件です。ときには時間をかけてじっくりと考えることも必要ですが、決断力と行動力がなければ、ビジネスチャンスを逃すことにもなりかねません。
3.統率力
リーダーはスポーツなどのチームに例えるとキャプテンのような役割を果たす者となります。チーム全体をまとめて目標達成に向けて引っ張っていかなければなりません。それには、チーム全体からの信頼を得て統率する力が必要です。チームのメンバーが失敗したとしても励まし、自らが率先して業務を遂行し、メンバーの目標や手本となることができれば、チームの信頼を得ることができるでしょう。
4.洞察力と観察力
広い視野を持って、メンバーの力量や業務の遂行度合いを見極める能力が必要です。方向性が間違っていればすぐに修正し、正しい方向に導くことができなければ、任務や使命を果たすことはできません。洞察力と観察力があれば、メンバーの適性を見抜き、適材適所の配置が可能になります。また、メンバーのモチベーション低下にもすぐに気がつき、チームのパフォーマンスの低下を防ぐこともできます。
5.誠実さと粘り強さ
業務遂行にあたって、想定外の問題が起きたり、トラブルに巻き込まれたりすることは日常茶飯事です。そのようなときでも誠実に業務に取り組み、諦めずに粘り強く目標を達成しようとする姿勢がなければ、任務や使命をまっとうすることはできません。また、チームのメンバーを公平に扱い、嘘をついたりごまかしたりしないことも大切です。
6.メンバーの育成能力
チームのメンバーを育成することもリーダーに必要なスキルです。チームのメンバー個々の能力が上がれば、チーム全体のレベルが上昇し、パフォーマンスが向上します。また、リーダーの業務をフォローできる者や、リーダーが昇進や転勤していなくなったときに変わりができる者を育てることも、組織としては重要です。
7.ストレスやプレッシャーに強い
リーダーが正しい指示をしていても、ときには反感を買って反対意見を主張されることがあります。また、時間が足りない、思うような成果が上がらないなど、目標達成が危ぶまれる場面に遭遇することも少なくありません。そのようなときにも冷静に対処し、自分の信念を貫ける強さが必要となります。ストレスやプレッシャーがかかる場面で力を発揮できるのも、リーダーに必要なスキルです。
8.学習能力と業務経験
これまで経験のない分野や初めての業務でリーダーを任されても、メンバーに教えることはできないでしょう。リーダーとなるには、その業務の分野の業務経験があり、精通していることが求められます。
リーダーが行う業務・役割
リーダーの役割は、任務や使命を果たすために組織やチームを率いて遂行し、成果を上げることです。具体的には以下のようなことが、リーダーの業務や役割になります。
1.チームの任務・使命・目標を明確にして、計画を立てる
目標を達成するための具体的な計画を立案し、どのような方法で実行するのか、誰が何をするのかなど、業務遂行のためのプロセスやフォロー体制を立案します。
2.チームを組織化し、指揮し、統制する
計画ができたらメンバーに仕事を割り振ることも重要な役割です。メンバーの業務レベルに合わせて仕事を割り振り、組織としてチーム内でフォローし合うように指揮する必要があります。個々のメンバーの業務内容や業務レベルが把握できていないと、適切な指導はできません。また、進捗度合いをチェックし、もしも方向性が誤っていたら、軌道修正を図るのもリーダーの役割です。
3.チームの目標を達成させる
チームの目標達成がリーダーの業務であり、役割となります。それには、業務が効率的に進むように職場環境を整えることや、自ら率先して業務に取り組み、メンバーの見本となることが大切です。メンバーとコミュニケーションを密に取って、業務の進捗状況をチーム全体で共有することができれば、チーム内でフォローすることが可能となり、目標達成が図れます。
4.メンバーの育成やモチベーションの向上
メンバーには業務レベルの高い者がいれば、低い者もいるでしょう。それぞれのレベルに合わせて育成するのもリーダーの役割です。また、ときにはチーム内に仕事に対するモチベーションが低い者がいることがあります。業務が思うように進まず落ち込んでいる場合には、リーダーが率先して業務を遂行することはもちろんのこと、フォローしてメンバーに成果を出させることもモチベーション向上につながります。
リーダーに向いている人の特徴
リーダーはどのような人が向いているといえるのでしょうか。リーダーに向いている人の特徴を見てみましょう。
1.コミュニケーションのスキルが高く、メンバーの意見が聞ける
リーダーには意見が出やすいようにチーム内のコミュニケーションを活発にするスキルが必要であり、自己中心的で他人の意見が聞けない人は、チームを間違った方向に導いてしまいます。
2.行動力があって、粘り強い
誠実に業務に取り組み、諦めずに粘り強く目標を達成しようとする姿勢が大切です。リーダー自ら動いて目標を達成するという姿勢がなければ、誰もついていきません。他人任せで、リーダーが何もしなければ、チームのモチベーションは下がってしまいます。
3.責任感が強く、業務に誠実さがある
チームのメンバーをサポートし、失敗したときには人に責任を押しつけるようなことはせず、「自分が責任を取る」というのがリーダーのあるべき姿です。プライドが高くすぐに他人のせいにする人は、メンバーの信頼を得ることができません。業務に誠実に取り組み、責任感の強い人は、周りの人から信頼されるでしょう。
4.視野が広く、まわりの人に気遣いができる
洞察力と観察力がある人は、メンバーの長所や短所を見抜くことができます。また、メンバーのモチベーション低下にもすぐに気がつくので、フォローすることも可能です。
リーダーシップの種類・理論
リーダーとなる素質・資質・能力を表す言葉に、「リーダーシップ」があります。リーダーシップの定義は、さまざまな研究がなされているところですが、「組織をまとめ上げるために必要となる能力」であることには間違いないでしょう。
ここでは、さまざまなリーダーシップの理論を紹介します。
クルト・レヴィンの3つのリーダーシップ
アメリカの心理学者であるクルト・レヴィン氏が、アイオワ大学で行った実験により分類した3つのリーダーシップのタイプがあります。それぞれ特徴が異なり、組織やチーム立ち上げ当初は専制型のリーダーシップ、安定期には民主型のリーダーシップ、専門性が高い集団や高レベルの組織では放任型のリーダーシップなどと、組織やチームの状況に応じて使い分けるのが良いと考えられています。
専制型のリーダーシップ
作業手順はすべてリーダーが指示し、仕事量が多く、高い生産性が得られる反面、長期的に見ると、メンバー相互に反感・不信感が生まれやすい。
民主型のリーダーシップ
専制型リーダーシップより低い生産性となる反面、最終的にはリーダーが決定するが、メンバーで討議して方針を決定するため、有効的な関係が生まれ、長期的に見ると高い生産性が得られる。
放任型のリーダーシップ
リーダーは関与せずメンバーで作業手順を決定するため、組織のまとまりもなく、仕事の量・質、メンバーの士気が低くなりやすい。ただし、メンバーの自由度が高く、専門家集団や研究開発部門などでは能力が発揮しやすく、高い生産性が期待できる。
Situational Leadership 理論
Situational Leadership理論(SL理論)は、1977年にポール・ハーシィ氏とケネス・ブランチャード氏が提唱したリーダーシップの理論です。メンバーの成熟度に応じてリーダーシップのスタイルが異なるとの前提に立っています。SL理論では、4つに分けたそれぞれの状況におけるリーダーシップの有効性を高める方法を示しています。
教示的リーダーシップ
メンバーの成熟度が低い場合には、具体的な指示と細かい監督をする。
説得的リーダーシップ
メンバーの成熟度が高くなってきたら、説明と疑問に応える。
参加的リーダーシップ
メンバーの成熟度がさらに高くなったら、自ら決められるように仕向ける。
委任的リーダーシップ
メンバーが完全に自立するレベルになったら、業務遂行責任を委ねる。
PM理論
PM理論は、日本の社会心理学者である三隅二不二氏が、リーダーが取るべき行動に視点を置いて1966年に発表した行動理論の1つです。リーダーシップ行動をPとMの2つの軸で定義し、PM、Pm、pM、pmの4つのパターンでリーダーシップの行動理論を分けて考えていきます。
P:目標達成機能(Performance)M:集団維持機能(Maintenance)
Pが強くMが弱い「Pm型」は、成果を上げる能力は高いが集団をまとめる能力が低いリーダーシップ像です。短期的には成果を上げられても、長期的にはメンバーのモチベーションの低下やパフォーマンスの低下をもたらすかもしれません。
Pが弱くMが強い「pM型」は、成果を上げる能力は低いが集団をまとめる能力が高いリーダーシップ像です。チームワークは保たれやすいかもしれませんが、目標達成に向けてチームを引っ張るのは難しい可能性があります。
PとMの両方が強い「PM型」は、成果を上げる能力も集団をまとめる能力も高く、理想的といえるでしょう。その反対に「pm型」は、成果を上げる能力も集団をまとめる能力も弱く、必ずしもリーダーシップが発揮できないということではありませんが、「目標や課題を解決する力」と「集団をまとめる力」を伸ばすための取り組みが必要となるでしょう。
コンセプト理論
コンセプト理論は、ビジネス環境・組織・メンバーの状況から、条件適合理論を継承しつつ、さまざまなリーダーシップの取り方を「リーダー」と「リーダーをとりまく環境」の関係性に重点を置いて議論をしたものです。 代表的なものに、以下の5つのリーダーシップのタイプがあります。
カリスマ型リーダーシップ
突出した行動力と発想でチームを牽引
変革型リーダーシップ
経営方針やチームの方針を抜本的に見直し、改革を推進
EQ型リーダーシップ
人間関係重視のリーダーシップで、職場環境改善やモチベーションに配慮
ファシリテーション型リーダーシップ
メンバーの自発性を尊重し、成長を促す
サーバント型リーダーシップ
メンバーの業務をリーダーがサポートし、能力を引き出す
ダニエル・ゴールマンの理論
ダニエル・ゴールマンの理論とは、ダニエル・ゴールマン氏が提唱した「EQ型リーダーシップ」のことです。1995年発表された「EQこころの知能指数」が有名であり、「EQ」とは「Emotional Intelligence Quotient」を略したもので、「心の知能指数」などと呼ばれています。
上述したコンセプト理論における「EQ型リーダーシップ」は、人間関係重視、つまり、メンバーの感情への働きかけを重視したリーダーシップであり、部下の感情をコントロールすることで、チームをより良い方向へ導きます。
EQ型リーダーシップには6つの形があり、使い分けることが重要とされています。
- ビジョン型:チームが目指すビジョンを明確にし、チームが進む方向を導く
- コーチ型:メンバーの能力を尊重し、対話を通じてサポートする
- 関係重視型:メンバーの関係性を重視し、チーム内のコミュニケーションの円滑化を図る
- 民主型:対話を通じてメンバーの提案を取り入れ、チームの方向性や活動計画をチーム全体で決めていくことでモチベーションの向上が図れる
- ペースセッター型:リーダーがメンバーに難しい課題を向き合わせ、実際にやってみせる
- 強制型:強制的に指示することで、短期間で成果を出す
人事労務部門がリーダー育成のためにできること
リーダーに求められるスキルにはいくつかありますが、企業の成長にはリーダーに求められるスキルを身につけている、優れたリーダーを育成することが大切です。しかし、優れたリーダーを育成することは容易ではありません。現場では時間が取れず、リーダーとなるための学習する機会を作ることは困難です。また、教育体制が整っていない企業もあるでしょう。
リーダーを育成するためには、リーダーが育ちやすい環境を企業が率先して作る必要があります。次の方法を取り入れることも検討しましょう。
リーダー研修を実施する
リーダーとなるための基本的なスキルを学ぶ機会を作ることが大切です。入社してから一定年数を経た段階、主任や係長など初めて管理者となった段階、課長や部長などマネジメントが主業務となった段階など、継続的、かつ、役割に応じた内容で研修を実施するのが良いでしょう。
現場の中でもリーダーとなるためのOJTを実施する
日常業務の中でも、リーダーのスキルを身につけられるようにすることが大切です。それには、OJTなどを通じて実際に行わせることと部下に責任ある仕事を任せることが大切です。部下のレベルに応じて教育と実践を繰り返すことで、リーダーとなるスキルが身につきます。
リーダーの選抜基準を明確にする
リーダーとなる条件やスキルを身につけている者を選抜することが必要です。そのためには、部下の業務レベルを把握するとともに、リーダーの選抜基準を明確に定めておく必要があります。担当者の好みや贔屓で選抜することは逆効果です。実務能力やコミュニケーション能力など、リーダーになる条件を客観的に評価できる仕組みを作りましょう。
リーダーの育成計画を作る
リーダーの育成では、成長度合いが見えないだけに適切な評価が難しいことがあります。長期的なビジョンで育成計画を作り、評価基準を明確化して、育成計画に沿った人材教育を実行することが何よりも重要です。
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リーダーとなるスキルは学ぶことで身につく
コミュニケーションのスキル、行動力と決断力、統率力など、リーダーに求められる条件やスキルは、学習し、経験を積むことで身につきます。これらの能力は、日頃の業務の中で上司が部下に教えることもできるでしょう。ただし、リーダーを育てるには、教える側にもリーダーになるスキルが必要です。
現場としては、人手不足で業務が忙しい中、人材を育成する時間を作ることは困難です。人事労務管理部門が現場と一体となって、業務の効率化を図り、研修時間を作ることが必要となるでしょう。
リーダーは素質や資質がなければなれないということはありません。従業員の個々の能力を伸ばし、その人の強みや個性を生かす方法を学ぶことで誰でもリーダーになることができるのです。長期的なビジョンで人材育成計画を作り、自社で優れたリーダーを育てることが、優秀な人材確保につながります。
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