- 更新日 : 2024年12月27日
在職老齢年金とは?手続きの有無や計算方法を解説
会社員等は老齢厚生年金を受けられる年齢になっても在職している場合は、年金を受給しながら厚生年金保険に加入し続けることができます。
ただし、収入によっては年金額が支給停止されてしまう場合があるのです。これを「在職老齢年金」と言います。
今回は在職老齢年金とはどのような制度か、手続きや年金額の計算方法について解説します。
目次
在職老齢年金とは?
在職老齢年金とは、老齢厚生年金を受け取りながら在職して、厚生年金保険に加入し続けながら受ける老齢厚生年金のことです。
年金額と給料・賞与の合計が47万円を超える額の場合、47万円を超えた金額の2分の1が年金額から支給停止されます。70歳以上の方は保険料の支払いはなくなりますが、支給停止については同じ取り扱いです。
在職老齢年金については、下記で詳しく解説していますので参照してください。
また、2022年4月施行の法改正による在職老齢年金の支給停止の基準の改正などについては、下記の記事で解説していますので参考にしてください。
在職老齢年金の支給停止期間は?
老齢厚生年金をもらいながら、かつ、厚生年金保険の被保険者である場合に、老齢厚生年金の基本月額と総報酬月額相当額の合計額によって年金額が支給停止になる場合があります。
支給停止の条件である基本月額と総報酬月額相当額の合計が47万円を超えている間は支給停止になります。この支給停止中であっても、年金額は改定される場合があります。
ここでは、在職定時改定、退職時改定について見ていきます。
在職定時改定
令和4年3月までは、老齢厚生年金の受給権者が厚生年金保険の被保険者であった場合、65歳以降の被保険者期間については、年金額は退職時や70歳到達時の資格喪失時にのみの改定でした。
令和4年4月の法改正により、年金額は在職中であっても毎年10月分から改定する「在職定時改定」という制度が導入されました。
具体的には、毎年9月1日時点での老齢厚生年金受給者の年金額については、前年9月から当年8月までの1年間の被保険者期間を算入し、毎年10月分の年金から改定されることになります。
対象となるのは65歳以上70歳未満である老齢厚生年金の受給者です。
退職時改定
厚生年金保険の被保険者となっている老齢厚生年金の受給権者が会社等を退職した場合、厚生年金保険の資格を喪失します。
その被保険者の資格を喪失した日から再度被保険者になることなく1か月経った場合は、1か月を経過した月から年金額が改定されます。
この改定を「退職時改定」と言います。
在職老齢年金の手続きは必要?
在職老齢年金は、日本年金機構に対して行った手続きにより支給されるかどうかが決まります。
厚生年金保険の老齢年金は、年金の基本月額と給料・賞与によって決められる総報酬月額相当額の合計額に応じて、年金額の一部または全部が自動的に支給停止になります。
給料に変動があったことにより、給料によって決められる標準報酬月額が改定になった場合には、会社が日本年金機構に届け出を行うことになっています。また、賞与が支給される毎に、会社は日本年金機構に届け出を行うことにもなっています。
その結果、総報酬月額相当額が変動し支給される在職老齢年金の年金額が変わった時には、直接本人に日本年金機構からお知らせが届きます。
在職老齢年金の計算方法
在職老齢年金は、以下のようにして判定・計算されます。
基本月額と総報酬月額相当額の合計額が47万円を境にして計算方法が変わります。それぞれの場合の計算方法を見ていきましょう。
基本月額と総報酬月額相当額の合計が47万円以下の場合
在職老齢年金による調整はなく、老齢年金は全額支給されます。
基本月額と総報酬月額相当額の合計が47万円超の場合
在職老齢年金による調整後の年金支給月額は、以下の式で計算して求めます。
在職老齢年金を正しく理解して生活設計を立てましょう
在職老齢年金は、年金をもらいながら働き続ける場合に、総報酬月額相当額に応じて受給できる年金が一部または全部支給停止になることがあると説明しました。
年金が調整されて支給停止になるかどうかは、会社が日本年金機構に対して手続きを行った結果の個人個人の総報酬月額相当額によります。
- 自分の総報酬月額相当額は支給停止になるのかどうか
- 支給停止になるとしたらいくらが支給停止になるのか
自分で計算する、会社に相談する、年金事務所で相談するなどの方法で把握して、生活設計をしていきましょう。
よくある質問
在職老齢年金とは?
厚生年金保険に加入し続けながらもらえる老齢厚生年金の制度のことです。年金月額と給料・賞与の合計が47万円を超えた場合、その半額が年金額から支給停止されます。47万円以下の場合は支給停止されません。詳しくはこちらをご覧ください。
在職老齢年金の計算方法は?
年金の基本月額と総報酬月額相当額の合計額が47万円を超える場合には、超えた分の半額、式に示すと「基本月額-(基本月額+総報酬月額相当額-47万円)÷2」が支給停止されて基本月額から減額されます。詳しくはこちらをご覧ください。
※ 掲載している情報は記事更新時点のものです。
人事労務の知識をさらに深めるなら
※本サイトは、法律的またはその他のアドバイスの提供を目的としたものではありません。当社は本サイトの記載内容(テンプレートを含む)の正確性、妥当性の確保に努めておりますが、ご利用にあたっては、個別の事情を適宜専門家にご相談いただくなど、ご自身の判断でご利用ください。
関連記事
社会保険において扶養が外れる条件とは?外れるタイミングや手続きも解説!
会社員の配偶者がパートタイマーで働いている場合、収入によって扶養から外れて所得税の控除を受けられなくなったり、社会保険の加入義務が生じて新たに保険料負担をしなければならなくなったりすることがあります。 いわゆる「〇〇円の壁」です。 本稿では…
詳しくみる労働保険の年度更新とは?時期や電子申請・申告書の作成方法、効率化を解説
労災保険や雇用保険の年度更新は、電子申請の導入により、効率的な申告が可能となっています。これにより、平日の日中に労働局や労働基準監督署に出向く必要がなく、休日や夜間でも自宅から申告できるようになりました。 本記事では、労働保険の年度更新につ…
詳しくみる給付制限期間中のアルバイトは20時間以上働いても問題ない?注意点を解説
給付制限期間中に20時間以上アルバイトをすると雇用保険の加入条件を満たしてしまい、失業手当(失業給付)を受け取れなくなる可能性があります。 しかし、条件次第では失業手当を受け取りつつアルバイトをすることも可能です。 この記事では、給付制限期…
詳しくみる厚生年金基金の8つのメリット
厚生年金基金とは、企業年金の一種であり、厚生年金保険料の一部を「代行部分」として運用し、その運用益による「プラスアルファ部分」を公的年金に上乗せ支給する制度です。厚生年金基金の仕組みや給付について詳しく知りたい方は、「厚生年金基金と厚生年金…
詳しくみる社会保険には加入義務がある!手続き書類の書き方を解説
社会保険は事業所に勤めている人たちが安心して働くために全国健康保険協会(協会けんぽ)や日本年金機構が整備している保険です。 保険料の一部は事業所が負担しなければならないため、経営者にとっては悩みの種でもあります。しかし社会保険は厚生労働省の…
詳しくみる年金手帳とは?廃止済み! 厚生年金と国民年金で変わること
2022年3月まで、厚生年金や国民年金に加入すると「年金手帳」が交付されていました。 厚生年金手帳・国民年金手帳のような区別はなく、どちらも共通の手帳です。年金関連情報の管理に必ず用いられていましたが、4月に廃止されて新規交付をされなくなり…
詳しくみる