• 更新日 : 2025年1月28日

育休中は無給?給付金の2年目は?もらえるお金や年末調整を解説

育休中は原則無給ですが、育児休業給付金などの制度を活用すれば、無給期間中の収入を確保できます。

本記事では、育休中に支給される給付金や支援制度について詳しく解説します。

合わせて、2年目以降の給付はどうなるか、さらには年末調整の手続きなど、必要な情報を網羅的にまとめました。

育休中の経済的不安を解消し、安心して子育てに専念したい方は、ぜひ最後までご覧ください。

なお、人事労務担当者の方も、従業員への説明資料としてご活用いただけます。

育休中は無給?

育休(育児休業)とは、育児・介護休業法で定められた、子どもを育てるために労働者が取得できる休業制度です。

育休期間は原則として子どもが1歳になるまでですが、保育所に入れないなどの事情がある場合は最長2歳まで延長できます。

育休中は、労働の対価である給料は基本的に支払われません。

しかし、育休中の生活を支えるため、給料の代わりに雇用保険から「育児休業給付金」が支給されます。

次項で、男性の育休中も無給か、育休中でも給料を支払う会社はあるかなどを詳しく解説します。

男性の育休中も無給?

育休は男女関係なく取得できる制度です。

そのため、男性が育休を取得した場合も、原則として給料は支払われません。

ただし、男性の場合も、育休中の生活を支えるための「育児休業給付金」が支給されます。

この給付金は、育休開始から6ヶ月までは休業前賃金の67%、それ以降は50%が支給されます。

育休中でも給料を支払う会社もある

育休中の給与支給は法律で義務付けられていませんが、企業によっては独自の制度として、育休中も給料の一部または全額を支給する場合があります。

これは、従業員の福利厚生の一環として行われるもので、企業イメージの向上や優秀な人材の確保に繋がる効果に期待できるでしょう。

ただし、給料と給付金の合計額が、休業前賃金の8割を超える場合は、給付金が減額される仕組みとなっています。

なお、給料そのものが休業前賃金の8割を超える場合は、育児休業給付金は支給されません。

これは、休業中の所得保障が過剰にならないようにするための調整措置です。

そのため、育休中でも給料が発生する会社に勤めている場合は、育児休業給付金の支給額に影響が出る点に注意しましょう。

育休で無給ならどうすればいい?

育休中の生活を支えるための公的な制度について解説します。

出産・育児に伴う給付金を利用する

育休期間中の主な収入源となるのが、下記の給付金です。

  • 育児休業給付金(育休手当)
  • 出生時育児休業給付金(産後パパ育休)
  • 出産育児一時金

育児休業給付金は、育休開始から6ヶ月までは休業前賃金の67%、それ以降は50%が支給されます。

支給されるのは、雇用保険に加入している被保険者で、支給を受けるためには、育休開始日の前2年間に、賃金支払いの基礎となった日数が11日以上ある月が12ヶ月以上必要です。

つまり、過去2年間で12ヶ月以上、給与が支払われた月があれば、受給資格を満たします。

出生時育児休業給付金は、産後パパ育休(出生時育児休業)を取得した場合に支給されます。

支給額は、育児休業給付金と同様に、休業前賃金の67%です。

産後パパ育休は、子の出生後8週間以内に4週間まで取得できる休業で、分割して2回まで取得可能です。

また、出産時には健康保険から出産育児一時金が支給されます。

これは、出産にかかる費用を補助するもので、令和5年4月以降の出産では50万円(産科医療補償制度に加入していない医療機関等での出産の場合は48.8万円)が支給されます。

出産費用は医療機関や分娩方法によって異なりますが、平均的な出産費用は約40〜50万円なので、出産育児一時金でカバーできる可能性が高いです。

なお、出産費用が50万円を下回った場合は、差額が支給されます。

自治体の支援制度を活用する

国からの給付金に加えて、自治体によっては独自の育児支援制度を設けている場合があります。

たとえば、「出産・子育て応援交付金」という制度があり、これは、妊娠届出時と出生届出後にそれぞれ給付金が支給されるものです。

金額や支給要件は自治体によって異なる場合があるため、お住まいの自治体のホームページなどで確認しておきましょう。

また、子育て用品の支給や商品券の交付など、現金以外での支援を行っている自治体もあります。

扶養に入れる場合もある

育休期間中に配偶者の扶養に入れば、自身で社会保険料(健康保険料と厚生年金保険料)を支払う必要がなくなります。

しかし、扶養に入るためには、年間の収入見込みが130万円未満(月額108,333円以下)である必要があります。

育児休業給付金は収入には含まれないので、

給付金を受け取っていても、他に収入がなければ扶養に入れます。

ただし、育休期間中は社会保険料が免除されているため、扶養に入らなくても社会保険料の負担はありません。

そのため、育休期間中のみに着目すれば、扶養に入ることで社会保険料の負担がなくなるというメリットは限定的です。

一方で、下記のような場合は、配偶者控除配偶者特別控除)により、税金を抑えられます。

  • 本人(主に夫)所得1,000円以下
  • 配偶者(妻)の所得48万円以下(年収103万円)
  • 夫婦で生計同一など

とはいえ、配偶者控除(配偶者特別控除)は、年間収入を把握するため、扶養に入るタイミングによっては収入要件を満たさない可能性もあります。

扶養に入るかどうかは、育休後の働き方や将来の年金受給額などを考慮して判断しましょう。

育休手当(育児休業給付金)の2年目は無給?

育児休業給付金(育休手当)は、原則として子どもが1歳になるまでの育児休業期間を対象に支給されます。

そのため、何もしなければ、1歳以降は給付金が支給されなくなり、無給の状態となります。

しかし、一定の条件を満たせば、育休期間を延長して給付金の継続が可能です。

次項で、育休手当が2年目以降も支給される条件について詳しく解説します。

育休手当を2年目も延長できる条件

育休手当(育児休業給付金)の支給期間は、原則として子どもが1歳になるまでです。

ただし、下記のいずれかの事情がある場合は、最長で2歳まで延長できます。

  • 保育所等に入所を希望しているが、入所できない場合
  • 配偶者が負傷、疾病、身体上または精神上の障害により、子を養育するのが困難な場合

ただし、保育園への入所ができない理由で育休の延長を希望する場合は、子どもの1歳の誕生日を迎える前に、保育園への入所を申し込みをしている必要があります。

育休の延長を申請する際に必要な書類は、下記の通りです。

  • 育児休業延長申請書
  • 保育所等入所不承諾通知(保育園に入所できなかった場合)
  • 医師の診断書(配偶者の状況により延長する場合)
  • その他、事業主が求める書類

これらの書類を事業主に提出し、事業主がハローワークに申請を行えば、育休の延長と給付金の支給継続の手続きが進められます。

なお、2025年4月より、育児休業給付金の支給延長手続きが厳格化されます。

育休給付の延長を目的とした入所申込み(わざと落選するような保育園への申込み)を抑止することが狙いです。

これにより、手続きの際に前述した必要書類とは別に、「保育所の利用申し込み書の写し等」を追加で提出する必要があります。

手続きの詳細は、事業主またはハローワークに問い合わせるようにしましょう。

法改正【2025年4月~】育休手当の給付額が実質10割に

2025年4月から、従来の育児休業給付金に「出生後休業支援給付」が上乗せ給付されることにより、育児休業中の社会保険料の免除もあわせて、手取り10割相当を受け取れます。

次項で、この法改正によって新設される「出生後休業支援給付」について詳しく解説します。

出生後休業支援給付

2025年4月から新設される「出生後休業支援給付」は、夫婦が共に育児休業を取得する場合に、育児休業給付金に上乗せして給付される制度です。

支給金額や支給要件などは、下記の通りです。

支給金額(支給率)
  • 通常の育児休業給付金(休業開始から6ヶ月までは賃金の67%、それ以降は50%)に加え、休業開始時賃金の13%相当額が上乗せされ、合計80%の給付率になる
  • 社会保険料が免除されるため、手取りでほぼ10割相当になる
支給要件
  • 夫婦が共に育児休業を取得している
  • 父親が子の出生後8週間以内に産後パパ育休(出生時育児休業)を含む育児休業を取得し、母親も産後休業後8週間以内に育児休業を取得している
  • 夫婦それぞれが14日以上(父親の場合は産後パパ育休を含む)の育児休業を取得している

なお、支給される期間は最大28日間で、夫婦が同時に育休を取得した期間が対象です。

申請方法については、通常の育児休業給付金と同様に、事業主を通じてハローワークに申請します。

育休で無給の場合、年末調整はどうなるの?

育休で給与の支払いがない場合でも、年末調整の手続きは必要です。

年末調整は、その年に支払われた給与に対する所得税を精算する手続きで、源泉徴収された所得税と本来納めるべき所得税との差額を調整します。

育休中で給与の支払いがない場合、源泉徴収票に記載される金額は少額になりますが、その年に給与の支払いがあった期間があれば、年末調整の対象となります。

育休中に給与の支払いがない場合、年末調整で還付される税金は基本的にありません。

しかし、配偶者の扶養に入っている場合や、育休前に給与所得があり源泉徴収されていた場合は、年末調整によって税金の還付を受けられる可能性があります。

また、産前産後等のつわり等の体調不良により医療費が増える可能性もあります。

10万円を超える医療費を支払っている場合は、医療費控除の適用を受けられる可能性もあるため、医療機関の領収書は保管しておきましょう。

配偶者の扶養に入っている場合は、配偶者の年末調整で扶養控除を受ければ、配偶者の所得税が減額されます。

育休中の年末調整は、通常の年末調整と異なる点があるため、不明な点があれば、会社の担当部署や税務署に問い合わせると良いでしょう。

従業員の育休で会社が行う手続き

従業員が育休を取得する場合、会社が行うさまざまな手続きについて詳しく解説します。

育児休業の届け出

従業員から育児休業の申し出があった場合、会社はまず育児休業の届け出を受理する必要があります。

これは、育児・介護休業法に基づいた正式な手続きであり、後の給付金申請などにも関わってきます。

手続きの流れは、下記の通りです。

  1. 従業員から育児休業開始日の1ヶ月前までに、会社に育児休業申出書を提出
  2. 従業員から提出された申出書の内容を確認して受理
  3. 育休期間中の業務の引き継ぎや、復帰後の働き方などについて従業員と面談
  4. 育休取得者の氏名や期間などを社内に周知

育児休業申出書については、本記事の後半で無料のテンプレートを用意しているので、ぜひご活用ください。

育児休業給付金の手続き

育児休業給付金は、育休中の従業員の生活を支えるための重要な給付金です。

この給付金を受け取るためには、会社がハローワークへの手続きを行う必要があります。

手続きの流れは、下記の通りです。

  1. 従業員から会社へ育児休業開始の連絡
  2. 必要書類を揃えて会社がハローワークへ申請
  3. ハローワークによる審査・支給決定

なお、育児休業給付金の手続きに必要な書類は、下記の通りです。

  • 育児休業給付金支給申請書
  • 雇用保険被保険者休業開始時賃金月額証明書
  • 育児休業給付受給資格確認票
  • 賃金台帳
  • 出勤簿
  • 母子手帳のコピーなど、出生日の確認ができる書類

ハローワークで審査が行われ、支給が決定すると、給付金が従業員の口座に振り込まれます。

育休中の社会保険料免除手続き

育休期間中は、従業員本人と会社双方の社会保険料(健康保険料と厚生年金保険料)が免除されます。

この免除を受けるためには、会社が年金事務所への手続きを行う必要があります。

手続きの流れは、下記の通りです。

  1. 従業員からの育児休業開始の連絡
  2. 育児休業等取得者申出書を作成して会社が年金事務所へ届出

育休中の社会保険料免除手続きは、従業員の経済的負担を軽減するだけでなく、会社の社会保険料負担も軽減するため、忘れずに行いましょう。

出生時育児休業給付金の手続き(産後パパ育休取得時)

男性従業員が産後パパ育休(出生時育児休業)を取得した場合、育児休業給付金とは別に、出生時育児休業給付金の手続きが必要です。

この手続きも、会社がハローワークに対して行います。

手続きの流れは、下記の通りです。

  1. 従業員から会社へ産後パパ育休取得の申し出
  2. 必要書類を揃えて会社がハローワークへ申請

※産後パパ育休を2回に分割取得する場合は、あらかじめ2回分の申請が必要

なお、出生時育児休業給付金の手続きに必要な書類は、下記の通りです。

  • 出生時育児休業給付金支給申請書
  • 育児休業給付金受給資格確認票
  • 雇用保険被保険者休業開始時賃金月額証明書
  • 賃金台帳
  • 出勤簿
  • 母子手帳のコピーなど、出生日の確認ができる書類

会社は、従業員が安心して産後パパ育休を取得できるよう、迅速かつ正確に手続きを行いましょう。

育休中でも住民税の支払いは必要

住民税が前年の所得に基づいて課税される「後払い」の仕組みであるため、育休中であっても住民税の支払いは必要です。

たとえば、2024年に育休を取得した場合、2023年の所得に基づいて計算された住民税を2024年度に支払う必要があります。

給与から天引き(特別徴収)されていた方は、育休中は天引きがなくなるため、自治体から届く納付書にしたがって納付しましょう。

育休期間中に給与の支給が全くない場合、来年の住民税は減額されるか、非課税となる可能性があります。

育休や子育ての出費を抑えるコツ

育休中や子育て期間中の出費を抑えるための具体的なコツを紹介します。

自治体の子育て支援を確認する(児童手当・子ども医療費など)

各自治体では、子育て世帯への経済的支援策として、さまざまな制度を用意しています。

たとえば、「児童手当」や「子ども医療費助成制度」などです。

児童手当は、中学校卒業までの児童を養育している方に支給される手当です。

支給額は、子どもの年齢によって異なり、3歳未満は15,000円(第3子以降は30,000円)、3歳以上高校生年代までは10,000円(第3子以降は30,000円)などとなっています。

子ども医療費助成制度は、子どもの医療費の一部または全額を自治体が助成する制度です。

助成の対象となる年齢や範囲は自治体によって異なりますが、乳幼児医療費助成制度など、未就学児の医療費を無償化している自治体もあります。

そのほかにも、自治体によっては、保育料の減免制度や、子育て家庭向けの給付金制度などを設けている場合があります。

そのため、お住まいの自治体のホームページや窓口で、どのような支援制度があるのかを確認してみるのがおすすめです。

子育て支援パスポートをチェックする

子育て支援パスポート事業は、地域全体で子育て家庭を応援する取り組みです。

各都道府県や市町村が発行するパスポートを提示すれば、協賛店舗や施設でさまざまなサービスや割引を受けられます。

具体例としては、下記のようなサービスや割引があります。

  • 店舗での商品割引
  • 飲食店での特典
  • 公共交通機関の割引
  • 子育て施設利用料の割引

サービス内容は自治体や協賛店舗によって異なります。

たとえば、東京都内のある百貨店では、パスポート提示でベビー用品の割引や、授乳室・おむつ替えスペースの優先利用などのサービスを提供しています。

子育て支援パスポートは、各自治体の窓口やホームページなどで入手可能です。

通信費や保険料の見直し

育休期間中は収入が減少する可能性があるため、固定費の見直しは重要な節約術の1つです。

特に、通信費や保険料は毎月一定額の出費となるため、大幅に見直しができれば、節約効果に期待できます。

たとえば、通信費を見直す場合、携帯電話のプランを安いものへ変更したり、不要なオプションを解約したりすれば、通信費を削減できます。

保険料を見直す場合は、生命保険や医療保険の保障内容で重複している部分を削減したり、より保険料の安いものへ乗り換えを検討したりするのも良いでしょう。

これらの見直しを行えば、毎月の固定費が安くなり、家計の負担を軽減できます。

家計簿をつける

家計簿をつければ、家計の状況を把握しやすくなり、無駄な出費の削減に期待できます。

家計簿のつけ方としては、下記のような方法があります。

  • 手書きの家計簿
  • 家計簿アプリ
  • エクセルなどの表計算ソフト

手書きの家計簿は、自分で記入するため金額を把握しやすいものの、時間と手間がかかります。

一方で、家計簿アプリは、自動で集計や分析を行ってくれるため手軽に利用できますが、連携している口座やクレジットカード情報の漏洩リスクなどがあります。

そのほかにも、それぞれの方法にはメリット・デメリットがあるため、自分に合った方法で家計簿をつけるのがおすすめです。

家計簿をつけて、何にどれだけお金を使っているのかを把握し、育休中の無駄な出費を減らしましょう。

産休・育休に関わる申請書類のテンプレート

産休・育休を取得する際には、会社への申請手続きが必要です。

合わせて、手続きには所定の申請書類を提出する必要があります。

そこでマネーフォワード クラウドでは、産休・育休に関わる申請書類のテンプレートをご用意いたしました。

次項で、それぞれの申請で使える無料のテンプレートを紹介するので、必要に応じて活用してください。

産休申請書テンプレート

産休を取得する際には、「産休申請書」を会社に提出する必要があります。

産休申請書は、出産予定日や産休期間などを記載する書類です。

下記に産休申請書の無料テンプレートをご用意したので、必要に応じてご活用ください。

産休申請書の無料テンプレートはこちら

育児休業申請書テンプレート

育児休業を取得する際には、「育児休業申請書」を会社に提出する必要があります。

育児休業申請書は、育児休業の開始日や終了予定日、養育する子どもの情報などを記載する書類です。

下記に育児休業申請書の無料テンプレートをご用意したので、必要に応じてご活用ください。

育児休業申請書の無料テンプレートはこちら

育休中の不安を解消し、安心して子育てができるように知識を身につけよう!

本記事では、育休期間中の経済的不安を軽減するために、給付金や支援制度、そして育休中の年末調整や住民税の支払い義務などについて解説しました。

育休中は原則無給となりますが、出産・育児に伴う給付金や自治体の支援制度を活用すれば、経済的なサポートを受けられます。

また、2025年4月からの法改正(出生後休業支援給付の新設)により、育休中の経済的な不安がより軽減されるでしょう。

合わせて、本記事で紹介した出費を抑えるコツを実践し、無理のない子育てを目指してください。


※ 掲載している情報は記事更新時点のものです。

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