• 更新日 : 2024年4月26日

創発とは?意味やビジネスでの利用法について簡単に解説

創発とは、部分の性質の特性が、単純な総和に留まらず全体として現れることを意味する言葉です。もともとは物理学や生物学で用いられていた用語ですが、近年では組織論などで使われるようになり、企業が新しい成果を生み出すポイントと考えられます。

ここでは、創発の意味を解説するとともに、創発のポイントとなる組織作りについて紹介します。

創発とは?

創発とは、部分の性質の特性が、単純な総和に留まらず全体として現れることを意味する言葉です。もともとは物理学や生物学で用いられる用語でしたが、一定の要件に基づく予測や計画、意図を超えたイノベーションが生まれることもあって、近年では組織論やナレッジマネジメントの分野でも用いられています。

個々の持つスキルや特性の相互的な作用は、組織全体に影響を与えます。そして、その組織全体がさらに組織内の個々の特性に影響を与え、これらの相乗効果は、創造的な成果をもたらすことがあるのです。創発は、企業の組織においてもシナジー効果によって新たな秩序やシステムが生み出されることが期待できるため、注目を集めています。

イノベーションとの関係における創発

「全体が部分の総和を超える」というのが、創発が意味する基本的な現象です。その点から、創発を「足し算ではなく掛け算」とイメージする人も少なくありませんが、創発は「あたらしい現象や特性が出現する」という意味合いに近いものです。

一方、イノベーションとは、「革新」や「刷新」を意味する言葉です。ビジネスにおいては、主に技術革新によって新たな価値を社会に提供する取組みに対して使われてきました。昨今では、技術革新のみならず、新たな市場の開拓や資源活用、組織開発、制度革新などでもイノベーションは起こり得ます。

創発の効果を戦略的に組織内に起こすため、自社の環境整備に取り組む企業も少なくありません。従業員それぞれの力の限界はあっても、組織全体に溶け込み、関わり合うことで新しい価値を生み出すことができます。そのため、創発はイノベーションの創出に深く関係しているといえるのです。

ナレッジマネジメント分野における創発

ナレッジマネジメントとは、個々が持つ知識やスキルを組織で共有することで生産性や業務効率を向上させていく取り組みのことをいいます。組織では、個々の従業員の知識やスキルが「暗黙知」となり、全体に共有されないことは珍しくありません。たとえば、熟練の技術者が持つ経験などがその一例といえます。ナレッジマネジメントでは、「SECIモデル」のようなフレームワークを通じ、共同化によって暗黙知を伝達、さらにマニュアルなどで表出化させ、知識に変換した上で個々の従業員が吸収できるよう取り組みます。

ナレッジマネジメントにおける創発とは、暗黙知を共同化するための場として機能します。OJTやロールプレイング、何気ない雑談などが創発の場となり、個人の考えや価値観、知識が他者に伝達され、業務の効率化や企業価値の向上に結びつきます。

イノベーションが生み出される環境の特徴

イノベーションが生み出されるためには、新しいアイディアが採用され実践されなければいけません。自由な雰囲気を生み出すレイアウトのオフィスや、新たな価値創出に貢献した従業員を表彰する制度なども、イノベーションを生み出す方法の一つといえるでしょう。イノベーションが生み出される環境は一つではありませんが、Google社では以下の5つのポイントをあげています。

  • ビジョンの共有
  • 自主性
  • 内発的動機づけ
  • リスクテイク
  • つながりとコラボレーション

参考:ガイド: イノベーションが生まれる職場環境をつくる|Google re:Work

ビジョンの共有

組織にとって、どのような新しい価値の創出が重要となるのかを誰もが認識できるようにして、共有するのがビジョンの共有です。それには、組織が重視する価値を明確にしなければなりません。ビジョンが共有された組織では、従業員はビジョンの実現に向けて、イノベーションの創出に取り組むことができます。

自主性

指示された仕事が自分の仕事と考える従業員が多い職場では、イノベーションはなかなか生まれません。従業員自らが自身の仕事を定義し、必要なことを考え、取り組む自主性が求められます。

内発的動機付け

イノベーションは簡単に起こるものではありません。長い時間がかかることもあれば、失敗することも考えられます。大きな課題に立ち向かい、挫折を乗り越えて取り組むためには、高いモチベーションが必要になります。

参考:モチベーションとは?ビジネスシーンでの用法をわかりやすく解説!

リスクテイク

リスクテイクとは、従業員が心理的安全性を感じられ、リスクを恐れずに新しいアイディアの実現に取り組むことができることをいいます。日頃から、心理的安全性が担保された職場づくりが求められます。

参考:心理的安全性とは?理論や高いことのメリットを解説

つながりとコラボレーション

部分の総和ではなく、全体に新しい現象や価値を創出させるためには、従業員同士のつながりがかかせません。ときには、業務の関係性を超えた関わりがイノベーションを生むこともあります。

創造的な組織を構築するために必要なこと

個々の能力を超えた創造的な成果を生み出すためには、従業員それぞれが適切にかかわることができる組織づくりが重要です。創発のポイントとなる組織の構築のため、必要なことを見てみましょう。

失敗を許容する雰囲気の醸成

創造的な組織の土台作りに、信頼できる関係性は欠かせません。さまざまな価値観や考え、アイディアといった多様性を含む土台があることで、一人ひとりが自分らしく働けるようになります。そして、お互いの考えを尊重する雰囲気が心理的安全性を醸成し、失敗を恐れずにチャレンジができるようになるのです。

社員の自発的な取り組みを賞賛する文化

土台の上に育つのが文化であり、組織でいう文化とは、どのような従業員や成果を評価するかということです。制度に関わる部分でもあるため、従業員の自発的な取り組みを賞賛する仕組みをつくることで、創造的な組織づくりにつなげることができます。

事業領域に縛られない新しい挑戦

創造的な組織とするためには、アイディアを形に変えて市場に届ける取り組みが必要です。ときには、既存の事業領域に縛られない、新しい挑戦が大きな価値をもたらすこともあります。個人単位ではなく、組織として、新たな事業領域の開拓を奨励することが重要です。

創発の可能性を高める具体策

従業員一人ひとりの知識やスキルを最大限活用し、組織に新しい成果や価値を生み出す創発の可能性を高めるためには、組織づくりが重要です。活発なコミュニケーションを促すための具体策について解説します。

クロスファンクショナルチームの導入

クロスファイナンシャルチームとは、経営課題を解決するために、部門をまたいで選出されたメンバーで構成されるチームをいいます。たとえば、近年注目されているDX(デジタルトランスフォーメーション)でいえば、自社サービスのDX化を進める際、営業などの事業部門と、システム開発部門との連携が欠かせません。このように、複数の部門からメンバーが選出されることで、組織の活性化につながり、自由で斬新なアイディアが生まれやすくなります。

ナレッジマネジメントシステムの導入

ナレッジマネジメントシステムとは、これまで特定の個人や部署が保有していた情報を、知識としてまとめ可視化し、共有できるようにしたシステムをいいます。情報を活用することで、従業員のスキル向上だけではなく、企業全体の生産性向上が期待できます。

社内ベンチャー制度の設置

社内ベンチャー制度とは、会社に在籍しながら従業員が独立したベンチャー企業を立ち上げ、新規事業に取り組むことをいいます。社内ベンチャー制度は、会社として新規事業へ挑戦するハードルが下がるメリットをもたらします。また、従業員にとっても少ないリスクで新しい分野に挑戦できるという利点があります。社内ベンチャー制度によって、従業員だけではなく、組織全体の創造性を高めることが可能です。

組織のフラット化

組織のフラット化とは、簡単にいえば中間管理職を排除し、現場と経営を直接結び付けることをいいます。現場の従業員の意見がダイレクトかつスピーディーに伝わることで、組織の意思決定速度が向上します。変化が求められる市場においては、迅速な意思決定は企業の競争力向上にもつながるでしょう。

ただし、組織の規模によっては、フラット化により経営陣のマネジメントが煩雑になる可能性もあります。

ソーシャルネットワークの活用

ソーシャルネットワークの活用は、組織にとって外部との交流の機会を増やす選択肢です。企業アカウントを持つほか、従業員が個々のアカウントでつながり、コミュニケーションを活性化させる方法があります。

組織作りで創発を生み出す強い企業になる

創発は、一人ひとりの能力の足し算ではありません。個々の従業員が持つ経験や知識、スキルが組織全体に溶け込み、適切に関わり合うことで、組織として新しい成果を生み出すことです。創発は、予測不可能な時代を生きる企業にとって重要なキーワードといえます。

失敗を許容する雰囲気の醸成や自主性を賞賛する文化を組織としてつくることができれば、創発が生まれやすい強い企業になるでしょう。


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