• 作成日 : 2022年7月29日

有給休暇義務化に罰則はある?取れなかった場合

有給休暇義務化に罰則はある?取れなかった場合

2019年4月1日以降、企業は対象となる従業員に対して年5日の年次有給休暇を取得させることが義務となりました。義務に違反した場合、30万円の罰金が科される可能性もあります。ここでは年次有給休暇の取得義務の対象者や罰則規定について解説するとともに、義務分の5日が取れなかった場合の対応策について説明します。

有給休暇義務化に罰則はある?

年次有給休暇は、労働基準法に定められた労働者の権利です。年5日の有給休暇義務化など、法律に反する対応をした企業に対して、罰則が定められています。

違反した場合30万円以下の罰金

労働基準法では、年に付与される有給休暇が10日以上の労働者に対して、年間5日の有給休暇を取得させることが義務付けられています(第39条7項)。したがって、使用者(企業)は、対象となる従業員に対して、「基準日」と呼ばれる年次有給休暇を付与した日から1年以内に5日間の有給休暇を取得させなければなりません。

従業員が年次有給休暇を取得する方法としては、「従業員自らの請求(労働者による時季指定)」や「計画年休(計画的付与)」による方法が一般的です。しかし、5日間の有給休暇の取得ができていない従業員に対しては、「使用者による時季指定」による方法で有給休暇を取得させる必要があります。

取得義務に違反した場合、以下の3つのケースで罰則が適用される可能性がありますので、注意しましょう。

  • 従業員に年5日の年次有給休暇を取得させることができなかった場合
  • 労働基準法第39条7項に反したとして、罰則として30万円以下の罰金が適用される可能性がありますので注意しましょう。

  • 使用者による時季指定を行う場合で、就業規則に規定がない場合
  • 使用者による時季指定とは、会社側が取得日を指定する方法です。すでに年5日以上の有給休暇を取得している従業員に対して、企業は時季指定を行うことができません。

    労働者が10人以上いる事業所には、就業規則を作成して労働基準監督署に届け出をする義務があります。休暇に関することは就業規則に記載しなければならない事項の1つです。企業が時季指定をする場合には、予め就業規則に時季指定の方法や対象となる従業員の範囲などを規定しておかなければなりません。就業規則の規定をなくして企業が時季指定を行った場合、労働基準法第89条違反として30万円以下の罰金が科される可能性があるため注意しましょう。

    なお、企業が時季指定を行う場合、可能な限り従業員の意見をヒアリングするとともに、その意見を尊重しなければなりません。また、すでに従業員の希望で3日間の有給休暇を取得しているようなケースでは、企業が時季指定を行えるのは2日までとなります。「従業員自らの請求」「計画年休」「企業による時季指定」のいずれかにより5日取得できていればよく、どのような場合にも企業が5日間の時季指定を行えるというわけではないことも覚えておきましょう。

  • 労働者の請求する時季に有給休暇を与えなかった場合
  • 従業員が有給休暇の取得時季を指定した場合、企業は拒否することができません。企業に認められるのは、有給休暇の取得が事業の正常な運営を妨げる場合に有給休暇の取得日の変更をする「時季変更権」のみです。

企業が有給休暇を拒否し、従業員の希望する時季に有給休暇を与えなかった場合は、労働基準法第39条違反として、6カ月以下の懲役または30万円以下の罰金が科される可能性があるため注意しましょう。

参考:年次有給休暇の時季指定|厚生労働省

罰金は従業員一人あたりの違反で計算される

上記で説明した罰則の金額は、対象となる従業者1人あたりのものです。たとえば、企業が従業員6名に対して、有給休暇の年5日の取得義務違反を起こした場合、「30万円×6名」として罰金の金額が計算されます。

ただし、罰則は刑事罰であり、違反があれば直ちに罰則が与えられるという言い方は間違いです。労働基準監督署の監督指導は、行政指導として労働基準法違反に対して是正に向けた指導を丁寧に行っています。

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有給休暇義務化の対象

有給休暇義務化の規定の対象となるのは、「年に10日以上年次有給休暇が付与される従業員」です。このとき、正社員やアルバイトという雇用形態の区別は関係がない点に注意しなければなりません。

年次有給休暇の発生要件と付与日数

有給休暇の付与日数は、勤続年数および所定労働日数が関係しています。

まず、労働基準法において有給休暇の付与対象となる条件は以下の2つです。

  • 雇い入れの日から6カ月継続して雇われている
  • 全労働日(所定労働日)の8割以上を出勤している

上記を満たした従業員は、勤続年数に応じた有給休暇が付与されます。一方、パートタイムやアルバイトのように、週の所定労働日数が少ない従業員については、労働日数に応じた比例付与の方式が採用されます。たとえば、週に3日働くパートタイムの従業員が6カ月以上勤務した場合、年5日の有給休暇が付与されます。

■ 年次有給休暇の発生要件と付与日数
有給休暇取得義務化の対象-1

引用:年5日の年次有給休暇の確実な取得 わかりやすい解説|厚生労働省・都道府県労働局・労働基準監督署

パートやアルバイト労働者も有給休暇義務化の対象になる

有給休暇の付与条件は、勤続年数と所定労働日数が基準です。そのため、パートやアルバイトなど正社員よりも労働時間数が少ない従業員でも、条件を満たしさえすれば有給休暇の付与対象となります。

そして、年10日以上有給休暇が付与されるパートやアルバイトの従業員は、有給休暇義務化の対象となり、年5日以上の有給休暇を取得させなければなりません。下図の太枠で囲われた部分に該当する従業員は、有給休暇義務化の対象となります。

どの従業員が有給休暇義務化の対象となるのか、きちんと把握できるよう適切な労務管理を行いましょう。

有給休暇義務化の対象2

引用:年5日の年次有給休暇の確実な取得 わかりやすい解説|厚生労働省・都道府県労働局・労働基準監督署

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従業員が最低の有給休暇数を取れなかった場合

有給休暇義務化において、取得義務である年5日を従業員が取れないケースも考えられます。労働基準監督署による監督指導や罰則の適用を回避し、従業員とのトラブルを避けるためには、「有給休暇の取得計画表」を作成して「計画年休」を実施するなど、計画的な運用が重要です。以下に、従業員が義務化分の有給消化を取れなかった場合に、企業としてできる運用上の対策を紹介します。

有給休暇の取得計画表

有給休暇が付与されても、日々の業務に追われていると「忙しくてなかなか有給を使えない」と従業員は思ってしまいます。また、担当業務を他のメンバーに引き継ぐ体制ができていなかったり、チームや部署内での有給休暇が重なってしまう心配があったりすると、有給休暇の取得が進みません。

このような状況において、有給休暇の取得計画表は、社内での情報共有に役立ちます。有給休暇の取得計画表とは、部署やチームごとにメンバーの有給取得数や予定を一覧にしたものです。互いのスケジュールが可視化されることで、有給休暇の取得タイミングを調整しやすくなります。また、個人の有給取得状況がわかるため、義務化された日数の取得状況を確認するのにも役立ちます。

従業員数が多い事業所では、スケジュール管理機能を兼ね備えた勤怠管理システムを導入するのも、年次有給休暇の管理に有効です。

計画年休の実施

通常、従業員は申請により有給休暇を取得しますが、企業が全社的に時季を指定して有給休暇を取得させることができる計画年休も効果的です。計画年休の実施にあたっては、予め労使協定を締結し、就業規則に規定を定めることが必要です。また、従業員が自由に申請・取得できるように、有給休暇を5日分残しておく必要があります。

計画年休の実施例としては、以下のものがあげられます。

  • 企業や事業場全体での一斉付与
    予め時季を決めて、全社的に有給休暇を付与し、休業する方式です。たとえば製造業の夏季休暇や年末年始休暇のように、操業を止めて全従業員を休ませることができます。
  • ブリッジホリデーとして連休に
    ゴールデンウィークやシルバーウィークなど、カレンダーによっては飛び石連休となる場合、休日の橋渡しとして有給休暇を活用することで大型連休とすることができます。
  • アニバーサリー休暇への活用
    従業員の誕生日や、結婚記念日、子の誕生日などを「アニバーサリー休暇」として休暇にする制度は、ワークライフバランスを向上させるものとして多くの企業で導入されています。こうした新しい休暇制度は、有給休暇への職場の理解と取得を促進する上で有効です。
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年次有給休暇の取得を促進させる体制を整えよう

年に10日以上の年次有給休暇が付与される従業員は、付与日から1年以内に5日の有給休暇を取得する有給休暇義務化の対象となります。まずは、どの従業員にどれくらいの日数が付与されるのか、自社の状況を把握するとともに、年次有給休暇の取得状況について適切に管理できるようにしましょう。

有給休暇の取得義務に違反した場合、罰金等の罰則が科される可能性があります。有給休暇の取得を促進させるには、企業側からの声掛けを積極的に行うことも大切です。計画表を作成し社内での情報共有を図り、業務への影響を少なく改革的に運用できる計画付与制度を活用するなどの工夫が求められます。

よくある質問

有給休暇義務化に罰則はありますか?

年5日の有給休暇取得義務に違反すれば、30万円の罰金が科される可能性があります。就業規則に定めなく時季指定することや、従業員の希望する時季に取得させない場合にも、罰則が適用される可能性があります。 詳しくはこちらをご覧ください。

従業員が有給休暇を消化できなかった場合、企業はどうすればよいですか?

有給休暇の取得が思うように進まない場合、労使協定の締結により取得時季が設定できる計画的付与制度が有効です。メンバー同士の有給取得状況を可視化する計画表の作成も、有給取得の理解と取得促進に役立ちます。 詳しくはこちらをご覧ください。


※ 掲載している情報は記事更新時点のものです。

監修:加治 直樹(経営労務コンサルタント)

銀行に20年以上勤務し、融資融資から資産運用、年金相談まで幅広く相談業務の経験あり。中小企業の決算書の財務内容のアドバイス、資金調達における銀行対応までできるコンサルタント。退職後、かじ社会保険労務士事務所として独立。現在は行政で企業及び労働者の労働相談業務を行いながら、セミナー講師など幅広く活動中。

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