- 更新日 : 2024年11月1日
年間休日の最低ラインは?平均日数の多い業種や含まれる休暇を解説
会社や事業所は、従業員の年間休日を設定しなければなりません。労働基準法では、最低限「毎週1日」または「4週間に4日以上」の休日を与えることが義務付けられています。これをもとにした最低ラインの年間休日は52日です。
本記事では、この最低ラインに加え、業種ごとの平均日数や年間休日に含まれる休暇について詳しく解説します。
目次
年間休日とは?
年間休日は、会社や事業所などで働く人に対して与える年間を通した休日の合計日数です。ところが、労働基準法では各事業所に対して年間休日の合計日数を指定していません。年間休日は、それぞれの会社や事業所ごとに設定されている状況です。
求職者にとって年間の休日数は応募先の選定要素にもなるでしょう。そのため、企業の人事担当者は求職者に納得される年間休日の決め方が求められます。
法定休日と休日の合計日数
年間休日には、法的なルールが定められています。労働基準法35条では、労働者の休日に対して最低ラインを示しています。
また、厚生労働省の公式ホームページ「労働時間・休日」では、「労働者を雇用する場合は少なくとも毎週1日の休日か、4週間を通じて4日以上の休日を与えなければならない」と記載しています。
この労働基準法35条で定められた最低週1回の休日または、4週に4日以上の休日が法定休日となります。法定休日による年間休日を算出すると次の結果が出ます。
端数を切り捨てた場合、法定休日は52日です。
さらに、労働基準法で定められた法定労働時間は、1日8時間および週40時間となっています。この法定労働時間を年間休日に反映した場合は、次の計算で算出します。
※計算では端数を切り捨てています。
上記の計算により法定休日と法定労働時間を考慮した休日の合計は、年間105日と算出されます。端数を切り捨てずに計算した場合は、104日になるでしょう。
年間休日の最低ラインは何日?
労働基準法で定められた最低ラインの日数は、法定休日だけで考えた場合は52日です。法定労働時間を条件にすると、年間休日の最低ラインは、法定労働時間の最低ラインとなる105日と判断できます。
年間休日105日の働き方
年間休日105日は、労働基準法で定められている1日8時間、週40時間の労働時間に基づいた最低限の休日日数です。1年間の労働日数は260日(1週間5日×52週)となるため、365日から260日を差し引くと年間休日は105日となります。年間休日105日の働き方は、週休2日制の働き方になるでしょう。法定労働時間が1日8時間および週40時間となるので、週40時間÷1日8時間=5日となるため、1週間は7日あるため、週休2日制の働き方が年間休日の最低ラインと考えられるでしょう。
年間休日105日には、労働基準法35条で定める「少なくとも週1日の休み」に該当する52日を差し引いた53日は、法定外休日に該当します。
年間休日の最低ラインを下回ってもよいケース
労働基準法に基づく法定休日と法定労働時間を考慮すると、年間休日の最低日数は105日となります。これは、週40時間の労働時間に基づく計算であり、週休2日制を適用した場合の基本的な目安です。しかし、年間休日は必ずしも105日を下回ってはいけないわけではなく、例外として最低ラインを下回るケースも存在します。
ここでは、労働時間や労働制によるケースなど計算例をふまえて解説しましょう。
1年単位の変形労働時間制の場合変形労働制の場合
1年単位の変形労働時間制は、1か月を超え1年以内の期間を平均して1週間当たりの労働時間が40時間を超えないことを条件として、業務の繁閑に応じ労働時間を配分することを認める制度です。労働基準法35条で定められた「4週を通じて4日以上の休日」の部分は、変形労働時間の業種の場合に適用されます。変形労働制は、企業における事業特性上、繁忙期と閑散期のある業種などが取り入れている働き方です。
例えば、ホテル・宿泊業などでは繁忙期と閑散期の差が激しく、従業員に休日をまとめて与え、繁忙期に連続出勤してもらうパターンが考えられます。
このような事業所の場合は、月単位や年単位で休日と出勤日を調整します。1年単位の変形労働時間制の場合は、法定労働時間(1日8時間、1週40時間以下)を超え、1日の労働時間が10時間まで、1週52時間までは時間外労働になりません。
例えば、1日の所定労働時間を7時間30分とした場合、特定の労働日の労働時間が8時間を超えていても割増賃金を支払うことなく、働いてもらうことができます。また、1日の所定労働時間が7時間30分の場合、必要な年間休日日数は87日であり、105日を下回ります。
年間休日の取得方法を最終的に帳尻が合うように調整する方法です。
ただし、この制度を導入するには、所定の事項について労使協定を締結する必要があります。厚生労働省によると、変形労働時間制は一定の期間を平均して1週間の労働時間が法定労働時間を超えない範囲であれば違法にならないとのことです。ただし、会社や事業所は変形労働時間制について労使協定もしくは就業規則で定める必要があります。
※参考:「労働時間・休日」厚生労働省
法定労働時間と法定休日が規定内の年間労働時間は、260日(365日-年間休日105日)×8時間=2,080時間です。繁忙期と閑散期を利用した働き方は、最終的に年間2,080時間内に収まれば法定時間内に収まると判断できます。例をあげると、1か月間週休4日制で働いた場合、次の2か月間を週休1日制で働くことで年間の労働時間は保てるでしょう。
そもそも所定労働時間が短い場合労働時間が短い場合
1日の所定労働時間が8時間未満の場合は、最低限必要な年間休日数は、105日より少なくなります。前述のように1日の所定労働時間が7時間30分の場合、最低限必要な年間休日日数は87日です。ただし、変形労働時間制をとっていなければ、8時間を超えて勤務させることはできません。
年間休日の最低ラインとなる105日は、下回ってもよいパターンがあります。年間休日数が105日に満たなくても1日の労働時間を短くして総労働時間を合わせる方法です。
労働基準法35条で定められた法定休日の条件は、「週1日の休日または4週4日の休日」となっています。つまり、年間52日(毎週1日)の休日だとしても1週間の労働時間が法定労働時間の40時間以内で収まれば法律に違反せずに済みます。
仮に、1日の労働時間が6.5時間に短くした場合、週1日休みだとしても6.5時間×6日=39時間と法定労働時間以内に収まるでしょう。労働基準法が定める1日8時間および週40時間の法定労働時間をクリアできるため、年間休日が52日だとしても法律に抵触しません。
つまり、年間休日を52日まで減らすには1日の労働時間を1.5時間削減できれば実現できます。
年間休日の最低ラインを下回った場合の罰則
年間休日の最低ラインを下回った場合は、変形労働時間制や法定労働時間を下回る所定労働時間となっていなければ、罰則の適用を受ける可能性があります。先ほど紹介した労働時間の短縮や変形労働制などがなければ罰則の対象になるかもしれません。会社や事業所は、変形労働時間制や労働時間の短縮などを取り入れても休みまで調整するための休日を与えなかった場合などが考えられます。
人手不足の状態が続き、与えたくても休日を与えられないケースもあるでしょう。時間外労働になるような場合は、時間外労働のための労使協定である36協定を締結し、労働基準監督署に届出る必要があります。結果的に労働時間と休日が法定外に増えてしまった場合は、36協定の締結・届出が必要になります。
労働基準法では、時間外労働(休日労働)の上限規制の違反に対して罰則を受けます。変形労働制の申請をしつつ、人手不足を理由に週休1日の状態が数か月続いた場合は、休日労働に該当するでしょう。もし労使合意のないまま休日労働の合計が月45時間以上と判断された場合は、罰則につながるかもしれません。
罰則の場合は、6か月以下の懲役または30万円以下の罰金が科せられます。年間休日の最低ラインを下回る可能性があれば、注意が必要です。
※参考:「時間外労働の上限規制 わかりやすい解説」厚生労働省
年間休日の平均日数が多い業種別ランキング
年間休日は、業種や社員数規模によっても取得数が異なります。ここでは、政府統計調査による令和5年の就労労働調査の結果から、年間休日数の多い業種ランキングを紹介します。
年間休日の平均日数が多い業種別ランキング(令和5年就労労働調査参照) | |
---|---|
業種 | 年間休日数:1企業平均年間休日総数(日) |
情報通信業 | 121.6 |
金融業、保険業 | 121.5 |
製造業(1,000人以上) | 121.2 |
学術研究、専門、技術サービス業 | 119.7 |
製造業(100~999人、300~999人) | 119.2 |
電気・ガス・熱供給・水道業 | 119 |
製造業(機械関連) | 116.7 |
卸売業,小売業(各種商品卸売業、繊維・衣服等卸売業、飲食料品卸売業、建築材料,鉱物・金属材料等卸売業、機械器具卸売業、その他の卸売業) | 115.9 |
製造業(100~999人) | 115 |
製造業(素材関連) | 114.8 |
複合サービス事業 | 114.4 |
製造業(100~999人、100~299人) | 113.7 |
製造業 | 113.3 |
不動産業,物品賃貸業 | 113 |
医療,福祉 | 112.8 |
製造業(30~99人) | 112.3 |
サービス業 | 112.1 |
教育、学習支援業 | 111.9 |
卸売業,小売業 | 109.1 |
建設業 | 108.3 |
製造業(消費関連) | 107.7 |
鉱業,採石業,砂利採取業 | 106.5 |
運輸業,郵便業 | 105.4 |
生活関連サービス業,娯楽業 | 105.3 |
卸売業、小売業(各種商品小売業、織物・衣服・身の回りの品小売業、飲食料品小売業、機械器具小売業、その他の小売業、無店舗小売業) | 103.4 |
宿泊業,飲食サービス業 | 97.5 |
※参照:「令和5年就労労働調査|第10表 産業・企業規模、年間休日総数階級別適用労働者割合及び労働者1企業平均年間休日総数」|e-Stat(記載データを参照のうえ作成)
年間休日の平均日数は、業種別で比較すると情報通信や金融業などのインドア系の業種が年間平均120日以上の休日を取得している状況です。製造業に関しては、規模が小さい企業ほど年間平均休日が少なくなります。
また、年間休日が105日以下の業種は、小売業や宿泊業、飲食業などです。平均年間休日で97. 5日という日数になるため、週1日以上の休日取得が難しい状況かもしれません。
年間休日の決め方や日数の例
年間休日は、会社や事業所ごとに決め方が異なります。また、従業員の人数や業種の特性によっても休日の割り当てが変わるでしょう。例えば、店舗や会社全体が休日になる場合や、カレンダー上の祝日の扱いなどです。
年間休日の決め方は、日々の業務の都合も考えられるため、まずは労働基準法に抵触しない最低ラインの休日となる105日を基準にして考えましょう。
年間休日105日
年間休日105日は、労働基準法で定める労働時間や休日として最低ラインの日数となります。週の法定労働時間となる40時間・週休2日制で年間休日を組める点が特徴です。
ただし、祝日を休日に設定した場合などの調整は難しいことが考えられます。また、5週ある月の場合は、105日以内に収めるため週1回の休日になる場合もあるでしょう。
業種 | 年間休日数が100日~109日の企業の比率(%) |
---|---|
卸売業、小売業(各種商品小売業、織物・衣服・身の回りの品小売業、飲食料品小売業、機械器具小売業、その他の小売業、無店舗小売業) | 50.1 |
宿泊業,飲食サービス業 | 49.2 |
製造業(消費関連) | 44.5 |
生活関連サービス業,娯楽業 | 36.7 |
運輸業,郵便業 | 36.3 |
※参照:「令和5年就労労働調査|第10表 産業・企業規模、年間休日総数階級別適用労働者割合及び労働者1企業平均年間休日総数」|e-Stat(記載データを参照のうえ作成)
政府統計による令和5年就労労働調査では、年間休日数を100日~109日に設定している企業の割合です。小売業の50%以上が年間休日を100~109日に設定しています。
年間休日110日
年間休日110日で設定する場合は、週休2日制に加えて、年末年始休暇として5日間ほど長期休暇が設定できます。完全な週休2日制だけではなく、年末年始休暇を夏季休暇に割り当てることも可能です。
業種 | 年間休日数が110日~119日の企業の比率(%) |
---|---|
製造業(素材関連) | 36.2 |
製造業(100~999人、100~299人) | 32.8 |
製造業(機械関連) | 31.2 |
製造業(30~99人) | 30.2 |
製造業(100~999人) | 30.2 |
※参照:「令和5年就労労働調査|第10表 産業・企業規模、年間休日総数階級別適用労働者割合及び労働者1企業平均年間休日総数」|e-Stat(記載データを参照のうえ作成)
年間休日を110~119日で設定している業種は、製造業が占めています。製造業の場合は、休日を固定してまとまった休暇は、年2回の年末年始や夏季休暇で設定することも考えられます。日数が不足する場合は、隔週土曜日出勤などを導入して年2回の長期休暇に割り当てることも可能です。
年間休日120日
年間休日を120日に設定している企業の場合は、ほぼカレンダー上の祝日も休日に設定できるため、土日と祝日の並びによっては、大型連休になる可能性があります。完全週休2日制だけではなく、祝日を休みにする代わりに夏季休暇と年末年始休暇を設定できます。
年間休日125日
年間休日125日の場合は、土日祝日だけではなく、ゴールデンウィークも休みにできます。年末年始休暇なども長期間設定することも可能です。
業種 | 年間休日数が120日~129日の企業の比率(%) |
---|---|
金融業、保険業 | 88 |
情報通信業 | 85 |
製造業(1,000人以上) | 81.1 |
学術研究、専門、技術サービス業 | 73.2 |
電気・ガス・熱供給・水道業 | 67.5 |
※参照:「令和5年就労労働調査|第10表 産業・企業規模、年間休日総数階級別適用労働者割合及び労働者1企業平均年間休日総数」|e-Stat(記載データを参照のうえ作成)
年間休日が120~129日の企業は、金融業や保険業が80%以上を占めています。祝日などの影響で飛び石出勤だとしても業務に支障のない業種が導入している年間休日です。
年間休日に含まれる休暇・含まれない休暇
年間休日に夏季休暇が含まれる場合は、育児休暇や介護休暇などは含まれるのでしょうか。本項では、一般的な視点で年間休日に含まれる休暇と含まれない休暇について解説します。年間休日に含まれる休暇と含まれない休暇は、次のように分類できます。
年間休日に含まれる休暇 | 年間休日に含まれない休暇 |
---|---|
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|
年間休日に含まれる休日は、会社が決定した社員全員が同じ扱いで休みとなる休日です。年間休日が120日前後ある会社の場合は、祝日も年間休日になる場合もあります。ただし、祝日が土曜日や日曜日、夏季休暇などと重なった場合は、振り替え休日を休みにするかを判断することは会社や事業所次第です。
また、年間休日に含まれない休暇は、自分で申請しなければ活用できない休暇が該当します。
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年間休日の多い、少ない場合のメリットデメリット
年間休日は、多いほうが得で少ないほうが損した気持ちになるのでしょうか。年間休日の日数が多い場合と少ない場合は、どちらにもメリットやデメリットが考えられます。
年間休日が多い場合
年間休日が多い場合は、転職を考えている求職者への訴求ポイントとなる点がメリットです。また、既存の従業員にとっても休日が多いためプライベートの充実により満足度が向上する可能性があります。休日が多ければ、従業員のメンタル面や健康面も無理が生じず良好な状態が期待できるでしょう。
一方、年間休日が多いために考えられるデメリットは、業務のパフォーマンスが維持できない状態が考えられます。年間休日120~125日の企業は祝日なども休日扱いになれば、飛び石出勤になるでしょう。従業員の満足度が上がる反面、業務稼働時間が確保できず製品やサービスの品質低下を招くかもしれません。
年間休日が少ない場合
年間休日が少ない場合は、従業員が業務に取り組んでいる時間も長く確保できます。そのため、従業員の業務能力向上が期待できるでしょう。従業員の業務能力が高まれば、会社の売上にも貢献するでしょう。
一方、年間休日の少ない職場は、休日の少なさから職場の雰囲気は悪くなり転職を考える人も増える可能性があります。求職者にとっても年間休日の少ない会社は敬遠されるかもしれません。離職者が出たうえ、人手不足の状態が続くと残された従業員の休日も取れない悪循環も考えられます。
年間休日120日以上の求人はホワイトか?
年間休日は、多いほうが健全な職場環境を保てると考えた場合とした場合、年間休日120日以上の求人はホワイトな職場を期待できるのでしょうか。
年間休日が多ければ、土日祝日が休日となり年末年始休暇など長期休暇も期待できます。とは言え、年間休日が120日あったとしても、ホワイト企業とは言い切れません。年間休日数以外にもホワイト企業かどうかの見極めとして、他の要素にも着目しましょう。
例えば、残業時間の実績です。募集内容に「残業時間月平均30時間」と記載されている場合、平均以上に毎日残業が発生する可能性もあります。場合によっては労使合意もなく月45時間以上の残業も発生するかもしれません。そのため、年間休日120日の会社でも日々の業務で当然のように残業している会社は検討したほうがよいでしょう。
年間休日と業務内容のバランスの取れた職場環境を整えよう
年間休日の最低ラインは、労働基準法に触れない法定労働時間で収められる105日が目安になります。年間休日が105日あれば、ほぼ週休2日制の就業環境を目指せるでしょう。
ただし、年間休日が105日の場合は、夏季や年末年始休暇などの長期休暇まで休日を割り当てられません。そのため、年間休日の理想を追い求めて土日祝日休みにすると、120日以上の休日になるでしょう。
業種にもよりますが、年間休日が120日以上の会社は、業務の進捗状況に影響をおよぼす可能性があります。無理な休日を増やして毎日残業を強いられるようになれば、職場環境も悪化するでしょう。年間休日を決める際は、業務内容とのバランスを意識して設定することが必要です。
※ 掲載している情報は記事更新時点のものです。
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