• 作成日 : 2022年2月16日

年末調整において前職分の源泉徴収票が必要なときはどうする?

会社員の方は毎年、勤務先から源泉徴収票を受け取っていると思います。一般的には、さほど重要な書類とは意識していないかもしれません。しかし、マンションの賃貸契約、金融機関への融資の申込み、保育園の入園の申請などの際には、収入を証明するものとして大切な書類になります。また、転職した際にも前の勤務先の源泉徴収票の提出が必要です。今回は、年末調整と源泉徴収票の関係、紛失したときの対処法について解説していきます。

年末調整において前職分の源泉徴収票がなぜ必要なのか?

源泉徴収票とは、給与支払者が1年間にいくら給与を支払い、税金をいくら源泉徴収して納税したのかを記載した書類のことです。給与金額と納税額だけでなく、配偶者控除扶養控除、生命保険等の控除の金額も記載事項となっています。

年末調整では、手続き自体は給与支払者である勤務先が行い、一連の年末調整に関わる計算が完了した際に報告書として源泉徴収票を作成します。そして、所得税については税務署、住民税については市区町村に提出し、従業員にも発行することになっています。

つまり、源泉徴収票は年末調整では不可欠な書類ということになります。

また、従業員が年の途中で退職した場合には、その従業員についての年末調整は退職前の勤務先では行いません。元の勤務先は、1月1日から退職時までの給与金額と納税額等について年末調整前の概算支払いをした金額が記載された源泉徴収票を発行することが義務づけられています所得税法226条)。

本人が年末の時点で転職していなければ、翌年、発行された源泉徴収票を用いて自分自身で確定申告することになります。

年末の時点で転職している場合は、基本的に採用した会社に年末調整する義務があります。会社は転勤後の源泉徴収票だけでなく、前の勤務先の給与金額と納税額を合算して年末調整をしなければなりません。

こうしたことから、転職した場合には、源泉徴収票の提出を求められることになるわけです。年末調整は、その年1年間について実施するものですから、前年に退職し、無職の状態で年が変わって転職する場合には、源泉徴収票を提出する必要はありません。

前職分の源泉徴収票を紛失したときの対処法

源泉徴収票は、一般的にさほど重要な書類と認識されていないことに加え、書類のサイズも大きくありません。マイナンバーの導入に伴い、平成28年分以降、従来のA6サイズからA5サイズに変更されたものの、15cm×20cm程度の書類です。

そのため紛失してしまう人もいます。こうした場合、どのように対処すればよいのでしょうか。

紛失した場合は前職の会社へ再発行を求める

源泉徴収票を紛失した場合、まずは前の勤務先に再発行を依頼するということになります。法的には、勤務先には源泉徴収票の発行が義務づけられていますが、すでに発行済みということで義務を果たしたと解釈することも可能です。

一般的には、よほどのことがなければ、再発行してもらえるはずです。ただし、担当者に負担をかけることは間違いありませんので、紛失を謝罪したうえ、事情を話して丁寧に依頼することが大切です。

再発行を受け入れてくれない場合は税務署に相談する

依頼しても前職の会社が源泉徴収票を再発行してくれないことも考えられます。

こうした場合は、税務署に相談しましょう。前職で発行された給与明細等を添付して「源泉徴収票不交付の届出書」を提出すれば、前職の会社に対して税務署が行政指導し、源泉徴収票の再発行に応じてくれるでしょう。

なお、前職の会社が倒産しているケースがあるかもしれません。この場合は、破産管財人に依頼すれば再発行してくれます。

転職した時期が年末のため、転職先での年末調整が間に合わない場合は?

所得税法で退職後1か月以内に源泉徴収票の交付をすることが義務づけられていますが、退職時期によっては源泉徴収票の発行が年末調整に間に合わないこともあります。

一般的には、年末調整は、本年最後に給与の支払いをするときに実施されます。ではどのような場合に転職先での年末調整が間に合わないのか、具体的には次のようなケースが想定できます。

1.11月以降退職、転職した場合

11月以降に前の会社を退職し、12月中旬に転職する場合、前職の会社で源泉徴収票の発行が少し遅れただけでも12月末の年末調整に間に合わない可能性もあります。

退職には諸般の事情があるとは思いますが、年末調整の観点からは、できるだけ年末に近い時期の転職は避けたほうがよいでしょう。

2.11月以前に退職、ブランクがあって年末に転職した場合

退職時期が11月以前で源泉徴収票が11月に発行されていたとしても、すぐに就職活動せずに骨休めするケースもあります。

その後、年末に転職が決まっても、転職先との合意で正式な採用を年明けにするということも考えられます。

当然のことですが、年末調整をしてもらうには、手続きの期間中に在籍していることが必要です。上記の場合、年末調整は転職先ではやってもらえません。

3.12月に転職、給与の支払いがない場合

給与には、締切日と支払日があります。当月締切、翌月払いとなっている場合は12月に給与の支払いがないこともあります。

年内に給与の支払いがないのであれば、年末調整の対象とはなりません。

以上のように転職先での年末調整が間に合わない場合、前職の会社で源泉徴収された税金の還付を受けるには、自分で確定申告をする必要があります。

前職分の源泉徴収票は大切に保管しておこう

転職した年の年末調整では、前職の会社の源泉徴収票が必要であることについて解説してきました。退職時に発行されているはずですが、大切な書類だと認識していないかもしれません。しかしながら、紛失したときには面倒なやりとりや煩雑な手続きが不可欠となります。退職しても、前職の源泉徴収票はきちんと保管しておきましょう。

よくある質問

転職したときの年末調整において前職分の源泉徴収票がなぜ必要なのですか?

転職先での年末調整で必要になるからです。詳しくはこちらをご覧ください。

前職分の源泉徴収票を紛失したときはどうすればよいですか?

前職の勤務先に再発行の依頼をするのが基本です。対応してもらえない場合は、税務署に相談しましょう。 詳しくはこちらをご覧ください。


※ 掲載している情報は記事更新時点のものです。

執筆:坪 義生(社会保険労務士)

じんじ労務経営研究所代表(社会保険労務士登録)、労働保険事務組合 鎌ヶ谷経営労務管理協会会長、清和大学法学部非常勤講師、「月刊人事マネジメント」(㈱ビジネスパブリッシング)取材記者。社会保険診療報酬支払基金、衆議院議員秘書、㈱矢野経済研究所、等を経て、91年、じんじ労務経営研究所を開設。同年より、企業のトップ・人事担当者を中心に人事制度を取材・執筆するほか、中小企業の労働社会保険業務、自治体管理職研修の講師など広範に活動。著書に『社会保険・労働保険の実務 疑問解決マニュアル』(三修社)、『管理者のための労務管理のしくみと実務マニュアル』(三修社)、『リーダー部課長のための最新ビジネス法律常識ハンドブック』(日本実業出版社、共著)などがある。

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