• 作成日 : 2022年5月13日

自営業や個人事業主の年末調整|従業員がいる場合は必要!

年末調整」は、毎年年末に行われる所得税の過不足を調整するための手続きです。毎月給与から天引きされる所得税は概算額に過ぎず、正しい税額ではありません。では、年度末に確定申告を行っている自営業者や個人事業主は年末調整は必要ないのでしょうか。この記事では、自営業や個人事業主の方の年末調整についてご紹介します。

自営業や個人事業主は年末調整は必要?

自営業や個人事業主は、毎年年度末に「確定申告」を行います。確定申告は、前年度の1月から12月の所得を税務署に申告し、所得を確定する手続きです。確定した所得から所得税が算出され、一括または分割で納税することになります。冒頭でご紹介した通り、会社員の方は企業が概算で給与から天引きして所得税を納税するため、多くの場合は確定申告を行う必要はありません。実際の税額との過不足分は「年末調整」で清算されます。では、確定申告を行う自営業や個人事業主は年末調整の必要はないのでしょうか。自営業や個人事業主の場合、確定申告によって所得税が確定するため、基本的には年末調整は必要ありません。しかし、本業とは別に副業による収入があったり、従業員を雇用している場合は年末調整が必要です。この章では、年末調整の概要をご紹介します。

そもそも年末調整とは

年末調整とは、概算で源泉徴収されている所得税と、実際の税額との差額を清算する手続きです。対象は企業に勤めている給与所得者で、年度末時点で雇用されている、年間所得が2,000万円未満の全従業員が行わなければなりません。年度の途中で算出・源泉徴収される所得税は、各種控除や大幅な所得の増減を加味していないため、あくまで仮の税額となります。そのため、この税額を年度末に調整し、清算するのです。年末調整を経て、徴収した税額が多ければ還付し、少なければ1月から12月の給与から差し引かれます。年間所得が2,000万円を超える従業員や自営業、個人事業主は、年末調整ではなく年度末に確定申告を行う必要があります。年末調整については下記の記事で詳しくご紹介しています。確定申告との違いも解説しているので、あわせてご確認ください。

自営業で年末調整が必要になる場合

自営業の方は年度末の確定申告によって所得が確定し、所得税額が決定されるため、基本的には年末調整が必要ありません。一方、従業員やアルバイト、青色事業専従者に給与を支払っている場合は、自営業者本人ではなく雇用者に対して年末調整を行う必要があります。また、自営業者本人においても、本業以外に副業による収入がある場合は年末調整が必要です。年末調整は法律で定められた雇用主の義務となっているため、年末調整を故意に行わなかった場合、所得税法に基づき罰則が課せられます。これらに該当する自営業者は必ず年末調整を行いましょう。また、従業員やアルバイトを雇用している場合は、期日に遅れてしまうと雇用者自身で確定申告を行う必要があるため、必ず期日内に必要書類等を提出するよう求めましょう。

従業員やアルバイトを雇っている場合

自営業者で従業員やアルバイトを雇っている場合は、雇用者の年末調整を行う必要があります。青色事業専従者に給与を支払っている個人事業主も、同様に年末調整が必要です。青色事業専従者とは、青色確定申告を行っている個人事業主が雇用する、生計を共にする配偶者・親族のことを指します。青色事業専従者への給与は、一定要件のもと必要経費として認められます。この青色事業専従者についても、通常の従業員同様年末調整の対象です。従業員やアルバイト、青色事業専従者に対する年末調整は義務であるため、必ず実施するようにしましょう。遅れてしまうと、雇用者自身で複雑な計算を行い、確定申告を行う必要があります。スケジュールに遅れないよう早めにアナウンスしましょう。

副業の給与がある場合

自営業や個人事業主の場合、所得税を自ら計算し申告・納税するため、基本的に年末調整は必要ありません。自営業や個人事業主は年末調整の代わりに確定申告を行いますが、本業以外の副業で給与を得ている場合は給与所得者と見なされ、年末調整の対象となります。本業の事業所得が20万円以下の場合、確定申告は不要で、給与所得を得ている企業による年末調整のみが必要です。

一方、事業所得が20万円を超える場合は、所属企業による年末調整を受けた上で確定申告を行う必要があります。企業からもらえる源泉徴収票は翌年の確定申告で必要になるため、紛失しないように大切に保管しましょう。また、年末調整を行える企業は1人1社であるため、複数企業から給与所得を得ている場合は、最も給与が高い企業で年末調整を受けるのが一般的です。

自営業者が年末調整を行う時期

自営業者や個人事業主が年末調整を行う、大まかな日程は以下の通りです。

  • 11月初旬:従業員に各種証明書類の準備を依頼
  • 11月下旬:従業員に各種申請書の記載を依頼
  • 12月下旬:証明書・申請書を回収し所得税を計算
  • 翌1月10日:税務署への所得税の納税
  • 翌1月下旬:従業員への源泉徴収票の交付

11月上旬、従業員に対して、年末調整に必要となる各種証明書類の準備を依頼します。
続いて、11月末までに税務署から各種申告書を取り寄せ、従業員に記載を依頼します。証明書・申請書が回収できたら、12月下旬を目途に所得税を算出しましょう。翌年1月10日に税務署に所得税を納税し、1月末までに従業員に源泉徴収票を交付します。年末調整には様々な証明書・申請書が必要となるため、早めに従業員にアナウンスし、余裕をもって進めるようにしましょう。

自営業者が年末調整を行う際に必要な書類

自営業者や個人事業主が年末調整を行うために必要な書類は、各種証明書類と申請書に大別されます。それぞれご紹介します。

証明書

申請書

  • 給与所得者の扶養控除等申告書
  • 給与所得者の保険料控除申告書
  • 給与所得者の配偶者控除等申告書
  • 給与所得者の住宅借入金等特別控除申告書

証明書類は控除を受ける際に必要となる書類です。従業員の自宅に届いたり、従業員自らが取得したりする必要があるため、早めにアナウンスしましょう。申請書は雇用主が税務署から取り寄せ、従業員に記載してもらう必要がある書類です。

自営業者の年末調整の仕方

年末調整の方法は2通りあります。従来からの紙ベースでの申請と、近年推奨されている電子申請です。前章でご紹介した通り、年末調整には様々な書類が必要であるため、雇用主・従業員共に手間のかかる手続きです。電子化することで紙媒体のやり取りがなくなるため、簡素化・効率化が図れます。なお、年末調整の電子申請は、以前は税務署への申請・承認が必要でしたが、2021年から不要となりました。電子申請の流れは以下の通りです。

  1. 従業員が、保険会社やマイナポータルから証明書の電子データを取得する
  2. 従業員が、国税庁からダウンロードできる年末調整控除申告書作成用ソフトウェア(年調ソフト)に証明書をインポートし申請書を作成する
  3. 従業員が、証明書と申請書の電子データを雇用主に提供する
  4. 雇用主は、提供された電子データを給与システム等にインポートして年税額を計算する

電子申請は雇用主・従業員の双方にメリットがありますが、給与システムの改修が必要な場合もあるため注意しましょう。

参考:[年末調整手続の電子化の概要・メリット]|国税庁

自営業や個人事業主の方も従業員を雇う場合は、年末調整に関して正しく把握しておきましょう!

自営業者や個人事業主に、年末調整は基本的に必要ありません。しかし、従業員やアルバイトを雇っている場合は雇用者に対して年末調整を行う必要があります。また、本業以外に副業による給与所得がある場合、自営業者・個人事業主自身も年末調整の対象です。年末調整は法律で定められた雇用主の義務であるため、必ず行いましょう。特に年末調整では様々な書類が必要になるため、早めの行動が大切です。年末調整に関する正しい知識を身に付け、間違いのない申請を心がけましょう。

よくある質問

年末調整とはなんですか?

毎月給与から源泉徴収される所得税と、実際の税額との差額を清算する手続きです。詳しくはこちらをご覧ください。

自営業や個人事業主も年末調整は必要ですか?

基本的には必要ありませんが、従業員を雇用している場合や副業による給与所得がある場合は年末調整を行う必要があります。詳しくはこちらをご覧ください。


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