• 更新日 : 2022年11月15日

年末調整で医療費控除はできる?

年末調整で医療費控除はできる?

年末調整は、1年間の所得に応じた所得税を確定し、月々の給与から天引きされていた源泉所得税と確定した所得税を清算する手続きです。所得控除の額が多ければ、支払った税金が還付されることもあります。しかし、所得控除の一つである医療費控除は、年末調整の対象外です。ここでは、医療費控除の基礎と、確定申告の方法について解説します。

医療費控除とは?

医療費控除とは、1月1日から12月31日までの間、原則として10万円以上の医療費を支払った際に受けられる控除をいいます。対象となる医療費は、自己のものだけでなく、配偶者や子どもなど生計を共にする家族や親族の分を含めることが可能です。

医療費控除では、支払った医療費をもとに算出した金額を、その年の所得額から差し引きます。これにより、会社員の場合はすでに支払った所得税の還付を受けることが可能になるのです。会社員だけではなく、個人事業主など確定申告義務がある人も、確定申告の際に医療費控除を申告すれば、節税につながります。

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年末調整で医療費控除は受けられない

医療費控除のように、所得税に反映される所得控除は15種類あります。

参考:確定申告の所得控除とは?医療費控除をはじめ控除金額や要件を一覧で紹介

会社勤めの場合、多くの所得控除は年末調整で反映されます。しかし、医療費控除を含む以下の控除は、確定申告で申告します。

【確定申告のみで受けられる所得控除】

  1. 医療費控除
  2. 寄付金控除
  3. 雑損控除
  4. (初年度のみ)住宅借入金等特別控除

会社員の場合、12月の年末調整でその年の所得税が確定しますが、その金額には上記の所得控除が含まれていません。そのため、医療費を多く支払った、寄付をたくさんしたなど、条件に合致する場合には、年末調整後に確定申告を自分で行いましょう。

確定申告で控除できる医療費とは

医療費控除の対象となるのは、診療や治療の対価として支払ったものや、通院費や入院中の食事費用なども含まれます。一方、美容目的の歯列矯正やインフルエンザの予防接種など、医療費控除の対象から除外されているものもあります。

医療費の範囲となるもの

  1. 診療又は治療の対価
  2. 治療又は療養に必要な医薬品の購入費
  3. 通院費、入院中の食事の費用
  4. 松葉杖、義歯を購入した費用
  5. 重大な疾患が見つかり、治療の起因となった健康診断費用
  6. 道整復師等により施術の対価
  7. 保健師等による療養上の世話代(親族の場合は認められない)
  8. 出産費用、助産師による分娩の介助代

※これらは、診療又は治療のために直接必要であるかどうかで判断します。

医療費に含まれないもの

  1. 医師・看護師に対する謝礼金
  2. 未払い医療費
  3. 美容整形費用:インプラントなどのほか、歯列矯正にかかった費用については、咀嚼(そしゃく)障害を治療するためであると認められれば医療費控除の対象となります。
  4. 一方、美容目的となれば対象外です。

  5. 疾病予防費用:インフルエンザなどの予防接種などは対象外です。
  6. 健康増進費用:かかりつけの医師に処方してもらったとしても、サプリメントなどの費用は対象外です。

セルフメディケーション税制とは

医療費控除の特例に、セルフメディケーション税制があります。セルフメディケーション税制とは、健康の維持増進や疾病への予防取り組みをした場合に、個人がセルフメディケーション税制の対象となるスイッチOTC(※)医薬品を購入した費用について所得控除が受けられる制度です。

※要指導医薬品及び一般用医薬品のうち、医療用から転用された医薬品
引用:セルフメディケーション税制(医療費控除の特例)について|厚生労働省

セルフメディケーション税制の対象となるのは、本人または生計を共にする家族や親族のために支払った、対象医薬品に対する購入費です。購入費の合計額の12,000円を超える部分が、88,000円を限度に控除の対象となります。

健康の維持増進や疾病の予防取り組みとは

セルフメディケーション税制の前提として、「健康の維持増進や疾病の予防取り組み」をしていることがあげられています。この取り組みに当てはまるのは、以下のような人間ドッグや予防接種などです。

  1. 保険者(健康保険組合等)が実施する健康診査【人間ドック、各種健(検)診等】
  2. 市区町村が健康増進事業として行う健康診査
  3. 予防接種【定期接種、インフルエンザワクチンの予防接種】
  4. 勤務先で実施する定期健康診断【事業主検診】
  5. 特定健康診査(いわゆるメタボ検診)、特定保健指導
  6. 市区町村が健康増進事業として実施するがん検診

引用:セルフメディケーション税制の概要・手続きなど|国税庁

なお、人間ドックにかかった費用やインフルエンザの予防接種の費用など、この健康の維持増進や疾病の予防取り組みのために支払った費用自体は、控除の対象にならないことを覚えておきましょう。

セルフメディケーション税制の対象医薬品とは

セルフメディケーション税制の対象となる医薬品は、厚生労働所のウェブサイトにて「セルフメディケーション税制対象品目一覧」が公開されています。

参考:セルフメディケーション税制(特定の医薬品購入額の所得控除制度)について|厚生労働省

セルフメディケーション税制の注意点

セルフメディケーション税制で控除を受けるにあたっては、対象医薬品を購入した際のレシートが必要です。また、健康の維持増進等に当てはまる一定の取り組みを行った際の、領収書や健康診断結果や予防接種の領収書なども保存しておく必要があります。

セルフメディケーション税制と医療費控除は、いずれか一方の選択となるため、セルフメディケーション税制を利用する場合は医療費控除が受けられない点に注意しましょう。

医療費控除の金額の計算

医療費控除の控除額は、以下の図のようにあらわすことができます。
医療費控除の金額の計算
具体的な計算式は以下の通りです。
所得が200万円以上の場合

(医療費の額-保険で支給された額等)-10万円 ※上限200万円

所得が200万円未満の場合

(医療費の額-保険で支給された額等)-所得金額×5%

支給された保険金の額は、その支給の目的となった医療費を限度として差し引きます。そのため、例えば10万円を引ききれない場合であっても、他の医療費からは差し引きできません。

医療費控除の対象となる期間と期限

まず、医療費控除の対象となる期間は、確定申告を行う前年の1月1日から12月31日までの1年間です。この期間内での医療費を1年間の医療費として、医療費控除の計算を行います。
また、過去5年以内に1年間で10万円をこえる医療費を支払っていた年がある場合、遡って還付申告することが可能です。
医療費控除の申告は確定申告で行います。そのため、確定申告の期限と同じく、原則として2月16日から3月15日までとなります。

医療費控除を受ける際には要注意

平成29年以降、医療費控除は医療費の領収書の添付が不要となりました。代わりに、医療費控除の明細書の提出と、領収書の自宅での5年間の保存が必要です。
確定申告で医療費控除の計算のため使用した領収書は、捨てずに大切に保管しましょう。
また、加入している医療保険の保険者や健康保険組合などから医療費通知の交付を受けている人は、この通知書を添付書類として利用することができます。
なお、医療費通知とは、医療保険者が発行する次の事項が記載された書類をいいます。

  1. 被保険者氏名
  2. 療養を受けた年月
  3. 療養を受けた者
  4. 療養を受けた医療機関、薬局等の名称
  5. 被保険者等が支払った医療費の額
  6. 保険者等の名称

参考
医療費控除の明細書|国税庁
健康保険組合から送られてきた医療費のお知らせ|国税庁

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確定申告書・医療費明細の記載方法

会社員が医療費控除を受けるためには、原則として「確定申告書A」で申告します。国税庁のホームページからダウンロードするか、直接税務署から入手してください。
会社から受け取る源泉徴収票をもとに、指定の箇所に記載していきます。医療費の明細書は、所定の欄を書面に沿って記入することで医療費控除の金額が計算できるフォーマットになっています。
医療費の明細書には、まず人ごと・医院ごとの金額の合計を記載します。その後、支払った医療費の合計額、保険金などで補填される金額などを書面に沿って計算し、控除される金額を確定申告書Aの医療費控除の欄に転記します。

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医療費控除の対象となる場合は確定申告を

医療費控除は年末調整では受けられません。そのため、通常年末調整で所得税の還付等を受けている会社員の場合、医療費控除を受けるには確定申告を行う必要があります。
医療費控除は、通院の交通費なども対象となります。また、本人だけではなく、配偶者や生計を共にする親族の医療費も含めることが可能です。医療費控除は、節税につながる所得控除の一種です。医療費を多く支払った年は、領収書や通院の記録を残すとともに、医療費控除の対象となるか確認してみるといいでしょう。

よくある質問

医療費控除とはなんですか?

1年間で一定額以上の医療費を支払った場合受けられる所得控除です。対象となる医療費には、診察費のほか通院のためのバス・電車等の交通費も含まれます。自己および生計を共にする家族・親族の医療費が対象です。詳しくはこちらをご覧ください。

年末調整で医療費控除をうけることができますか?

年末調整で受けられる所得控除には、医療費控除は含まれません。そのため、年末調整を受ける会社員の場合、年末調整後、翌年の2月から3月の確定申告で医療費控除を申告する必要があります。詳しくはこちらをご覧ください。


※ 掲載している情報は記事更新時点のものです。

監修:加治 直樹(経営労務コンサルタント)

銀行に20年以上勤務し、融資融資から資産運用、年金相談まで幅広く相談業務の経験あり。中小企業の決算書の財務内容のアドバイス、資金調達における銀行対応までできるコンサルタント。退職後、かじ社会保険労務士事務所として独立。現在は行政で企業及び労働者の労働相談業務を行いながら、セミナー講師など幅広く活動中。

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