- 更新日 : 2021年12月21日
パートの有給休暇の取得条件とその申請方法とは?
有給休暇というのは労働者の休養を目的とした制度で、日本の企業でも労働者の権利として重要視されてきた傾向があります。しかし、その有給休暇がパート・アルバイトでも取得できることは、一般的にあまり認知されていないことかもしれません。
そこで今回は、パート・アルバイトが有給休暇を取得できる条件や有給休暇の付与日数の計算方法などについて確認していきます。
パートでも有給休暇をもらえる条件とは?
多くの企業が部分的な労働力の不足を埋めるためにパート・アルバイトの労働力を利用していると思います。しかし、パート・アルバイトも雇用契約を結んでいる以上は有給休暇を付与することが「労働基準法」で定められているのです。
その有給休暇として与えられる日数については、労働時間や労働日数によって異なります。まずは、下記のいずれかの基準を満たしているパート・アルバイトは正社員と同様の基準で有給休暇が得られます。
(2)週所定労働日数が5日以上
(3)年間の所定労働日数が217日以上
例えば、週5日で8時間の労働時間を基準で考えたときに、合計の労働時間(40時間)の8割弱にあたる30時間を超えている場合か、あるいは1日の労働時間はそれほど長くなくても、1週間に5日以上出勤しているパート・アルバイトの方はこの基準を満たすことになります。
この基準を満たすパート・アルバイトの有給休暇の日数計算は以下のように行います。
(出典:労働基準法のあらまし|厚生労働省 東京労働局)
上記の表でも示されているように、採用日から6ヶ月で10日分の有給休暇を付与することになります。さらに、そこから1年後(採用日から1.5年)後に11日分の有給休暇を付与するというように、1年ごとにこの表に基づいた日数を従業員に付与していく形式です。
また、先ほどの条件(週所定労働時間が30時間以上または週所定労働日数が5日以上)に満たない短時間のパート・アルバイトの従業員でも、下記の表に基づいて有給休暇を付与します。
(出典:労働基準法のあらまし|厚生労働省 東京労働局)
上記の図が示すように、労働日数に応じて有給休暇の付与日が変動します。
例えば、週3日(年間で140日)出勤するパート・アルバイトの場合は、採用日から6ヶ月後に5日分、さらにその一年後に6日分の有給休暇を付与することになるのです。(パート・アルバイトから正社員に変更した時も、パート・アルバイトとして働いていた期間を勤続年数に加えます。)
この有給休暇日の賃金計算方法は、以下の3つの方法の中から計算されます。
・所定労働時間働いた場合における通常賃金
・健康保険法に基づく標準報酬日額
どの計算方法を用いるのかは、その企業の就業規則や労使協定の定めによります。
また、有給休暇に関しての注意点として、時効があるという点を押さえておく必要があります。有給休暇の付与日から2年間で使われなかった有給休暇は時効によって消滅することになります。したがって、有給休暇の日数管理も徹底して行うことが望ましいです。
有給休暇の申請方法とは?
有給休暇の付与日数については労働基準法によって定められていますが、有給休暇の取り方については法律などで規定されていません。したがって、有給休暇の申請方法はその企業によって異なります。
パート・アルバイトの方が有給休暇を取りやすいように採用時に有給の申請方法を伝えておくことや、申請用紙などを準備しておく方が良いです。
さらに、有給休暇の申請時期についてもあらかじめ伝えてもらえるような声かけも必要です。パート・アルバイトの場合は、翌月の出勤日を確認するケースが多いと思いますので、その際に有給休暇を取得する旨を伝えてもらえることが望ましいです。
従業員の有給休暇の申請時期は、企業の都合によって変更することは基本的には難しいです。パート・アルバイトであっても、職場の負担を配慮した時期に有給休暇をとってもらえるような労使間での関係性を築いておくことも必要になってきます。
また、正社員のケースと同様に有給休暇を請求するパート・アルバイトに対して不利益な扱いをしてはいけません。有給休暇を請求したパート・アルバイトに対して時給を下げるなどの行為は労働基準法で禁止されている事項です。
企業としては、パート・アルバイトの有給休暇についても当然のものだという認識を持ち、これからの仕事を頑張ってもらうためにしっかりとした休暇をとってもらうことに努めて下さい。
まとめ
最後に、今回の重要事項をまとめておきます。
・週所定労働時間が30時間以上または週所定労働日数が5日以上のパート・アルバイトの人は正社員と同様の基準で有給休暇の日数が付与されるが、これを満たさないパート・アルバイトは労働日数に応じて有給休暇の日数が決定する
・有給休暇には2年の時効がある
・パート・アルバイトの方が有給休暇を取りやすいように採用時に有給の申請方法を伝えておくことや、申請用紙などを準備しておく
・有給休暇の申請時期についてもあらかじめ伝えてもらえるような声かけや職場の負担を配慮した時期に有給休暇をとってもらえるような労使間での関係性を築いておくことも必要
・企業としては、有給休暇をとるパート・アルバイトに不利益な扱いをおこなってはならない
パート・アルバイトという時間を限定した従業員であっても、雇用契約を結んでいる以上は労働者として有給休暇を取得する権利は発生します。
重要なことはその有給休暇によって従業員に不満が生じたり、事業の運営がスムーズにいかないということが無いような環境作りをしていくことです。
関連記事
・コアタイムとフレキシブルタイムとは?フレックスタイム制の基本を解説
・健康診断の義務について事業主なら知っておきたいポイント
・配偶者控除は廃止される?されない?現在の議論を整理しよう
よくある質問
パートでも有給休暇はもらえる?
はい。雇用契約を結んでいる以上は有給休暇を付与することが「労働基準法」で定められています。詳しくはこちらをご覧ください。
有給休暇の申請方法とは?
有給休暇の取得方法は法律等で規定されていないため、企業によって異なります。詳しくはこちらをご覧ください。
※ 掲載している情報は記事更新時点のものです。
人事労務の知識をさらに深めるなら
※本サイトは、法律的またはその他のアドバイスの提供を目的としたものではありません。当社は本サイトの記載内容(テンプレートを含む)の正確性、妥当性の確保に努めておりますが、ご利用にあたっては、個別の事情を適宜専門家にご相談いただくなど、ご自身の判断でご利用ください。
関連記事
時間外労働の上限規制とは?働き方改革法施行後の変化を読み解く
そもそも時間外労働とは?残業時間との違い 時間外労働の上限規制について解説するうえで、ここではまず時間外労働がどういったものなのか考えていきましょう。 そもそも労働基準法第32条において、「法定労働時間(1日8時間、1週40時間)」が定めら…
詳しくみる高度プロフェッショナル制度で労働生産性は向上!?過労死・自殺の問題は?
高度プロフェッショナル制度とは何か?導入の目的は? 高度プロフェッショナル制度(ホワイトカラーエグゼンプション)は特に米国のホワイトカラーで広範に実施されている制度で、「時間外・休日労働の規制(いわゆる36協定の規制)」「時間外・休日・深夜…
詳しくみる裁量労働制における「みなし労働時間」とは?
裁量労働制における「みなし労働時間」の意味 裁量労働制とは、特定の業務に就労した労働者の労働時間について、実際の労働時間にかかわらず一定の労働時間働いたものとみなす制度です。働いたものとみなされる時間のことを「みなし労働時間」といいます。 …
詳しくみる自然災害発生!その時、労務管理上使用者が守るべきこと
自然災害と休業 近年、地震や局地的な豪雨といった自然災害が各地で発生しています。大規模な自然災害発生時には、被災地および被災地に関連する企業の企業活動や労務管理上も大きな影響が考えられます。 大規模自然災害発生時の労務管理としてまず考えなけ…
詳しくみる本当に「自由」?個人事業主・フリーランスの労務管理
そもそもフリーランスの定義は? 「フリーランス」とは、「特定の企業や団体、組織に専従しない独立した形態で、自身の専門知識やスキルを提供して対価を得る人」として定義され、これまではカメラマンやコンサルタント、小説家といった限られた職種の方がメ…
詳しくみるサマータイムとは?制度の意味やメリット・デメリット解説
サマータイムとは、時計の針を1時間進め、日中の活動時間を伸ばす制度をいいます。主にアメリカやヨーロッパ諸国、南半球の国で導入されています。 サマータイムの実施期間は国によって異なり、日本でも、近年サマータイム導入の議論が活発に行われています…
詳しくみる