• 作成日 : 2021年12月7日

号俸とは?制度の仕組みと使用法について解説

号俸とは?制度の仕組みと使用法について解説

「号俸」という言葉をご存じでしょうか。普段の生活では使用しないこともあり、一般的には読み方も含めて知らない人のほうが多いかと思います。

しかし、「号俸」は公務員や会社員の給与を決める重要なキーワードです。今回はこの「号俸」について、その定義から使用されるシーン、賃金との関りまで、詳しく解説していきます。

号俸とは?

「号俸」は、「ごうほう」と読みます。漢字で「号棒」という表記を見かけることがありますが、誤りと考えるべきでしょう。その理由は、号俸の「俸」は「俸給」を意味するからです。俸給とは、もともと公務員の労働の対価として支払われる金銭を意味するもので、号俸はその俸給を勤続年数などで序列化したものになります。

俸給は、今も公務員の賃金構成では民間でいう基本給と同じ位置づけに該当します。しかしながら、号俸は、現在は官民、関係なく使用されています。

民間企業の賃金については労働基準法などの規制はあるものの、号俸については法的な基準などはありません。

では、どのようなシーンで使用されるものなのでしょうか。

号俸が使われるケース

号俸が使用されるのは、賃金制度における賃金表です。「賃金テーブル」とも呼ばれています。公務員の場合は、「俸給表」と称します。

賃金表は「基本給」、官であれば「俸給」について作成されます。いずれも給与の構成としては、次のようになります。

民間:「基本給」+「諸手当」
公務員:「俸給」+「諸手当」

基本給、俸給は、賃金の中核となる重要な部分であり、その決定方法は大変、重要です。

基本給、俸給の決定要素には、さまざまなものがあります。仕事の内容である「職務」、あるいは、その労働者の職務遂行能力である「職能」を決定要素とする場合は、「仕事給」と呼んでいます。

一方、学歴や年齢・勤続年数などが決定要素となっている場合は「属人給」と呼びます。

公務員の場合、国家公務員、地方公務員ともに給与制度の基本原則のひとつに「職務給の原則」があり、俸給は仕事給のうちの職務給が核になっています。

民間企業の場合は、昭和40年代後半から日経連が開発した職能資格制度の普及促進によって職務給が主流を占めていました。しかしながら、令和2年4月1日から「パートタイム・有期雇用労働法」が施行されたことに伴い、令和3年4月1日から「同一労働同一賃金」のルールが適用されました。

これにより、同一労働同一賃金と親和性がある職務給を導入する企業が増えつつあります。職務給であれば、同じ職務であれば同一賃金が実現しやすいというわけです。

いずれにしても、基本給や俸給における職能給あるいは職務給の賃金表・俸給表において、番号をつけて賃金を序列化したものが号俸であると説明することができます。

号俸と等級の違い

民間企業でも号俸を使用することがありますが、煩雑にしないために以下、公務員に統一して説明していきたいと思います。

公務員は職務給ですから、採用時、従事する職務の種類によって俸給表が決まります。後述するように俸給表は、横軸が「級」、縦軸が「号俸」で構成され、各省庁では学歴、職務内容によって、採用後は「級」のしかるべき等級が決まります。

「級」は、係員、主任、係長などの役職を意味し、1級、2級、3級…と序列化されるなかで昇格すれば上位の等級に上がります。「号俸」は、勤続年数、年齢などに応じて、1、2、3…と序列化され、昇給によって号俸が上がる仕組みです。

号俸制のメリット・デメリット

号俸制を取り入れた俸給表のメリットは、賃金の全体額と昇給額の両方を管理できる点があげられます。賃金管理を曖昧ではなく、公正に行うためには重要な仕組みです。運用面でも安易に流れず、精緻な処遇が期待できるという特徴もあります。

その反面、設計と運用に手間がかかります。民間の中小企業では、賃金表が整備されていないところは少なくありませんが、このデメリットが大きな理由になっています。

号俸の計算方法について

俸給表では、どのような仕組みで俸給月額が決まるのでしょうか。横軸が「級」、縦軸が「号俸」で構成された実際の俸給表を例に、昇給額の計算方法をみてみましょう。

号俸表の使用

国家公務員(行政職)の俸給表が次に示したものです。

国家公務員(行政職)の俸給表

参考:国家公務員の給与(令和2年版)|内閣官房内閣人事局

横軸の左「1級」から「10級」が職務の「級」で、係員、主任、係長……と昇進によって上位の級に格付けされます。

また、縦軸の号俸は、1から始まり、号俸が増えていく仕組みになっています。この組み合わせによって俸給月額が決定されます。

例えば、Aさんが採用され、係員1級10号俸が初任給となった場合、俸給月額は、156,300円です。その後は、勤続年数によって、例えば1年後には号俸が11号に、2年後には12号、3年後には13号と昇給していきます。

号俸表の運用例

また、職務内容と責任の程度が上がれば、新たな級が決まります。

例えば、Aさんが年月を経て、1級28号俸に昇給。その後、さらに2等級の主任に昇格するとします。直近上位方式である場合、仮に28号から昇格すると、定昇や昇格昇給を加算した後の金額を加味し、2級の号俸のなかで最も金額が近い号俸で、1級のときよりも低下しない号に格付けられることになります。

昇格時の上位投球への格付け運用例

一般企業でも号俸制度は使用される?

号俸は正規雇用の公務員であれば、例外なく俸給表が使用されます。ちなみに国家公務員の場合、俸給表の種類は次のようになっています。

俸給表の種類
参考:国家公務員の給与(令和2年版)|内閣官房内閣人事局

また、前述したように、民間企業でも賃金表を作成している大手企業では、号俸を使用しているケースがほとんどです。基本給において、職務給、職能給のどちらを採用しているかは問いません。

従業員の意見を取り入れ、ベストな制度を活用しよう!

今回は、一般にはあまり馴染みのない「号俸」について解説してきました。号俸は、賃金の根幹である基本給を決定する重要な仕組みのひとつです。

1号当たりの差であるピッチ、1回の昇給で何号上げるのかなどは、従業員のモチベーションを左右します。賃金制度を改定する際には、従業員の納得性を大切にすることがポイントになるでしょう。

よくある質問

号俸とはなんですか?

賃金表・俸給表において、勤続年数等によって賃金を序列化したものです。 詳しくはこちらをご覧ください。

一般企業でも号俸は使用されますか?

大手企業では一般的に使用しています。詳しくはこちらをご覧ください。


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