- 更新日 : 2025年6月10日
就業時間とは?休憩は含まれる?労働時間との違いや就業規則への記載方法
就業時間とは始業から終業までの時間で、お昼休みといった休憩時間も含まれます。就業時間と労働時間の違いは残業や賃金計算に影響するため、人事労務担当者は正確に把握する必要があります。就業規則への記載方法や着替え時間の扱いなど、法律に基づいた適切な勤怠管理の参考にしてください。
目次
就業時間とは?
就業時間とは、従業員が業務を行うために職場に拘束される時間のこと(いわゆる勤務時間)を指します。具体的には、就業規則などで定められた始業時刻から終業時刻までの時間です。就業時間には、実際に労働を行う時間だけでなく休憩時間も含まれます。例えば、9時から18時までの勤務で1時間の休憩がある場合、就業時間は9時間となります。
就業時間に休憩時間は含まれるか
就業時間には休憩時間が含まれます。労働基準法34条では、労働時間が6時間を超える場合は少なくとも45分、8時間を超える場合は少なくとも1時間の休憩を与えることが義務付けられています。
なお、休憩時間とは労働から離れる時間であり、賃金の支払い対象とはなりません。しかし、就業時間の一部としては計算されます。
例:就業時間が9:00~18:00(休憩1時間)の場合
就業時間は9時間/実働時間(実働の労働時間)8時間
休憩時間を含めることで従業員の拘束時間を正確に把握し、適切な労務管理を行うことができます。
就業時間と労働時間、実働時間との違い
就業時間、労働時間、実働時間は似て非なる概念です。適切な労働管理を行うためには、それぞれの違いを理解する必要があります。
就業時間と労働時間の違い
就業時間は始業時刻から終業時刻までの時間で、休憩時間が含まれます。一方、労働時間は使用者の指揮命令下で実際に労働に従事している時間を指します。休憩時間は含まれません。
労働時間は、法定労働時間と所定労働時間に分けられます。法定労働時間は労働基準法で定められた上限(1日8時間、週40時間)であり、所定労働時間は各企業が就業規則で定める労働時間です。所定労働時間は法定労働時間を超えないように設定する必要があります。
就業時間と実働時間の違い
実働時間とは、実際に労働に従事した時間です。就業時間から休憩時間を除いた時間が実働時間となります。
例:就業時間が9:00~18:00(休憩1時間)の場合
実働時間は8時間
実働時間は残業時間の計算や賃金の支払いの基準となるため、正確に把握する必要があります。
就業時間と実働時間の差を明確に認識することで、適切な労務管理と公正な賃金支払いが可能となるためです。
就業時間の計算方法
就業時間の計算方法は、勤務形態や休憩時間の設定によって異なります。
ここでは、具体的な例を挙げて説明しましょう。
9時から18時勤務(所定労働時間8時間)
- 始業時刻:9:00
- 終業時刻:18:00
- 休憩時間:1時間(例:12:00〜13:00)
- 就業時間:9時間(18:00 – 9:00 = 9時間)
- 実働時間:8時間(就業時間9時間 – 休憩時間1時間 = 8時間)
10時から18時勤務(所定労働時間6時間)
- 始業時刻:10:00
- 終業時刻:18:00
- 休憩時間:2時間(例:12:00〜14:00)
- 就業時間:8時間(18:00 – 10:00 = 8時間)
- 実働時間:6時間(就業時間8時間 – 休憩時間2時間 = 6時間)
10時から22時勤務(所定労働時間8時間)
- 始業時刻:10:00
- 終業時刻:22:00
- 休憩時間:4時間(例:13:00〜14:00、18:00〜21:00)
- 就業時間:12時間(22:00 – 10:00 = 12時間)
- 実働時間:8時間(就業時間12時間 – 休憩時間4時間 = 8時間)
20時から翌5時勤務(所定労働時間8時間)
- 始業時刻:20:00
- 終業時刻:翌5:00
- 休憩時間:1時間(例:0:00〜1:00)
- 就業時間:9時間(24:00 -20:00 + 5:00 = 9時間)
- 実働時間:8時間(就業時間9時間 – 休憩時間1時間 = 8時間)
なお、この勤務形態では深夜労働(22:00〜翌5:00)が含まれるため、割増賃金の支払いが必要です。
就業時間が変動する制度やケース
企業によっては業務の特性や従業員のニーズに応じて、柔軟な就業時間制度を採用することがあります。以下に代表的な制度を紹介します。
フレックスタイム制度
フレックスタイム制度は、1カ月以上3カ月以内の総労働時間を定めたうえで従業員が日々の始業・終業時刻を自由に決められる制度です。
フレックスタイム制度では、必ず勤務しなければならない時間帯(コアタイム)と自由に出退勤できる時間帯(フレキシブルタイム)を設定します。
- フレックスタイム制度の例
コアタイム:10:00〜15:00
フレキシブルタイム:7:00〜10:00/15:00〜22:00
1カ月の所定労働時間:160時間
従業員は、月の総労働時間が160時間になるよう日々の勤務時間を調整します。
変形労働時間制度
変形労働時間制度は、繁忙期と閑散期で所定労働時間を変更できる制度です。
1年単位、1カ月単位、1週間単位などがあり、対象期間全体で平均して法定労働時間以内になるよう調整します。
- 変形労働時間制度の例(1カ月単位)
繁忙期(20日間):1日9時間勤務
閑散期(10日間):1日6時間勤務
月平均(9時間×20日 + 6時間×10日) ÷ 30日 = 8時間
シフト制度
シフト制度は、従業員ごとに異なる勤務時間を設定する制度です。小売業やサービス業など、営業時間が長い業種でよく採用されています。
- シフト制度の例
Aさん:9:00〜18:00
Bさん:13:00〜22:00
Cさん:17:00〜翌2:00
シフト制度を導入する場合は、労働時間の管理を厳密に行い、法定労働時間を超えないよう注意が必要です。
就業時間を就業規則に記載する方法
就業時間は就業規則において明確に記載されている必要があります。就業時間を適切に記載することにより、従業員の労働条件を明確にすることで労使間のトラブルが防げます。
就業規則への書き方
就業規則には、以下の項目を明記することが重要です。
- 始業・終業時刻
- 休憩時間
- 所定労働時間
- 休日
- 時間外労働に関する規定
変形労働時間制やフレックスタイム制を採用している場合はその旨
以下のような記載が主な例です。
第○条(就業時間)
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上記は一例ですが、企業の働き方による具体的な記載が理想的です。
就業規則のテンプレート
就業規則の全体的なテンプレートは、厚生労働省のウェブサイトで公開されています。マネーフォワードが提供するテンプレートでは、実用的なひな形をダウンロードすることができます。必要事項を記入するだけで、すぐに無料でテンプレートのダウンロードが可能です。ぜひご利用ください。
就業時間に関するよくある質問
就業時間に関しては、さまざまな疑問が生じることがあります。以下に代表的な質問とその回答を紹介します。
着替えは就業時間に含むか?
着替えが業務上必要不可欠で、会社から着替えを義務付けられている場合は就業時間に含まれることがあります。社内での制服着用が義務付けられている場合や、作業着への着替えが安全管理上必要な場合などが主な例です。
しかし、一般的には制服や作業着への着替えであっても就業時間には含まれないことが多いでしょう。
15分前出社は就業時間に含むか?
会社が15分前の出社を明確に義務付けている場合は、始業の15分前も就業時間に含まれます。
しかし「始業時間には業務を始められること」を慣習として掲げ、15分前出勤を始業前の準備と見なし、就業時間には含んでいない企業が多いのが現状です。
また、従業員が自主的に早く出社している場合は、就業時間には含まれません。早出の取り扱いについては、就業規則などで明確に定めておくことが重要です。
手待ち時間は就業時間に含む?
手待ち時間(実作業はないが、使用者の指揮命令下にある時間)は、原則として就業時間に含まれます。
例えば、店舗での営業中に客待ちをしている時間や、工場でラインの稼働を待っている時間などが該当します。ただし、完全に自由に使える待機時間は除外される場合があります。
移動時間は就業時間に含むか?
業務の一環として行われる移動時間は、原則として就業時間に含まれます。例えば、営業担当者が顧客先へ移動する時間や、出張のための移動時間などが主な例です。
ただし、通常の通勤時間は就業時間に含まれません。また、出張の際の移動時間の取り扱いについては、就業規則などで明確に定めておくことが望ましいでしょう。
適切な就業時間管理は従業員満足度の向上に
就業時間は、労務管理において非常に重要な概念です。就業時間、労働時間、実働時間の違いを正確に理解し、適切に管理することで労使間のトラブルを防げます。
適切な就業時間管理は、生産性の向上と従業員の満足度向上の両立につながります。企業の現状に合わせて、最適な就業時間管理を実践していくことが重要です。
※ 掲載している情報は記事更新時点のものです。
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