• 更新日 : 2024年2月29日

管理監督者とは?労働基準法における定義やトラブル、取り扱いについて解説!

管理監督者とは?労働基準法における定義やトラブル、取り扱いについて解説!

管理監督者とは、監督、管理の地位にあって経営者と一体的な立場にある労働者のことをいいます。また、管理監督者は、労働基準法で定義された労働時間や休日などが適用対象外であることが特徴です。本記事では、管理監督者の労働基準法における定義、トラブル、取り扱いについて解説します。

管理監督者とは?

監督管理者とは、採用、解雇、人事考課などの労働条件の決定や労務管理について、経営者と一体的な立場にあり、地位と権限が与えられた労働者のことです。本項では、管理監督者の労働基準法における定義や、管理職との違いなどの監督管理者の概要について解説します。

労働基準法における管理監督者の定義

管理監督者とは、労働基準法第41条2号にて「事業の種類にかかわらず監督若しくは管理の地位にある者」と定義されています。

引用:労働基準法第41条|e-GOV 法令検索

厚生労働省が作成したパンフレット「労働基準法における管理監督者の範囲の適正化のために」によると、労働基準法上の管理監督者の範囲は「労働条件の決定その他労務管理について経営者と一体的な立場にある者」のことです。

また、管理監督者は労働基準法第41条の中で、労働基準法で定義された労働時間、休憩、休日に関する規定は適用しないとされています。

引用:労働基準法における管理監督者の範囲の適正化のために|厚生労働省

管理職と管理監督者の違い

管理監督者とは、労働条件の決定や、労務管理において地位と権限を持っていて、経営者と一体的な立場にある労働者のことです。

一方、管理職とは、会社によって部長や課長以上の役職などそれぞれで、管理職に関する法律上の定義があるわけではありません。たとえ管理職だったとしても、労働条件の決定や、労務管理において地位と権限を持っていないケースもあります。

管理監督者かどうかは、その労働者の職務内容や地位や権限などを総合的に判断して決定されるものであり、管理職だからといって必ずしも管理監督者であるとは限りません。

管理監督者と認められる条件は?

労働基準法上の管理監督者に該当する基準は、管理職などの役職名ではなく、職務内容、責任と権限、勤務態様、賃金等によって総合的に判断されます。本項では、労働基準法で管理監督者と認められる条件について、一つ一つ見ていきます。

職務内容

労働基準法上の管理監督者に該当するためには、労働基準法の労働時間、休憩、休日などの規制を超えて働かなければならない重要な職務内容を保有していなければなりません。

重要な職務内容とは、労働条件の決定や労務管理について、経営者と一体的な立場にあることです。

責任と権限

労働基準法上の管理監督者に該当するためには、労働時間、休憩、休日などの規制を超えて働かなければならない重要な責任と権限を有していなければなりません。

どんな肩書きがあったとしても、実際には責任と権限を保有していない場合は、経営者と一体的な立場にあるとは言えずに管理監督者ではないのです。

勤務態様

管理監督者の勤務態様は時間にかかわらず経営上の判断や対応をしなければならないケースがあるため、一般労働者とは異なった労務管理が必要です。一般労働者と同様に労働時間の管理をされているようでは、管理監督者とは言えません。

賃金等

労働基準法上の管理監督者に該当するためには、賃金等においても管理監督者の地位にふさわしい待遇がなされていなければいけません。定期給与、賞与、その他の待遇が一般労働者と変わらない場合は、管理監督者とは言えません。

参考:労働基準法における管理監督者の範囲の適正化のために|厚生労働省

管理監督者の労働時間や休日の取り扱いは?

管理監督者は、基本的に労働基準法に定義された労働時間、休憩、休日に関する規定が適用されません。ただし、労働基準法における深夜の割増賃金や年次有給休暇についての規定などは、管理監督者にも適用されます。

本項では、管理監督者の労働時間や休日の取り扱いについて解説します。

管理監督者の労働時間

管理監督者は、以下の労働基準法の労働時間の規定については適用されません。

  • 1週40時間、1日8時間の法定労働時間(第32条)

1週40時間、1日8時間の法定労働時間が適用されないため、法定労働時間を超える労働も可能です。ただし、2019年4月より働き方改革関連法で管理監督者の勤怠管理が義務化されましたので、注意が必要です。

  • 1か月単位の変形労働時間制(第32条の2)
  • フレックスタイム制(第32条の3)
  • 1年単位の変形労働時間制(第32条の4)
  • 1週間単位の非定型的変形労働時間制(第32条の5)

管理監督者は労働基準法労に定義された労働時間に関する規定の制約を受けないため、変形労働時間制やフレックスタイム制についても適用されません。

  • 休憩(第34条)

労働基準法では、労働時間が6時間を超えて8時間以下は少なくとも45分 、8時間を超える場合は少なくとも1時間の休憩を与えなければならないと定義されています。この休憩の規定に関しても、管理監督者は適用されません。

参考:労働基準法第34条|e-GOV 法令検索

管理監督者の休日出勤

管理監督者は、以下の労働基準法の休日の規定については適用されません。

  • 休日(第35条)

労働基準法では、第35条にて毎週1日の休日か、4週間を通じて4日以上の休日を与えなければならないと定義されています。

管理監督者はこの休日の規定の制約を受けないため、労働基準法第36条の規定を越えた休日出勤をすることが可能です。

参考:労働基準法第36条|e-GOV 法令検索

管理監督者への残業代の支払い

労働基準法第37条では、時間外、休日、深夜の割増賃金について定義しています。その中で、法定労働時間外や深夜の労働には2割5分以上の割増賃金、法定休日の労働には3割5分以上の割増賃金を支払わなければならないとされています。

ただし、管理監督者は労働基準法の労働時間、休日の規制を受けないため、法定時間外労働に対する割増賃金と法定休日に対する割増賃金を支払う必要がありません。

一方、深夜の労働に対しては管理監督者にも適用されるため、深夜の労働に対する割増賃金は支払わなければなりません。

参考:労働基準法第37条|e-GOV 法令検索

時間外及び休日の労働に対する36協定

36協定(時間外労働・休日労働に関する協定)とは、労働基準法第36条に定義された法定労働時間を越えた時間外労働や法定休日に労働させる場合に必要な労使協定のことです。

ただし、管理監督者は労働基準法の労働時間、休日の規制を受けないため、36協定は対象外となります。

参考:労働基準法第36条|e-GOV 法令検索

管理監督者の年次有給休暇

管理監督者が規制を受けない労働基準法の規定が多くありますが、労働基準法第39条の年次有給休暇の付与については一般の労働者と同様に付与が義務付けられています。

年次有給休暇の付与の条件や付与日数についても、一般の労働者と同様です。

参考:労働基準法第39条|e-GOV 法令検索

管理監督者に起こりやすいトラブルは?

管理監督者は労働基準法に保護される労働者ですが、適用される規定が一般の労働者とは異なります。そのため、管理監督者に対する様々なトラブルが数多く発生しがちです。

本項では、管理監督者に起こりやすいトラブルについて解説します。

名ばかり管理職として残業代が払われない

労働基準法での管理監督者は、法定時間外労働や法定休日労働をしても残業代や休日出勤に対する割増賃金を支払う必要はありません。

しかし、実際には労働基準法での管理監督者の基準を満たしていないのに管理職という役職だけで、残業代などが支払われない「名ばかり管理職」によるトラブルがあります。

実態は管理監督者ではなかったとして訴訟になることも多く、大きな社会問題になっているのです。

長時間労働に対するトラブル

管理監督者は、労働基準法の労働時間、休憩、休日に関する規定は適用対象外です。そのため、管理監督者に長時間労働をさせても問題ないと経営者が判断して、長時間労働に対するトラブルに発展することもあります。

管理監督者の取り扱いにおける注意点は?

管理監督者は労働基準法の一部の規定については適用されませんが、一般労働者との違いをきちんと認識しておかなければトラブルになる可能性があります。本項では、管理監督者の取り扱いにおける注意点について解説します。

就業規則に管理監督者の規定を明記する

管理監督者についての規定は労働基準法に定義されていますが、労働者がきちんと認識しているとは限りません。そのため、管理監督者の解釈の違いから、トラブルに発展する可能性もあります。

労働基準法に定義されている管理監督者の規定を就業規則に明記しておくことで、不要なトラブルを防ぐことができます。

名ばかりの管理職にならないようにする

名ばかりの管理職によるトラブルを防ぐためには、経営者と労働者と双方で管理監督者に対する正確な基準を認識しておく必要があります。

管理監督者は役職名で決まるのではなく、職務内容、責任と権限、勤務態様、賃金等によって総合的に決まることを理解しておくことが大切です。

2019年4月の働き方改革関連法案により管理監督者の労働時間の把握が義務に

管理監督者は労働基準法の労働時間、休憩、休日に関する規定についての規制を受けないため、長時間労働をさせることも法的には可能です。

しかし、管理監督者も労働基準法により保護される労働者であるため、残業時間数の上限はなく残業代の支払いが不要だからといって長時間労働が無条件に許容されるわけではありません。

このような問題に対応するために、2019年4月の働き方改革関連法案の一環にて労働安全衛生法が改正され、管理監督者を含むすべての労働者の労働時間の把握が義務化されました。労働時間の把握は、労働者の安全面や健康面から働き方改革の一環として大切なことなのです。

参考:労働安全衛生法 第66条の8の3| e-Gov法令検索


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