- 更新日 : 2024年8月30日
源泉徴収票と給与支払報告書の違いを提出先等の観点で解説!
年末調整が終わった後、やってくるのが源泉徴収票の作成や給与支払報告書の作成です。この二つの帳票は同じ情報を記載しますが、それぞれ提出する先や目的が異なります。ここでは、源泉徴収票と給与支払報告書との違いを解説するとともに、給与支払報告書の書き方のポイントを紹介します。
目次
源泉徴収票と給与支払報告書とは
源泉徴収票と給与支払報告書とは、年末調整のあとに作成する報告書です。いずれも年間で支払った給与の総額を記載する書類であり、記載する内容もほぼ同じですが、書類を提出する先や作成の目的が異なります。
源泉徴収票とは
源泉徴収票とは、給与を支払った事業主等が、その年に支払った給与の合計額と源泉徴収した税額の合計を記載する書類です。年末調整のあと、翌1月末までに2通の源泉徴収票を発行する必要があります。給与の支払い額・徴収された税額を証明する書類として、1通は本人に交付しましょう。もう1通は、一定の提出要件に該当する従業員分についてのみ、税務署への提出が必要になります。
源泉徴収票についての詳しい解説については、以下の記事を参考にしてください。
給与支払報告書とは
給与支払報告書も、源泉徴収票と同様に、その年に支払った給与額等を記載した書類です。ただし、こちらは従業員本人に交付はせず、1月1日時点で従業員が居住している市区町村へ提出します。記載されている給与額に基づき、その翌年の住民税が決定される重要な報告書となりますので、年末調整終了後、各市区町村が指定する期日(原則として1月末日)までに給与支払をした全従業員の給与支払書を作成し、必ず提出しましょう。
なお、給与支払報告書と呼ばれるもののなかには、「個人別明細書」と「総括表」の2種類があります。
個人別明細書
個人別明細書は、給与を支払った従業員ごとに作成する書類です。個人別明細書のフォーマットは、源泉徴収票と同様です。手書きで作成する場合は、各市区町村で配布されている4枚式(税務署へ源泉徴収票の提出の必要がない場合は3枚式)の用紙を使用すると、記入する時間を節約することができます。
個人別明細書には、従業員の住所、氏名のほか、給与の支払い総額、給与所得控除後の金額、各種控除額等、年末調整で算出した情報を記載します。
なお、給与天引きではなく、従業員本人が納付書等で住民税を支払っている「普通徴収」の対象者がいる場合は、「個人住民税普通徴収該当理由書」や「普通徴収切替理由書」の提出があわせて必要です。市区町村ごとに名称やフォーマットが異なることがあるため、市区町村に問い合わせるか、ホームページなどで確認しましょう。
参考:令和3年分 給与所得の源泉徴収票等の法定調書の作成と提出の手引|国税庁
総括表
総括表とは、従業員ごとに作成した個人別明細書を提出先の市区町村ごとにとりまとめ、その表紙として添付する書類のことを指します。どの市区町村に提出するにしても記載内容はほとんど同じですが、統一したフォーマットがあるわけではなく、市区町村によって記載方法が異なるため、提出する先の様式を確認する必要があります。
給与支払者の氏名や企業名、所在地、代表者氏名のほか、「特別徴収対象者」「普通徴収対象者」「報告人数」等を記載する項目があります。
源泉徴収票と給与支払報告書の違い
源泉徴収票と給与支払報告書は、年末調整時の情報を元としており、記載する項目もほぼ同様のものです。とくに、個人別明細書は源泉徴収票と同様のフォーマットを利用するため、混同しやすいものですが、「提出先」「対象者」「作成時期」等の違いを抑え、提出時に混乱しないようにしましょう。
- 源泉徴収票と給与支払報告書の違い
源泉徴収票 | 給与支払報告書 | |
---|---|---|
提出先 | 税務署(対象者のみ)、従業員本人 | 従業員の住む各市区町村 |
電子申告サイト | e-Tax(国税電子申告・納税システム) | eLTAX(地方税ポータルシステム) |
対象者 | 条件に該当する場合 | 給与を支払った従業員全員(一部例外あり) |
作成時期 | 年末調整後および従業員の退職時 | 年末調整後、翌1月中 |
提出先
源泉徴収票の提出先は、税務署および従業員本人です。それに対して、給与支払報告書は本人への交付は必要ありません。従業員一人につき、個人別明細書を2部作成し、従業員が1月1日時点で居住する市区町村に提出します。
電子化により電子申告を行う場合、源泉徴収票は「e-Tax」、給与支払報告書は「eLTAX」と使用するポータルサイトが異なるため注意しましょう。なお、2021年1月提出分から、前前年における給与所得または公的年金等の源泉徴収票の税務署へ提出するべき枚数が「100以上」の場合は、e-Taxもしくは光ディスク等による提出が義務化されています。
対象となる人
源泉徴収票と給与支払報告書ともに、企業は給与の支払をした従業員分を作成する必要があります。退職した従業員については、前年の給与支払い総額が30万円以下の場合、給与支払報告書の作成義務はありません。ただし、30万円以下でも提出を必要とする市区町村もありますので、市区町村のホームページなどで確認するようにしましょう。
対象者 | 例外 | |
---|---|---|
源泉徴収票 | 給与の支払いをした従業員分を作成・交付する | 税務署へ提出するのは条件に当てはまる場合のみ |
給与支払報告書 | 給与の支払をした従業員分を作成、対象となる市区町村に提出(原則全員) | 退職した従業員で前年度の給与額が30万円以下の場合は個人別明細書の提出義務はなし(市区町村によって必要となる場合あり) |
参考:
地方税法第317条|税務研究会
No.7411 「給与所得の源泉徴収票」の提出範囲と提出枚数等|国税庁
作成時期
源泉徴収票は、1月31日までにその前年分を作成し、従業員本人に交付するほか、対象者分を税務署へ提出します。給与支払報告書も、源泉徴収票と同様に1月31日までに提出をしますが、市区町村によっては提出期限が異なる場合があります。
給与支払報告書の書き方のポイント
給与支払報告書を作成する際のポイントを紹介します。より詳しい書き方を確認したい場合は、以下の記事をご覧ください。
給与支払報告書の元となる書類
給与支払報告書の個人別明細書は、源泉徴収票に記載した内容と同じものを記入します。その際、年末調整で従業員から回収した以下の書類がもとになります。
様式を確認する
総括表の様式等は、通常市区町村から送付されてきます。提出先ごとの様式を確認しましょう。また、基本的な様式については総務省のウェブサイトよりダウンロードできます。
マイナンバーの記載
従業員に交付する源泉徴収票にはマイナンバーの記載は必要ありません。税務署へ提出する源泉徴収票と、市区町村へ提出する給与支払報告書にはマイナンバーを記載する必要があります。
給与支払報告書を期日までに作成・提出しよう
給与支払報告書は、源泉徴収票と同様の情報を記載しますが、従業員の居住する市区町村分に取りまとめて提出しなければいけないため、適切な管理が必要です。郵送にて提出する場合は、郵送にかかる時間も踏まえた上で、期日に遅れないように作成・提出をしましょう。
給与支払報告書・源泉徴収票ともに、年末調整の情報が基となります。そのため、年末調整ソフトなどの帳票作成機能を活用すると、より効率的に作成できるでしょう。
よくある質問
給与支払報告書とは何ですか?
年末調整後、従業員の居住する市区町村に提出する報告書です。給与支払の総額や控除額などが記載されており、翌年の住民税を決定する材料となります。企業は毎年1月31日までに作成・提出しなければいけません。詳しくはこちらをご覧ください。
源泉徴収票と給与支払報告書の違いは何ですか?
記載内容は同じですが提出先が異なります。源泉徴収票は従業員へ交付するとともに、一定の条件に該当する対象者分のみ税務署に提出し、給与支払報告書は個人別明細書と総括表を取りまとめ市区町村へ提出しましょう。詳しくはこちらをご覧ください。
※ 掲載している情報は記事更新時点のものです。
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