- 更新日 : 2025年3月21日
外国人パート雇用時の確認事項と注意点|手続きや在留資格も解説
外国人パートを雇用するには、在留資格が必要です。雇用主は事前に在留資格を確認し、違法雇用を防ぐ責任があります。また、在留資格によっては、就労ができなかったり制限があったりするため、ルールを正しく理解しておくことが大切です。
本記事では、在留資格や外国人を雇う際の注意点を解説します。外国人雇用のルールを正しく知ることで、スムーズな採用を行いましょう。
目次
外国人パートは在留資格によっては雇用できない
外国人が日本でパートとして働くには、適切な在留資格が必要です。在留資格の種類によって働ける職種や労働時間に制限があります。
在留資格は、大きく分けて「就労が認められる資格」と「就労が認められない資格」に分類されます。また、就労可能な資格を持っていても、職種や勤務時間に制限がある場合があるため、注意が必要です。
具体的な在留資格の種類と、就労可否や制限の有無については以下のとおりです。
【在留資格の種類】
在留資格の種類 | 就労の可否 | 概要 | |
---|---|---|---|
就労に制限のない在留資格 | 永住者 日本人の配偶者等 永住者の配偶者等 定住者 | 制限なし | 日本人と同様に働ける |
特定の職種で就労可能な資格 | 外交 公用 教授 芸術 宗教 報道 高度専門職 経営・管理 法律・会計業務 医療 研究 教育 技術・人文知識・国際業務 企業内転勤 介護 興行 技能 技能実習 特定技能 一部の特定活動 | 制限あり | 指定された業務のみ就労可 |
許可があれば就労が認められる在留資格 | 留学 家族滞在 一部の特定活動 文化活動 | 許可が必要 | 許可を取得すれば制限付きで就労可 |
就労が認められない資格 | 短期滞在 研修 | 就労不可 | 就労不可 |
就労に制限のない在留資格
以下の在留資格をもつ外国人は、日本人と同じように働けます。
- 永住者
- 日本人の配偶者等
- 永住者の配偶者等
- 定住者
上記のような日本で自由に働ける在留資格をもつ外国人は、職種や勤務時間に制限がありません。労働時間も、日本の法律で定められた基準に従います。
就労に制限のある在留資格
一部の在留資格では、働ける職種が決まっています。
該当する在留資格は、以下のようなものがあります。
- 外交
- 公用
- 教授
- 芸術
- 宗教
- 報道
- 高度専門職
- 経営・管理
- 法律・会計業務/li>
- 医療
- 研究
- 教育
- 技術・人文知識・国際業務
- 企業内転勤
- 介護
- 興行
- 技能
- 技能実習
- 特定技能
- 一部の特定活動
たとえば、医師の資格をもつ人は「医療」の分野、語学教師の資格をもつ人は「教育」の仕事が可能です。資格に関係のない職種で働くことは基本的に認められていません。
就労が認められない在留資格
一部の在留資格では、原則として働けません。
就労が認められない資格には、以下のものがあります。
- 文化活動
- 短期滞在
- 留学
- 研修
- 家族滞在
ただし、「文化活動」「留学」や「家族滞在」の資格をもつ人は、資格外活動許可を取得すれば決められた範囲内でパートやアルバイトが可能です。また、「文化活動」の資格については就業先を都度申告することで就業先毎に個別に資格外活動許可を受けて働けます。
外国人パートを雇用する前に確認すべきこと
外国人をパートとして雇う場合、在留資格によって働ける条件が異なります。雇用する前に、本人の身分証明書と就労許可を必ず確認しましょう。
必要な書類を正しく確認し、雇用の可否を判断する方法を解説します。
パスポート
外国人の身分を証明する書類であるパスポートには、滞在期限やビザの種類が記載されています。
たとえば、滞在期限が近い場合、雇用期間を決める際に注意が必要です。また、ビザの種類によっては、就労が認められていないこともあります。
雇用する前にパスポートを提示してもらい、在留資格の種類や滞在期限を確認することが大切です。
在留カード
在留カードは、日本に中長期間滞在する外国人がもつ身分証明書で、在留資格や在留期間が記載されています。在留資格の種類によっては、就労が認められないためよく確認しましょう。
たとえば「留学」などの資格では、原則として働けません。ただし、資格外活動許可があれば、決められた時間内でのパート勤務が可能です。
雇用前に在留カードを確認し、働ける資格を持っているかを確認することが必要です。
資格外活動許可または特別活動の指定書
一部の在留資格では、特別な許可を得ることで就労が可能になります。
具体的には、以下の許可を持っている場合に一定の範囲内で就労が可能です。
- 資格外活動許可書
現在の在留資格で認められていない仕事をする場合に必要な許可。 - 特定活動の指定書
「特定の活動を行うことを前提として在留資格を与える」と規定されたもの。
資格外活動許可があると、本来の在留資格で認められていない仕事を、決められた範囲内で行えます。また、特別活動の指定書を持っている場合は、特定の活動を前提とした就労が可能です。ただし、働ける時間や職種に制限があるため、事前の確認が必要です。
雇用の際は、これらの許可を持っているかを確認しましょう。
在留資格がない外国人を雇った場合の罰則
在留資格を持たない外国人を雇うことは法律で禁止されています。違法に働いた本人だけでなく、雇用した企業や経営者も責任を問われ、不法就労助長罪に当たる可能性があります。
不法就労助長罪に該当すると、雇用主には3年以下の懲役または300万円以下の罰金が科されるため注意が必要です。
違法雇用を防ぐためには採用時に書類を確認し、在留資格の更新状況を定期的にチェックすることが重要です。
外国人パートの採用手順
外国人をパートとして採用する際は、適切な手順を踏むことが大切です。
各手順を理解し、スムーズに採用を進めましょう。
1. 外国人パートの募集
外国人を雇う場合、外国人向けの求人サイトやハローワークを活用すると、適した人材を見つけやすくなります。求人の段階で在留資格や就労条件を明記しましょう。在留資格に関する情報を事前に伝えることで、違法就労を防げます。
「資格外活動許可が必要」などの条件を明示すると、応募者が自分に合った求人かどうかを判断しやすくなります。
2. 在留資格の確認
不法就労を避けるためには、在留資格を確認することが大切です。
在留カードやパスポートを確認し、就労が許可されているか、業務内容が資格に合っているかをチェックしましょう。
たとえば「留学」の在留資格をもつ外国人は、資格外活動許可がなければ働けません。また「技術・人文知識・国際業務」の資格をもつ人は、専門職の仕事しかできません。
雇用前にこれらを確認することで、不法就労を防げます。
3. 面接
外国人を採用するときには、日本語能力や業務への適性を確認しましょう。
業務内容を正しく理解できるかどうかをチェックし、仕事を円滑に進められるかを判断します。とくに接客業の場合は、一定の日本語能力が必要なため、会話の流れを見ながら評価することが大切です。
また、面接の際に労働条件や勤務時間を伝えることで、雇用後のトラブルを防げます。
4. 雇用契約の締結
外国人を採用する場合、日本人と同様に雇用契約を結び、労働条件を明確にする必要があります。外国人労働者についても、労働条件は書面で明示(労働条件通知書)が義務付けられています。
労働条件通知書に記載すべき内容は、以下のとおりです。
- 労働契約の期間
- 有期契約の場合、更新の条件
- 就業場所と業務内容
- 勤務時間や休憩時間
- 休日や休暇
- 賃金の計算方法、締め日、支払日
- 昇進や昇給の有無
- 退職や解雇に関する事項
外国人労働者は、日本の労働法について詳しくない場合が多いため、契約内容を丁寧に説明することが大切です。労働条件を一方的に伝える「労働条件通知書」ではなく、双方の合意が必要な「雇用契約書」を作成することで、トラブルを防ぎやすくなります。
外国人パートの雇用時に必要な手続き
外国人をパートとして雇用する際は、法律に従った手続きを行う必要があります。
ここでは、法律で定められた手続きを解説します。
外国人雇用状況の届出
外国人を雇用する場合、事業者はハローワークに雇用状況を届け出る義務があります。外国人の在留カードを確認し、氏名や在留資格、在留期間を正しく記入しましょう。
外国人雇用状況の届出は、不法就労を防ぐために法律で定められています。届け出を怠ると、事業者に罰則が科される可能性があるため注意が必要です。
雇用保険・社会保険・税金の手続き
外国人パートも、日本人と同様に雇用保険や社会保険、税金の手続きが必要です。
ただし、以下の在留資格をもつ人は、雇用保険の被保険者にはなりません。
- 経営・管理
- 留学
- 特定活動(ワーキングホリデー)
一方で、社会保険や税金については、日本人と同じ基準が適用されます。労働時間や雇用期間によっては、企業が雇用した外国人を健康保険や厚生年金保険への加入させる義務が生じます。
外国人パートを雇用する際の注意点
外国人をパートとして雇う場合、労働時間や労働条件、文化の違いなどに注意する必要があります。適切な対応をすることで、外国人労働者が安心して働ける環境を整えられます。
労働時間の制限
外国人パートの中には、働ける時間に制限がある人もいます。就労が認められていない在留資格の人が資格外活動許可を得た場合、働ける時間は週28時間以内と決められています。また、どの日を起算にしても週28時間以内でなければなりません。
週28時間を超えて働くと、外国人本人だけでなく雇用主も処罰の対象となる可能性があるため注意しましょう。ただし、長期休暇中は1日8時間、週40時間まで働くことが可能です。
また、就労が認められている在留資格をもつ場合は、労働基準法に従い、適切な労働条件を設定すれば問題ありません。
適切な労働条件の設定
労働基準法第3条では、外国人であることを理由に、日本人と異なる労働条件を設定することは禁止されています。たとえば、日本人の従業員より低い賃金を設定することは法律違反です。
労働基準法では、賃金や労働時間、休憩時間などについて明確なルールが定められています。国籍による差別的な扱いは認められず、外国人専用の就業規則を作成することもできません。ただし、母国語に翻訳した就業規則を用意することは可能です。
すべての従業員に公平な労働条件を適用し、法令を守ることが大切です。
言語・文化の違い
外国人パートを雇う際は、日本語能力や文化の違いに配慮することが重要です。文化の違いによって、働き方や接客の仕方に違いが生じることもあります。簡単な言葉で説明したり、外国語の業務マニュアルを用意したりする工夫が必要です。
たとえば、日本ではお客様に対して丁寧な言葉遣いやお辞儀が求められます。文化の異なる外国人雇用者には事前に指導することで、円滑な業務につなげられます。
外国人が働きやすい環境を整えるために、雇用側も文化や言葉の違いを理解することが大切です。
外国人パートの不法就労を防ぐには在留資格と雇用の手続きを理解しよう
外国人をパートとして雇用するには、在留資格の確認が重要です。資格の種類によって、働ける職種や労働時間に制限があります。雇用の際は、パスポートや在留カードを確認し、必要に応じて資格外活動許可の取得状況もチェックしましょう。在留資格がない外国人を雇うと、雇用主にも罰則が科される可能性があるため注意が必要です。
また、外国人パートが安心して働ける環境を整えるために、労働条件の公平性を保ち、日本語のサポートや文化の違いへの配慮も心がけましょう。
※ 掲載している情報は記事更新時点のものです。
人事労務の知識をさらに深めるなら
※本サイトは、法律的またはその他のアドバイスの提供を目的としたものではありません。当社は本サイトの記載内容(テンプレートを含む)の正確性、妥当性の確保に努めておりますが、ご利用にあたっては、個別の事情を適宜専門家にご相談いただくなど、ご自身の判断でご利用ください。
関連記事
嘱託とは?社員・パートとの違いや雇用形態を解説
嘱託社員とは正社員とは異なる雇用形態で働く社員で、行政機関などでは嘱託職員などと呼ばれることもあります。雇用期間の定めのある非正規雇用として働き、あらかじめ担当する業務も契約で定めておき、責任の範囲も限定されます。嘱託社員の中でも正社員に近…
詳しくみる役員社宅の否認事例│実際の判例から学ぶ税務対策と制度適用のコツ
この記事では、役員社宅の実際の否認事例をご紹介します。 役員社宅の制度を正しく使えば、住居を経費として計上できるため節税効果が期待できます。 しかし、計上の仕方を誤ったがために、税務調査で否認されるパターンも少なくありません。 実例から学べ…
詳しくみるモンスター社員とは?対応方法や放置するリスクを解説
モンスター社員とは、仕事の取り組み姿勢や言動などに大きな問題があり、様々な悪影響を及ぼす従業員のことです。この問題行動により職場環境の悪化による生産性低下等のリスクがあるため、モンスター社員の放置は決して許されません。この記事ではモンスター…
詳しくみる人事制度とは?見直しのタイミング、設計に必要な3本の柱を解説
人事制度の重要な柱は「等級制度」と「評価制度」「報酬制度」です。企業を取り巻く環境が変化したとき、人事制度の見直しが必要になるケースもあります。 本記事では、人事制度を構成する3本の柱について解説します。人事制度の目的や見直しの方法・タイミ…
詳しくみるダイアローグとは?意味や実施方法を解説!
ダイアローグとは、深いコミュニケーションを求める際に行われるコミュニケーション手法です。ファシリテーターを置き、設定したテーマで対話を行います。相手に対する理解が深まるだけでなく、自分の意見や主張の根拠も明らかにできます。対話を有意義で実の…
詳しくみるカッツモデルとは?人材育成・人事評価に活用できる3つのスキルを解説!
企業の成長と発展には、効果的な人材育成と適切な人事評価が欠かせません。カッツモデルは、半世紀以上にわたり多くの企業で活用されてきた人材育成・評価のフレームワークです。組織の各階層に求められるスキルを明確に示すことができるため、現代のビジネス…
詳しくみる